人生の案内板

あの少年のおかげで
心理学を学ぼうと思った。

今の私がいるのは…
あの少年のおかげ……。

そ―いやなんで私はあの時
おにぎりをあげたのかな？

ツンツンと優しくつつかれた。

後ろにかけるがいた。
私は現実に戻り、
今ここにある幸せを感じた。

‘待った？’
『大丈夫だよ。』

するとかけるはいきなり
私の右手をとった。
そして優しく繋いだ。

ドキッと心臓が大きく動いた。
そして小さくドキドキと
リズムに合わせて動き始めた。

‘だいぶ待っただろ？
手冷たいよ！’

『じゅっ…10分くらいだけだよ』

急に恥ずかしくなり
手を離してしまった。

なにやってんだよ!?
私………
馬鹿か!?
こんないいチャンスを。

‘場所はどこがいい？’

『かけるのピアノが聞きたい！』

私は慌てながら言った。

‘いつも聞いてるだろ’
『“耳なしほういち”
を聞きたいの！』

するとかけるは怒った顔で

‘ダメだっっ!!’

と手話をした。

『…かける…？』

なんでそんなに怒るの？

かけるは少し慌てた様子で

‘俺ん家で聞かせるから’

と手話をした。

『場所なんかどこでもいいから…』

‘そうか。’

なんであんなに慌てるのかな？

私たちはかけるの家へ目指した。

かけるの家で“耳なしほういち”
を聞いた。

この曲を聞くと、本当に
他のことがどうでもよくなってくる。

弾き終わった時
かけるが話をかけてきた。

‘耳なしほういちっていう話
しってるだろ？’

『確か、師匠さんが
とりつかれている坊主に
呪文を書いたが
耳だけ書かなかったから
耳だけ取られた…』

‘ああ’

かけるは私の側に来て
また話し始めた。

‘俺もそんな気分だったよ
…あの時。

普通に生活してある日
突然……。’

なぜ人はみな普通の、
健康な体にはならないのか？

なにかしら障害があるのか？