人生の案内板
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#1 [幸]
『凄いわねぇ〜
またかなちゃん、学年
で1位なのねぇ。』
『本当〜。あんな子を
持つ親は羨ましいわ』
小さい頃から教育熱心だった母。
私はいつも母に誉められるために
頑張ってきた。
:08/12/07 21:36 :W53H :5Pz.8V5A
#2 [幸]
『やっぱ無理だわ!!』
『鮎川に学力で勝てる奴いねーよな』
小、中とずうっとそう言われ続けてきた
全ては母さんのため
私は母さんが勉強しろ
って言われるから
今までしてきた。
:08/12/07 21:42 :W53H :5Pz.8V5A
#3 [幸]
今、私は高校3年生
受験生だ。
しかし、今年の4月。
母さんが交通事故で亡くなった。
そのため父さんと2人暮らしだ
兄はいるが就職のため
兄は一人暮らしをして
いるので家にはめったに帰ってこない。
:08/12/07 21:46 :W53H :5Pz.8V5A
#4 [幸]
父さんは母さんより
教育熱心ではない。
いたって普通の父親だ
それにしても家事は大変だ
今まで勉強しかしてなかったから
家事なんてしたことなかった。
ご飯を作って、皿洗って、洗濯物して、アイロンして…
おまけにそうじもして
正直それだけで疲れてしまい、
昔ほど勉強をしなくなった。
:08/12/07 21:49 :W53H :5Pz.8V5A
#5 [幸]
今は7月。
母さんが亡くなって
私たち家族は放心状態だった。
口うるさい母さんだったが大好きだった
父さんが一番絶望的な
顔をしていた。
しかし今は皆、現実を受け止めようとしている
泣いたって母さんは帰ってこない
:08/12/07 21:53 :W53H :5Pz.8V5A
#6 [幸]
だいぶ昔のように元気
になってきたが、
私の学力は下がる一方だ
『鮎川さん!!どうした!?
お前はT大学に行くんじゃなかったのか!?』
うぜー先生。
お前、私が今までどれほど
苦しんだと思っているんだ
:08/12/07 21:56 :W53H :5Pz.8V5A
#7 [幸]
『かな!!』
『ちなみ。。』
『今はまだ大丈夫だょ
家事で大変だと思うけど
かなならまた成績伸びるよ。』
ちなみ……
本当に優しいなぁ
ちなみが唯一の私の友達
:08/12/07 21:58 :W53H :5Pz.8V5A
#8 [幸]
私が帰るときにそう励ましてくれた。
『久しぶりにどう?』
ちなみにマックへ行こうと誘われたが
私は昨日は家事ばっかりだったので
勉強できなかったから
今日はその分図書館で
勉強すると言い、断った
今日、父さんは夜遅い
夜ご飯は一人で外食しよう。
:08/12/07 22:20 :W53H :5Pz.8V5A
#9 [幸]
私はそう思い、図書館である程度勉強したら
レストランへ行くと予定した。
学校から徒歩15分。
それにしても…ここの図書館は
私と同じ高校の奴ら多いなぁ。
まぁ、しょうがないか…
:08/12/07 22:22 :W53H :5Pz.8V5A
#10 [幸]
私の高校は毎年T大学
に向け、勉学に励んでいる
県内ではトップクラスだ
遊んでる奴なんていない
みんなこの図書館にきて勉強している。
私だって負けていられない!!
母さんのためにも
私はT大学に行くんだ!!
:08/12/07 22:24 :W53H :5Pz.8V5A
#11 [幸]
カリカリ……
シャーペンが動いている音
この音……好きだなぁ
例え、答えが間違っていても
勉強してるっていう気になれる。
1時間半勉強したら
休憩として、10分間
本を読む。
これが私の勉強法だ
:08/12/07 22:27 :W53H :5Pz.8V5A
#12 [幸]
その勉強法を何回か
繰り返してみると、時間
があっという間に過ぎていた。
気づけば7時半だ。
私はレストランへ向かった
:08/12/07 22:29 :W53H :5Pz.8V5A
#13 [幸]
ガヤガヤ…
レストランで会話しながら
ご飯を食べている。
この声、好きだなぁ。
みんな栄養を楽しく取っているんだなぁ。
私はパスタを頼み、
待っている間、数学を解いていた。
:08/12/07 22:31 :W53H :5Pz.8V5A
#14 [幸]
『鮎川さん?』
後ろから声がした。
振り返ってみると
そこにはあの小早川君がいた。
『こ…小早川君……』
なんでこんな所に…
ヤバい……
なんて話したらいいか…
:08/12/07 22:33 :W53H :5Pz.8V5A
#15 [幸]
そう…私は小早川君の
こと好きっていうか
憧れています!!
“小早川きい”
彼は凄い人なんです
スポーツも凄くて
頭もいい。
おまけに私好みの顔
私の高校のアイドル的
存在。
…が、なぜここにいる?
:08/12/07 22:39 :W53H :5Pz.8V5A
#16 [幸]
『鮎川一人?』
小早川君はそう聞くと
私の向かい側に座った
おいーっっ!!
なんで座るの!?
なんでそこに座るの!?
小早川君も一人で来た
のかなぁ。
まさかね。友達がいる
に決まってる
それか、彼女かもしれない
まぁそんなこと、どうでもいい!!
問題は“なぜ小早川君は
私の向かい側の席に座ったのか”だ。
:08/12/07 22:43 :W53H :5Pz.8V5A
#17 [幸]
もしかして。
私が一人でいたから
寂しそうだなぁって
思って情けでそこに座ってくれてるかもしれない。
だとしたら私は寂しそうな行動したんだ。
ぁぁ、なんて私は馬鹿
なんだろ
どうして思ったことを
すぐ顔とかに出るのかなぁ。
『おーい。聞いてる!?』
『えっ?……
ああーうん。聞いてるよ』
:08/12/07 22:46 :W53H :5Pz.8V5A
#18 [幸]
いけない。
私ったら。
本当にダメだわ。
慣れてない人から話し
かけられると深く考えちゃう
癖がある。
『ほらー鮎川は今一人なの?』
小早川君は優しい声で
そう聞いた。
『うん…』
私は小さな声でそう言った。
:08/12/07 22:48 :W53H :5Pz.8V5A
#19 [幸]
『そうなんだ。
俺も一人なんだぁ。
よかったら一緒に食べない?』
えっ?
えぇぇぇ!?!
なんだろう。この気持ちは
後ろ振り向いたらお化けがいて
びっくりしてるくらい
心臓の動きが速い。
落ち着け
私。
相手はお化けじゃない
人間だ。
『うん。』
私は精一杯の笑顔で答えた。
:08/12/07 22:52 :W53H :5Pz.8V5A
#20 [幸]
『よかったぁ。
ん?数学かぁ。』
小早川君は私のノート
を見てそう聞いた。
『うん。数学だけが
足ひっぱているからね』
『鮎川は数学嫌いなの!?』
『…うん。』
『へぇ。意外。数学の
偏差値いくつよ?』
:08/12/07 22:54 :W53H :5Pz.8V5A
#21 [幸]
…ヤバい……
今…てか、さっきから
“鮎川”って呼び捨て
だよ。
呼び捨てで呼ばれるの好き。。。
『この前の模試は69
だったよ。』
『69で足ひっぱている
のかよ。』
『えっ…』
『負けたよ。俺65だったんだぁ。
やっぱ鮎川には勝てないなぁ。』
:08/12/07 22:57 :W53H :5Pz.8V5A
#22 [幸]
『そんなことないよ
下がってきてるんだ
成績が…』
私は下を向いて話した
『でも鮎川なら余裕だろ
他の教科でカバーすれば』
『日本史が70前半だったんだぁ。
それで今日、先生に叱られちゃった。』
『鮎川が…信じられね
俺だって80越えたぞ
簡単だったじゃん。』
:08/12/07 23:01 :W53H :5Pz.8V5A
#23 [幸]
私はその言葉を聞いて
ショックを受けた。
『まぁ、たまには
そういうこともあるよ』
小早川君はサラっと言い
ドリンクを飲んだ。
小早川君もメニューを
頼み、私と一緒に数学
の問題を解いていた
:08/12/07 23:38 :W53H :5Pz.8V5A
#24 [幸]
そして料理が運ばれ
政治経済について話した
お互いに政経が得意
なのでその話しで大いに盛り上がった。
小早川君と話してると
日本が小さく見えた
小早川君は日本の経済
だけではなく、外国の
経済にも興味があるからだ。
正直、凄いなぁって
感心した。
:08/12/07 23:41 :W53H :5Pz.8V5A
#25 [幸]
ご飯を食べ、小早川君
と別れた。
レストランから家まで徒歩30分。
結構遠いのだ。
……にしてもここは
こんなに暗かったっけ?
いつもは車が結構通るのに
今日だけ少なかった。
やけに不気味に感じた
:08/12/07 23:44 :W53H :5Pz.8V5A
#26 [幸]
ザザっ…
『きゃっ!!』
…ーなんだよ。
風の音かよ
風の音でびっくりして
しまった。
私は開き直り、歩き始めた。
ドサッ!
:08/12/07 23:45 :W53H :5Pz.8V5A
#27 [幸]
『いやぁぁぁ!!』
白い物体が突然目の前
に倒れてきた。
私は怖くなって、
その場から足が動けなかった
どうしよう。
警察に連絡しようかな
でも、襲われてないし
そんなことを考えていた
しかし
『はぁ…はぁ…』
白い物体の息が荒いのが分かった
:08/12/07 23:56 :W53H :5Pz.8V5A
#28 [幸]
私は恐る恐る白い物体
に近づいてみた。
『大丈夫ですか?』
私はそう聞きながら
白い物体を触ろうとした
しかし、手を掴まれ
凄い目で私を見た
:08/12/07 23:57 :W53H :5Pz.8V5A
#29 [幸]
怖くて怖くて…
声が出なかった。
なんて目……
人間ってこんな目もやればできるんだ
一気に手が震えだした
しばらくその白い物体
と見つめ合っていた
怖くて怖くて、
目が動かなかったからだ
:08/12/08 00:01 :W53H :Ut2bnqm2
#30 [幸]
ぐるるるー…
お腹の音が鳴った
しかし私のお腹ではない
するとその白い物体は
私の手を放し
お腹を押さえた。
なぜだろう。
今思えばそう疑問を持つ
なぜあの時私は走って
おにぎりとジンジャエールを
買ったのだろうか。
:08/12/08 00:28 :W53H :Ut2bnqm2
#31 [幸]
『はい。はぁ…はぁ』
私はおにぎりとジンジャエール
を白い物体にあげた。
その白い物体は暫く
私の顔を見ると、最初
はためらったが、一気に
袋の中からおにぎりを
取り出し下を向きながら食べた。
:08/12/08 00:35 :W53H :Ut2bnqm2
#32 [幸]
『…うめぇ…さんきゅ』
その白い物体はそう言うと
おにぎりをぺろっと食べ
ジンジャエールをガブガブ飲んだ。
人って食べる時、
笑いながら食べるのだとばかり思っていた
しかし彼を見ると
そんなことは決してない
そう感じさせた
:08/12/08 00:38 :W53H :Ut2bnqm2
#33 [幸]
『ふー』
満腹を感じたのか、
とても幸せそうな顔で
座っていた。
私は今まで人は話しながら食べると
ご飯がおいしくなると
思っていた。
また幸せだと感じると
思っていた。
でも彼は違う。
彼は生きるためにご飯を食べ
生きるために幸せを感じる
凄く、生きるのに一生懸命なのだ。
:08/12/08 00:42 :W53H :Ut2bnqm2
#34 [幸]
『あの、もっと食べる?』
あのときの恐怖はどこ
にいってしまったのか
普通に話しをかけた。
『いや、平気だ。
わざわざすまなかった
っっー…』
:08/12/08 00:46 :W53H :Ut2bnqm2
#35 [幸]
彼は足をおさえていた
私が彼の足を見てみると
そこには痛々しくすり傷があった。
私はいつも常備している
オロナインをカバンから出した。
:08/12/08 00:48 :W53H :Ut2bnqm2
#36 [幸]
『先、水で洗って。』
私は彼にハンカチを
渡した。
『…いらねえよ
そんなもん。』
彼はそう言い、自分で
公園まで歩いて行った
ここから公園はさほど遠くない。
私も彼に付いて行った
:08/12/08 00:50 :W53H :Ut2bnqm2
#37 [幸]
私は彼が足を洗うのを
終わるのを待っていた
今まで彼がしゃがんでいたから
小さく見えたせいか、
実際立ったら大きいんだなぁ
彼は足を洗うのが終わって
私の方へ来た。
:08/12/08 01:02 :W53H :Ut2bnqm2
#38 [幸]
私はハンカチで膝から浸ってくる
水を拭いた。
そしてオロナインを塗った
『痛っ!』
『ご、ごめんなさい』
とは言いつつ塗り続けた。
:08/12/08 01:04 :W53H :Ut2bnqm2
#39 [幸]
『もういい、ありがとう』
彼はそう言い立ち上がった
『あの、』
私は疑問に持ったことを聞いた
『どうしたんですか?
家は!?』
:08/12/08 13:52 :W53H :Ut2bnqm2
#40 [幸]
『…家は……いや、
家出した。』
『はっ!?』
金も何も持たずに家出したの?
ただのバカでしょ
絶対嘘だなぁ。
『嘘じゃねーよ』
こいつ…私の気持ちを読んだの!?
なんでその言葉が出てくる
:08/12/08 13:55 :W53H :Ut2bnqm2
#41 [幸]
『…だとしたらあなた
相当頭悪いよね。』
なんてことを言ったんだ!!
私………
『もっとバカな話し
聞きたい?』
私は何も言わずに首だけ“うん”と答えた
『弟を殺した』
:08/12/08 13:57 :W53H :Ut2bnqm2
#42 [幸]
『えっ…』
何を言ってるの?
この人。。。
私はなんて反応したらいいか分からず
ただ驚くばかりだ。
だたそこには夏なのに
冷たい風が吹いていたことが
はっきりと覚えてる
:08/12/08 14:00 :W53H :Ut2bnqm2
#43 [幸]
“弟を殺した”
そう言った彼の顔は私をからかおうとしたのか
笑っていた。
しかし私には目だけが
泣いているように見えた
それよりも彼はそんなことをなぜ私に言ったのか?
私が彼を助けたから?
さすがにそのことは聞けず、
ただ吹いてきた冷たい風が当たるばかりだった
:08/12/08 14:03 :W53H :Ut2bnqm2
#44 [幸]
『…それで逃げてきたの?』
『自首したよ』
じゃーなんでここにいるんだよ!?
『…ムカついたから。』
彼はボソッと話した
コイツは一体何をしたかったの?
:08/12/08 14:07 :W53H :Ut2bnqm2
#45 [幸]
『お前…馬鹿だな。
人殺しの俺に握り飯
なんてあげちゃって。』
彼は笑いながらそう言った。
しかし私には泣いているようにしか見えなかった。
『お腹一杯になったから別にいいじゃん』
私はただそう言うしかなかった
:08/12/08 14:12 :W53H :Ut2bnqm2
#46 [幸]
『…何言ってんの?
人殺しをお腹満腹させたら……』
『私が助けたいと思ったから助けただけだ!』
暫く見つめ合った。
彼の顔が月の明かりで
見えてきた。
やっと彼の顔がはっきり見えた
:08/12/08 14:15 :W53H :Ut2bnqm2
#47 [幸]
彼の顔は薄汚れていた。
しかし目だけがギラギラ
と輝いていた。
『ねぇ、なんで弟を殺したの?』
普通は警察に通報するのに
私は違った。
“なぜ?”という疑問しかなかったからだ。
:08/12/08 14:19 :W53H :Ut2bnqm2
#48 [幸]
『あんたに言って何になるんだ?』
『聞いちゃダメ?』
『あんた面白いね』
『答えてくれないの?』
彼は急に大人しくなった
:08/12/08 14:21 :W53H :Ut2bnqm2
#49 [幸]
しかし暫くすると
『だから、あんたに言って
何かいいことあんのか
って聞いてるの』
彼は少し面倒くさそうに聞いた。
『あなたは何をしてもらいたいの?』
『……てめぇで考えろ』
知るかよ
:08/12/08 14:24 :W53H :Ut2bnqm2
#50 [幸]
『お前…その制服から
すればK高校だろ?』
いきなり彼が言ってきた
『……で?』
『頭いいんだな。
勿論T大学を目指してるの?』
淡々と話してくる。
私は一つひとつの質問に鮮明に答えた
:08/12/09 18:02 :W53H :GBaDNQzs
#51 [幸]
まず、その質問に対しては
首を頷くだけだった
しかし、次の質問には
思わず口が止まってしまった。
『T大学に行ってさぁ
何になるの?』
『え………』
:08/12/09 18:04 :W53H :GBaDNQzs
#52 [幸]
何になる……?
私は何になりたいの?
わからない。
私はただ、母さんの気持ち
に答えるだけだった。
彼の質問されて
初めて気付いた。
私はなぜT大学を目指してるのか?
:08/12/09 18:07 :W53H :GBaDNQzs
#53 [幸]
『なんでだろう…』
私はそう呟いた。
さっきまでギラギラしてた彼の目だったが
今はとても優しい目をしている。
『…わからねーなら、
なんのために必死に高校で勉強して
T大学を目指してるんだよ
金の無駄じゃん!?』
:08/12/09 18:10 :W53H :GBaDNQzs
#54 [幸]
無駄………?
今まで必死に勉強してきたことが
無駄ってこと?
なんで?
『私は…母さんのため
に今まで必死に勉強してきたの
それなのに無駄って何よ…?』
悔しさがこみ上げてきた
今まで遊ぶのも我慢してた
それだから中学の時は
友達があまりいなかった
:08/12/09 18:13 :W53H :GBaDNQzs
#55 [幸]
『母さんのため…か…
お前もT大学に行きたいの?』
何なの!?この男。
『い……行きたいよ』
『行ってどうするの!?
何を勉強するの?
まさか大学に行くのに
それさえわからないの?』
:08/12/09 18:16 :W53H :GBaDNQzs
#56 [幸]
『五月蝿い!!
あなたこそ、弟を殺して
何をしたかったの!?』
はぁはぁと、息つがいが荒くなった。
彼は暫く黙っていたが
ようやく口を開いた。
:08/12/09 18:18 :W53H :GBaDNQzs
#57 [幸]
『俺も…母さんのため』
何言ってんの?
コイツ………
彼は驚いている私の顔を見て
フッと鼻で笑い、話を続けた。
『俺の弟、障害を持ってるんだ。
:08/12/09 18:20 :W53H :GBaDNQzs
#58 [幸]
生まれつきの障害で、
自閉症って言うんだ。
自閉症って知ってる?』
私は首を横に振った。
障害を持ってる人なんて
私の周りにはいないので
会ったことがなかった
:08/12/09 18:23 :W53H :GBaDNQzs
#59 [幸]
『自閉症は人それぞれ
なんだけど、すごく
こだわりが強いんだ。
怒ることとか、
自分の感情をコントロールできないんだ。』
ゆっくり話しだす彼の顔は
どこか寂しそうな顔をしてた。
私はその顔に強く心を打たれた
それと同時に“障害ってなんだろう”
という疑問が生じた。
:08/12/09 18:27 :W53H :GBaDNQzs
#60 [幸]
『例えば…いや、これは弟の場合だけど
弟は自分がうまくいかないとき
すごく暴れるんだ。
家の中とか、メチャクチャにして
泣いて暴れ出し、
母さんが怒るとさらに
酷くなり…
母さんは次第にアルコールを頼るようになった
父親は障害のことを理解
してくれなくて、
いつも喧嘩ばかりしてたよ』
:08/12/09 18:40 :W53H :GBaDNQzs
#61 [幸]
風がどんどん冷たくなってきた
私は先程にも言ったが
障害のことがよくわからない
誰だって、自分の思い通りにならなかったら
イライラする。
暴れ出す時もある。
でも、その暴れ方が異常だから
困っているんだ。
そう想像するより仕方なかった。
:08/12/09 18:44 :W53H :GBaDNQzs
#62 [幸]
『俺…まぁ普通に母さん
が好きだよ。
でも弟によって母さん
がどんどん崩れてく…
だんだんやせ細ってきて
母さんもストレスで
胃がやられたり
それなのに父さんは
仕事ばかり……
まぁ、浮気をしてない
だけましだけど
俺も弟のせいでかなり苦しんだ
:08/12/09 18:47 :W53H :GBaDNQzs
#63 [幸]
クラスのやつに馬鹿にされ
すごく苦しかった。
弟をなるべく外には
出さなかった。
出したらまた、クラスのやつに
馬鹿にされるし。
でも弟は外が好きだから散歩とかしたがる
だから家の中で暴れる
弟のせいで…家族がおかしくなった…』
:08/12/09 18:51 :W53H :GBaDNQzs
#64 [幸]
母さんだったらどうする?
こんなことを言われたら
私は何もできなかった
なんて言ったらいいの?
私はただ彼の話に耳を傾けるしかできない
:08/12/09 18:53 :W53H :GBaDNQzs
#65 [幸]
『ある日……
母さんが弟を叱った
まぁ、いつものことなんだけど
それは異常だった。
その日は殺気を感じた……。
う゛っ…』
彼は突然、息が荒くなった
『大丈夫?
おい、しっかりして!!』
私は彼の背中をさすった
:08/12/09 18:55 :W53H :GBaDNQzs
#66 [ゆー]
すごい作品だ‥☆
ハマりました!
:08/12/09 22:15 :W52S :IS/kphik
#67 [幸]
>>66うわぁ
ぁりがとぅござぃますx
かなり励みになりました~
:08/12/09 23:28 :W53H :GBaDNQzs
#68 [幸]
『はぁ…はぁ……』
彼は凄く震えてた。
こちらが怖く感じる程
『き…救急車…』
私はそう言いながら携帯
を持った。
しかし
『救急車……だけは
やめてくれ…』
彼は私の携帯を掴み
そう言った。
:08/12/10 01:25 :W53H :Ji6xjSfs
#69 [幸]
『なんでよ!?
あなたの体は悲鳴をあげてるのよ!?』
『やめろって言ってんだろっっ!!』
ー…っっ
彼の怒鳴った顔はとても怖かった。
お化けと比べものにならないくらいに
私は彼の迫力に負け、
救急車を呼ぶのを止めた
:08/12/10 01:28 :W53H :Ji6xjSfs
#70 [幸]
しかし、こんな所で
苦しんでいる彼を見捨てることなどできない
とりあえず、公園の
ベンチの上に寝かせた
今まで冷たかった風が
この時だけ妙に生ぬるかった
夏らしい感じがした
:08/12/10 01:31 :W53H :Ji6xjSfs
#71 [幸]
『なぁ…』
彼が仰向けになりながら
細い声を出した
『俺をどうするつもりだ?』
『…警察の所に行かせる』
私にはそれしかできない
:08/12/10 14:02 :W53H :Ji6xjSfs
#72 [幸]
『…行きたくない…』
彼の声は子どものような声だった
多少つっぱりな口調の方がまだましだった
そのような声を聞かされると
すごく耳の奥まで滲みてくる。
:08/12/11 02:19 :W53H :XQUbQhts
#73 [幸]
しかし相手は殺人犯
そんなことを言ってはいられない
『なんで?』
その代わり理由を聞きたかった
彼はつぶらな瞳で私を見、
弱々しく言った。
:08/12/11 02:21 :W53H :XQUbQhts
#74 [幸]
『俺の話、聞いてくれねーし
信じてもくれない。
しょせん警察は殺人犯となったら
そういう態度を取る奴らばっかだ』
その弱々しい声の裏には
憎しみも含んでいたように聞こえた
『じゃあ、こうしよう
私が警察の人に伝えてあげる
』
私はわざと元気な声で言った
もう、彼のその弱々しい声を
聞きたくなかったからだ
:08/12/11 02:26 :W53H :XQUbQhts
#75 [幸]
『何やってんだ?』
ザッザッと足音が近づいてくる
誰だろう?
私はそれしか思わなかったが
彼は驚いた顔をしていた
近づいてくる度にだんだん顔が見えてくる
:08/12/11 02:29 :W53H :XQUbQhts
#76 [幸]
『あっ……お前…』
その言葉を聞いてやっと分かった
警察の人だ。
彼は逃げようとためらったのか、
足がピクッと動いた。
しかし諦めたかのように
警察の方へゆっくり足を動かした
『例の男性、発見しました』
:08/12/11 02:31 :W53H :XQUbQhts
#77 [幸]
その警察は無線機でそう言った。
『この方をどうするんですか?』
私は彼の前に立ち、
そう聞いた。
『君はその子と、どういう関係なの?』
と、逆に聞かれた
:08/12/11 02:33 :W53H :XQUbQhts
#78 [幸]
『なんでもありません』
彼は私を手でどかし
そう言った。
そして警察の人がまた連絡を取ってる間に
『お礼はちゃんと言う
だが、これ以上つっこむな』
そう私に言い
警察の人と一緒にゆっくりと
闇の中へ消えていった。
:08/12/12 15:25 :W53H :HRrnrFEE
#79 [幸]
私は彼の言う通り
それ以上何も言わず
彼が警察の人と一緒に
闇の中へ消えていった
後ろ姿をただ見ていた。
私は何とも言いようのない思いで
しぶしぶと家に向かった
:08/12/12 18:46 :W53H :HRrnrFEE
#80 [幸]
家に着いて風呂へ入った。
その後はテレビを見ながら
勉強した。
今日のこの時間だけ
みたいのがあるからだ
:08/12/12 18:47 :W53H :HRrnrFEE
#81 [幸]
好きなドラマが始まった
最初は勉強しながら
見ていたが、やはり
いい場面になると、
どうしても見入ってしまう
好きなドラマも終わり
テレビを消そうとしたが
映っていたニュースに
目が止まった
:08/12/12 19:23 :W53H :HRrnrFEE
#82 [幸]
‘えー障害者の子どもが一昨日殺害されました
犯人が電話で自首したんですが
調査してる最中に逃亡しました
しかし見つかり、今もまだ
聞き取り調査をしてる最中です’
これって……
彼のこと?
:08/12/13 09:13 :W53H :A19tsGtQ
#83 [幸]
‘その犯人はなんと
お兄ちゃんなんです
13才の未成年なので
名前は放送できません
なお、母親はショックで
精神科へ行っています’
13才!?
私はテレビを消し、
彼のことを思い出した
:08/12/13 09:16 :W53H :A19tsGtQ
#84 [幸]
まだ少年じゃない…
同情しているのか、
涙がでてきた。
最初に会った彼のあの
ギラギラした目が、
ずうっと目に焼き付いていた
少年のくせにあんな目
をして…
もっと、少年らしい人生を送りなさいよ
私は何度も心の中で叫んだ
:08/12/13 09:20 :W53H :A19tsGtQ
#85 [幸]
『ただいま』
父さんが帰ってきた
私は涙を拭いて父さんに
ご飯を食べさせた
翌日、私は先生の中でも
親しみがある先生に
“自閉症”って知ってますかと聞いた
:08/12/13 09:22 :W53H :A19tsGtQ
#86 [幸]
先生は少し困った顔をしていた
『昨日のニュースのことかい?』
私は先生を見ながらコクッと頷いた
『まぁ、ドラマでやってたから
知ってるけど、鮎川は
そんなことを知って
どうするの?』
先生は優しく聞いた
私は昨日のことを全て話した
:08/12/13 09:25 :W53H :A19tsGtQ
#87 [幸]
『そんなことがあったのか…
で、鮎川はそいつをどうしたい?』
『えっ…
いや、その……』
私は昨日泣いた時
心の中から感じたことを口にした
『助けてあげたい…』
先生は初めは驚いていたが
また優しくなった
:08/12/13 09:28 :W53H :A19tsGtQ
#88 [幸]
私はその顔を見たとたんに
思ったことをすべて言った。
『なぜ、13才の少年が
あんなに苦しい思いを
しなきゃいけないのか
私にはわかりません
彼が悪くないのに…
同級生にイジメられ、
大好きな母親も壊れていき
なぜ今まで彼を助けてくれる人がいなかったのかと思うと
同情なのか、涙が出てくるんです』
:08/12/13 09:32 :W53H :A19tsGtQ
#89 [幸]
先生は頷きながら聞いてくれた
そして先生がこう言った。
『日本国憲法で、生存権がある
鮎川なら知ってるよな
みんな等しく生きる権利があるんだよ
でも、この事件を聞くと
そんな権利があるとは思えない。』
『先生…それでも日本は
外国と比べれば公共施設が立派です』
:08/12/13 09:37 :W53H :A19tsGtQ
#90 [幸]
弱々しく私は答えた
しかし、先生は少し怒った口調で
『どんなに公共施設が
よくても、周りの人が
助けようと思わなければならない
例え公共施設がなくても
そういう気持ちがあれば障害者にとっての生存権は成り立つじゃないかな』
私は先生の言葉に強く胸に打たれた
:08/12/13 09:40 :W53H :A19tsGtQ
#91 [幸]
鐘が鳴った。
私は先生にお礼を言い
教室に戻った
そして、授業が始まった
:08/12/13 09:43 :W53H :A19tsGtQ
#92 [幸]
私は授業に集中できなかった
ただ、彼は今どうしてるのかと
ひたすら思ってるだけだった。
今の私には彼の存在が大きかった
『おい、鮎川。
鮎川!!』
ちなみにシャーペンで
つつかれ
やっと私は授業にを受けてる
ことに気づいた
:08/12/13 09:46 :W53H :A19tsGtQ
#93 [幸]
『はいっ!』
私は冷や汗が出てくるほど
仰天した
今の私にはありえないことだったからだ
『ボーっとするな』
『すみません』
:08/12/13 09:47 :W53H :A19tsGtQ
#94 [幸]
授業が終わりLHRの時間になった
その後は普段と変わらず、
学校に出て家に帰って家事をした
:08/12/13 10:00 :W53H :A19tsGtQ
#95 [幸]
その後の私はいつもと変わらなかった。
しかし、授業が暇になる度に
彼のことを思っていた
そして“なんのために勉強をするのか”
私はずうっと考えた
この答えをだすのは非常に難しい。
数学よりも難しい。
なぜ解けないのか
わからなかった
:08/12/13 10:03 :W53H :A19tsGtQ
#96 [えぬ◆ENU..Li./2]
おもしろー
:08/12/13 12:34 :P905i :2/FYIF3U
#97 [みーち]
おもろー
:08/12/13 12:50 :W61SH :VyCLgZVY
#98 [幸]
:08/12/13 18:05 :W53H :A19tsGtQ
#99 [幸]
ある日のこと
それは突然だった。
学校でちなみと昼食を取ってる時
校長室に呼ばれた
みんな物珍しそうに私を見た
校長室に呼ばれたことなど一度もない
なのになぜこの時期に?
:08/12/15 23:42 :W53H :Fgji37To
#100 [幸]
校長室に入ると警察の人が何人かいた
何か悪いことしてないよね…
私はそう自分に言いかけながら
ゆっくり空いてる席に座った
:08/12/16 20:51 :W53H :hiSBvrqI
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