人生の案内板
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#1 [幸]
『凄いわねぇ〜
またかなちゃん、学年
で1位なのねぇ。』

『本当〜。あんな子を
持つ親は羨ましいわ』




小さい頃から教育熱心だった母。
私はいつも母に誉められるために
頑張ってきた。

⏰:08/12/07 21:36 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#2 [幸]
『やっぱ無理だわ!!』

『鮎川に学力で勝てる奴いねーよな』




小、中とずうっとそう言われ続けてきた
全ては母さんのため

私は母さんが勉強しろ
って言われるから
今までしてきた。

⏰:08/12/07 21:42 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#3 [幸]
今、私は高校3年生
受験生だ。
しかし、今年の4月。
母さんが交通事故で亡くなった。



そのため父さんと2人暮らしだ
兄はいるが就職のため
兄は一人暮らしをして
いるので家にはめったに帰ってこない。

⏰:08/12/07 21:46 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#4 [幸]
父さんは母さんより
教育熱心ではない。
いたって普通の父親だ



それにしても家事は大変だ
今まで勉強しかしてなかったから
家事なんてしたことなかった。

ご飯を作って、皿洗って、洗濯物して、アイロンして…
おまけにそうじもして
正直それだけで疲れてしまい、
昔ほど勉強をしなくなった。

⏰:08/12/07 21:49 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#5 [幸]
今は7月。
母さんが亡くなって
私たち家族は放心状態だった。

口うるさい母さんだったが大好きだった

父さんが一番絶望的な
顔をしていた。


しかし今は皆、現実を受け止めようとしている

泣いたって母さんは帰ってこない

⏰:08/12/07 21:53 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#6 [幸]
だいぶ昔のように元気
になってきたが、
私の学力は下がる一方だ


『鮎川さん!!どうした!?
お前はT大学に行くんじゃなかったのか!?』

うぜー先生。
お前、私が今までどれほど
苦しんだと思っているんだ

⏰:08/12/07 21:56 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#7 [幸]
『かな!!』
『ちなみ。。』
『今はまだ大丈夫だょ
家事で大変だと思うけど
かなならまた成績伸びるよ。』



ちなみ……
本当に優しいなぁ
ちなみが唯一の私の友達

⏰:08/12/07 21:58 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#8 [幸]
私が帰るときにそう励ましてくれた。

『久しぶりにどう?』
ちなみにマックへ行こうと誘われたが
私は昨日は家事ばっかりだったので
勉強できなかったから
今日はその分図書館で
勉強すると言い、断った


今日、父さんは夜遅い
夜ご飯は一人で外食しよう。

⏰:08/12/07 22:20 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#9 [幸]
私はそう思い、図書館である程度勉強したら
レストランへ行くと予定した。




学校から徒歩15分。
それにしても…ここの図書館は
私と同じ高校の奴ら多いなぁ。
まぁ、しょうがないか…

⏰:08/12/07 22:22 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#10 [幸]
私の高校は毎年T大学
に向け、勉学に励んでいる

県内ではトップクラスだ
遊んでる奴なんていない



みんなこの図書館にきて勉強している。
私だって負けていられない!!
母さんのためにも
私はT大学に行くんだ!!

⏰:08/12/07 22:24 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#11 [幸]
カリカリ……
シャーペンが動いている音

この音……好きだなぁ
例え、答えが間違っていても
勉強してるっていう気になれる。

1時間半勉強したら
休憩として、10分間
本を読む。
これが私の勉強法だ

⏰:08/12/07 22:27 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#12 [幸]
その勉強法を何回か
繰り返してみると、時間
があっという間に過ぎていた。



気づけば7時半だ。
私はレストランへ向かった

⏰:08/12/07 22:29 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#13 [幸]
ガヤガヤ…
レストランで会話しながら
ご飯を食べている。
この声、好きだなぁ。

みんな栄養を楽しく取っているんだなぁ。



私はパスタを頼み、
待っている間、数学を解いていた。

⏰:08/12/07 22:31 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#14 [幸]
『鮎川さん?』
後ろから声がした。

振り返ってみると
そこにはあの小早川君がいた。



『こ…小早川君……』

なんでこんな所に…
ヤバい……
なんて話したらいいか…

⏰:08/12/07 22:33 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#15 [幸]
そう…私は小早川君の
こと好きっていうか
憧れています!!


“小早川きい”
彼は凄い人なんです
スポーツも凄くて
頭もいい。
おまけに私好みの顔

私の高校のアイドル的
存在。



…が、なぜここにいる?

⏰:08/12/07 22:39 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#16 [幸]
『鮎川一人?』
小早川君はそう聞くと
私の向かい側に座った



おいーっっ!!
なんで座るの!?
なんでそこに座るの!?

小早川君も一人で来た
のかなぁ。
まさかね。友達がいる
に決まってる
それか、彼女かもしれない

まぁそんなこと、どうでもいい!!
問題は“なぜ小早川君は
私の向かい側の席に座ったのか”だ。

⏰:08/12/07 22:43 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#17 [幸]
もしかして。
私が一人でいたから
寂しそうだなぁって
思って情けでそこに座ってくれてるかもしれない。

だとしたら私は寂しそうな行動したんだ。
ぁぁ、なんて私は馬鹿
なんだろ
どうして思ったことを
すぐ顔とかに出るのかなぁ。



『おーい。聞いてる!?』
『えっ?……
ああーうん。聞いてるよ』

⏰:08/12/07 22:46 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#18 [幸]
いけない。
私ったら。
本当にダメだわ。
慣れてない人から話し
かけられると深く考えちゃう
癖がある。



『ほらー鮎川は今一人なの?』

小早川君は優しい声で
そう聞いた。

『うん…』
私は小さな声でそう言った。

⏰:08/12/07 22:48 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#19 [幸]
『そうなんだ。
俺も一人なんだぁ。
よかったら一緒に食べない?』

えっ?
えぇぇぇ!?!
なんだろう。この気持ちは
後ろ振り向いたらお化けがいて
びっくりしてるくらい
心臓の動きが速い。
落ち着け
私。

相手はお化けじゃない
人間だ。

『うん。』
私は精一杯の笑顔で答えた。

⏰:08/12/07 22:52 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#20 [幸]
『よかったぁ。
ん?数学かぁ。』

小早川君は私のノート
を見てそう聞いた。

『うん。数学だけが
足ひっぱているからね』


『鮎川は数学嫌いなの!?』

『…うん。』
『へぇ。意外。数学の
偏差値いくつよ?』

⏰:08/12/07 22:54 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#21 [幸]
…ヤバい……
今…てか、さっきから
“鮎川”って呼び捨て
だよ。
呼び捨てで呼ばれるの好き。。。



『この前の模試は69
だったよ。』

『69で足ひっぱている
のかよ。』
『えっ…』
『負けたよ。俺65だったんだぁ。
やっぱ鮎川には勝てないなぁ。』

⏰:08/12/07 22:57 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#22 [幸]
『そんなことないよ
下がってきてるんだ
成績が…』

私は下を向いて話した


『でも鮎川なら余裕だろ
他の教科でカバーすれば』

『日本史が70前半だったんだぁ。
それで今日、先生に叱られちゃった。』

『鮎川が…信じられね
俺だって80越えたぞ
簡単だったじゃん。』

⏰:08/12/07 23:01 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#23 [幸]
私はその言葉を聞いて
ショックを受けた。



『まぁ、たまには
そういうこともあるよ』
小早川君はサラっと言い
ドリンクを飲んだ。


小早川君もメニューを
頼み、私と一緒に数学
の問題を解いていた

⏰:08/12/07 23:38 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#24 [幸]
そして料理が運ばれ
政治経済について話した
お互いに政経が得意
なのでその話しで大いに盛り上がった。



小早川君と話してると
日本が小さく見えた
小早川君は日本の経済
だけではなく、外国の
経済にも興味があるからだ。

正直、凄いなぁって
感心した。

⏰:08/12/07 23:41 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#25 [幸]
ご飯を食べ、小早川君
と別れた。



レストランから家まで徒歩30分。
結構遠いのだ。

……にしてもここは
こんなに暗かったっけ?

いつもは車が結構通るのに
今日だけ少なかった。
やけに不気味に感じた

⏰:08/12/07 23:44 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#26 [幸]
ザザっ…


『きゃっ!!』
…ーなんだよ。
風の音かよ

風の音でびっくりして
しまった。
私は開き直り、歩き始めた。



ドサッ!

⏰:08/12/07 23:45 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#27 [幸]
『いやぁぁぁ!!』
白い物体が突然目の前
に倒れてきた。

私は怖くなって、
その場から足が動けなかった

どうしよう。
警察に連絡しようかな
でも、襲われてないし
そんなことを考えていた


しかし
『はぁ…はぁ…』


白い物体の息が荒いのが分かった

⏰:08/12/07 23:56 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#28 [幸]
私は恐る恐る白い物体
に近づいてみた。



『大丈夫ですか?』
私はそう聞きながら
白い物体を触ろうとした
しかし、手を掴まれ
凄い目で私を見た

⏰:08/12/07 23:57 📱:W53H 🆔:5Pz.8V5A


#29 [幸]
怖くて怖くて…
声が出なかった。


なんて目……
人間ってこんな目もやればできるんだ



一気に手が震えだした



しばらくその白い物体
と見つめ合っていた

怖くて怖くて、
目が動かなかったからだ

⏰:08/12/08 00:01 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#30 [幸]
ぐるるるー…


お腹の音が鳴った
しかし私のお腹ではない
するとその白い物体は
私の手を放し
お腹を押さえた。



なぜだろう。
今思えばそう疑問を持つ
なぜあの時私は走って
おにぎりとジンジャエールを
買ったのだろうか。

⏰:08/12/08 00:28 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#31 [幸]
『はい。はぁ…はぁ』
私はおにぎりとジンジャエール
を白い物体にあげた。



その白い物体は暫く
私の顔を見ると、最初
はためらったが、一気に
袋の中からおにぎりを
取り出し下を向きながら食べた。

⏰:08/12/08 00:35 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#32 [幸]
『…うめぇ…さんきゅ』

その白い物体はそう言うと
おにぎりをぺろっと食べ
ジンジャエールをガブガブ飲んだ。



人って食べる時、
笑いながら食べるのだとばかり思っていた
しかし彼を見ると
そんなことは決してない
そう感じさせた

⏰:08/12/08 00:38 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#33 [幸]
『ふー』


満腹を感じたのか、
とても幸せそうな顔で
座っていた。



私は今まで人は話しながら食べると
ご飯がおいしくなると
思っていた。
また幸せだと感じると
思っていた。
でも彼は違う。

彼は生きるためにご飯を食べ
生きるために幸せを感じる
凄く、生きるのに一生懸命なのだ。

⏰:08/12/08 00:42 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#34 [幸]
『あの、もっと食べる?』


あのときの恐怖はどこ
にいってしまったのか
普通に話しをかけた。


『いや、平気だ。
わざわざすまなかった


っっー…』

⏰:08/12/08 00:46 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#35 [幸]
彼は足をおさえていた
私が彼の足を見てみると
そこには痛々しくすり傷があった。



私はいつも常備している
オロナインをカバンから出した。

⏰:08/12/08 00:48 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#36 [幸]
『先、水で洗って。』
私は彼にハンカチを
渡した。

『…いらねえよ
そんなもん。』



彼はそう言い、自分で
公園まで歩いて行った

ここから公園はさほど遠くない。
私も彼に付いて行った

⏰:08/12/08 00:50 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#37 [幸]
私は彼が足を洗うのを
終わるのを待っていた



今まで彼がしゃがんでいたから
小さく見えたせいか、
実際立ったら大きいんだなぁ


彼は足を洗うのが終わって
私の方へ来た。

⏰:08/12/08 01:02 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#38 [幸]
私はハンカチで膝から浸ってくる
水を拭いた。
そしてオロナインを塗った


『痛っ!』
『ご、ごめんなさい』

とは言いつつ塗り続けた。

⏰:08/12/08 01:04 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#39 [幸]
『もういい、ありがとう』



彼はそう言い立ち上がった


『あの、』
私は疑問に持ったことを聞いた
『どうしたんですか?
家は!?』

⏰:08/12/08 13:52 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#40 [幸]
『…家は……いや、
家出した。』

『はっ!?』
金も何も持たずに家出したの?
ただのバカでしょ
絶対嘘だなぁ。


『嘘じゃねーよ』

こいつ…私の気持ちを読んだの!?
なんでその言葉が出てくる

⏰:08/12/08 13:55 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#41 [幸]
『…だとしたらあなた
相当頭悪いよね。』
なんてことを言ったんだ!!
私………


『もっとバカな話し
聞きたい?』

私は何も言わずに首だけ“うん”と答えた


『弟を殺した』

⏰:08/12/08 13:57 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#42 [幸]
『えっ…』
何を言ってるの?
この人。。。


私はなんて反応したらいいか分からず
ただ驚くばかりだ。

だたそこには夏なのに
冷たい風が吹いていたことが
はっきりと覚えてる

⏰:08/12/08 14:00 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#43 [幸]
“弟を殺した”
そう言った彼の顔は私をからかおうとしたのか
笑っていた。
しかし私には目だけが
泣いているように見えた


それよりも彼はそんなことをなぜ私に言ったのか?
私が彼を助けたから?

さすがにそのことは聞けず、
ただ吹いてきた冷たい風が当たるばかりだった

⏰:08/12/08 14:03 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#44 [幸]
『…それで逃げてきたの?』



『自首したよ』


じゃーなんでここにいるんだよ!?
『…ムカついたから。』
彼はボソッと話した

コイツは一体何をしたかったの?

⏰:08/12/08 14:07 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#45 [幸]
『お前…馬鹿だな。
人殺しの俺に握り飯
なんてあげちゃって。』

彼は笑いながらそう言った。
しかし私には泣いているようにしか見えなかった。


『お腹一杯になったから別にいいじゃん』

私はただそう言うしかなかった

⏰:08/12/08 14:12 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#46 [幸]
『…何言ってんの?
人殺しをお腹満腹させたら……』


『私が助けたいと思ったから助けただけだ!』



暫く見つめ合った。
彼の顔が月の明かりで
見えてきた。

やっと彼の顔がはっきり見えた

⏰:08/12/08 14:15 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#47 [幸]
彼の顔は薄汚れていた。
しかし目だけがギラギラ
と輝いていた。




『ねぇ、なんで弟を殺したの?』

普通は警察に通報するのに
私は違った。
“なぜ?”という疑問しかなかったからだ。

⏰:08/12/08 14:19 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#48 [幸]
『あんたに言って何になるんだ?』

『聞いちゃダメ?』
『あんた面白いね』
『答えてくれないの?』



彼は急に大人しくなった

⏰:08/12/08 14:21 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#49 [幸]
しかし暫くすると
『だから、あんたに言って
何かいいことあんのか
って聞いてるの』


彼は少し面倒くさそうに聞いた。

『あなたは何をしてもらいたいの?』

『……てめぇで考えろ』



知るかよ

⏰:08/12/08 14:24 📱:W53H 🆔:Ut2bnqm2


#50 [幸]
『お前…その制服から
すればK高校だろ?』


いきなり彼が言ってきた


『……で?』
『頭いいんだな。
勿論T大学を目指してるの?』

淡々と話してくる。
私は一つひとつの質問に鮮明に答えた

⏰:08/12/09 18:02 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#51 [幸]
まず、その質問に対しては
首を頷くだけだった
しかし、次の質問には
思わず口が止まってしまった。


『T大学に行ってさぁ
何になるの?』
『え………』

⏰:08/12/09 18:04 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#52 [幸]
何になる……?



私は何になりたいの?

わからない。
私はただ、母さんの気持ち
に答えるだけだった。



彼の質問されて
初めて気付いた。

私はなぜT大学を目指してるのか?

⏰:08/12/09 18:07 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#53 [幸]
『なんでだろう…』

私はそう呟いた。
さっきまでギラギラしてた彼の目だったが
今はとても優しい目をしている。



『…わからねーなら、
なんのために必死に高校で勉強して
T大学を目指してるんだよ
金の無駄じゃん!?』

⏰:08/12/09 18:10 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#54 [幸]
無駄………?
今まで必死に勉強してきたことが
無駄ってこと?


なんで?



『私は…母さんのため
に今まで必死に勉強してきたの
それなのに無駄って何よ…?』

悔しさがこみ上げてきた
今まで遊ぶのも我慢してた
それだから中学の時は
友達があまりいなかった

⏰:08/12/09 18:13 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#55 [幸]
『母さんのため…か…
お前もT大学に行きたいの?』


何なの!?この男。



『い……行きたいよ』
『行ってどうするの!?
何を勉強するの?
まさか大学に行くのに
それさえわからないの?』

⏰:08/12/09 18:16 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#56 [幸]
『五月蝿い!!
あなたこそ、弟を殺して
何をしたかったの!?』


はぁはぁと、息つがいが荒くなった。

彼は暫く黙っていたが
ようやく口を開いた。

⏰:08/12/09 18:18 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#57 [幸]
『俺も…母さんのため』


何言ってんの?
コイツ………


彼は驚いている私の顔を見て
フッと鼻で笑い、話を続けた。



『俺の弟、障害を持ってるんだ。

⏰:08/12/09 18:20 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#58 [幸]
生まれつきの障害で、
自閉症って言うんだ。
自閉症って知ってる?』


私は首を横に振った。
障害を持ってる人なんて
私の周りにはいないので
会ったことがなかった

⏰:08/12/09 18:23 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#59 [幸]
『自閉症は人それぞれ
なんだけど、すごく
こだわりが強いんだ。
怒ることとか、
自分の感情をコントロールできないんだ。』


ゆっくり話しだす彼の顔は
どこか寂しそうな顔をしてた。
私はその顔に強く心を打たれた

それと同時に“障害ってなんだろう”
という疑問が生じた。

⏰:08/12/09 18:27 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#60 [幸]
『例えば…いや、これは弟の場合だけど
弟は自分がうまくいかないとき
すごく暴れるんだ。
家の中とか、メチャクチャにして
泣いて暴れ出し、
母さんが怒るとさらに
酷くなり…
母さんは次第にアルコールを頼るようになった


父親は障害のことを理解
してくれなくて、
いつも喧嘩ばかりしてたよ』

⏰:08/12/09 18:40 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#61 [幸]
風がどんどん冷たくなってきた

私は先程にも言ったが
障害のことがよくわからない

誰だって、自分の思い通りにならなかったら
イライラする。
暴れ出す時もある。
でも、その暴れ方が異常だから
困っているんだ。
そう想像するより仕方なかった。

⏰:08/12/09 18:44 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#62 [幸]
『俺…まぁ普通に母さん
が好きだよ。
でも弟によって母さん
がどんどん崩れてく…
だんだんやせ細ってきて
母さんもストレスで
胃がやられたり
それなのに父さんは
仕事ばかり……
まぁ、浮気をしてない
だけましだけど

俺も弟のせいでかなり苦しんだ

⏰:08/12/09 18:47 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#63 [幸]
クラスのやつに馬鹿にされ
すごく苦しかった。
弟をなるべく外には
出さなかった。
出したらまた、クラスのやつに
馬鹿にされるし。
でも弟は外が好きだから散歩とかしたがる
だから家の中で暴れる

弟のせいで…家族がおかしくなった…』

⏰:08/12/09 18:51 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#64 [幸]
母さんだったらどうする?
こんなことを言われたら
私は何もできなかった



なんて言ったらいいの?

私はただ彼の話に耳を傾けるしかできない

⏰:08/12/09 18:53 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#65 [幸]
『ある日……
母さんが弟を叱った
まぁ、いつものことなんだけど
それは異常だった。
その日は殺気を感じた……。

う゛っ…』



彼は突然、息が荒くなった

『大丈夫?
おい、しっかりして!!』
私は彼の背中をさすった

⏰:08/12/09 18:55 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#66 [ゆー]
すごい作品だ‥☆

ハマりました!

⏰:08/12/09 22:15 📱:W52S 🆔:IS/kphik


#67 [幸]
>>66
うわぁ



ぁりがとぅござぃますx
かなり励みになりました~

⏰:08/12/09 23:28 📱:W53H 🆔:GBaDNQzs


#68 [幸]
『はぁ…はぁ……』



彼は凄く震えてた。
こちらが怖く感じる程

『き…救急車…』
私はそう言いながら携帯
を持った。
しかし
『救急車……だけは
やめてくれ…』

彼は私の携帯を掴み
そう言った。

⏰:08/12/10 01:25 📱:W53H 🆔:Ji6xjSfs


#69 [幸]
『なんでよ!?
あなたの体は悲鳴をあげてるのよ!?』

『やめろって言ってんだろっっ!!』



ー…っっ
彼の怒鳴った顔はとても怖かった。

お化けと比べものにならないくらいに




私は彼の迫力に負け、
救急車を呼ぶのを止めた

⏰:08/12/10 01:28 📱:W53H 🆔:Ji6xjSfs


#70 [幸]
しかし、こんな所で
苦しんでいる彼を見捨てることなどできない


とりあえず、公園の
ベンチの上に寝かせた




今まで冷たかった風が
この時だけ妙に生ぬるかった

夏らしい感じがした

⏰:08/12/10 01:31 📱:W53H 🆔:Ji6xjSfs


#71 [幸]
『なぁ…』
彼が仰向けになりながら
細い声を出した


『俺をどうするつもりだ?』
『…警察の所に行かせる』

私にはそれしかできない

⏰:08/12/10 14:02 📱:W53H 🆔:Ji6xjSfs


#72 [幸]
『…行きたくない…』

彼の声は子どものような声だった
多少つっぱりな口調の方がまだましだった

そのような声を聞かされると
すごく耳の奥まで滲みてくる。

⏰:08/12/11 02:19 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#73 [幸]
しかし相手は殺人犯
そんなことを言ってはいられない


『なんで?』

その代わり理由を聞きたかった



彼はつぶらな瞳で私を見、
弱々しく言った。

⏰:08/12/11 02:21 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#74 [幸]
『俺の話、聞いてくれねーし
信じてもくれない。
しょせん警察は殺人犯となったら
そういう態度を取る奴らばっかだ』



その弱々しい声の裏には
憎しみも含んでいたように聞こえた


『じゃあ、こうしよう
私が警察の人に伝えてあげる


私はわざと元気な声で言った
もう、彼のその弱々しい声を
聞きたくなかったからだ

⏰:08/12/11 02:26 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#75 [幸]
『何やってんだ?』



ザッザッと足音が近づいてくる
誰だろう?
私はそれしか思わなかったが
彼は驚いた顔をしていた

近づいてくる度にだんだん顔が見えてくる

⏰:08/12/11 02:29 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#76 [幸]
『あっ……お前…』
その言葉を聞いてやっと分かった

警察の人だ。
彼は逃げようとためらったのか、
足がピクッと動いた。
しかし諦めたかのように
警察の方へゆっくり足を動かした



『例の男性、発見しました』

⏰:08/12/11 02:31 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#77 [幸]
その警察は無線機でそう言った。



『この方をどうするんですか?』
私は彼の前に立ち、
そう聞いた。

『君はその子と、どういう関係なの?』

と、逆に聞かれた

⏰:08/12/11 02:33 📱:W53H 🆔:XQUbQhts


#78 [幸]
『なんでもありません』
彼は私を手でどかし
そう言った。
そして警察の人がまた連絡を取ってる間に

『お礼はちゃんと言う
だが、これ以上つっこむな』


そう私に言い
警察の人と一緒にゆっくりと
闇の中へ消えていった。

⏰:08/12/12 15:25 📱:W53H 🆔:HRrnrFEE


#79 [幸]
私は彼の言う通り
それ以上何も言わず
彼が警察の人と一緒に
闇の中へ消えていった
後ろ姿をただ見ていた。



私は何とも言いようのない思いで
しぶしぶと家に向かった

⏰:08/12/12 18:46 📱:W53H 🆔:HRrnrFEE


#80 [幸]
家に着いて風呂へ入った。
その後はテレビを見ながら
勉強した。
今日のこの時間だけ
みたいのがあるからだ

⏰:08/12/12 18:47 📱:W53H 🆔:HRrnrFEE


#81 [幸]
好きなドラマが始まった
最初は勉強しながら
見ていたが、やはり
いい場面になると、
どうしても見入ってしまう



好きなドラマも終わり
テレビを消そうとしたが
映っていたニュースに
目が止まった

⏰:08/12/12 19:23 📱:W53H 🆔:HRrnrFEE


#82 [幸]
‘えー障害者の子どもが一昨日殺害されました

犯人が電話で自首したんですが
調査してる最中に逃亡しました
しかし見つかり、今もまだ
聞き取り調査をしてる最中です’



これって……
彼のこと?

⏰:08/12/13 09:13 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#83 [幸]
‘その犯人はなんと
お兄ちゃんなんです
13才の未成年なので
名前は放送できません
なお、母親はショックで
精神科へ行っています’


13才!?
私はテレビを消し、
彼のことを思い出した

⏰:08/12/13 09:16 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#84 [幸]
まだ少年じゃない…
同情しているのか、
涙がでてきた。
最初に会った彼のあの
ギラギラした目が、
ずうっと目に焼き付いていた


少年のくせにあんな目
をして…
もっと、少年らしい人生を送りなさいよ

私は何度も心の中で叫んだ

⏰:08/12/13 09:20 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#85 [幸]
『ただいま』
父さんが帰ってきた

私は涙を拭いて父さんに
ご飯を食べさせた




翌日、私は先生の中でも
親しみがある先生に
“自閉症”って知ってますかと聞いた

⏰:08/12/13 09:22 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#86 [幸]
先生は少し困った顔をしていた
『昨日のニュースのことかい?』

私は先生を見ながらコクッと頷いた


『まぁ、ドラマでやってたから
知ってるけど、鮎川は
そんなことを知って
どうするの?』


先生は優しく聞いた
私は昨日のことを全て話した

⏰:08/12/13 09:25 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#87 [幸]
『そんなことがあったのか…
で、鮎川はそいつをどうしたい?』

『えっ…
いや、その……』
私は昨日泣いた時
心の中から感じたことを口にした

『助けてあげたい…』


先生は初めは驚いていたが
また優しくなった

⏰:08/12/13 09:28 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#88 [幸]
私はその顔を見たとたんに
思ったことをすべて言った。

『なぜ、13才の少年が
あんなに苦しい思いを
しなきゃいけないのか
私にはわかりません
彼が悪くないのに…
同級生にイジメられ、
大好きな母親も壊れていき
なぜ今まで彼を助けてくれる人がいなかったのかと思うと
同情なのか、涙が出てくるんです』

⏰:08/12/13 09:32 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#89 [幸]
先生は頷きながら聞いてくれた
そして先生がこう言った。
『日本国憲法で、生存権がある
鮎川なら知ってるよな
みんな等しく生きる権利があるんだよ
でも、この事件を聞くと
そんな権利があるとは思えない。』

『先生…それでも日本は
外国と比べれば公共施設が立派です』

⏰:08/12/13 09:37 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#90 [幸]
弱々しく私は答えた
しかし、先生は少し怒った口調で

『どんなに公共施設が
よくても、周りの人が
助けようと思わなければならない
例え公共施設がなくても
そういう気持ちがあれば障害者にとっての生存権は成り立つじゃないかな』



私は先生の言葉に強く胸に打たれた

⏰:08/12/13 09:40 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#91 [幸]
鐘が鳴った。

私は先生にお礼を言い
教室に戻った



そして、授業が始まった

⏰:08/12/13 09:43 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#92 [幸]
私は授業に集中できなかった
ただ、彼は今どうしてるのかと
ひたすら思ってるだけだった。

今の私には彼の存在が大きかった



『おい、鮎川。
鮎川!!』

ちなみにシャーペンで
つつかれ
やっと私は授業にを受けてる
ことに気づいた

⏰:08/12/13 09:46 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#93 [幸]
『はいっ!』
私は冷や汗が出てくるほど
仰天した
今の私にはありえないことだったからだ


『ボーっとするな』
『すみません』

⏰:08/12/13 09:47 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#94 [幸]
授業が終わりLHRの時間になった


その後は普段と変わらず、
学校に出て家に帰って家事をした

⏰:08/12/13 10:00 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#95 [幸]
その後の私はいつもと変わらなかった。
しかし、授業が暇になる度に
彼のことを思っていた



そして“なんのために勉強をするのか”
私はずうっと考えた
この答えをだすのは非常に難しい。
数学よりも難しい。
なぜ解けないのか
わからなかった

⏰:08/12/13 10:03 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#96 [えぬ◆ENU..Li./2]
おもしろー

⏰:08/12/13 12:34 📱:P905i 🆔:2/FYIF3U


#97 [みーち]
おもろー

⏰:08/12/13 12:50 📱:W61SH 🆔:VyCLgZVY


#98 [幸]
>>96
>>97
ぁりがとぅござぃますx


これからも頑張らせていただきます。

⏰:08/12/13 18:05 📱:W53H 🆔:A19tsGtQ


#99 [幸]
ある日のこと
それは突然だった。
学校でちなみと昼食を取ってる時
校長室に呼ばれた


みんな物珍しそうに私を見た

校長室に呼ばれたことなど一度もない
なのになぜこの時期に?

⏰:08/12/15 23:42 📱:W53H 🆔:Fgji37To


#100 [幸]
校長室に入ると警察の人が何人かいた


何か悪いことしてないよね…
私はそう自分に言いかけながら
ゆっくり空いてる席に座った

⏰:08/12/16 20:51 📱:W53H 🆔:hiSBvrqI


#101 [幸]
『この人を知ってますよね?』


そう警察の人が言いながら
一枚の写真を出した。
その写真は可愛らしい笑顔の少年の写真だった


しかし、その少年に違和感を感じた

⏰:08/12/20 23:21 📱:W53H 🆔:fuNbPEIo


#102 [幸]
…どこかで見たことのある顔。

私はまじまじと見た。
すると警察の人が

『障害の持った弟を殺害
した兄貴の写真だよ』

と、不機嫌な顔して言った。



私はその警察の人を
不快に感じたままもう一回
その写真を見た

⏰:08/12/20 23:23 📱:W53H 🆔:fuNbPEIo


#103 [幸]
確かに、こういう顔していたな。
そう感じ、ゆっくり首を
縦に動かした。

⏰:08/12/20 23:24 📱:W53H 🆔:fuNbPEIo


#104 [幸]
『やはりあなたか。』

警察がそう呟くと
周りにいた先生が険しい顔をして、
話を聞いた

⏰:08/12/21 11:25 📱:W53H 🆔:4/aH5P5A


#105 [幸]
『あなたは殺人犯を
警察から逃がそうとした…』



驚いた。
なぜそのような話になるのか?
私はそんなつもりで
おにぎりをあげたんじゃない!!


しかし、心で叫ぶだけでは
相手には伝わらず。
警察の話はさらに続いてく。

⏰:08/12/21 11:53 📱:W53H 🆔:4/aH5P5A


#106 [幸]
『相手が殺人犯だと
分かりながらも
おなかすかせていたからといって
おにぎりを差し上げ…『違います。』



私は最後まで話を聞かずそう言った

その声は男よりも低く
恨みもこもっていた

⏰:08/12/21 11:57 📱:W53H 🆔:4/aH5P5A


#107 [幸]
はぁ、と警察はため息をした


そして
『じゃあなんで野郎に
飯をあげたんだぁ!?』
大きな声で怒鳴った。


なぜそんなに怒鳴るのか?
結局はあの子は自主したじゃないか

なんで私が怒られなきゃならないんだよ

⏰:08/12/22 15:04 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#108 [幸]
私は何も悪いことしていない


悔しい。
なんて悔しい。



『この子は優しい子
なんです。』

優しい声が聞こえた
この声は、私の親しみがある先生の声だ。

⏰:08/12/22 15:20 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#109 [ちきん]


凄く惹き付けられました…!どんな展開になるか凄く楽しみです。
頑張ってください(*´∇`*)

⏰:08/12/22 15:27 📱:P01A 🆔:5DxdqBxA


#110 [幸]
『この子は人殺しとか
関係なく、困ってる人
を見かけたら
助けてしまうんです』


……先生…
この声が私の憎しみにそまった心が
綺麗に流れた。

⏰:08/12/22 15:34 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#111 [幸]
>>109サン
ぁりがとうござぃますx
頑張らせて頂きます

⏰:08/12/22 15:35 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#112 [幸]
『そもそも、なぜあなた達は
この子を怒鳴るんですか?
この子はそんなに悪いことなど…』



気がつけば当たりが
暗くなっていた。
校長室の窓は小さいせいか
暗くなっていたなど
気づかなかった

⏰:08/12/22 15:40 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#113 [幸]
『………』
警察の人は何か言いたげな顔をしたが、
また不機嫌な顔に戻った



『今日の所は失礼します
しかし、またあなたに尋ねたいことがありますので
またご協力お願いします』

⏰:08/12/22 15:42 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#114 [幸]
そう言い、ドアを激しく閉めた。



何がしたかったの?
そんな疑問しかなかった
ほとんどの先生たちは呆れていた

⏰:08/12/22 15:46 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#115 [幸]
『お前は間違ってないよ』



私が一人で帰ろうとした時
最も親しみのある先生がそう言った

『なぜ……?』


私は小さな声で聞いた

⏰:08/12/22 15:48 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#116 [幸]
『お前この前あの少年を
助けたいって言ったよな?
なぜそう思った?』



先生は優しい顔で聞いた
私は下を向いていた顔を上げ
まじまじと先生の顔を見た

⏰:08/12/22 15:53 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#117 [幸]
先生は女みたいに高い声だ。
顔や体は男なのに。



『…分かりません
ただ、気付いたら
おにぎりを買ってたんです
気付いたらあの少年に
あげてたんです。
頭で何も考えてなかった
気付いたら、そんな行動をとってた。

私、何事も考えてから
行動しろ。と母から
言われていたのに
あの時だけ…
何も考えず……。』

⏰:08/12/22 15:59 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#118 [幸]
ゆっくりと話した。
先生は最後まで私の顔を見て
聞いてくれた



『それはね、あなたが
本当に守りたいと思ったからだよ』


『えっ!?
初めて出会ったのに!?』
『好きとか、嫌いとか関係なく、
ただ、その少年を守ってあげたいって、
強く思ったからだよ』

⏰:08/12/22 16:04 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#119 [幸]
私が……?
なんで?


『お前はそういう奴だからじゃん?』


先生はそう言い、私の頭を撫でた



そして私は先生と別れ
家に向かった。

⏰:08/12/22 20:38 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#120 [幸]
私は家に着き、家事をした。
そして夜ご飯の準備をし、

いただきます

と、手を合わせて挨拶をし、食べ始めた



ただいま

と父さんが帰ってきた

⏰:08/12/22 20:41 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#121 [幸]
私は学校であった事を
父さんに相談した


すると、父さんは
何かを思い出すように
語りだした



『お前の母さんはなぁ
そういう警察の人、
嫌いそうだなぁ。』

⏰:08/12/22 20:49 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#122 [幸]
『母さんが?』
『ああ、お前の母さんは
なんだろうな…正義感がある人だったよ

イジメとか見かけると
イジメられてる人を
助けようとする人だよ

でもさぁ、イジメって
人生に一度は必ず見かけるだろ?』

⏰:08/12/22 20:51 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#123 [幸]
私は黙って父さんの話
を聞いた


『母さんと同じ仕事場
でイジメにあってる子
がいたんだ。
特別仲は良くなかったが
嫌いではない人だったらしくてな

お前も知ってると思うけど
お母さん、頭よくないだろ。
だからその子がイジメられてることに気づかなかったんだ。』

⏰:08/12/22 20:55 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#124 [幸]
『それって、頭良い
悪い関係なくない!?』

『……お母さんは大学
まで進学してないだろ
昔は大学進学っていったら
たいしたもんだったんだよ

だから、お母さんは
イジメのことを知らなかった
自分を責めていた』


私はたまらない気持ちになった

⏰:08/12/22 20:57 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#125 [幸]
さらに、父さんは語り続ける

『その子は……自殺を
したんだ
まぁ、命には大事なかったが
その子は仕事を止めた』



母さん…
私は無性に母さんを抱きたかった

でも、その母さんは今はいない。

⏰:08/12/22 21:00 📱:W53H 🆔:CJ9uPbk2


#126 [幸]
『“私が…気づいてやれなかったからだよね
なんで私は馬鹿なんだろう
頭…悪すぎだよ”
って母さんが付き合っていた
俺にそう言った。
俺はイジメた奴が悪い
って言ったけど…

やっぱりそういう事に
気づく事は頭悪い奴
はそう簡単に気づかないと思う
って……

頭が良いなら、早く
その子の気持ちを察して
助けられる

だから…今まで教育熱心だったんだよ』

⏰:08/12/23 12:58 📱:W53H 🆔:qB6pGs66


#127 [幸]
『お前は母さん似だな
そういう性格がそっくりだ』


父さんはそう言うと、
ビールをグッと飲んだ
仕事の終わりにはビールが似合う
と笑い、私の顔を見た

『お前も、優しい人間になったな』

と、父さんが私の頭を撫でた

⏰:08/12/23 23:53 📱:W53H 🆔:qB6pGs66


#128 [幸]
『父さん…』
『なんだ?』
『私、弱い人っていうか…
人の気持ちを察してあげられる
人間になるっっ』


きっと
“何になりたい?”
と、聞かれたらこう答えるだろう
私のこの気持ちは誰にも負けない

⏰:08/12/23 23:55 📱:W53H 🆔:qB6pGs66


#129 [幸]
『いいことじゃないか』


父さんはそう呟き、
また私の頭を撫でた

⏰:08/12/23 23:56 📱:W53H 🆔:qB6pGs66


#130 [幸]
翌日。
学校に行く時だった。
駅に募金をしている大人がいる


『盲導犬の〜……
目の不自由な方のために……

ご協力お願いします』


途切れ途切れであったが
私はすぐに反応し、
募金をしている方へ目を向けた。

⏰:08/12/23 23:59 📱:W53H 🆔:qB6pGs66


#131 [幸]
お金を入れる箱に
“障害者”と書かれてある
文字に目が入った。



気づかなかった…
こんな近くに障害があるなんて

そうだよ…
普通の顔をしてる障害者
だっているんだよ。
健常者と全く変わらない

⏰:08/12/24 00:02 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#132 [幸]
私は障害者と健常者は
顔が違うと思っていた


だってダウン症とか、
そうでしょ?
本で調べたんだから。


しかし、身体障害者とか
目、耳の不自由な人は
一見、健常者と変わらないんだよ

⏰:08/12/24 00:05 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#133 [幸]
こんなことを言ったら
差別になるかもしれないけど


この人は健常者と少々
違うと区別できる人は
健常者もその人に対して
優しく接しなくてはいけない
だって障害を持っているんだもの。
色んな面で不自由を感じているに違いない
だったらその気持ちを察して、
接した方がいいでしょ?

⏰:08/12/24 00:08 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#134 [幸]
私はボ〜ッと立っていた
すると、
『あなた、何してるの?
どいてあげなさいよ』


と、募金をしている大人に言われた
“何をしてる”って…?
私は疑問に思ったまま
言われた通りどいた。

⏰:08/12/24 00:11 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#135 [幸]
『いや〜ありがとね』

後ろからおじさんの声がした
おじさんは杖を持っていた
そして、その杖を黄色のブロックに当てながら
歩いて行った。


『すみません』
私はそう言った。
するとおじさんは後ろを振り返り
私に可愛い顔でニコッと笑ってくれた

⏰:08/12/24 00:13 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#136 [幸]
あのおじさん、
“ありがとね”って言ったよね?

なぜ?
私が悪いのに。
この黄色のブロックは
唯一目の不自由な人が
歩ける限られた範囲内
なのに。
そこを邪魔をしたのは私
なぜあのおじさんは
わざわざお礼を言ったのか?

⏰:08/12/24 00:16 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#137 [幸]
身近にいないと思っていた
障害者のことを。
でも違う。
そんなことない
私が視界に入れさせなかっただけだ



身近にいるのに、
私は……



一気に暗い気持ちになった
暗い気持ちのまま
学校へ向かった

⏰:08/12/24 00:19 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#138 [幸]
『かな〜!』

教室に着くと、ちなみ
が走ってきた


『どうしたの?』
『この前の判定Aだったの』

ちなみが嬉しそうにそう言った。


『まじで?よかったじゃん!
ちなみは何学部だっけ?』

⏰:08/12/24 00:23 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#139 [幸]
『かなが目指してる学部
より低いけど医学部だよ』


低いって……(笑)
まぁT大は医学部は他の学部より低い


『ちなみってさぁ、
夢とかあるの?』
私は興味津々で聞いた

⏰:08/12/24 00:25 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#140 [幸]
『うん、看護婦さん
私ナイチンゲール
みたいな、看護婦さん
になりたいんだぁ
勉強もして、より早く
治るように治療してあげたいの』



嬉しそうに言うちなみを見て
羨ましいと思った

“夢”があるんだぁ。
だからT大を目指してるんだぁ。


私は?

⏰:08/12/24 00:27 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#141 [幸]
私は…
なりたい職業なんてない。
どうすればいいの?
どうやって決めるの?


そう考える度に
あの少年に言われた事
が脳裏に浮かぶ。



しかし鐘が鳴った途端に
私は、はっと我に返り
席に座った

⏰:08/12/24 20:35 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#142 [幸]
『もうすぐ夏休みだ!
でも、夏こそ勉強だっ。
みんな!!志望校に向いて
効率のいい勉強をするんだぞ』



伊勢のいい担任の声。

その声がとても胸ぐそ悪くて
しょうがなかった。

⏰:08/12/24 20:40 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#143 [幸]
私は、T大学に入るため
この高校に来た。
じゃあ、なぜT大学に行くのか?



…お母さんが…
違う違う!!
私が入りたいと思ったから。

いつそんなこと思った?
いつ…
母さんに言われた時?


違う!!なぜ母さんが出てくる!!

⏰:08/12/24 20:43 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#144 [幸]
…頭がおかしくなりそうだ。



『鮎川!?』

その声にはっと気づく。
どうやら私はまた1人の世界に入ってたようだ。

『えっ?なあに!?』

⏰:08/12/24 20:45 📱:W53H 🆔:5tzWFXiw


#145 [我輩は匿名である]
今一気に読みました
頑張って下さい!

⏰:08/12/24 22:12 📱:D904i 🆔:☆☆☆


#146 [幸]
>>145
本当にぁりがとぅござぃますx


とても励みになります

これからも頑張らせていただきます

⏰:08/12/26 17:25 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#147 [幸]
『何回呼んでも無反応
だったから。』


そう言ったのはあの
小早川きいだった。


『こっ…小早川君!?』
私は自分で分かるくらいに
あたふたしていた。

⏰:08/12/26 17:57 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#148 [幸]
『鮎川、国語得意だったろ?
今日さぁ、またあの
レストランでやらない?』


小早川君はそう誘い
座ってる私の椅子に左手を、
私の机の上に右手を置いた。


さらに私の目線に合わせる
ように、顔を近づけた。

⏰:08/12/26 18:01 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#149 [幸]
か…顔近すぎ……
なんでそんなに近づくの?
私そんなに焦点づれてたのかな?


どうしよ〜
キスするときって、
こんなに近くに相手の顔
が見れるの!?
ってなんでキスっていう言葉が!?

別に小早川君とキス
しないから!!
それより、レストランって…
どうしよ〜。

⏰:08/12/26 18:04 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#150 [幸]
考え込んでる時、
ある声が聞こえた。


『鮎川さん、器量がよくないのに
小早川君と二人きりで
勉強とかひくわ〜。』

『本当。勉強で見返してやる!!』



もろ聞こえてんだよ!!
てめーら嫉妬か!?
コラ!!なめんなよ

心の中でそう叫んだ

⏰:08/12/26 18:07 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#151 [幸]
『鮎川?どうするの?』

小早川君の声に気づき

『ごめん、今日は無理なんだ』

と、とっさに言ってしまった



何言ってんだ?私。
なんで素直になれないの!?
思っていたことと、
全く逆の言葉が出てくる

⏰:08/12/26 18:09 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#152 [幸]
『そっか、じゃあ
今度は鮎川が都合のいい日で』


『……うん!!』

精一杯の笑顔で返事した。
すると小早川君も笑顔で返してくれた。

そして小早川君は
教室を去った。


キャーと叫びたくなる
ような笑顔だった。
あの笑顔は反則だよ。

⏰:08/12/26 18:12 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#153 [幸]
『かなぁ〜』
ちなみが走ってきた。



『なによ?』
私は少しだるそうにして聞いた

『ひど!!小早川君には
あんなに優しい声で話してたのに』
『そ…そんなことないよ。』


きっと。

⏰:08/12/26 18:47 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#154 [幸]
『かな、小早川君のこと…?』

ちなみはニヤニヤしながら聞いてきた


『…知らん!!』
『自分の気持ち、
伝えたら〜?』
『ちなみはどうなん?』

するとちなみは、
『私は無理みたい。』

⏰:08/12/26 18:49 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#155 [幸]
笑顔でそう言ったが
声は寂しそうだった。
無性に悲しかった。




私はちなみに、
家事が終わったら
レストランに行こうと誘った。

今度は嬉しそうな声で
返事した。

⏰:08/12/26 18:53 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#156 [幸]
私は家事を終え、
レストランに着いた。
約束の時間の5分前に
椅子に座った。


『かな〜。』
ちなみの声が聞こえた。
私たちは暫く、好きな
アイドルの話で盛り上がった。


そして私はドリアを、
ちなみはパスタを注文した。

⏰:08/12/26 18:58 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#157 [幸]
『ちなみ、何かあったの?』


私は注文してすぐそう聞いた。
ちなみは少し深呼吸をし話し出した。


『陸って知ってるよね?』

⏰:08/12/26 23:58 📱:W53H 🆔:5QU1jOMg


#158 [幸]
陸…。
ちなみの彼氏。
ちなみと同じ中学で、
今は男子校に通っている。


『陸君がどうかしたの?』

『べージェクト病なの』

ちなみはとても深刻そう
に言った。
しかし、私はさっぱり
わからなかった。

⏰:08/12/27 00:01 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#159 [幸]
『目が…見えなくなっちゃうんだって。
別れようって言われちゃったぁ。』


ちなみの目には、たくさん
涙がたまっていた。
きっと、私の顔が見れないくらいに。

⏰:08/12/27 00:55 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#160 [幸]
『目が見えなくても、
私は陸を支えてあげたい…
別れたくない…』



たまっていた涙を
一気に流した。
ちなみは泣きながら、
苦しんでいたと思う。

この苦しみを私は
とうてい味わうことなどできない。

私はそこまで恋に溺れたことがないからだ。

⏰:08/12/27 01:27 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#161 [幸]
『陸の目になってあげたいのに。』


ちなみは何度もそう言った。
その涙が、何よりも
その思いが伝わってくる

⏰:08/12/27 01:28 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#162 [幸]
『ちなみならできるよ。
優しいじゃん?
ちなみは。』


『…ありがと……』



本気で思った。
優しさがあれば、相手にもその
優しさが伝わり、支え
になることができるって。

でも、実際は違う。
そんなこと、ただの
綺麗事だ。
そう分かったのは、
後の話になるが。

⏰:08/12/27 01:34 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#163 [幸]
夏祭り。
今日は年に1回の夏祭り。


勉強ばかりなので、
たまには羽でも伸ばすかぁ!!

そう思い、
中学の友達と
地元の夏祭りに行った。

⏰:08/12/27 01:37 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#164 [幸]
あれから、警察も来ない。
彼は一体、どうなったのだろう。



今は以前ほど、そこまで
疑問に思わなくなってきた。

⏰:08/12/27 01:39 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#165 [我輩は匿名である]
今日始めから一気に読みました。
この小説すっごく好きになりました
頑張って(・ω・´*)

⏰:08/12/27 01:48 📱:SH905i 🆔:IVh/BtIs


#166 [幸]
>>165
うわ
好きになったなんて…
めっちゃ嬉しいです
ぁりがとぅござぃますx

⏰:08/12/27 10:01 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#167 [幸]
『かな〜あんず!!』

中学の唯一の友達、
あきがあんずを食べたいと言った。



『食べる!』
私はそう言い、
お金を出そうとした。

⏰:08/12/27 10:03 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#168 [幸]
しかし、人ごみのせいで
400円を落としてしまった。



『やば…』
私はしゃがんでお金を
拾った。

すると、大きい影が
こちらに近づいてきた。

⏰:08/12/27 10:06 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#169 [幸]
誰……?


『はい、これで400円だろ。』

そう言って100円をくれた。



『小早川君!?』

大声で叫んでしまった。

⏰:08/12/27 10:08 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#170 [幸]
『おう、何?鮎川1人?』


小早川君の格好は上は
ワイシャツ、下は黒の
スーツっぽいズボンを
はいていた。
シンプルな格好がとても
似合っていた。


…かっこいい……

⏰:08/12/27 10:10 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#171 [幸]
『鮎川?』


はっ!!
いけない、また…
いや、今度は見とれてただけ!!



『地元の友達と…』
私は目を反らし、そう言った。

⏰:08/12/27 10:12 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#172 [幸]
『そうなんだ。』

小早川君はニコニコ笑っていた。

なんでそんなに笑うのだろう。
あなたの笑顔を見ると
心が癒される…



『かな〜』

あきの声だ。

⏰:08/12/27 10:13 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#173 [幸]
『あき…』

の後ろに男性もこっちに来た。



『つばさ!?』
『きい?きいじゃないか』



…え〜と、お二人さん
は知り合いなのかな?

⏰:08/12/27 10:15 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#174 [幸]
『鮎川、こいつ俺と同じ中学の
つばさ。』


小早川君が丁寧に教えてくれた。

『そして私と同じ高校』

あきも丁寧に教えてくれた。



なんか、凄い出会い方。
私は心の中で笑った。

⏰:08/12/27 10:18 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#175 [幸]
『なあ、4人でまわらない?』


つばさ君がそう言った。
賛成と、いうことになったので
4人でまわることになった。



歩いていると、あきの
顔が赤くなっている事
に気づいた。

⏰:08/12/27 10:21 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#176 [幸]
は〜ん。
なるほど……


『ねえ、ごめん!あき
私トイレ行きたくなったの。
一緒についてくれない?』


私はあきの前に立ち、
そう言った。

あきはいいよと言ってくれたので
小早川君たちは時計の
下で待っててくれた。

⏰:08/12/27 10:24 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#177 [幸]
私とあきの2人きり。
私はあきに問いただした。


『つばさ君のこと…』 『うん…』



やっぱり。


『かな、まさかそのために?』

⏰:08/12/27 10:25 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#178 [幸]
『えへ』
あきの顔がみるみる赤く
なった。



かわいいやつ。




私たちは小早川君たち
の所へ戻り、
再び歩き始めた。

⏰:08/12/27 10:27 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#179 [幸]
……
どのタイミングで上手く
2人きりにさせるか…



私は結構悩んでた。
すると、突然右手を引っ張られた。



『あれ?かな?』
『きいもいねーし』

⏰:08/12/27 10:30 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#180 [幸]
2人の声が遠く聞こえた。


一方、私はまだ引っ張られていた

人ごみをさけ、誰もいない道に出た。



『鮎川…』

小早川君!?

⏰:08/12/27 10:32 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#181 [幸]
小早川君、ナイスだよ。
そう思った。



『悪いな、突然こんなことして。』

『ううん…』



暫く沈黙が続いた。

⏰:08/12/27 10:34 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#182 [幸]
『つばさのやつ、
鮎川の友達のこと…』

『え?まじ!?あきもなんだよ』



うわー両思いだったのかあ!!
小早川君と笑いあった。
彼の笑顔…好きだなぁ。

⏰:08/12/27 10:36 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#183 [幸]
って、何思ってんだ!?
私……。



『こんな俺だけど、
一緒にまわってくれる?』

『うん。』


嬉しいよ。小早川君。
こんなって言う、顕著
な所がもういい!!

⏰:08/12/27 10:38 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#184 [幸]
あなたのことが

好きです。



心の中でそう呟いた。





『ただいま〜』

って言っても誰もいない。

⏰:08/12/27 10:40 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#185 [幸]
夏祭りも終わり、
私は途中まで小早川君
に送ってもらった。


やばかったね。
いや、本当に。
私は部屋着に着替え
ベッドの上で携帯を持った。

⏰:08/12/27 10:42 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#186 [幸]
メール受信の音。
きたぁぁぁ!!


…ん?
あきだ。


私はあきからのメール
を読んだ。
最初は、途中で2人とも消える
からびっくりした
だって!!かわいい。

⏰:08/12/27 10:44 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#187 [幸]
そして最後の行には、
付き合ったっていう文字が…


うわぁ!!おめでとう!!




暫くあきとメールをしてた。

その内、寝てしまった。

⏰:08/12/27 10:46 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#188 [幸]
翌日。


父さんが電話だぞ。
と起こした。


『まじ!?誰から?』



私は目をこすりながら
聞いた。
父さんは低い声で

『警察から』


と言った。

⏰:08/12/27 10:47 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#189 [幸]
あの少年のことか。
私はそう思い、
電話を代わった。


『もしもし?』
『鮎川かなさんですか?』


『はい。』
『当時の様子を伺いたいので
〇〇警察署まで来て頂けません?』

⏰:08/12/27 14:36 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#190 [幸]
私はしぶしぶ返事をし、
洋服に着替えた。



カレンダーをふと目に
入った。
今日は日曜日。
だから父さんがいたんだぁ。

⏰:08/12/27 22:40 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#191 [幸]
『あの少年のことか?』

父さんが靴ひもを結ぶ
私にそう聞いた。



『うん…』
『お前の気持ちを伝えろ。
お前は母さんと違って
頭がいい。
相手を納得できるような
説明しろよ。』

⏰:08/12/27 22:42 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#192 [幸]
『わかった!!』


私は笑顔で家を出た。




警察は、あの少年をどうするつもりなのか?


そういえば、あれ以来
ニュースとか報道されてない。

⏰:08/12/27 22:44 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#193 [幸]
『鮎川さんですね?』


警察署に着いた。
私は警察の人たちと
一つの小さな部屋で
話した。


『あなたは、どこで
会ったんですか?』

『〇〇公園の近くの
路地裏です。』

私はあの日のことを
1から10まで話した。

⏰:08/12/27 22:47 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#194 [幸]
警察の人は、時々頷きながら
聞いてくれた。
この人は、きっと話を
ちゃんと理解してくれる。


そう感じた。



『あの少年がね、
なんで君が俺のこと
助けてくれたのか、
わからないって。
会ってみない?』

⏰:08/12/27 22:50 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#195 [幸]
『えっ?』
『自分の口から本人に
伝えた方がいいでしょ?』



何かが救われた気持ちになった。

彼に会えば、私の今までの
考えをかき消してくれるような
気がしたからだ。

なんのため勉強するか
という、難問に。

⏰:08/12/27 22:52 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#196 [幸]
『どうぞ。』


警察の人に案内され
前にあった椅子に座った。



あのドアの向こうに
彼が来る……



ガチャー

⏰:08/12/27 22:53 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#197 [幸]
彼が来た。


私はまじまじと彼の顔
を見た。
彼の顔は、あの日と同じ
目だけがギラギラしていた。



『なんで来たんだよ?』

⏰:08/12/27 22:54 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#198 [幸]
彼が椅子に座る当時にそう聞いた。


『私、あなたに言われてから
考えるようになった。
なんでT大学に行くのか。
またはなぜ勉強をするのか。
考えたけど、無理みたい。
私にはなりたい職業がない。
あれば、また違ってたかもしれないのに。』

⏰:08/12/27 22:57 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#199 [幸]
『まだ気にしてんのか?
忘れろ!!
俺は妬いてたんだ!
俺、受験なんてまだまだ
だけどK高校に行って
L大学に行って、心理学
を学びたかったんだ。
でも行きたくても
俺は無理なんだ。
金がないから…。

それなのに、夢も
学びたいこともない
あんたが大学に進学して
ずるいよ…
だったら、俺と交換しろよ。
そう思っただけだ。
だから妬いてただけなんだよ。』

⏰:08/12/27 23:02 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#200 [幸]
彼の声は…
震えていた。


悔しさがひしひしと
伝わってくる。



『俺のせいで、あんたが
苦しんだならごめん。
だから、もう俺にかまわなきて
いいよ。』

⏰:08/12/27 23:04 📱:W53H 🆔:nlA3ocY.


#201 [幸]
ねぇ…なぜ?
なぜあなたはそんなに……


『…我慢するの?』



かまわないでって。。
そんな嘘、誰だって見破れる。
あなたは本当は…


助けてほしいくせに。
なぜ我慢するの?

⏰:08/12/28 23:49 📱:W53H 🆔:rI5HnOXg


#202 [幸]
『我慢なんてしてねーから。』

『嘘だ!!
我慢してる!!』



私は力強く言った。
彼は少し驚いていたが
また口を開いた。



『あんたに俺の何がわかるんだ?』

⏰:08/12/28 23:51 📱:W53H 🆔:rI5HnOXg


#203 [幸]
まただ…


『我慢してるって、
世の中我慢しなきゃ
生きていけねーんだよ!!
俺は弟のことで何度も
耐えてきた。。
我慢すればこの苦しみから解放されるって
信じて……
障害者と関わりのない
あんたには俺の気持ちが分かるかっ!!』

⏰:08/12/28 23:53 📱:W53H 🆔:rI5HnOXg


#204 [幸]
彼の声は部屋中に響いた。
また…震えてる声だった。




障害者と関わりのない?
そうか…だから私は彼の気持ちが
わからないのか。。。


だからといって、
私は彼をほっておきたくない。

⏰:08/12/28 23:55 📱:W53H 🆔:rI5HnOXg


#205 [幸]
『なんで…面会に来たの?』



心細い声で彼が聞いた。

『なんで来たの?
ほっとけばよかったじゃねえか。
俺のことなんて…
ほっといて、大学に向けて
受験すればいいじゃねか。
あの時おにぎりを渡してくれた。
それだけで十分だ…』

⏰:08/12/28 23:59 📱:W53H 🆔:rI5HnOXg


#206 [幸]
言葉がでなかった…
私はただ、おにぎりを
あげただけなのに。



彼がそこまで感動するとは
予想外だった。
今まで、優しくされたことが
なかったの…?
今まで、彼を誰も
支えてくれなかったの?
今まで、彼の周りにいた人たちは
何をしてたの?

⏰:08/12/30 00:13 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#207 [幸]
強く叫びたかった。
訴えたかった。




『ありがとう…』


彼はそう言って、
私の前から消えた…。

何が‘ありがとう’なの?
なぜあなたが感謝するの?

⏰:08/12/30 00:15 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#208 [幸]
疑問を持つだけの私。



警察の人が外にどうぞと
導いてくれた。
私は八つ当たりをしたのか、
思いっきりその警察の人
を睨みつけた。

⏰:08/12/30 11:26 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#209 [幸]
私はゆっくりと歩いて帰った。



彼を助けたい…
彼は被害者だよ。


頭を使え…
私は頭がいいんだから。


私は今まで以上に頭を
使った。
ひねった。考えた。

⏰:08/12/30 11:28 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#210 [幸]
なんで…!!

なんでわからないの?
私は頭良いって言われてきたのに。
なんで彼を救う方法を
考えられないの!?




自分を責めたい。
初めて思った。


私って…馬鹿なんだ。と

⏰:08/12/30 11:30 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#211 [幸]
学力がよくたって…
アイデアが浮かばなかったら
意味がないんだよね。



ははは…そうか……
だからなぜT大学に行って
何を勉強するのかも
わからなかったんだ。

⏰:08/12/30 11:33 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#212 [幸]
悔しい……
悔しい…!!!




私はその場にしゃがみこんだ。
涙がたくさん出てきた。
周りからどういう目で
見られてるかな?
変な人って思われてるのかな?

⏰:08/12/30 11:35 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#213 [幸]
ああ…そうか。
障害者って健常者から
‘変な人’って思われてるんだ。


だからその兄弟の彼の
ことも変だって、断定
するんだ。




はは…なんて虚しい。
悲しい。悔しい…。

⏰:08/12/30 11:37 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#214 [幸]
私は人目気にせずに泣いた。



すると、私の目の前に
ハンカチが出てきた。

私はびっくりして顔をあげた。



すると、優しい男の顔
が現れた。

⏰:08/12/30 11:39 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#215 [幸]
『……//』



恥ずかしかった。
思いっきり泣いてる顔を
しかもアップで…。



私はハンカチを取り、
『借ります。』


と言い、ハンカチを使った。

⏰:08/12/30 12:11 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#216 [幸]
男は私の髪を撫でながら
優しく微笑んだ。




何かに許された気がした。
何に?
わからないが、そんな気がした。

⏰:08/12/30 12:13 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#217 [幸]
私は立ち上がり、
優しい顔の男を見た。


私は男の優しさに吸い込まれそうだった。
すごい心が暖かい。



私は思わず笑ってしまった。
すると男は、私の顔を
一時見、歩いていってしまった。

⏰:08/12/30 12:17 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#218 [幸]
『あのぉっ、すみません!!』



大声で叫んだつもりだったが
聞こえなかったのか、
男は一度も振り返らず
そのまま歩いていってしまった。



ハンカチ…どうしよ。

⏰:08/12/30 12:19 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#219 [幸]
そのハンカチには、
独特な匂いがした。
柔らかく、私を包み込む
優しい匂い。




家に着いても私は
ハンカチから手放さなかった。

勉強するときも
かぎたくなったら
ハンカチをかいでいた。

⏰:08/12/30 12:23 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#220 [幸]
変態だ。私。
でもその匂いをかがないわけにはいかなかった。




私は予備校に行ってないので
わからない問題があったら、
学校に行き先生に聞いていた。

⏰:08/12/30 12:30 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#221 [幸]
私がだいたい学校に行く時間と
あの男に会った時間が同じだ。
だから少し早く家を出、
初めて会った場所で
ハンカチを持って待っていた。




しかし、ほぼ毎日来ても
なかなか男と会わなかった。

⏰:08/12/30 12:53 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#222 [幸]
夏休みの終わりの頃。
私はいつも通りの生活をしてた


流れてあった、あるニュースに
目が入った。



‘え―7才の女の子が
実の母親に殺害されました。
その女の子は小学校で
特別学級に通っており
母親は育てるのに
疲れたと述べていました’

⏰:08/12/30 13:00 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#223 [幸]
障害者……胸が痛かった。



最近、こんな事件ばかりだ。
健常者と共生なんて
できないのかな。


悲しくなってきた。

⏰:08/12/30 13:02 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#224 [幸]
あの少年はどうなったのかな?



私は学校に行ってから警察署に寄った。





私は彼と面会はせず、
彼の担当の警察の人に
話を聞いた。

⏰:08/12/30 13:04 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#225 [幸]
『彼はどうなるんですか?』


『一応、人殺したからね。』

『そんな…彼は母親の
ために…』


『相手は殺人犯だぞ?
そんなこといちいち
受けとめていたら私たちだってやっていけないよ。』

⏰:08/12/30 13:08 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#226 [幸]
『あなたの気持ち、
わからなくもないよ?』

『彼をそこまで追い詰めたのは
彼の周りにいた大人の
せいですよ!?』



私の声は震えていた。


警察の人は困っていた。

⏰:08/12/30 13:14 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#227 [幸]
『あなた、あの少年に
おにぎりを渡したんですよね?』



警察の人は困ってた顔から
何かをひらめいた顔に
変化した。


『はい…』
『あなたなら、心を開いて
くれるかもしれない。』

⏰:08/12/30 13:17 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#228 [幸]
『しかし、以前面会した時
かまわないでと言われた
ばかりなんです。
嘘だと感じるのですが…』


『はい、私どももそう思います。
私もあの時いたんです。
しかし彼、私と話す時
よりあなたと話す時の
方が話しやすいと思うのです。』

⏰:08/12/30 13:21 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#229 [幸]
ちょっと嬉しかった。
さらに警察の人は話し出した。


『私の考えでは、あの少年は
嘘をついている。』


『はい?』
『殺したのはあの少年
ではないと思うのです。』



想像もしてなかった。
そんなこと……

⏰:08/12/30 13:24 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#230 [幸]
『なぜ?』
『こちらの、犯罪心理学者が
鑑定したところ、
例え母親のためとは
言えども人を殺めた時
パニクるのですが、
あの少年はそのようなことを
しなかったのです。』



私は彼と初めて話したことを
思い出そうとした。

⏰:08/12/30 13:27 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#231 [幸]
……
あの出来事が走馬灯の
ように頭をよぎった。




『大丈夫かね?』

警察の人の声に我に返った。


『何か思い出したら
また来てくれるかな?』
『はい…』

⏰:08/12/30 13:30 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#232 [幸]
警察署に出た。
また暗い気持ちになった。



そして初めてあの男と
出会った場所に足を止めた。



この時間帯にいないよね。

⏰:08/12/30 13:36 📱:W53H 🆔:aR7PgfF2


#233 [幸]
明けましておめでとうございます

⏰:09/01/04 15:06 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#234 [幸]
>>232つづき…



そう思い、家に帰ろうとしたとき
あの優しい匂いがぷ〜んと
匂ってきた。


胸が弾む気持ちになった。

⏰:09/01/04 15:08 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#235 [幸]
私は必死にあの男を探した。
ふと、あの匂いが私の前に来た。



……見つけた…。


『あっ、あの…』


声が小さいせいか、
なかなかこちらに気づかない

⏰:09/01/04 17:55 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#236 [幸]
『まっ、待って!!』


私はとっさにその男の腕を掴んだ。



男は驚いた顔でこちらを向いた。



……なんて綺麗な目。
見とれてしまう。

⏰:09/01/04 17:57 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#237 [幸]
『あっ、あのハンカチ
ありがとうございました。』


私はそう言い、ハンカチを出した。



男は微笑みながら、会釈した。



ど、どうする私?
こんな素敵な出会いは
めったにないぞ。

⏰:09/01/04 18:00 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#238 [幸]
このまま一気にメアド
を聞いてしまうか。
それともこの出会いは
これで終わりか!?

こんなのやだ!!


向こうから聞いてこないかなぁ。
でも向こうはそんな気ないよね。

あああ、やっぱり私から
聞いた方がいいよね

⏰:09/01/04 18:53 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#239 [幸]
『あの、メアド教えて
下さい!!』



うわ〜言った!!
…やっぱ無理かな。
初対面なのに教えてくれないよね。

⏰:09/01/04 18:57 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#240 [幸]
男の顔が赤くなったのがわかった。
そして男はバックから
ノ―トとボ―ルペンを
取り出し何か書き始めた。



‘僕は耳が聞こえません
こんな僕でもメールを
しても楽しいことないですよ’



えっ……

⏰:09/01/04 19:02 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#241 [幸]
↑すみません
‘こんな僕でも’
ではなく
‘こんな僕が’です

⏰:09/01/04 19:04 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#242 [幸]
男は悲しい顔をした。
私はノ―トとボ―ルペン
をその男から奪い、


‘それでもいい。
あなたとメールをしたいんです
あなたが嫌なら諦めます’


と、書いた。

⏰:09/01/04 19:07 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#243 [幸]
男はノ―トを読むと
悲しい顔から笑顔になった。
クシャッと笑った顔が
とても可愛く思った。




私たちは赤外線をし、
アドレスを交換した。

⏰:09/01/04 19:09 📱:W53H 🆔:7dozr8Kk


#244 [幸]
そして彼は
‘これからバイトなので
これで。
またメールでね’


そう書き、走って行ってしまった。



その時また匂いがした。

⏰:09/01/05 00:19 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#245 [幸]
素敵……
なんて素敵なのかしら


その時メールが来た。




小早川君からだ。


えっ!?
なぜに!?

⏰:09/01/05 00:20 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#246 [幸]
‘メール遅れてごめんなぁ
小早川きいのアドレス
登録よろしくなぁ’



ああ、夏祭りの時
小早川君のアドレス聞いたなぁ。


私は了解とメールをし、
家へ帰った。

⏰:09/01/05 00:22 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#247 [幸]
私は家事を終わらせ
勉強をしてた。

11時に携帯の受信音が鳴った。


私は携帯を急いで見た。


‘よぉ。かなちゃん
よろしくなぁ!!’

⏰:09/01/05 16:37 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#248 [幸]
かなちゃんだってぇ!!
どうしよう!!


私は久しぶりに興奮した。



‘こちらこそ
バイトだったんですか?’

送信。

⏰:09/01/05 16:39 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#249 [幸]
‘そだよ。’



私は携帯が鳴るたびに
勉強を途中で止め、
メールに夢中になってしまった。


男の名前はかける。

かけるはずるい。
こっちが質問したくなるようなメールばかりだ。

⏰:09/01/05 16:41 📱:W53H 🆔:KT5aN9Mc


#250 [幸]
翌日。
午前中は勉強に集中し
午後は家事をしながら
かけるとメールをした。

メールで分かったことは
かけるはL大学生の1年生。


あの少年が行きたがっていた大学だ。

⏰:09/01/06 00:17 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#251 [幸]
私はL大学のことが気になった。


家事を終わらせ、パソコンで
L大学について調べた。


L大学は心理学の名門校だ。
心理学部だけ偏差値が高い。

⏰:09/01/06 00:19 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#252 [幸]
T大学と同じくらいだ。結構意外だ。



‘何学部なの?’

私はかけるにメールを送信した。


‘文学部だよ
一応小説家を目指してる’


と来た。

⏰:09/01/06 00:21 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#253 [幸]
小説家!?
凄い…と思った同時に
夢があるんだぁ、という
関心を持った。



そのメールの下の文に

‘かなちゃんは?
夢とかあるの?
K校だからありそう(笑)’


と書かれてあった。

⏰:09/01/06 00:23 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#254 [幸]
…ない。
ただ、こういう大人になりたいだけで
なりたい職業なんてない。



‘ないよ。早く見つけなきゃ!!’


と、送信。

⏰:09/01/06 00:25 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#255 [幸]
‘別に焦る必要ないよ
なりたいじゃなくて
興味のある職業とかないの?’




と、来た、


私はそのメールにすごく
励まされた。
また、別の観点から職業を
探すということに気づいた。

⏰:09/01/06 00:27 📱:W53H 🆔:chY9fFUg


#256 [幸]
私はメールを止め、
自分の興味を探した。


何が好きかな?
国語!?
いや、国語から職業探すの大変だろ。


いざ自分の興味は?
と聞かれると、なかなか答えられないもんだ。

⏰:09/01/07 23:57 📱:W53H 🆔:mOdiFZ8M


#257 [幸]
…そういえば
あの少年、心理学を
学びたいって言ってたな。
心理学ってなんだろ?



インターネットで調べてみるのも、
なかなかいい答えが見つからない。


そうだ。
L大学のオ―プンキャンパスに行こう。

⏰:09/01/08 00:00 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#258 [幸]
私は早速L大学の
オ―プンキャンパスの日程を調べた。




えっ……
もう、終わっちゃった…?


少しショックを受けた。

⏰:09/01/08 00:02 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#259 [幸]
夏休みも終わり2学期が始まる。



私は始業式当日早起きをし、
英語を勉強した。
そして朝ご飯を食べながら
テレビを見た。


星座占いが場面に出てきた

⏰:09/01/08 00:07 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#260 [幸]
‘てんびん座のあなた
2つの選択肢をちゃんと考えてから
選ぶようにしましょう!!’



私は腹が立ち、リモコンで
テレビを消した。

⏰:09/01/08 00:10 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#261 [幸]
テレビなんかに私の気持ちが
わかるか!!
こんな占い信じるか!!
信じてるから当たるもんなんだよ。
所詮、占いはそんなもんさ。



そう思い、家を出た。

⏰:09/01/08 00:11 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#262 [幸]
『鮎川!!』


歩いていると後ろから
声がした。


この声は…
『こっ小早川君!?』



『久しぶりだな。
祭り以来?』

⏰:09/01/08 00:12 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#263 [幸]
『そだね。』

『今月の模試、必ず
鮎川に勝つからな!!』


『こっちだって負けないよ』



元気のいい会話だった。
前まではこんなスラスラ
話せなかったのに。

⏰:09/01/08 00:14 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#264 [幸]
『最近、小早川君
みょうにかなに近づこうとしてない?』



教室に入った瞬間、
ちなみにそう言われた。

『だって、私のこと
ライバル視してるし。』
普通に答えると、
ちなみは驚いた顔をした。

⏰:09/01/08 00:16 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#265 [幸]
『な、なによ?』

『かな、もう好きじゃなくなったの?』



はい!?
私ちなみに、小早川君のこと
好きなんて言ったっけ?
いや、絶対言ってない!!

『…好きなんて言った?』


焦りながらも、
なんとかそう聞いた。

⏰:09/01/08 00:18 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#266 [幸]
『だいたい、かなの顔を見れば
わかるよ〜』



『そ、そう?』

私ってそんなに顔にだすタイプ?


『もう勉強一筋になったのか?
それか他に好きな人が…?』


ちなみはニヤニヤしながら聞いた。

⏰:09/01/08 00:20 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#267 [幸]
ちなみに好きな人と言われた時
脳裏に浮かんだのは
かけるだった…。

待て!!待て。私。
夏祭りのとき、小早川君が好きだって
思ったじゃん!!


もしかして…二股!?
私が!?


そう考える度に
あの占いが頭の中に蘇ってくる。

⏰:09/01/08 00:23 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#268 [幸]
『お〜い。
かな、大丈夫かぁ?』


『…ちなみ、私二股かも。』


『はぁ?』


私はかけるのこと、
夏祭りに小早川君と同行
したことをちなみに話した。

⏰:09/01/08 00:25 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#269 [幸]
『…匂いって、あんた
犬か?』




ちなみの第一声はそれだった。

そして、
『でも私、かなはその
かける君の方が好きだと感じる。
かける君のことを話す時
嬉しそうだし。
小早川君のことは…
なんだろ、先生って感じに聞こえる。』

⏰:09/01/08 00:29 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#270 [幸]
と、言われた。


それは言えてるかも。
私も納得してしまった。
気づいたらかけるのことを考えてる。
…一目惚れってやつ?



『そ〜いや、ちなみは?』


私たちは、恋愛話で盛り上がった。

⏰:09/01/08 00:31 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#271 [幸]
『陸ったらひどいんだよ?』



…どうやら陸君はベ―ジェクト病ではなかったらしい。

ちなみが勉強ばかりだから
恋に関わる心理テストをしたらしい。


そして、それがこれか。
これは心理テストって言えるのか?

⏰:09/01/08 00:35 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#272 [幸]
まぁ陸君、無事でよかったよ。



…心理テスト…
そうか、それだけで人の心が分かるんだ!!

やばい!!
おもしろい!!



私は始業式が終わった後
資料室へ向かった。

⏰:09/01/08 00:38 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#273 [幸]
そこに、私の親しみのある先生がいるからだ。



『先生〜?高城先生!?』

3回目でやっと返事がした。
声の高い、男の先生が
やってきた。

⏰:09/01/08 00:41 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#274 [幸]
私は心理学について話してみた。


『心理学に興味を持ったか〜』

先生は困った顔をした。

『鮎川、お前は馬鹿じゃない、
心理学で最も有名な大学
調べたろな?』

『L大でしょ?
なんで?そこの大学やばいの?』

⏰:09/01/08 00:45 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#275 [幸]
『ん〜お前も知ってると思うが
うちの高校は進学校なの。
そんなL大に合格したって
なんの得にもならないんだよ。』



『でも心理学部は凄いじゃん!!』

『大学生からすればな。
だが中学生の受験生が
L大に合格って格下
だと思われるだろ!!』



先生の言い方に憤りを感じた。

⏰:09/01/08 00:49 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#276 [幸]
『私は心理学を学びたいの!!
T大はL大より特別
よくないじゃん!!』


『お前はT大に受かる
ためにこの高校に来たんだろ!?』




凄く胸に響いた。
そうだ…T大に行くために
来たんだ……。

私は無言で資料室から出た。

⏰:09/01/08 00:52 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#277 [幸]
…夢…
私は夢なんてない。
しいて言えばT大に合格
することだなぁ。

なんてちっぽけな夢。
その先の事も考えずに。


私って…本当に馬鹿だなぁ。

⏰:09/01/08 00:55 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#278 [幸]
『鮎川…』


私が資料室から出て
廊下を少し歩くと
小早川君が立っていた。


『こ、小早川君…』
『お前、L大に行きたいの?』


予想外の質問をされた。
私は驚き何も言わずに歩こうとした。

⏰:09/01/08 17:57 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#279 [幸]
『待てよ!
なんでL大なの?
T大は?』



ここで何か言わなきゃ
前に進まないような気がした。

『わ…私、心理学を学びたいの。
だからT大止めようかなって…。』

⏰:09/01/08 17:59 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#280 [幸]
『なんだよ、それ。
みんなお前を目指して頑張ってきたんだよ!?

鮎川はいつも1番だから
俺のいや、みんなの目標なんだよ?』



小早川君の声はいつもより
低かった。
それがとても怖かった。

⏰:09/01/08 18:02 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#281 [幸]
『私ね、夢なんてない。
だからT大に行っても
何を勉強すればいいか
分からなかったの。

でも、心理学に興味を持ったの。
だから大学に行ったら
心理学を勉強したいの!!
T大よりL大の方が心理学は有名なの。
だから…』



小早川君…!?
私がまだ全部を話してないのに
気づいたら小早川君の腕の中にいた。

⏰:09/01/08 18:06 📱:W53H 🆔:jLrAXSwQ


#282 [幸]
『こっ…小早川君…?』



突然の包容に驚愕してしまった。

私はどうすればいいか分からず
ただ、ここに人が来ないようにと
祈っていた。

⏰:09/01/09 16:30 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#283 [幸]
『あっ…悪い…』

小早川君はそう言うと
スッと立ち去った。




…はっ初めて抱きしめられた!
あの小早川君に!?

小早川君、身長大きいから
私の顔が丁度小早川君の胸あたりだったなぁ


…かけるだったら―…?

⏰:09/01/09 16:33 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#284 [幸]
って。
何かけるのこと想像してんだよ?
私……。





翌日。
気が晴れないまま学校に登校した。

⏰:09/01/09 16:35 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#285 [幸]
確か…5時間目が始まる休み時間だった。



『鮎川!!』

うざい担任に呼ばれた。
どうやらあの少年と
警察が来てるらしい。


なぜわざわざ学校に来るんだよ?
私はそう思いながら
校長室に向かった。

⏰:09/01/09 16:37 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#286 [幸]
校長室に入ると、
3人の警察と少年、
高城先生と教頭先生がいた。



私は昨日のことを思い出し
高城先生の顔をあまり見れなかった。


『たびたびすみません。』

⏰:09/01/09 16:39 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#287 [幸]
そう言ったのは、
私が夏休みに警察署に行った
あの雰囲気のいい警察だった。

⏰:09/01/09 16:40 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#288 [幸]
『いえ、この度はどういう用件で?』


丁寧に聞くと、
少年が

『最後にあんたに
お礼を言いたいんだ。』
と、ギラギラした目で言った。


『最……後?』

⏰:09/01/09 16:47 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#289 [幸]
『ええ、この子は
田舎に預けられること
になったんだ。
精神的なこともあるし

それに親戚の人はみな……』




言葉が出なかった。

すると、
『2人で話したい。
席を空けてくれ。』


少年はそう言うと、
校長室に私と少年の2人きりになった。

⏰:09/01/09 16:50 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#290 [幸]
『…田舎に行くの?』


私から最初に切り出した。

『ああ。』
『なぜ?父親は?』


少年は暫く黙っていた。

⏰:09/01/09 16:51 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#291 [幸]
『…父親1人じゃ、
俺を育てる自信がないんだと。

だから寺のお坊さん?
みたいな人に預かって貰えるんだ。


一回、面会した時
すんげぇ感じのいい人でさぁ。』


最初はイキイキして話していたのに
最後は悲しげな口調になった。


『…私もね。あなたに
お礼言いたいんだ。』



話しをずらした。

⏰:09/01/09 16:55 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#292 [幸]
『お…俺に?』


少年は嬉しそうな、
驚いているような声をだした。


『私ね、興味を持つようになったの。』

『興味?』
『心理学に。』


少年は“おおっ”と
声をあげた。

⏰:09/01/09 16:57 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#293 [幸]
『心理学を勉強したら
人のちょっとした行動で
相手の気持ちが分かるようになるんだよ?
私、そう思うともう
ワクワクしちゃって…

まだ将来の夢は決まってないけど
興味のあるものを勉強して
それに導くような職に就きたいの。』



少年の顔が少しだけど
笑った。

私もつられて笑ってしまった。

⏰:09/01/09 17:00 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#294 [幸]
『…なぁ、前から聞きたかった。
なんで俺を助けたの?』

『…わかんない。』



私は笑顔で答えた。


『はっ?』

⏰:09/01/09 17:01 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#295 [幸]
『その質問にはまだ
答えられない。』


すると少年はふっと
鼻で笑い、

『じゃあ、また今度聞くよ。』

と言った。

⏰:09/01/09 17:03 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#296 [幸]
沈黙が漂った。
私は何か話そうと思ったが
なかなか話題が出てこない。



『俺…』

少年はいきなり
こう言った。

⏰:09/01/09 17:05 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#297 [幸]
『本当は行きたくない…
ここを離れたくない…』


少年の目には涙がたまっていた。

私はいたまれない気持ちになった。

⏰:09/01/09 17:07 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#298 [幸]
『こんなこと言うの
勝手だけど…
また家族揃って一緒に生きたい…

ただそれだけなのに…
当たり前のことなのに

俺が弟を殺さなければ
家族、バラバラにならずにすんだのかな?

俺は…あの時の俺は
ただ、母さんを守りたかったのに。
実際、守れてなかった…。』



『なんで、あの日殺そうと…?』


私はそう質問した。

⏰:09/01/09 17:10 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#299 [幸]
母さんのため…
もし、それが本当なら









弟を殺せるはずがない。
前にあの警察の人が言ってた…
この少年は殺してないかもと。

⏰:09/01/09 17:12 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#300 [幸]
“実際、母さんを守れてない”

少年はそう言ったよね?
殺すことによって
お母さんが救われるなど
思わないはずだ。



私は一番最初に会った
少年の話しを思い出した。

⏰:09/01/09 17:14 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#301 [幸]
……。
もしかしてこの子…。



『私もね、前から聞きたかった
ことがあるの。』

『なんだよ…?』


『あなた、本当に弟を殺したの?』



少年は驚いた顔で私を見た。

⏰:09/01/09 17:16 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#302 [幸]
『…だからここにいるんだよ』


『母さんのため…?
笑わすなよ。
弟を殺した方が…『俺が殺したんだよ!!』


少年はそう言い張った。

『ねぇ、正直に話せば?
お母さん、あなたが
行きたくない場所に
行かせる方がより嫌な思いするよ?』

⏰:09/01/09 17:44 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#303 [幸]
私がそう言うと
少年は大粒の涙を流した。


少年の涙はとても綺麗だった。


『あなた、私と一番最初に
会った時、なんて会話したか
覚えてる?

“あの日だけ、弟を叱る
には殺気を感じた”って
言ってたよね?』

⏰:09/01/09 17:47 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#304 [幸]
『…止めろ』


弱々しく少年はそう言ったが
私は話しを続けた。


『本当は、お母さんが
弟さんを殺害して、
あなたはそれを…
『やめろって言ってんだろ!!』



やはり少年でも男だ。
声変わりをしている、
低い声。
その低い声で怒鳴られると
余計に怖い。

⏰:09/01/09 17:50 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#305 [幸]
『…これ以上、母さんを
苦しまないでくれ…
もう十分苦しんだよ。

弟が産まれて、
自分の両親や夫にも
見捨てられ、ボロボロ
になっていく母親を
もう…

見たくないんだ…。
母さんは頑張ったよ。
頑張って子育てしたよ。』



これが優しさというの?
…言うんだよね
この少年にとって…

⏰:09/01/09 17:55 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#306 [幸]
さらに少年は話を続ける。


『…あんたは身近に
そういう人いないだろ?
だから綺麗事が言えるんだよ。


あんたさぁ、“障害者独立支援法”って
知ってる?』

⏰:09/01/09 17:58 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#307 [幸]
授業で聞いたことがあった法律だ。


『障害者のカ―ドを
健常者が悪用して
お金を取らせないようにするために
作られた法律…。』

『表向きはな。
でも実際、全く違うんだよ。』

⏰:09/01/09 18:00 📱:W53H 🆔:lFHCHULI


#308 [幸]
『どういう意味?』




少年は私の顔をじっと見つめた。

『あんたが言う通り
障害者手帳って言うんだけどね、
それを使用禁止とか
言われたら障害者はとても困ってしまうんだよ。』


『例えば?』

⏰:09/01/16 11:46 📱:W53H 🆔:pMK1Q/zQ


#309 [幸]
『ん―、例えば
耳の不自由な人がさぁ
普通に今まで通り
一定の給料を貰って
働いてたとするじゃん?
それがさぁ、給料が減らされて
しまうんだよ。』



私の胸に何か重りが乗ってるみたいな気分だった。


支援っていう法律なのに
全然支援になってないじゃん。

⏰:09/01/16 11:51 📱:W53H 🆔:pMK1Q/zQ


#310 [幸]
『なんで…?』

こんなこと、授業や
参考書などに載ってるはずがない。
私が知るはずない!!


そう思ったが、


『…ニュース見てないの?』


少年にそう言われ、
気づいた。

⏰:09/01/16 11:53 📱:W53H 🆔:pMK1Q/zQ


#311 [幸]
『障害者が働いている
会社に政府はお金を
余分に与えてるんだ。
ここの会社はバリアフリー
だから…みたいな…

だけど今まで通り与えてた
お金が減らされたんだ。
だから給料も減らされて…

今、“この法律を撤廃せよ”って
デモ行進がすごいじゃん?』



授業でやってなくても
テレビや新聞を見れば
分かるんだよ…。

⏰:09/01/16 11:57 📱:W53H 🆔:pMK1Q/zQ


#312 [幸]
ははは…
私は世の中のこと
全然わかってないじゃん。


じゃあ、なんのために
勉強してたの?
受験するため?

じゃあ、今まで勉強してたことは
世の中に全く通用しないってことなの……?

⏰:09/01/16 11:59 📱:W53H 🆔:pMK1Q/zQ


#313 [幸]
『ねぇ。』


少年が話してきた。

『なんで母さんが弟を
殺したと思ったの?』



『…そう思ったから。』


私は一切、警察の人と
話したことを言わなかった。

⏰:09/01/18 11:41 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#314 [幸]
『証拠がないのに?』



『証拠があれば認めるの?』


『世の中そうだろ』



…やはり母親が……

暫く沈黙が続いた。

⏰:09/01/18 11:43 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#315 [幸]
『おい、もうそろそろいいか?』



警察の声で少年は
深々とおじぎをし、
部屋を出て行った。



私たちは、少年がここから去るのを
見てるしかなかった。

⏰:09/01/18 11:46 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#316 [幸]
『先生―…』


隣に立っていた、高城先生に
話をかけた。


『同じ人間なのに
なぜこんなに差があるのですか?』



答えがほしい…
答えが。

⏰:09/01/18 11:48 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#317 [幸]
『簡単だよ。
それはね、平等じゃないからだよ。』


『えっ?』



高城先生は悲しそうに笑った。



丁度そこで運よく
5時間目の始まりの鐘が鳴った。

⏰:09/01/18 11:50 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#318 [幸]
平等……
昔は身分の差別があった。
今は昔よりはそれがなくなった。



でも金持ちとの差が激しい。
それは資本主義社会だから。


じゃあ‘子供’は?
障害者の子供がいると
いないだけで
こんなにも差があるのか?

⏰:09/01/18 11:53 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#319 [幸]
…おかしいね。
子供はみんな同じなのに。




授業なんて受けたくなかった。
授業中、それしか考えなかった。

⏰:09/01/18 11:55 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#320 [幸]
『あっ鮎川!!』




帰り道、小早川君に声をかけられた。

『なに?』



『俺さぁ見ちゃったんだよね。』

⏰:09/01/18 11:57 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#321 [幸]
『何を?』
『あの少年。テレビで
やってた。
障害の弟を殺害したんだろ?

なんでそいつが鮎川に?』




小早川君ならどうするかな?
この難問をあなたなら
解いてくれるのかしら?

⏰:09/01/18 12:00 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#322 [幸]
『障害者なんていなければいいのに…』



小早川君はあまりにも
サラッと言ったから
私は‘もう一回言って’と
言いたくなった。


『…なんで……?』


いなければいい…
つまり、死ねっていうこと?


死ねって、そんなに
サラッと言うもの?

⏰:09/01/18 12:55 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#323 [幸]
『その少年だって
障害者がいるから殺害
したんだろ?

じゃあ、いない方がましだよ。』



私は何も言えなかった。
さらに小早川君の話しは続く。

⏰:09/01/18 12:57 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#324 [幸]
『障害者を支えなければ
いけないじゃん?
俺ら……いや、働いてる人は。


しかも今は障害者の数が
増えてるしね。
真面目に働いてる人は
これから大変になる。
障害者の他に高齢者もいるしね。

負担者を殺害すればいいのに。

そうすれば、不景気の時
障害者も高齢者も苦しまないじゃん?』




小早川君がこういう考えを持ってたんだ…。

⏰:09/01/18 13:00 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#325 [幸]
『そ…それじゃあ
憲法に反する!!
25条の生存権に……』


何か言い返したかった。
そうしなければ
小早川君の言うことを
納得してしまう自分が
怖かったからだ。

⏰:09/01/18 13:03 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#326 [幸]
『綺麗事なんだよ…
憲法に反することとか…
今まで日本はしてきたから。
てか、時には破らなければ
どうにもできないことが
あるだろ?

世の中は全て綺麗事じゃ通らないんだよ!!』




…これが…現実か…
私は‘ごめん’と言い
その場から走り去った。

⏰:09/01/18 13:07 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#327 [幸]
想像しなかった。
小早川君があんな事を
言うなんて……

死ねだなんて…。



お腹の中にずうっと
育てられ、生まれたら
障害を持ってたら
殺せ………

なんて勝手なんだよ…

でもそれに対して何も言えない
私はもっと……

⏰:09/01/18 13:10 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#328 [幸]
死角の曲がり角を曲がった時、
走ってたせいか、激しく
ぶつかった。




おでこを触ると
漫画のたんこぶのように
腫れていた。

いったぁ…
涙がでてきた…


なぜだろう。
おでこより胸が痛いのは。

⏰:09/01/18 13:13 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#329 [幸]
‘会うたびに泣いてるね’

そう書かれたノートが
目の前に現れた。



顔を上げてみると
かけるがいた。

恥ずかしくなって
下を向いた。

⏰:09/01/18 13:15 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#330 [幸]
ひょいと、かけるの顔
が現れた。


びっくりして、一歩退いた。



普通人が下向いてる時
覗くかぁ!?

私がそう思っていると、
ノートがでてきた

⏰:09/01/18 13:18 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#331 [幸]
‘すごいたんこぶだね
どうしたね?’


……
あんたのせいだ!!


と、私は乱暴に書いた。

するとかけるは
自分の手提げの袋をあさり、

‘ああ、楽譜かぁ。
いやぁごめん。’

⏰:09/01/18 13:20 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#332 [幸]
と、ノートに書いた。



楽譜……
ピアノ弾けるのかな…?

そう思った。
するとかけるは私の手を掴み、

‘ついて来て’
と口パクで言った。

⏰:09/01/18 13:22 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#333 [幸]
タッタッタッ…
走る音。

私はおどおどしながらも
かけると走った。



なぜか周りのことなど
気にしなかった。
2人だけの世界にいるみたいだった。

⏰:09/01/18 13:25 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#334 [幸]
知らないレストランに入った。
そこは高級感が溢れてた。


すると、40代くらいの
男性が出てきた。

『やあ、かける君。
ん…隣の女の子……
もしや…』


男性は手話をしながら声をだして話した。

⏰:09/01/18 13:27 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#335 [幸]
‘まさか’


かけるは手話でそう言った。
当時、手話もできない私には
なんて言ったのか
全く分からなかった。



『すごいたんこぶだね。
かけるくん、女の子には
優しくしなきゃ。』


そう男性が言った。


‘俺のせいじゃない。’

⏰:09/01/18 13:30 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#336 [幸]
『でも、手当てぐらいは
してきなさいよ。』


‘もうすぐ仕事なんだよ
だからじじさんが代わりに
手当てしてよ’


『そのためにこの子と
一緒に来たのかよ。』


‘まあね、
じゃあ着替えてくる’

⏰:09/01/18 13:32 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#337 [幸]
かけるは楽譜を持って
奥の方に行った。


『やあ、いらっしゃい
さっき手話でね、
かけるに手当てしてって
頼まれたから手当てするか。』



男性はそう言うと
救急箱を取り出し
私のおでこに湿布を貼ってくれた。

⏰:09/01/18 13:34 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#338 [幸]
『じゃあ、これで失礼します。
湿布、ありがとうございました。』


私はそう言うと、


『せっかくだから
かけるのピアノ聞いたら?
かけるのピアノは凄いよ〜

それに、俺の楽譜が
あなたに傷を負わし
ちゃったからお詫びに
おごってあげるって。』

と男性が言った。

⏰:09/01/18 13:47 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#339 [幸]
ピアノ……
するとかけるがス―ツ
みたいな洋服を着、
楽譜を持って現れた。




そして優しく、強く
弾いた。

レストランの中にいた客は
ゆっくり、その音楽に
耳をすましていた。


『きれぃ……』



思わず口に出した。

⏰:09/01/18 14:04 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#340 [幸]
『かけるは一時期、
音大にスカウトされたんだ。

でも、小説を書きたいって言って
音大を蹴ったらしいよ。
ちなみにこの曲は
かけるが自分で作曲した…
“耳なしほういち”だよ』



『そうなんですか…』

⏰:09/01/18 14:08 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#341 [幸]
男性がこれしき何も
言わずに仕事をした。


ああ、なんて綺麗なのだろう。

私の濁った心が綺麗に
洗い流されるよいな…



私はずうっとこの曲を聞いていた。

⏰:09/01/18 14:10 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#342 [幸]
『何時まで平気なの?』

男性がそう聞いた。
この声に我に返った。

気がつけば7時を回っていた

『あっ…まぁいいや…』


私はそう言い、
同時にここでご飯を食べたら
帰ろうと思った。

⏰:09/01/18 14:12 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#343 [幸]
『はい、これかけるの
大好きなもの。
ちなみにかけるのおごり。』



そう男性に言われたので
一応男性にお礼を言い
食べた。

⏰:09/01/18 14:15 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#344 [幸]
『やぁかける、ありがとね。
今日はどうしても耳なしほういち
を聞きたいって客から
リクエストされたからね』



私は料理の半分食べ終わると
かけるがやってきた。


‘この時間帯ならなんとか’

⏰:09/01/18 18:04 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#345 [幸]
『でも、もうすぐ大学の
テストじゃないのか?』

‘なんとかなるよ’




かけるは私の隣に座り

‘かなちゃんはいつテストなの?’


とノートに書き、見せた。

⏰:09/01/18 18:07 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#346 [幸]
『私はまだ先だよ』

と言い、書いた。



‘へえ―’


かけるは私の食べてる
残りのご飯を見た。
そして

‘これおいしいだろ?’

と言った。

⏰:09/01/18 18:10 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#347 [幸]
『うん、ありがとね。
なんかおごらせて貰って。』



するとかけるは驚いた顔をした。

そして男性に手話で話しかけた

‘おい、じじさん!!’


『それくらいいいだろ』


男性はそう言いながら笑っていた。

⏰:09/01/18 18:13 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#348 [幸]
『では、今日はありがとうございました。

おいしいご飯に綺麗な音楽。
最高でした。』


私は食べた後、そうお礼した。



『1人で帰るの?
危険だよ。
かける送ってあげなよ。』

男性は手話をしながら
そう言った。

⏰:09/01/18 18:23 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#349 [幸]
‘えっ?なんで俺!?’


『お前が連れてきたんだろ。

借りたものは返すんだよ。』


‘しょうがねぇなあ。’


次にかけるはノートに

‘俺が食べ終わるまで
待ってろ’

と書いた。

⏰:09/01/18 18:25 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#350 [幸]
『そんな、平気だよ』


私はそうノートに書いたが
押しに弱い私はかけるに
送ってもらうことになった。




内心、嬉しかったかも。

⏰:09/01/18 18:27 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


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