人生の案内板
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#289 [幸]
『ええ、この子は
田舎に預けられること
になったんだ。
精神的なこともあるし
それに親戚の人はみな……』
言葉が出なかった。
すると、
『2人で話したい。
席を空けてくれ。』
少年はそう言うと、
校長室に私と少年の2人きりになった。
:09/01/09 16:50 :W53H :lFHCHULI
#290 [幸]
『…田舎に行くの?』
私から最初に切り出した。
『ああ。』
『なぜ?父親は?』
少年は暫く黙っていた。
:09/01/09 16:51 :W53H :lFHCHULI
#291 [幸]
『…父親1人じゃ、
俺を育てる自信がないんだと。
だから寺のお坊さん?
みたいな人に預かって貰えるんだ。
一回、面会した時
すんげぇ感じのいい人でさぁ。』
最初はイキイキして話していたのに
最後は悲しげな口調になった。
『…私もね。あなたに
お礼言いたいんだ。』
話しをずらした。
:09/01/09 16:55 :W53H :lFHCHULI
#292 [幸]
『お…俺に?』
少年は嬉しそうな、
驚いているような声をだした。
『私ね、興味を持つようになったの。』
『興味?』
『心理学に。』
少年は“おおっ”と
声をあげた。
:09/01/09 16:57 :W53H :lFHCHULI
#293 [幸]
『心理学を勉強したら
人のちょっとした行動で
相手の気持ちが分かるようになるんだよ?
私、そう思うともう
ワクワクしちゃって…
まだ将来の夢は決まってないけど
興味のあるものを勉強して
それに導くような職に就きたいの。』
少年の顔が少しだけど
笑った。
私もつられて笑ってしまった。
:09/01/09 17:00 :W53H :lFHCHULI
#294 [幸]
『…なぁ、前から聞きたかった。
なんで俺を助けたの?』
『…わかんない。』
私は笑顔で答えた。
『はっ?』
:09/01/09 17:01 :W53H :lFHCHULI
#295 [幸]
『その質問にはまだ
答えられない。』
すると少年はふっと
鼻で笑い、
『じゃあ、また今度聞くよ。』
と言った。
:09/01/09 17:03 :W53H :lFHCHULI
#296 [幸]
沈黙が漂った。
私は何か話そうと思ったが
なかなか話題が出てこない。
『俺…』
少年はいきなり
こう言った。
:09/01/09 17:05 :W53H :lFHCHULI
#297 [幸]
『本当は行きたくない…
ここを離れたくない…』
少年の目には涙がたまっていた。
私はいたまれない気持ちになった。
:09/01/09 17:07 :W53H :lFHCHULI
#298 [幸]
『こんなこと言うの
勝手だけど…
また家族揃って一緒に生きたい…
ただそれだけなのに…
当たり前のことなのに
俺が弟を殺さなければ
家族、バラバラにならずにすんだのかな?
俺は…あの時の俺は
ただ、母さんを守りたかったのに。
実際、守れてなかった…。』
『なんで、あの日殺そうと…?』
私はそう質問した。
:09/01/09 17:10 :W53H :lFHCHULI
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