人生の案内板
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#296 [幸]
沈黙が漂った。
私は何か話そうと思ったが
なかなか話題が出てこない。
『俺…』
少年はいきなり
こう言った。
:09/01/09 17:05 :W53H :lFHCHULI
#297 [幸]
『本当は行きたくない…
ここを離れたくない…』
少年の目には涙がたまっていた。
私はいたまれない気持ちになった。
:09/01/09 17:07 :W53H :lFHCHULI
#298 [幸]
『こんなこと言うの
勝手だけど…
また家族揃って一緒に生きたい…
ただそれだけなのに…
当たり前のことなのに
俺が弟を殺さなければ
家族、バラバラにならずにすんだのかな?
俺は…あの時の俺は
ただ、母さんを守りたかったのに。
実際、守れてなかった…。』
『なんで、あの日殺そうと…?』
私はそう質問した。
:09/01/09 17:10 :W53H :lFHCHULI
#299 [幸]
母さんのため…
もし、それが本当なら
弟を殺せるはずがない。
前にあの警察の人が言ってた…
この少年は殺してないかもと。
:09/01/09 17:12 :W53H :lFHCHULI
#300 [幸]
“実際、母さんを守れてない”
少年はそう言ったよね?
殺すことによって
お母さんが救われるなど
思わないはずだ。
私は一番最初に会った
少年の話しを思い出した。
:09/01/09 17:14 :W53H :lFHCHULI
#301 [幸]
……。
もしかしてこの子…。
『私もね、前から聞きたかった
ことがあるの。』
『なんだよ…?』
『あなた、本当に弟を殺したの?』
少年は驚いた顔で私を見た。
:09/01/09 17:16 :W53H :lFHCHULI
#302 [幸]
『…だからここにいるんだよ』
『母さんのため…?
笑わすなよ。
弟を殺した方が…『俺が殺したんだよ!!』
少年はそう言い張った。
『ねぇ、正直に話せば?
お母さん、あなたが
行きたくない場所に
行かせる方がより嫌な思いするよ?』
:09/01/09 17:44 :W53H :lFHCHULI
#303 [幸]
私がそう言うと
少年は大粒の涙を流した。
少年の涙はとても綺麗だった。
『あなた、私と一番最初に
会った時、なんて会話したか
覚えてる?
“あの日だけ、弟を叱る
には殺気を感じた”って
言ってたよね?』
:09/01/09 17:47 :W53H :lFHCHULI
#304 [幸]
『…止めろ』
弱々しく少年はそう言ったが
私は話しを続けた。
『本当は、お母さんが
弟さんを殺害して、
あなたはそれを…
『やめろって言ってんだろ!!』
やはり少年でも男だ。
声変わりをしている、
低い声。
その低い声で怒鳴られると
余計に怖い。
:09/01/09 17:50 :W53H :lFHCHULI
#305 [幸]
『…これ以上、母さんを
苦しまないでくれ…
もう十分苦しんだよ。
弟が産まれて、
自分の両親や夫にも
見捨てられ、ボロボロ
になっていく母親を
もう…
見たくないんだ…。
母さんは頑張ったよ。
頑張って子育てしたよ。』
これが優しさというの?
…言うんだよね
この少年にとって…
:09/01/09 17:55 :W53H :lFHCHULI
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