人生の案内板
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#351 [幸]
2人だけでいると
周りの雑音が大きく聞こえる。



“なんで泣いてたの?”

かけるは自分の携帯で
そう打ち、私に見せた。

私は言いたくなかったので
下を向いた。

⏰:09/01/19 12:48 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#352 [幸]
“言いたくない?”



本当にかけるはずるい。
そんな顔で聞かれると
言うしかない。


『13才の少年が障害の弟を
殺害した事件を知ってる?』


と聞いた。

⏰:09/01/19 12:51 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#353 [幸]
“ああ〜あの事件がどうかしたの?”


私は少年のことを話した。

かけるは私が打った文字を
黙って読んだ。

⏰:09/01/19 12:54 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#354 [幸]
“君が泣く必要ないよ
君のせいじゃないから

君は自分がやりたい事をすればいいんだ。”



とても嬉しかったが
私は納得できなかった。

『私ね、夢とかないんだ。
だから人のためになる仕事をしたい…

でもこんな私でも心理学
に興味を持ったの
だから心理学に関わる仕事をしたいんだ。』

⏰:09/01/20 12:54 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#355 [幸]
するとかけるは私の前に立った。

いつもの優しい顔ではなかった。
見下ろして私を見てたから
余計怖かった。




“かなちゃんは人のために
生きてるの?
違うだろ。”


胸がズ―ン…と鳴ったみたいだった。

⏰:09/01/20 12:59 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#356 [幸]
図星だったからだ。



かけるは私の本当の気持ちを
察してくれた。

⏰:09/01/20 13:03 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#357 [幸]
自分も認めたくはないが
そうだと思った。



でも知られたら無性に
腹が立ってきた。
私の何を知ってるの?

何も知らないくせに…

⏰:09/01/21 17:33 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#358 [幸]
『私の勝手でしょ…
これは私の勝手な生き方なの!!』



知ったような口調で言わないで…


“俺は思ったことをただ…”



かけるは驚いてた。
そりゃそうだよね。

⏰:09/01/21 17:35 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#359 [幸]
『…ごめんなさい。
ここでいいよ。
家近いし。
じゃあ、ありがとう。』


そう言って私は走った。

母さんのため…
私は母さんのためにT大
に行こうとした。

自分の人生なのに…。

⏰:09/01/21 17:38 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#360 [幸]
“人ために生きてるの?”


その言葉が邪魔で仕方なかった。




私のこと何も知らないくせに…

私は暫くそう頭で言い続けてた。



すると、あの少年が脳裏に浮かんだ。

⏰:09/01/21 17:40 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#361 [幸]
あっ…
あの少年も私に言われた時
そう思ったのか…。


何も知らないくせに…



今の私と同じ気持ちだったのね。

⏰:09/01/21 17:42 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#362 [幸]
家に帰っても誰もいない。


ついこの前は母さんが
笑ってたのに。




RRR…
突然、電話が鳴りだした。

その音で、母さんの笑顔が
私の頭から消えた。

⏰:09/01/21 17:45 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#363 [幸]
『もしもし?』
『おう、鮎川か!?』


この声は……


『高城先生?
どうしたんですか?』

『L大に行きたいんだろ?
あそこはお前の嫌いな
生物重視だから勉強しときなさい!!』

⏰:09/01/21 17:47 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#364 [幸]
『高城先生……』
『私もね、鮎川と同じ
夢がなかった。

でも、名の知られてる大学さえ卒業すれば
就職するとき、
就職する範囲が広くなるだろ?

でも、鮎川は夢ができた…。
その夢に向かって頑張りなさい。』



…先生……。

⏰:09/01/21 17:50 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#365 [幸]
『はい、ありがとうございます!!』



私は思わず体を深々と下げた。


『諦めるなよ?』
『はい!おやすみなさい』



生物かぁ〜
頑張ろう!!

⏰:09/01/21 17:52 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#366 [幸]
電話を切って、
早速生物を勉強しようとした。



『かな、電話で頭下げても
相手には見えないよ。』
いきなり父さんが現れた。

⏰:09/01/21 17:53 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#367 [幸]
『いつからいたの?』

『今さっき。
ご飯は?』



あっ……
『ごめん、作ってない。』

『え〜』

⏰:09/01/21 17:55 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#368 [幸]
翌日。

『え〜次の模試のため
この時間に志望校を
記入して。』



HRの時、先生にそう言われ
私は第一志望校をL大にした。

⏰:09/01/21 17:58 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#369 [幸]
『おい鮎川。』


休み時間、担任の先生に呼ばれ
相談室に入った。



『お前の頭ならT大に行ける。
なぜL大なんだ?』

こいつは高城先生みたいに
理解してくれなさそう…。

⏰:09/01/21 18:01 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#370 [幸]
『心理学を学びたいんです。』


でも、一応説明をした。


『心理学ぅ!?
まぁ、あそこは有名だからな。
でも心理学ならT大にもあんだろ。
T大じゃダメなの?』

⏰:09/01/21 18:03 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#371 [幸]
『だってL大の方が有名だもん。』


『あのな!!もし論文で
聞かれたらそう答えるのか?』



『論文?』
『あそこは国語がない
代わりに論文なんだよ。』



えええ!?

⏰:09/01/21 18:05 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#372 [幸]
『調べとけよ。
狙ってんだろ?』


『はい!!』



結構理解してくれるじゃん!!

うれしくなった。

⏰:09/01/21 18:07 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#373 [幸]
放課後だった。
ちえみがいつもと違う
雰囲気で私に話しかけたのは…。



『なに?』

私は屋上に呼ばれ
重たい足で登ってきた。

⏰:09/01/21 18:13 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#374 [幸]
『かな…T大に行かないの?
なんで!?あんなに行きたがってたじゃん!?』



『T大より、行きたいと
思った大学があったから…。』


ちえみは何かを言いたさげな表情だった。

⏰:09/01/21 18:15 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#375 [幸]
『ちえみ……?』


『私、かなは羨ましいと思ってた。
いや、嫉妬してた…。

頭いいし、家族仲いいし、運動凄いし…

だから勉強だけは負けたくなかった。
でも、私がどんなに努力しても
かなにはかなわなかった。』


嫉妬………
そんなこと思ってたの?

⏰:09/01/21 18:19 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#376 [幸]
『かなを目標として
今まで勉強してたのに
そのかながランク下げてL大…?
なめてんの?


L大はT大と違って
倍率が低いから入りやすいんだよ。
だからかなならすぐ受かるわ。』



『ちえみはいいよね…。』


言われっぱなしの私じゃない。
言い返してやった。

⏰:09/01/21 18:24 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#377 [幸]
『ちえみは夢があって、
自分の夢のためにT大
を目指して…
でも私は違った。

自分のためにT大を目指してた
わけじゃないの。

でも、ようやく夢見つかったの。
私はその夢のために
L大に行くの。
別に逃げ出したわけじゃないから!!』



ちえみはさらに怒り出した。

⏰:09/01/21 18:28 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#378 [幸]
『私も看護という夢があるわ!!
でもT大を受験する…

私はね、かなと違って
小、中、高ってスライドだったの。

だからT大に入らなきゃいけないの!!』



『でも大学を選ぶにも
最優先したのは小さい頃からの
スライドでしょ?』


外は日が暮れてて
鳥が1羽、速く飛んでいた。

⏰:09/01/21 23:19 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#379 [幸]
『なっ……』
『ちえみはそこまで
看護婦にはなりたいとは
思ってないんじゃないの?』




ここで、こんなところで
友情ってなくなってしまうもんなのかな?

⏰:09/01/21 23:24 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#380 [幸]
かと言って、
ここで私が謝ったら
さっき言ったことが
説得力ないって思われそうだったから

何も言わず去った。




……意見が違うって
大変なんだなぁ。

⏰:09/01/21 23:25 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#381 [幸]
もし、この出来事で
前みたいに話せなくなったら
どうしよう。。。
でもちえみはそんな奴じゃないと思うけど。




かけるも、小早川君も…
なんか最近、ケンカばかりだなぁ。

⏰:09/01/21 23:27 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#382 [幸]
そんなことを考えながら
図書館に行った。



1時間勉強したが、
いつもより集中できなかった。

気晴らしに本を読もうとした。

⏰:09/01/21 23:32 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#383 [幸]
すると“手話”という
文字が見えた。


手話……
手話をできるようになったら
かけると話せる…。



私が振った話のせいで
ケンカになったんだから
私から謝らなきゃ。

⏰:09/01/21 23:33 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#384 [幸]
さっそく席に着き、
やってみた。



おはようございます
こんにちは
さようなら


日常会話をまず覚えよう。

⏰:09/01/21 23:35 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#385 [幸]
私は手話に没頭してしまい、
どんどんページをめくった。



すると、“好き”という文字が目に入った。



こうやって告白するんだなぁ…
と、改めて理解できた。

⏰:09/01/21 23:37 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#386 [幸]
“好き”という言葉は
〜したいという言葉と
同じ動作をする。



へぇ〜…
じゃあもし私がかけるに
告白するとき………


って、私何考えてんだっ!?

⏰:09/01/21 23:38 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#387 [幸]
とりあえず、この本を
借りようと思い、
席を立ったとき

小早川君が私の後ろにいたことに気づいた。




『あっ…鮎川…』
『へっ?』

⏰:09/01/21 23:40 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#388 [幸]
『何してんの?』
『えっ……あっ、そ…』


どうやら私は変な行動をしてたらしい。


私はその本を借り、
小早川君と一緒に帰った。

⏰:09/01/21 23:41 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#389 [幸]
『鮎川!!』


沈黙の中、切り出したのは
小早川君だった。



『この前はごめん!!
俺……』

『違うの…私の方こそ
ごめんなさい…。』

⏰:09/01/21 23:43 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#390 [幸]
『人の意見を勝手に
拒否って…
私の意見が正しいわけじゃないのに。』



そう言って私は歩き出した。

すると小早川君は笑顔で

『これで仲直りだな』


と答えた。
私も笑顔で返事した。

⏰:09/01/21 23:45 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#391 [幸]
『あのさぁ、手話の本を借りて
習得したいの?』



小早川君の突然の質問に驚いた。
でも、なんとか答えた。

『うん、勉強の気晴らしに
手話の本を読んで
日常会話くらいは覚えたいの。』


『なんで?』
『手話で話したいから!!』

⏰:09/01/21 23:48 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#392 [幸]
私は笑顔で言った。


『……誰と?』




小早川君は足を止めて聞いた。


『ん〜私が怪我をした時
ハンカチをくれた人と。』



さすがに本当のことは
言えなかった。

⏰:09/01/21 23:50 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#393 [幸]
『そっかぁ。』


小早川君は再び歩き始めた。



そして、そのまま別れた。

ふと携帯を見てみると、
メールが来ていた。

⏰:09/01/21 23:52 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#394 [幸]
相手はかけるだった。



“今すぐあのレストランに恋。”



うれしかったが
なぜ来いっていう字が恋なんだか。

私は急いでレストランに向かった。

⏰:09/01/21 23:55 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#395 [幸]
『はぁはぁはぁ…。』



レストランの看板には
“準備中”と書いてあった。


私は気にせずに入った。


『やぁ、かなさん。
いらっしゃーい!!』

と、またあの男性がいた。

⏰:09/01/21 23:56 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#396 [幸]
『かけるに呼ばれたんですけど…』


『かけるが聞いてほしいって。』




奥を見ると、かけると
目があった。

その途端、ピアノの演奏が始まった。

⏰:09/01/21 23:59 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#397 [幸]
とても綺麗だった…
イライラしてた気分が
一気に忘れさせてくれる。


かけるのピアノ好きだなぁ。




かけるのピアノは
どこまでも続いていた。

⏰:09/01/22 00:00 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#398 [幸]
かけるは弾き終わると
私に手話で話しかけてきた。



『‘昨日わごめん!!
このピアノで許して?’だって。』

男性が手話を通訳してくれた。



『平気だよ。
素敵な音楽、ありがと』

かけるは私の口で読んだのか、
ゆっくり笑顔を見せた。

⏰:09/01/22 00:04 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#399 [幸]
そしてまた手話をした。


『‘家まで送る’だって』


『えっ?いいよ。』

『‘少しぐらい格好つけさせろ’だって。』


『じゃあ、お言葉に甘えて。』

⏰:09/01/22 00:06 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#400 [幸]
2人でずうっと笑いあってた。
この時間がとても愛しく思えた。



『ごめんね〜。
今日は定休日だったし
かけるがいきなりピアノ
貸してって言うからさ―
ご飯ないの。』



と、男性が言った。

『いいえ、ピアノを
聞くために来たんですから。』


本当はかけると話したかっただけだけど。

⏰:09/01/22 00:11 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


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