人生の案内板
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#401 [幸]
『ならよかったぁ。
気をつけてね。』


『はい!!』
『あれ?かなさん、
少し顔、赤くない?』


『そうですか?
走ってきたからだと
思いますよ。』



多分……。

⏰:09/01/22 00:13 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#402 [幸]
そういえば、あの人も
私のこと名前で呼んでるんだから
私も名前で呼ばないと。


『すみません、名前
なんて言うんですか?』
『ああ―源蔵。
変な名前でしょ?
だからかけるみたいに
“じじさん”って呼んで?』


『…じじさん…』

私は口にだした。

⏰:09/01/22 00:16 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#403 [幸]
『いやだ…?』

『いえ、店の主人と
こういうあだ名で呼び合う
って凄いうれしいっていうか…』


『そうかい、じゃあね。』



じじさん……
本当にいい人だなぁ。
改めて思った。

⏰:09/01/22 00:18 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#404 [幸]
私は歩きながら携帯で
文字を打って、
かけると話した。



じじさんとの関係など
色んな話をした。

“両親が亡くなったらしく、
俺の育ての親なんだ。
でもじじいみたいだから
俺がじじさんってあだ名考えたんだ。”



かけるはじじさんの話をするとき
子供のようにはしゃいでいた。

⏰:09/01/22 00:22 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#405 [幸]
…それにしても暑い。
まだ秋だからかな?
今は温暖化だし。

さっき走って、今歩いてるせいか…?




ああ…かけるが一生懸命
携帯打ってる。
まだ話したいことがあるんだ…。

でも………

⏰:09/01/22 00:24 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#406 [幸]
そう―。
かけるは耳が聞こえないんだ。


だから私が倒れてた音が聞こえなかった。

おまけに携帯打ってる のに集中してるから、
なおさら――。

⏰:09/01/22 00:25 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#407 [幸]
隣で歩く気配がない…。
あれ?
かな……?



ようやくかなが倒れてることに気づいたかけるは、

慌てて来た道を戻った。

⏰:09/01/22 11:48 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#408 [幸]
かな!!
かな!!

心の中で叫んでも
誰も気づかないし、
返事も聞こえないこの世界。



かけるはこんな自分を
どう思ったのだろうか?

⏰:09/01/23 19:59 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#409 [幸]
一方、私は頭はボ―っとしていて
体も熱かった。



か…かける…。

世の中は酷いなぁ。
人が倒れてるのに
知らんふりかよ。

⏰:09/01/23 20:01 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#410 [幸]
誰もタスケテクレナイ…


自分しか、守れないんだ。
自分で立ち上がらなきゃ…。



ザザっと音がした。
誰かが私の前に立っていた。

⏰:09/01/23 20:04 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#411 [幸]
顔を踏ん張ってあげてみる。



かける……?
かけるだ…

息が荒い、かけるの吐息が
頬に当たる。



必死に人差し指を左右に振っている。

⏰:09/01/23 20:06 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#412 [幸]
たしか…その手話は…



私は少し上半身をあげ
左右の胸の少し上を
片手でタッチした。


‘大丈夫だよ……’




その後のことは覚えてない。

⏰:09/01/23 20:10 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#413 [幸]
柔らかい匂い。
ああ、私この匂い好き。


なんだろ?
なぜこんなに癒されるんだろ?



母さん…?

⏰:09/01/24 00:50 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#414 [幸]
母さんがスタスタと歩いてる。
私は必死に追いかけた。


『母さん!!』

やっと追いつき、
母さんの腕を掴んだ。


『…かな。』


母さんは少し悲しい顔で振り向いた。

⏰:09/01/24 00:51 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#415 [幸]
『どうしたの?』


私がそう聞くと、母さんは
さらに悲しい顔をした。


『あんた……L大に行くんでしょ?』

『えっ……?』



母さん………?

⏰:09/01/24 00:53 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#416 [幸]
『私が死んだ日、
誓ってくれたわよね?
絶対T大に行くって…』

『ごめん……
でも私、L大に行きたい…。
約束破っちゃうけど、

違う……母さんとの約束を破ってまで
L大に行きたい…。』



こんなに自分の意見を主張したことがなかった。

⏰:09/01/24 00:55 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#417 [幸]
母さんはどう思ってるのかな?


少し心配になったので
母さんの顔をよく見ようとした。


すると母さんは

『そう…。ならなんで
母に言わなかったの?

最近、私寂しいの。
あなたが仏壇に来てくれなくて。』

⏰:09/01/24 00:58 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#418 [幸]
と、また悲しい顔をした。


『春の頃はよく仏壇に
来て、話しかけてくれたのに。


私との約束を破ってまで
行きたい大学ならそれてよい。

しかし、私にちゃんと
言ってほしかった…。
あなたは私の子どもなんだから。。。』



そう言いながら抱きしめてくれた。

『母さん……。
ごめんね。これからは
ちゃんと話しかけるから…。』

そう言った。

⏰:09/01/24 01:01 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#419 [幸]
『かな。
人の心のわかる人になってね…。』


そう母さんが言うと
私から離れようとした。

『待って!!
なるから行かないで!!
私を置いてかないで!!』


とっさにそう叫んだが
母さんは消えてしまった。

⏰:09/01/24 01:03 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#420 [幸]
『母さん!!』


そこで目覚めた私。



夢……。
んだよ、夢かよ…
てか、ここは…?


見覚えのない風景。
私は記憶を遡ってみる。

⏰:09/01/24 01:05 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#421 [幸]
時計は…!?


携帯で時間を見てみると
7時を回っていた。




『しっ…7時!?』


私は起き上がろうとしたが
体がふらついてしまって、そのままベッドに倒れた。

⏰:09/01/24 01:32 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#422 [幸]
‘こら〜ちゃんと寝なきゃ。’



この文字がいきなり現れた。
かけるの字だ。


かけるが私の顔に近づいてきた。



な…なになになに〜?
心臓が速く動いているのがはっきりわかる。

⏰:09/01/24 01:34 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#423 [幸]
『も、もう大丈夫ですカっっラ…。』



そんなに顔を近づけられると
何を話せばいいのか解らなくなってくる。


かけるは急いでノ―ト
に何かを書き出した。

⏰:09/01/24 01:36 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#424 [幸]
‘熱を計らせて頂いたよ’


『えっ…?』

‘8度もあれば倒れる
てか、俺がもう少し早く
気づいてやれば…’



かけるは悲しい顔をしていた。
その顔が夢の中で出てきた
母さんととてもかぶった。

⏰:09/01/24 01:38 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#425 [幸]
『ううん……
てか、私の話してる事
わかるの?』



今まで普通に話してきたのに…。
そう疑問を持った。

本当はこの話しを反らしたかっただけだが。



‘今、補聴器をつけてるからね
多少聞こえる。’

⏰:09/01/24 01:40 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#426 [幸]
『そうなんだぁ。』



すると、お粥が出された。

『作ったの?』


‘当たり前だろ
食べないと元気でないからな’



私は一口一口、味わいながら食べた。

⏰:09/01/25 23:49 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#427 [幸]
『おいしい…』
‘誰が作ってもそんな味だよ’



かけるはそうノ―トに書くと
薬の水を出した。


ううん…
かけるが作ったと
わかっているから余計
嬉しくて元気がでるんだよ。


そう心の中で言った。

⏰:09/01/25 23:52 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#428 [幸]
‘明日も学校だよな?
休んだ方がいいよ’

明日は土曜日。
いつも通り学校はある。
しかし、私はL大合格
を目指している。
時間を無駄にしたくない。

⏰:09/01/25 23:56 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#429 [幸]
『嫌…。私、一応受験生だし。』


‘風邪治してからの方が
頭に入るよ?’


『嫌。』




かけるは顔で会話してるかのように
表情が豊かだった。

話さなくても、
かけるの言いたいことが分かる。

⏰:09/01/26 14:44 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#430 [幸]
かけるは悲しそうな顔をした。
なぜか私がイジメてるみたいだ。


『わかったよ!!
学校には行かないから
私ん家まで送ってほしいんだけど…。』


‘いいよ。
車に乗れよ’



車!?
えっ…まじ!?

⏰:09/01/26 14:48 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#431 [幸]
かけるはすぐさま、
車の鍵を持って行ってしまったので

私はしぶしぶかけるの車に乗った。



ふと、車の横の建物を見た。
大きな綺麗なアパートがある。

⏰:09/01/26 14:52 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#432 [幸]
ここの二階の一番左に
かけるの部屋があった。

私はかけるがいつも寝ているベッドで…
キャ―と叫びたくなった。
かけるの匂いが体にしみてるかのように
覚えてる。



今乗っている車も
少しだけかけるの匂いがする。

⏰:09/01/26 14:54 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#433 [幸]
そう思ってる時、
かけるが運転席に乗り
隣にいる私に携帯で文字を打ち、
聞いた。


‘かなさんの家の近くに何がある?’

私も携帯で文字を打ち


『〇〇ラ―メン屋がある』
と言った。

⏰:09/01/26 14:57 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#434 [幸]
‘了解’
かけるはそう手話でし、
カ―ナビで〇〇ラ―メン屋を調べ、
そこに向かってアクセルを踏んだ。




運転中の時は話せない。
ちょっと寂しかったが
信号で止まるたびに、
かけるがその時にしか
見せない笑顔で私に微笑みかけてくれた。



その瞬間が無性にかわいくて
頭が重いはずなのに、
忘れてしいそう。

⏰:09/01/26 15:01 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#435 [幸]
そして私の家に到着。



さきほどよりフラフラ
しなくなったが
頭がまだ痛い。


かけるは私の部屋まで
寄り添いながら私を運んでくれた。

さっきはそんなこと
しなかったくせに。

⏰:09/01/26 17:04 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#436 [幸]
‘おれん家にあった風邪薬
ここに置いとく。’



かけるはそうノ―トに書き
私の机の上に薬を置いた。


『ありがと…。』

確か、ありがとの手話は…。


よく思い出しながら
私はお礼の手話をした。

⏰:09/01/26 17:07 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#437 [幸]
するとかけるはとても
嬉しそうに笑った。

‘手話できるの?’



『ううん。挨拶しか…』

‘でも上手だよ
〈大丈夫〉も上手だった’

⏰:09/01/26 17:11 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#438 [幸]
『えっ…えへっ』


‘なに照れてんの?’


『べっ、別に照れてないし。』


‘はいはい。
でもなんで手話を?’



言えるか―!!?

⏰:09/01/26 17:15 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#439 [幸]
絶対言いたくない。
言ったら調子こくもん。
私はしばらく黙っているとかけるは


‘まぁ、別にいいけど’
そうノ―トに書いた。


なぜか寂しかった。


するとかけるは私の机
にあったL大の赤本を取った。

⏰:09/01/26 17:19 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#440 [幸]
‘かなさん、L大目指しているの?’


『うん…
心理学を学びたくて。』

‘ふ〜ん。推薦で?’



…推薦。

⏰:09/01/26 17:21 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#441 [幸]
‘でも心理学部の推薦
はむずいよ
全部論文だし。’




『私はセンターで受験するつもりだけど…』

‘あっ、そうなんだ。’


一般入試の論文をさけるためにね。

⏰:09/01/26 17:23 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#442 [幸]
‘そなんだ。
じゃあ、頑張れよ
待ってっから。’



自分の顔が熱くなってるのが
よくわかった。


『早くかえれ!!』

と叫び、布団にもぐった。

⏰:09/01/28 11:26 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#443 [幸]
ツンツンと、綺麗な指で
つつるかける。



『なに?』

‘熱あがったんじゃん?
さっき顔が赤かった。’


『いいから早くかえれ!!』


と、叫びながら玄関まで
かけるの背中を押した。

⏰:09/01/28 11:29 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#444 [幸]
ガチャ―

玄関の開ける音。



『かな?』
『父さん!?』


父さんがこちらをびっくりした顔でみていた。



『だっ……だっ…』

顔をピクピクさせながら
そうきいた。

⏰:09/01/28 11:31 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#445 [幸]
『父さんこの人は…『お前は黙ってろ!!』



私が言おうとした瞬間、
父さんが怒鳴った。



‘娘さんの友達です。
娘さん、風邪気味だったので
家まで送りました。

では失礼します。’



かけるはそうノ―トに書くと、
私に会釈して帰った。

⏰:09/01/28 12:06 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#446 [幸]
『なんだよ。ノ―トに
こまこま書きやがって。
そんで俺が来た途端に
逃げやがって。
情けない男。』



私は父のその一言がすごく傷ついた。

それと同時に憤りを覚えた。


『そんなこと言わないで!!
彼は耳が聞こえないの
話さないんじゃない!!
話せないの!!

なんで気づかないの?』

⏰:09/01/28 19:05 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#447 [幸]
怒鳴り声をあげた私と裏腹に
父は静かな声で言った。


『世の中にはな、かな
みたいな人ばかりじゃないんだよ。

俺みたいに鈍感なやつもいるんだよ。』



そして父は速やかにテレビのスイッチを押した。

⏰:09/01/28 19:07 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#448 [幸]
一言、謝ればいいのに。
そう思いながら布団に入った。




翌日。
熱もすっかり下がったので
学校に行った。

⏰:09/01/28 19:12 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#449 [幸]
『かな!!』


ちえみの声に反応してしまった。



いつもなら喜ぶのに。


『ちえみ……』
『私はT大を目指す。
だから…お互い頑張ろ。
あなたは私の友達。
そしてライバル。
私はずうっとこの関係でいたいんよ。』

⏰:09/01/28 19:18 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#450 [幸]
私はちえみの言葉を決して
忘れないだろう。

こんな友達、初めて。




『私も……。』


私がちえみの立場だったら
こんなことが言えるのか?


いや、ちえみの性格だからこそ
言えるのだ。


そういう所が尊敬してしまう。

⏰:09/01/28 19:21 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


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