人生の案内板
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#51 [幸]
まず、その質問に対しては
首を頷くだけだった
しかし、次の質問には
思わず口が止まってしまった。
『T大学に行ってさぁ
何になるの?』
『え………』
:08/12/09 18:04 :W53H :GBaDNQzs
#52 [幸]
何になる……?
私は何になりたいの?
わからない。
私はただ、母さんの気持ち
に答えるだけだった。
彼の質問されて
初めて気付いた。
私はなぜT大学を目指してるのか?
:08/12/09 18:07 :W53H :GBaDNQzs
#53 [幸]
『なんでだろう…』
私はそう呟いた。
さっきまでギラギラしてた彼の目だったが
今はとても優しい目をしている。
『…わからねーなら、
なんのために必死に高校で勉強して
T大学を目指してるんだよ
金の無駄じゃん!?』
:08/12/09 18:10 :W53H :GBaDNQzs
#54 [幸]
無駄………?
今まで必死に勉強してきたことが
無駄ってこと?
なんで?
『私は…母さんのため
に今まで必死に勉強してきたの
それなのに無駄って何よ…?』
悔しさがこみ上げてきた
今まで遊ぶのも我慢してた
それだから中学の時は
友達があまりいなかった
:08/12/09 18:13 :W53H :GBaDNQzs
#55 [幸]
『母さんのため…か…
お前もT大学に行きたいの?』
何なの!?この男。
『い……行きたいよ』
『行ってどうするの!?
何を勉強するの?
まさか大学に行くのに
それさえわからないの?』
:08/12/09 18:16 :W53H :GBaDNQzs
#56 [幸]
『五月蝿い!!
あなたこそ、弟を殺して
何をしたかったの!?』
はぁはぁと、息つがいが荒くなった。
彼は暫く黙っていたが
ようやく口を開いた。
:08/12/09 18:18 :W53H :GBaDNQzs
#57 [幸]
『俺も…母さんのため』
何言ってんの?
コイツ………
彼は驚いている私の顔を見て
フッと鼻で笑い、話を続けた。
『俺の弟、障害を持ってるんだ。
:08/12/09 18:20 :W53H :GBaDNQzs
#58 [幸]
生まれつきの障害で、
自閉症って言うんだ。
自閉症って知ってる?』
私は首を横に振った。
障害を持ってる人なんて
私の周りにはいないので
会ったことがなかった
:08/12/09 18:23 :W53H :GBaDNQzs
#59 [幸]
『自閉症は人それぞれ
なんだけど、すごく
こだわりが強いんだ。
怒ることとか、
自分の感情をコントロールできないんだ。』
ゆっくり話しだす彼の顔は
どこか寂しそうな顔をしてた。
私はその顔に強く心を打たれた
それと同時に“障害ってなんだろう”
という疑問が生じた。
:08/12/09 18:27 :W53H :GBaDNQzs
#60 [幸]
『例えば…いや、これは弟の場合だけど
弟は自分がうまくいかないとき
すごく暴れるんだ。
家の中とか、メチャクチャにして
泣いて暴れ出し、
母さんが怒るとさらに
酷くなり…
母さんは次第にアルコールを頼るようになった
父親は障害のことを理解
してくれなくて、
いつも喧嘩ばかりしてたよ』
:08/12/09 18:40 :W53H :GBaDNQzs
#61 [幸]
風がどんどん冷たくなってきた
私は先程にも言ったが
障害のことがよくわからない
誰だって、自分の思い通りにならなかったら
イライラする。
暴れ出す時もある。
でも、その暴れ方が異常だから
困っているんだ。
そう想像するより仕方なかった。
:08/12/09 18:44 :W53H :GBaDNQzs
#62 [幸]
『俺…まぁ普通に母さん
が好きだよ。
でも弟によって母さん
がどんどん崩れてく…
だんだんやせ細ってきて
母さんもストレスで
胃がやられたり
それなのに父さんは
仕事ばかり……
まぁ、浮気をしてない
だけましだけど
俺も弟のせいでかなり苦しんだ
:08/12/09 18:47 :W53H :GBaDNQzs
#63 [幸]
クラスのやつに馬鹿にされ
すごく苦しかった。
弟をなるべく外には
出さなかった。
出したらまた、クラスのやつに
馬鹿にされるし。
でも弟は外が好きだから散歩とかしたがる
だから家の中で暴れる
弟のせいで…家族がおかしくなった…』
:08/12/09 18:51 :W53H :GBaDNQzs
#64 [幸]
母さんだったらどうする?
こんなことを言われたら
私は何もできなかった
なんて言ったらいいの?
私はただ彼の話に耳を傾けるしかできない
:08/12/09 18:53 :W53H :GBaDNQzs
#65 [幸]
『ある日……
母さんが弟を叱った
まぁ、いつものことなんだけど
それは異常だった。
その日は殺気を感じた……。
う゛っ…』
彼は突然、息が荒くなった
『大丈夫?
おい、しっかりして!!』
私は彼の背中をさすった
:08/12/09 18:55 :W53H :GBaDNQzs
#66 [ゆー]
すごい作品だ‥☆
ハマりました!
:08/12/09 22:15 :W52S :IS/kphik
#67 [幸]
>>66うわぁ
ぁりがとぅござぃますx
かなり励みになりました~
:08/12/09 23:28 :W53H :GBaDNQzs
#68 [幸]
『はぁ…はぁ……』
彼は凄く震えてた。
こちらが怖く感じる程
『き…救急車…』
私はそう言いながら携帯
を持った。
しかし
『救急車……だけは
やめてくれ…』
彼は私の携帯を掴み
そう言った。
:08/12/10 01:25 :W53H :Ji6xjSfs
#69 [幸]
『なんでよ!?
あなたの体は悲鳴をあげてるのよ!?』
『やめろって言ってんだろっっ!!』
ー…っっ
彼の怒鳴った顔はとても怖かった。
お化けと比べものにならないくらいに
私は彼の迫力に負け、
救急車を呼ぶのを止めた
:08/12/10 01:28 :W53H :Ji6xjSfs
#70 [幸]
しかし、こんな所で
苦しんでいる彼を見捨てることなどできない
とりあえず、公園の
ベンチの上に寝かせた
今まで冷たかった風が
この時だけ妙に生ぬるかった
夏らしい感じがした
:08/12/10 01:31 :W53H :Ji6xjSfs
#71 [幸]
『なぁ…』
彼が仰向けになりながら
細い声を出した
『俺をどうするつもりだ?』
『…警察の所に行かせる』
私にはそれしかできない
:08/12/10 14:02 :W53H :Ji6xjSfs
#72 [幸]
『…行きたくない…』
彼の声は子どものような声だった
多少つっぱりな口調の方がまだましだった
そのような声を聞かされると
すごく耳の奥まで滲みてくる。
:08/12/11 02:19 :W53H :XQUbQhts
#73 [幸]
しかし相手は殺人犯
そんなことを言ってはいられない
『なんで?』
その代わり理由を聞きたかった
彼はつぶらな瞳で私を見、
弱々しく言った。
:08/12/11 02:21 :W53H :XQUbQhts
#74 [幸]
『俺の話、聞いてくれねーし
信じてもくれない。
しょせん警察は殺人犯となったら
そういう態度を取る奴らばっかだ』
その弱々しい声の裏には
憎しみも含んでいたように聞こえた
『じゃあ、こうしよう
私が警察の人に伝えてあげる
』
私はわざと元気な声で言った
もう、彼のその弱々しい声を
聞きたくなかったからだ
:08/12/11 02:26 :W53H :XQUbQhts
#75 [幸]
『何やってんだ?』
ザッザッと足音が近づいてくる
誰だろう?
私はそれしか思わなかったが
彼は驚いた顔をしていた
近づいてくる度にだんだん顔が見えてくる
:08/12/11 02:29 :W53H :XQUbQhts
#76 [幸]
『あっ……お前…』
その言葉を聞いてやっと分かった
警察の人だ。
彼は逃げようとためらったのか、
足がピクッと動いた。
しかし諦めたかのように
警察の方へゆっくり足を動かした
『例の男性、発見しました』
:08/12/11 02:31 :W53H :XQUbQhts
#77 [幸]
その警察は無線機でそう言った。
『この方をどうするんですか?』
私は彼の前に立ち、
そう聞いた。
『君はその子と、どういう関係なの?』
と、逆に聞かれた
:08/12/11 02:33 :W53H :XQUbQhts
#78 [幸]
『なんでもありません』
彼は私を手でどかし
そう言った。
そして警察の人がまた連絡を取ってる間に
『お礼はちゃんと言う
だが、これ以上つっこむな』
そう私に言い
警察の人と一緒にゆっくりと
闇の中へ消えていった。
:08/12/12 15:25 :W53H :HRrnrFEE
#79 [幸]
私は彼の言う通り
それ以上何も言わず
彼が警察の人と一緒に
闇の中へ消えていった
後ろ姿をただ見ていた。
私は何とも言いようのない思いで
しぶしぶと家に向かった
:08/12/12 18:46 :W53H :HRrnrFEE
#80 [幸]
家に着いて風呂へ入った。
その後はテレビを見ながら
勉強した。
今日のこの時間だけ
みたいのがあるからだ
:08/12/12 18:47 :W53H :HRrnrFEE
#81 [幸]
好きなドラマが始まった
最初は勉強しながら
見ていたが、やはり
いい場面になると、
どうしても見入ってしまう
好きなドラマも終わり
テレビを消そうとしたが
映っていたニュースに
目が止まった
:08/12/12 19:23 :W53H :HRrnrFEE
#82 [幸]
‘えー障害者の子どもが一昨日殺害されました
犯人が電話で自首したんですが
調査してる最中に逃亡しました
しかし見つかり、今もまだ
聞き取り調査をしてる最中です’
これって……
彼のこと?
:08/12/13 09:13 :W53H :A19tsGtQ
#83 [幸]
‘その犯人はなんと
お兄ちゃんなんです
13才の未成年なので
名前は放送できません
なお、母親はショックで
精神科へ行っています’
13才!?
私はテレビを消し、
彼のことを思い出した
:08/12/13 09:16 :W53H :A19tsGtQ
#84 [幸]
まだ少年じゃない…
同情しているのか、
涙がでてきた。
最初に会った彼のあの
ギラギラした目が、
ずうっと目に焼き付いていた
少年のくせにあんな目
をして…
もっと、少年らしい人生を送りなさいよ
私は何度も心の中で叫んだ
:08/12/13 09:20 :W53H :A19tsGtQ
#85 [幸]
『ただいま』
父さんが帰ってきた
私は涙を拭いて父さんに
ご飯を食べさせた
翌日、私は先生の中でも
親しみがある先生に
“自閉症”って知ってますかと聞いた
:08/12/13 09:22 :W53H :A19tsGtQ
#86 [幸]
先生は少し困った顔をしていた
『昨日のニュースのことかい?』
私は先生を見ながらコクッと頷いた
『まぁ、ドラマでやってたから
知ってるけど、鮎川は
そんなことを知って
どうするの?』
先生は優しく聞いた
私は昨日のことを全て話した
:08/12/13 09:25 :W53H :A19tsGtQ
#87 [幸]
『そんなことがあったのか…
で、鮎川はそいつをどうしたい?』
『えっ…
いや、その……』
私は昨日泣いた時
心の中から感じたことを口にした
『助けてあげたい…』
先生は初めは驚いていたが
また優しくなった
:08/12/13 09:28 :W53H :A19tsGtQ
#88 [幸]
私はその顔を見たとたんに
思ったことをすべて言った。
『なぜ、13才の少年が
あんなに苦しい思いを
しなきゃいけないのか
私にはわかりません
彼が悪くないのに…
同級生にイジメられ、
大好きな母親も壊れていき
なぜ今まで彼を助けてくれる人がいなかったのかと思うと
同情なのか、涙が出てくるんです』
:08/12/13 09:32 :W53H :A19tsGtQ
#89 [幸]
先生は頷きながら聞いてくれた
そして先生がこう言った。
『日本国憲法で、生存権がある
鮎川なら知ってるよな
みんな等しく生きる権利があるんだよ
でも、この事件を聞くと
そんな権利があるとは思えない。』
『先生…それでも日本は
外国と比べれば公共施設が立派です』
:08/12/13 09:37 :W53H :A19tsGtQ
#90 [幸]
弱々しく私は答えた
しかし、先生は少し怒った口調で
『どんなに公共施設が
よくても、周りの人が
助けようと思わなければならない
例え公共施設がなくても
そういう気持ちがあれば障害者にとっての生存権は成り立つじゃないかな』
私は先生の言葉に強く胸に打たれた
:08/12/13 09:40 :W53H :A19tsGtQ
#91 [幸]
鐘が鳴った。
私は先生にお礼を言い
教室に戻った
そして、授業が始まった
:08/12/13 09:43 :W53H :A19tsGtQ
#92 [幸]
私は授業に集中できなかった
ただ、彼は今どうしてるのかと
ひたすら思ってるだけだった。
今の私には彼の存在が大きかった
『おい、鮎川。
鮎川!!』
ちなみにシャーペンで
つつかれ
やっと私は授業にを受けてる
ことに気づいた
:08/12/13 09:46 :W53H :A19tsGtQ
#93 [幸]
『はいっ!』
私は冷や汗が出てくるほど
仰天した
今の私にはありえないことだったからだ
『ボーっとするな』
『すみません』
:08/12/13 09:47 :W53H :A19tsGtQ
#94 [幸]
授業が終わりLHRの時間になった
その後は普段と変わらず、
学校に出て家に帰って家事をした
:08/12/13 10:00 :W53H :A19tsGtQ
#95 [幸]
その後の私はいつもと変わらなかった。
しかし、授業が暇になる度に
彼のことを思っていた
そして“なんのために勉強をするのか”
私はずうっと考えた
この答えをだすのは非常に難しい。
数学よりも難しい。
なぜ解けないのか
わからなかった
:08/12/13 10:03 :W53H :A19tsGtQ
#96 [えぬ◆ENU..Li./2]
おもしろー
:08/12/13 12:34 :P905i :2/FYIF3U
#97 [みーち]
おもろー
:08/12/13 12:50 :W61SH :VyCLgZVY
#98 [幸]
:08/12/13 18:05 :W53H :A19tsGtQ
#99 [幸]
ある日のこと
それは突然だった。
学校でちなみと昼食を取ってる時
校長室に呼ばれた
みんな物珍しそうに私を見た
校長室に呼ばれたことなど一度もない
なのになぜこの時期に?
:08/12/15 23:42 :W53H :Fgji37To
#100 [幸]
校長室に入ると警察の人が何人かいた
何か悪いことしてないよね…
私はそう自分に言いかけながら
ゆっくり空いてる席に座った
:08/12/16 20:51 :W53H :hiSBvrqI
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