人生の案内板
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#510 [幸]
『お前、かけるって叫んだろ?
叫んでも来るわけね―だろ!』
『本当だよ。
かけるは耳聞こえなくなったんだからなぁ』
今度はチンピラの言葉が
しっかりと聞こえた。
:09/01/30 17:25 :W53H :Pzd97v82
#511 [幸]
『脅かしやがって…』
よく私の顔覚えてるな…
そう思い、逃げようとした時、
誰かにぶつかった。
:09/01/30 17:27 :W53H :Pzd97v82
#512 [幸]
『なに逃げようとしてんだよ!!』
そう1人が叫び、
近くにあったゴミ箱を蹴った。
『かける…』
私がそうつぶやいた。
:09/01/30 17:28 :W53H :Pzd97v82
#513 [あすか]
がんばってください
この小説大好きです!
:09/01/30 18:22 :P703i :iv0qlvd.
#514 [幸]
>>513ありがとうございます
かなり励みになります~
:09/01/30 20:13 :W53H :Pzd97v82
#515 [幸]
>>512から
そう呟いた時、見覚え
のある人差し指が現れた。
‘どうした?’
顔をあげてみる。
かける……なんで?
:09/01/30 20:16 :W53H :Pzd97v82
#516 [幸]
『うっ……かける兄…』
1人の男がそう呟いた。
かける…兄!?
…兄!?
『かっ…風見先輩っっ』
他の人たちもみな、言葉を失った。
:09/01/30 20:19 :W53H :Pzd97v82
#517 [幸]
『知り合いなの?』
私は手話で聞いてみる。しかしかけるは黙っていた。
『姉ちゃん!!通訳してくれ。』
チンピラの1人がこう頼んだ。
私は黙ってうなずいた。
:09/01/30 20:22 :W53H :Pzd97v82
#518 [幸]
かけるはチンピラたちを
見ながら手話を始めた。
『‘もうお前らと話すことはない。
早く俺の前から消えろ。’と…。』
『かける兄!!
俺ら…あんたに謝りたくて…』
私は一生懸命通訳をする。
:09/01/30 20:27 :W53H :Pzd97v82
#519 [幸]
『‘嫌、あの時は俺の
方が悪かった。
すまなかった…。
だから早く俺の前から
消えろ。
さもないと、俺の体が
耳がてめえらを許さない。’と…。』
『すみませんでした!!』
と、チンピラは大きな声をあげながら
消えて行った。
:09/01/30 20:30 :W53H :Pzd97v82
#520 [幸]
かけるはゆっくり歩き始めた。
『かけるっ!!』
私は必死にかけるの腕を
掴もうとした。
しかし、かけるはくるっと振り返った。
そして手話をし始めた。
:09/01/30 20:33 :W53H :Pzd97v82
#521 [幸]
‘さっきはごめん…
八つ当たりしてた。
やっぱ羨ましかった。
かなさんが。’
『ううん…私の方こそ
ごめん…。
かけるさんの気持ち
わからなくて。』
その時あの匂いがした。
柔らかい、私の大好きな匂いが…。
:09/01/30 20:37 :W53H :Pzd97v82
#522 [幸]
文化祭も終わり、
かけると一緒にレストランへ向かった。
私はそこで勉強をし、
かけるはピアノを弾いていた。
じじさんが私の方に来て
『今日は何かあったの?』
と聞いてきた。
:09/01/30 20:39 :W53H :Pzd97v82
#523 [幸]
『今日は私の高校の
文化祭だったので一緒に
回ったんです!!』
私はウキウキして答えた。
『楽しかったのかい!?』
じじさんが優しく聞いた。
『はいっ!』
私は笑顔で答えた。
:09/01/30 20:42 :W53H :Pzd97v82
#524 [幸]
『ちょっと話して大丈夫かね?』
『大丈夫ですよ。
休憩しようと思ったんで。』
するとじじさんが
コ―ヒ―を一口飲み、
ゆっくりと語り始めた。
:09/01/30 20:44 :W53H :Pzd97v82
#525 [幸]
かけるはY高校の
不良……だったんだ。
この辺でも有名でね。
あっ、不良っていっても
いきがってる程度でね。
いつも通り、喧嘩をしてたんだって。
でもその喧嘩は激しくて…
そこでかけるは聴力をなくしたんだ。
:09/01/30 20:49 :W53H :Pzd97v82
#526 [幸]
「聞こえねー聞こえねー!!
なんでだ!?
なぜ音が聞こえねーんだぁぁ!?」
裏の倉庫で叫びながら泣いてた。
私はかけるとそこで初めて出会った。
私はかけるをこの店に呼んで
しばらく話たの。
:09/01/30 20:54 :W53H :Pzd97v82
#527 [幸]
話したっていっても筆記でね。
「病院に行こう?
私が連れて行くから。
親は?」
「知らない。」
「なんで?」
「親は金だけ置いて行く。」
なんかね…ショック受けたね。
あの時は。
:09/01/30 20:58 :W53H :Pzd97v82
#528 [幸]
それでね一旦かけるの家に戻って
お金と保険証を取りに来たんだ。
いや―封筒の中に20万あったのは
びっくりしたね。
それで病院に行った…。
:09/01/30 23:05 :W53H :Pzd97v82
#529 [幸]
私もかけるも、喧嘩で
鼓膜が切れただけかと思った。
でも違った…。
神経に障害があったんだ。
その障害のせいで
かけるの耳は奪われたんだ。
手術しても治らない…。
:09/01/30 23:16 :W53H :Pzd97v82
#530 [幸]
『今まで、聞こえてたんだ…。』
自分がいつ、不自由になるかわからない。
五体満足の人たちは
その有り難さがわからないだろう。
自分が、あるいは周りにいる人たちが
五体不満足になったら
初めて実感する……。
私はそうだった。
:09/01/30 23:19 :W53H :Pzd97v82
#531 [幸]
『私がなぜかなさんに
この事を話したかというとね、
……かけるが笑ったんだ。』
『えっ?』
かけるのピアノが静かに
流れていた。
:09/01/30 23:34 :W53H :Pzd97v82
#532 [幸]
『かなさんから文化祭
一緒に回ろうって誘われた!
耳が聞こえなくなってから
初めて女に誘われたって
喜んで私の所に来たよ。』
じじさんも、まるで
かけるを息子のように
可愛がっているせいか、
嬉しそうに話していた。
…そうか……。
だからここはこんなにも
暖かいんだぁ。
:09/01/30 23:37 :W53H :Pzd97v82
#533 [幸]
『なんでもじじさんに
話すんですね。』
私はそう言い、水を一気飲みした。
『そりゃ、かけるは私の子。
…だと思って育ててるもん!』
じじさんは少し強調して言った。
:09/01/30 23:43 :W53H :Pzd97v82
#534 [幸]
『じじさん!!
私今ね、手話覚えてる
最中なの!
じじさん、私と会話してる時も
なるべく手話で話してくれませんか?』
じじさんが羨ましかった。
かけるは私には何も話してくれないし。
って……嫉妬!?
まさかね。相手は男なんだから……。
:09/01/30 23:46 :W53H :Pzd97v82
#535 [幸]
『いいよ。じゃあ今から
始めよう!』
にもかかわらず、じじさんは
笑って答えてくれた。
:09/01/30 23:48 :W53H :Pzd97v82
#536 [幸]
月日は流れ、12月。
クラスメートはみな、
模試の結果で大学を決めてるので、
前よりさらにカリカリしてた。
一方私は1、2年生より
勉強してない。
でも、本当に行きたい
大学が決まったせいか、
家事をしながらの勉強の方が
頭に入る。
:09/01/30 23:52 :W53H :Pzd97v82
#537 [幸]
『かな!』
『ちえみ!!』
今年最後の模試の結果が
配られた。
『A判定だった!!』
『私も!!』
ちえみと一緒にA判定が取れて
嬉しかったというより
ホッとした。
:09/01/30 23:55 :W53H :Pzd97v82
#538 [幸]
『かなはセンターでL大でしょ〜?
頑張ってよ!!』
『オッス!!』
私はセンターのみで受験する。
ちえみはセンターの8割
を取らないと一般を受験
させてもらえないらしい。
でも、お互い頑張らなきゃ!!
:09/01/30 23:57 :W53H :Pzd97v82
#539 [幸]
『かなは〜まだかけるさんと
付き合わないの〜?』
『ブッ!!』
私がパンを食べてる時に
ちえみがそんなことを
言うから、びっくり
して吐いてしまった。
『うわ―!汚い!!』
『ちょ…ちえみのせいでしょ!!』
:09/01/30 23:59 :W53H :Pzd97v82
#540 [幸]
『かなから先に告白
した方がいいと思うけどなぁ。』
『ゴホッ…なんで?』
『障害がある人って
なかなか自分に素直になれないと思う。
もしかなが本当に好きなら
告白したら〜?』
ちえみの言うとおりかも…。
:09/01/31 00:02 :W53H :93T71IzM
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