人生の案内板
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#660 [幸]
冷蔵庫の中を見た。
焼きそばがあったので
焼きそばを作った。



テ―ブルに運ぶとき
ズボンのすそが長かったので
ぐいっと折り曲げた。


トントンと肩を叩かれた。


‘うまそうじゃん’
かけるは笑いながら話した。

⏰:09/02/09 01:10 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#661 [幸]
『じゃあ、食べようか。』


いただきます

と言い食べ始めた。


食べ終わった時
かけるがあまりにも
かわいい顔で
‘うまかった’

って話すから思わず涙が出てしまった。

⏰:09/02/09 01:12 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#662 [幸]
かけるは呆れながらも
私の隣に来て、涙を拭いてくれた。


しばらく見つめ合った。



そして優しくキスをした。

初めてのキスは焼きそばの味。



顔を離すとかけるも泣いていた。

⏰:09/02/09 01:15 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#663 [幸]
‘かな……’


初めて…私の名前を手話で
呼んでくれた。


しかし、私の名前を呼んだかけるの顔を見て
なんだか切ない気分になったので
あまり嬉しくなかった。

かけるは手話を続けた。

⏰:09/02/09 01:18 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#664 [幸]
‘悪い…勝手にキスしちゃって…’


かけるはそう話すと
2人分の食器を台所に運んだ。




かける……

その時、ちえみが話した事を思い出した。


「障害者ってなかなか自分に
素直になれないと思う」

⏰:09/02/09 01:21 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#665 [幸]
かけるは私にキスをしてくれた。

じゃあ私は……。



私はかけるの方へ行き
後ろから抱きついた。


するとかけるはばっと
私の方を向いてもう一度
抱きしめた。

⏰:09/02/09 01:23 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#666 [幸]
優しい匂い。
大きな手。
茶髪の綺麗な髪。
優しい目。
広い背中。


全てが私を狂わしてく…。




私は一度、かけるを離してから
手話で話した。



『好き』


と。

⏰:09/02/09 01:26 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#667 [幸]
かけるはしばらく黙っていた。
私と目も合わせなかった。



私は心配になって

『かける…?』

と聞いてみた。



かけるはため息をつき
話した。

⏰:09/02/09 01:28 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#668 [幸]
‘俺みたいな男を?
他にいっぱい男がいるだろ!?

かなも見る目なさすぎだよ!!

俺なんて…
例えば車が後ろからきた時
気づかなくて事故る
しょぼい奴だし。

後は…’



また見つめ合った。

⏰:09/02/09 01:32 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#669 [幸]
『かけるといると
まるで、自分が酔ってるみたいに
癒されるの……。

全てが…好きなの。


アメリカに行くって言われて
会えなくなって、
……辛いよ。

毎回会うだけですごく嬉しがる
自分がいる……

それなのに……。』



今の感情を全て言葉に表した。

⏰:09/02/09 01:36 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#670 [幸]
するとかけるはまた私を抱きしめた。

抱きしめられると
かけるの匂いがもっと
嗅ぐことができる。
もっと一緒にいたいって
いう気持ちになる…。




‘もう…我慢できない…’


かけるは一旦、私を離し、手話で話した。

⏰:09/02/09 01:39 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#671 [幸]
『えっ……?』

かけるは私をお姫様だっこをし、
ベッドまで運んだ。



すると、かけるは私に
近寄ってきた。

『こっ、怖い…』

思わず言ってしまった。

‘……ごめん…頭冷やしてくる’

⏰:09/02/09 01:42 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#672 [幸]
…かける……
なにやってんだよ私!!
もう会えなくなるのに…

でもやっぱり怖い!!
でもこのまま帰りたくない!!





かける…

⏰:09/02/09 01:44 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#673 [幸]
ねぇ、もしかけるが
耳聞こえてたら普通に
好きって言えたのかな?

誰だって恋はするのに
自分の気持ちを伝えられないのは
悲しいね……。






むくっと起きた。
時計を見ると4時になっていた。

⏰:09/02/09 01:48 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#674 [幸]
はっ……?
寝てた?


‘やっと起きたかよ’

かけるは引っ越しの準備をしてたのか
ダンボールがいくつかあった。




『ごめんなさい…』

⏰:09/02/09 01:50 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#675 [幸]
‘本当だよ…’


私は思い切って大胆な
行動をとった。

自分からかけるにキスを
した。



かけるは最初、戸惑っていたが
だんだんと深くなってきた。


‘いいの?’

かけるに聞かれ
こくっと頷いた。

⏰:09/02/09 01:53 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#676 [幸]
かける……


かける……




あなたに出会えて良かった。
こんなに嬉しいことを
味わうことができた。

他の男じゃ、かけるの代わりにならないんだよ。

かけるじゃないと私が
嫌なんだよ…。

⏰:09/02/09 01:56 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#677 [幸]
‘平気か…?’


かけるは私を腕まくらをし
右手で私の髪を撫でながら聞いた。



『……うん』

幸せ……。

⏰:09/02/11 00:10 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#678 [幸]
次の日の夕方。
じじさんの所へ行き
チョコを渡した。



『いや〜初めてもらった』

じじさんはとても嬉しそうだった。


初めてだったんだ…

じじさんは確かにおじさんみたいな顔立ちだが
目が女みたいにくりっとしている。

だからチョコぐらい一回は
もらってると思ってた。

⏰:09/02/11 00:16 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#679 [幸]
そこへかけるが来た。


『昨日、渡すの忘れてた。』


と言い、かけるに渡した。

‘大事なこと忘れるな’

『うるさいな〜』




こんな日が続いたらいいのに。

⏰:09/02/11 00:18 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#680 [幸]
いつも通りかけるに家まで送ってもらった。

そして別れる時は…
おやすみのキス。




受験が終わっても、
勉強は続けている。

勉強しなきゃ一般を受験
する人たちとの差が開くからだ。


私は勉強をし、深い眠りに落ちた。

⏰:09/02/11 00:21 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#681 [幸]
刻々と、かけると別れる日が近づいてくる。

でも私たちは、1日1日を
大切に過ごしてきた。



21日。



一本の電話がかかってきた。

⏰:09/02/11 00:23 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#682 [幸]
『もしもし!?』
『鮎川かなさんですか?』


あの警察官からだった。

『あなたにお会いしたいって
前に話してたことを
覚えてる?』

『はい……』

『28日でお願いします
って言われたんだけど…。』



えっ………? 28日………。

⏰:09/02/11 00:26 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#683 [幸]
『その日じゃないと
ダメなんですか?』


『ええ、どうしてもって…。』





神様………
あなたはどうしてこんなにも
意地悪なのか?

⏰:09/02/11 00:28 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#684 [幸]
『その日は無理です!!
日にちを変えることは
できないんですか!?』

私はそう強く聞いたが
答えはNOだった。



『…考えさせて下さい…』

私はそう言い、電話を切った。

⏰:09/02/11 00:30 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#685 [幸]
私はじじさんの所へ
走って行った。


バンっと乱暴に開け
私は涙目でじじさんの腕を掴んだ。




『かける、今日の午後
暇だから大学に行ってみな!?』


じじさんにそう言われたので
L大に行った。

⏰:09/02/11 00:33 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#686 [幸]
私はメールで
“そっちに行くから待ってて”

と送信し、門に行った。


門にはかけるがボ〜っと
立っていた。



‘勝手に来てどうした!?’

かけるは私に気づき、
そう聞いた。

⏰:09/02/11 00:36 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#687 [幸]
『…ねぇ、どうしよ……』



私は警察官からの電話の事を話した。

するとかけるは真剣な顔で
手話をし始めた。


‘俺の見送りなどいい!!
そっちの方へ行け…’


『……やだ』

⏰:09/02/11 00:38 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#688 [幸]
‘かな!!’
『やだよ!!ちゃんと
かけるを見送りたい…』

‘あの少年を救いたいんじゃないのか!?
救いたいんだろ?

中途半端な覚悟じゃないんだろ?’



『……でも…でも』

涙が私の頬に流れてきた。

⏰:09/02/11 00:41 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#689 [幸]
『かけるが……好きなの!!』

私は大声で言った。
周りのL大の生徒たちに
聞かれたのか、こっちを
何人か見ていた。



‘かな…

男を追いかける女になるな!!
かなは、夢に向かって
走れ!!’

⏰:09/02/11 00:44 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#690 [幸]
『かける……』


泣いてるせいで
うまく話せなかった。



‘俺も夢に向かって
アメリカへ行く…。

かなもそうしろ…。
夢に向かって生きろ。
そこで恋愛をするんだ!!


…俺より素敵な人と。’

⏰:09/02/11 00:48 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#691 [幸]
『かける!?』
‘やっぱ無理だ…。

俺たちは障害者と健常者。
つりあえなってない…。
俺……が……
かなに支えられると
惨めな気持ちになるんだ。
どうしても。’


かけるの顔も悲しい顔をしていた。

⏰:09/02/11 00:53 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#692 [幸]
‘かなは、ただ耳が聞こえないだけと
思ってるだろ!?

でも、こっちは大きな問題なんだ。
障害者はこの問題を
一生背負って生きてく。
この気持ちと覚悟、
健常者じゃ決して分からない。


障害者と恋愛をするって
こういうことなんだよ。
普通に恋愛すると…
普通になりたいって思ってきて
惨めになってくるんだ’

⏰:09/02/11 00:59 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#693 [幸]
『……なんで!?』


時間が止まったように
感じた。



‘健常者は偏見な目で
障害者…俺を見てるから。

例えば、駅の切符売り場で点字を
読んでる人を偏見な目で
見下してる。

知的障害者がいれば
その人をからかう子供や大人。

俺は耳が聞こえなくなって
気づいたんだ……。’

⏰:09/02/11 01:04 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#694 [幸]
『…私を…信じてなかったの?』


‘かなみたいな人、
めったにいないよ…。

かなはカウンセラーの
仕事をしてみたいんだろ?
このチャンスを生かして
健常者に障害者のことを伝えてほしい’

⏰:09/02/11 01:08 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#695 [幸]
『…え?』
‘伝えてほしい…
少しでもいいから、
障害者のことを理解してほしい。’


かけるは空を見上げた。


‘助けてあげてとは言わないけど
偏見はしない…
そんな都合のいい世界には
なれないと思うけど

理解してほしいんだ。
俺たちはただ、それを
願ってる。’

⏰:09/02/11 01:17 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#696 [幸]
‘かなには、そういう人
になってほしい。

いや、別にならなくてもいいけど…



とにかく、俺のために
自分の夢が遠ざかる事は
よしてくれ’



私は手で自分の顔を覆った。
そして14日の雨のように泣いた。

⏰:09/02/11 01:20 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#697 [幸]
かけるは私のその姿を
黙って見ていた。




何もしてこないかけるを見て
私はもう無理なんだと思い
かけるの横を通って
ふらふらと歩いた。

⏰:09/02/14 01:11 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#698 [幸]
私……
もう一度聞いてみるよ…
そして、なんとかかけるの見送りに
行くよ………。



そう何度も思った。


しかし、電話で聞いてみたが
母親は精神的な病気
なので無理だった。

⏰:09/02/14 01:14 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#699 [幸]
私は自分の部屋に着き
ベッドに寝転んだ。





2月最後の日。
28日が刻一刻と迫ってくる。

⏰:09/02/14 01:18 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#700 [幸]
‘27日。会いたい’


私は思い切ってかけるに
メールをした。





…これでかけると会うのは
これで最後だ。


そう自分に言い聞かせた。

⏰:09/02/14 01:20 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#701 [幸]
27日。
私がかけるの家に行くことになった。



これで最後……。


これで最後。。。


私はなるべく笑顔で
かけると話した。
かけるは静かに笑っていた。

⏰:09/02/14 01:22 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#702 [幸]
『知ってる?
ゴリラは大人になると
笑わなくなるんだって!!』


‘それCMのやつだろ?’


他愛もないこの時間が
愛しく思えた。

こんな会話をしてる時
かけるが急に私を抱き寄せた。

⏰:09/02/14 01:24 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#703 [幸]
あぁ…この匂いだ。
私は一番最初にこの匂いに惚れた。




もう明日になったら
かげなくなるの?


するとかけるが一旦
私を離し手話を始めた。

⏰:09/02/14 01:27 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#704 [幸]
‘かな……
今、この世界は障害者と
健常者は共存できてないと思う。

それは昔も今もそうだと思うけど、
なかなかこの差別を乗り越えて
生きていけないと思う。

かなみたいな頭がいい人もいれば
俺みたいに…自分が障害者
になって初めて気づく
馬鹿な人もいる’

⏰:09/02/14 01:30 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#705 [幸]
私はかけるのこの姿を
目に焼き付けた。


‘だから……
かなはその差別を少しでも
なくなるような世界にしてほしい。

カウンセラーとして
あの少年みたいな子を
救ってほしい……。

そしていつか、障害者と
健常者が共存できるように
してほしい……。’

⏰:09/02/14 01:34 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#706 [幸]
…かけるがなぜアメリカへ行くのか
なんとなくわかったような気がした。


でも私はあえてかけるに聞かず
かけるに抱きしめた。




深く…身も心も絡み合った。

⏰:09/02/14 01:38 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#707 [幸]
終わった後、
ベッドでかけるとたくさん話した。



‘二年で戻ってくるから
大学で会えるよ。’

『うん…』



‘本当はアメリカに行きたくない…’

⏰:09/02/14 01:45 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#708 [幸]
口パクでかけるがそう言ったのを
私はわかった。


『なんで?』



そう聞いてもかけるは
優しく私の髪を撫でるだけだった。


‘今のはうそ。’

と手話で話して……。

⏰:09/02/14 01:47 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#709 [幸]
28日。

私は病院へ行った。




『鮎川さん、どうぞ』

看護婦さんに案内され
個室に入った。

そこにはやつれた、
白髪ばかりで、
しわの多い女性がいた。

⏰:09/02/14 01:53 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#710 [幸]
『あなたが…鮎川さんですか?』


かすれた声で聞いてきた。
また警察官の人に支えられながら
一歩ずつ私に近よった。


『はい……』

私は静かに答えた。

⏰:09/02/14 01:55 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#711 [幸]
『あの事件の真相を
話してください。』
警察官がそう言うと、
その女性が呟いた。



『私には、2人の…
息子がいました。
一番上が心の優しい子
でして、いつも障害者を
持ってた弟のことを
優先に考えてくれました。』

⏰:09/02/14 01:57 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#712 [幸]
『私は二番目が障害者だなんて
初めは信じられませんでした。
でも上の子とは違う。

そうわかってきました。

しかし親戚からも親からも…
しまいには夫からも
私のしつけが悪いと言われ続けてきました。

違う……この子は障害者なの…
しつけで治らないの…



あっ、失礼しました、
弟の方は自閉症という
障害で、見た目は普通ですが
おかしな行動をとる障害なんです。』

⏰:09/02/14 02:02 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#713 [幸]
かすれた声をだしながら
話しは続いた。



『事件当日。私は相談をする
相手もいなくて……
二番目を殺そうと思ったの。

例え、育ててもこの子は
幸せにはなれない、
1人では生きていられない…。

そう思って………。』



やつれた女性は涙を流してた。

⏰:09/02/14 02:06 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#714 [幸]
『二番目を殺害した時の
あの驚きの顔……

「どうして……?」

っていう顔をしてて……
最後に「お母さん」って
言うんですのも…。

私も死ななきゃと思った……


でも上の子に止められ…
上の子は火を放したの。』

⏰:09/02/14 02:10 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#715 [幸]
…これが現実なの……?

‘障害者のことを何もわかってない!!’

かけるにそう言われたことが
脳裏に浮かんだ。



『上の子が火を放した時
私はまだこの子がいる。
育てなきゃ……
そう思って2人で逃げたんだけど

あの子…気づいたらいなくなってて。


それで私はおかしくなって
病院でずうっと入院してたの。』

⏰:09/02/14 02:14 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#716 [幸]
『そうだったんですか…』

私はそう言った。
涙が出てきた。



『あなたが、上の子に
食べ物をあげたと聞いたので
一度お礼をしたくて…
それにね、あの子、
本当のことを警察に言うなって……

でも私がやっと普通になれたから
私から本当のことを言っちゃった。』

⏰:09/02/14 02:21 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#717 [幸]
『息子さんは…
本当にお母さんのこと
好きだったんです…。
だから……』


『それじゃあ駄目。』



私はなんとかフォローを
しようとしたが
お母さんの一言で、できなかった。

⏰:09/02/14 02:24 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#718 [幸]
『私は二番目の息子を
殺してしまったわ。
だからその罪を背負って
償わなきゃいけない…。』



『…あなたがいなくては
息子さん、どうするんですか?』

私は思わず叫んでしまった。

これは周りにいた人たち
みんな驚いていた。

⏰:09/02/14 02:27 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#719 [幸]
『気持ちは嬉しいけど…
私はちゃんと罪を償わなうわ。』



『近所の人たち、みんな
知ってたんですよね?
あなたの息子さんが
障害を持ってることを。
なのに…なぜ誰も助けてくれなかったの…?

あなた1人のせいでは
ありません!!』



私はそう言った。
言ってしまった。

⏰:09/02/14 02:32 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#720 [幸]
『鮎川さん!!』

警察官にそう言われたが
私は引き下がらなかった。



『だって可笑しいでしょ!?
周りにいた人たちだって
この親子に対して差別を
してたんですよ!?


聞いたんだから…
あの少年に…。』

⏰:09/02/14 02:34 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#721 [幸]
『鮎川さん……』


お母さんが泣きながら呼んだ。

するとバッグから本を
取り出した。



『この本、知ってる?』

見たことがない本だったが
作者の名前には見たことがある名前があった。

⏰:09/02/14 02:38 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#722 [幸]
そこには、
風見かける


と書かれてあった。



かける……?
いつ本なんて……



『この本、どうしたんですか!?』

思わず聞いてしまった。

⏰:09/02/14 02:41 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#723 [幸]
『この本ね、実は
販売されてないの。』



目の前が真っ暗になった。


『この小説ね、障害者の
苦悩の話しなの。
でも…内容が国民的に
良くなかったのかもね…
“障害者独立支援法”反対!!
っていう内容だったの。』

⏰:09/02/14 02:45 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#724 [幸]
『ちょっ……ちょっと待って下さい!!
なんで!?
それじゃあ表現の自由に反してますよ!?』


私の声は震えていた。
自分でもよくわかった。


『ましてや、難聴だったからね。
この作者。
だから余計潰せやすかったのよ。

聞いた話し、この作者は
ピアノは上手いらしいけど
プロ並みではない。』

⏰:09/02/14 02:50 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#725 [幸]
ちょっと腹がたったが
黙って聞いた。


『それなのに、ピアノの推薦で
アメリカで修行してこいと
大学側からも言われ
多額のお金をあげたの。
この作者のご両親、
つい最近営業に失敗して
お金に困ってたからね…。』



…かける…
私はその場で暴れたかった。

⏰:09/02/14 02:53 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#726 [幸]
『んで、私は知り合いに
内緒で本を印刷してって
頼んだの。』




“……馬鹿らしい…”


思わず呟いた。

⏰:09/02/14 02:55 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#727 [幸]
『えっ……?』


『上の連中が違法してるのに、
国民には法律を守れってか…
上の連中が守らないのも
国民が守るかって…』

⏰:09/02/14 02:58 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#728 [幸]
『最近の子どもは…って
よく大人は言うけど
違う……

大人がそういう汚いことをするから
子どもだって…

…悔しい…』



私はそう言いながら
何度も心の中で
かける
と叫んだ。

⏰:09/02/14 03:01 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#729 [幸]
『あなたが…子どもたちに
教えればいいじゃない。』


『えっ?』



『あなたが、子どもに
大人は汚い。でも
あなたたちはそういう
大人になるなって…』


私はしばらく黙り込んだ。
そして、あることを決心し、
こう話した。

⏰:09/02/14 03:03 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#730 [幸]
『そうします…
私、カウンセラーになって
相談に来た人たち、子どもに
このことを教えます!!


そして人生に迷った人たちの…
案内板になってあげたい…

こういう道がありますって。
でも最終的に決めるのは自分。


そしてあなたの息子さんのような
子どもをもうだしたくない!!

だから案内板になります…



人生の案内板に……』


END

⏰:09/02/14 03:08 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


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