双子の秘密
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#101 [ゆーちん]
〔斗美〕


バカな私はバカなりのバカに合ったバカな高校に入学した。


斗羽はもちろん頭のいい高校。


別に羨ましくもない。


最近じゃ、比べられても…開き直っていた。


だけどやっぱりどこか意地があって、斗羽が私に少しでも近付こうとすれば私は離れていた。

⏰:08/12/08 20:04 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#102 [ゆーちん]
「斗美どこ行くの?」

「サボり。数学嫌い。」


学校にも慣れた5月のある日。


すっかりサボり癖のついた私は教室を抜け出した。


屋上への階段をコツコツと昇る。


扉を開けると太陽が出迎えてくれた。


…気持ちいい。


ひなたぼっこに最適な日。


こんな日に教室にいるなんて勿体ないよって勉強オタクに言ってやりたい。

⏰:08/12/08 20:05 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#103 [ゆーちん]
なんとなく迷路のようになっているこの屋上は、たまにサボりに来るので、最初は迷いまくったものの今じゃナビゲーションできるくらい詳しくなった。


たまにカップルがイチャついてたりもするから、気付かれないように逃げるルートだって知っている。

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#104 [ゆーちん]
私はお気に入りのひなたぼっこスポットに足を運んだ。


ラッキー。


もしかして、今日は屋上貸し切りかも?


イチャつくカップルもいなければ、煙草を吸う不良もいない。


のんびり昼寝が出来る。

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#105 [ゆーちん]
見事に貸し切りだった屋上で私は昼寝をした。


昼寝って言ってもまだ3時間目だけどね。


30分くらい寝ただろうか。


急に寝苦しくなった。


夢から意識が戻って来る。


…ん?


隣に人の存在を感じる。

⏰:08/12/08 20:09 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#106 [ゆーちん]
ゆっくり目を開けると、面倒臭い人物が座っていた。


「…何か用ですか。」

「あ、起きた?」


私を見下ろしながら笑ってるのは由良(ユラ)先生。


「昼寝の邪魔ですー。」

「こんな短いスカートで寝てると風さんにパンチラさせられんぞ。」

「セクハラー。」

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#107 [ゆーちん]
どうして隣に人がいると寝苦しくなるんだろう。


普通は人肌に安心して眠くなったりするんだろうけど、私は違う。


彼氏であろうが援交の客であろうが隣に誰かいると、グッスリ眠れない。

⏰:08/12/08 20:11 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#108 [ゆーちん]
体を起こし、先生に聞いた。


「おさぼりですか?」

「うん。チクったら屋上から落とすからなー。」

「シャレになんないよ。」


私が笑うと先生も笑った。

⏰:08/12/08 20:12 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#109 [ゆーちん]
由良先生に授業は教わっていないけど、校内の誰もが由良先生を知ってると思う。


教員の中で1番若くて、顔もまぁまぁ?


クラスの女子がギャーギャー騒ぐから、嫌でも覚える。

⏰:08/12/08 20:44 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#110 [ゆーちん]
「先生、知ってた?」

「知らない。」

「まだ言ってないんだけど。」

「僕、超能力でお前の言う事、先にわかるんですよ。」

「あっそ。」

「…ごめん、うそ。ふざけました。何?」


わたあめみたいな優しい風が私と先生の間を吹き抜けた。

⏰:08/12/08 20:45 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#111 [ゆーちん]
「校内禁煙なんだよー。」

「へぇー知らなかったー。」


明らかに知ってるでしょって感じの言い草。


知らないはずない。


教師なんだからさ。


こうやってふざけながら話しをする人って気楽でいいかも。

⏰:08/12/08 20:46 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#112 [ゆーちん]
「煙草吸ってサボってた、って校長にチクられたくなかったら100万円よこせ!」

「…お前の孫まで呪うからな。」

「アハハッ。」


先生の口元がキュッと上がり、笑いながら煙草のけむりを空へと吐き出した。

⏰:08/12/08 20:46 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#113 [ゆーちん]
「斗美は?」

「へ?」

「煙草、吸わないの?」

「吸わない。肌に悪いし。」

「ふーん。真面目だな。吸ってそうなイメージなのに。」

「よく言われる。」


携帯灰皿に煙草の吸い殻を入れ、煙草とライターと灰皿をポケットに直している先生。

⏰:08/12/08 20:48 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#114 [ゆーちん]
私は聞いてみた。


「私、先生に授業教わってない。」

「うん、そうねー。」

「何で私の名前知ってんの?」

「教師だもん。」

「ふーん。私のクラス全員の名前わかるの?」

「わかんねぇよ?斗美だけしか知らない。」

「だから何で私だけの名前知ってんの?」

⏰:08/12/08 20:48 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#115 [ゆーちん]
呆れ笑い混じりの質問に先生は笑顔で答えた。


「男だもん。」

「…意味、わかんない。」

「んー、わかんない?斗美の名前だけ、ちゃんと知ってるんだよ、俺。」

「どうして?」

「言ってんじゃん。俺だって男だもん。」


見つめ合いながら無言の会話をした。

⏰:08/12/08 20:49 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#116 [ゆーちん]
自惚れても、いいのかな。


いつもなら私に好意がある男が現れても動揺なんてしないけど…先生のような20代の人と付き合った事がない私は、戸惑うばかりだった。

⏰:08/12/08 20:49 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#117 [ゆーちん]
「え…あの…」

「ブッ。テンパりすぎ。」

「だって意味が…」

「バカだから意味もわかんないのか〜。残念だな。」


先生はニコッと笑い、私の肩に手を乗せ、グッと立ち上がった。


「バカだけどバカじゃないし。」

「そういう発言がバカっぽいんだよ。」

「…うるさいな、もう。」

⏰:08/12/08 20:50 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#118 [ゆーちん]
怒ったフリをすると先生は声を出して笑った。


「ハハッ。んじゃ俺は戻るねー。」

「さっさとどっか行っちゃえ。」

「可愛くねーの。バイバイ。」

「…バイバイ。」

⏰:08/12/08 20:51 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#119 [ゆーちん]
煙草臭い中に甘い香水の匂いがした。


ほんの少しの甘い匂いを残し、先生は屋上から降りて行く。


再び一人ぼっちになった屋上で、運動場を見下ろしながら考えた。


さっきの先生が言った意味、やっぱそういう意味なのかな。


自意識過剰になってもいいのかな。


先生、私に好意持ってくれてるのかな。


だとしたら、どうすればいい?


付き合うの?

⏰:08/12/08 20:52 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#120 [ゆーちん]
いつもの私なら告白されれば大体OK。


来る者拒まず。


誰にでも足開いててさ。


でもね、最近はちょっと違うんだ。


上辺だけの恋人とかSEXとか…面倒なんだよね。


もし先生に告白されても、今の私なら断ると思う。


って、自惚れすぎか。

⏰:08/12/08 20:54 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#121 [ゆーちん]
ファンの子に屋上から突き落とされかねないね。


変な妄想をストップさせ、私も屋上を降りた。


ちょうどチャイムが校内に鳴り響いた時だった。

⏰:08/12/08 20:55 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#122 [ゆーちん]
その2日後。


また屋上で、私の隣で美味しそうに煙草を吸う由良先生の姿があった。


「先生さぁ。」

「ん?」

「いつから煙草吸ってんの?」

「斗美ぐらいの時から。」

「ふーん。」

⏰:08/12/08 20:55 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#123 [ゆーちん]
最初は、先生が隣にいるから昼寝できないじゃんって思ったけど、話をしてるうちに睡魔なんか飛んでっちゃった。


他愛もない話をしながら空を見上げる二人に、今日も優しい風が吹く。

⏰:08/12/08 20:56 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#124 [ゆーちん]
「何で教師になったの?」

「さぁ?自分でもわかんなーい。」

「アハハ。変なの。」

「昔の俺はさ、両親や担任や警察に迷惑かけまくりな少年だったの。」

「不良?」

「俺は不良だと思ってないんだけど、周りはそう呼ぶ。」

⏰:08/12/08 20:57 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#125 [ゆーちん]
「アハハ。自覚なかったんだ。バカじゃん。」

「斗美よりバカはいないって。」

「はぁ?」


私の顔を見てクスッと笑ってから先生は言った。

⏰:08/12/08 20:58 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#126 [ゆーちん]
「更正しなきゃなーと思って、頑張って勉強とかしたの。そん時、担任に助けられたから俺も教師になるかぁと思って…今に至る。でも教師なんか俺には向いてなかったのかも。性に合わなくて毎日息が詰まるよ。」


誰にでも、悩みはあるんだと思った。


当たり前の事だけど、誰しもが悩み事を抱えてるんだと思い知った。

⏰:08/12/08 20:59 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#127 [ゆーちん]
「で、ここで息抜きですか。」

「ここは俺の場所だったのに、誰かさんが昼寝場所に使い出すから迷惑極まりないないね。」

「エヘッ、ごめん。」

⏰:08/12/08 20:59 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#128 [ゆーちん]
「お前が初めてだわ。入学して1ヵ月なのに堂々と屋上でサボって昼寝してるやつ。」

「先生も昼寝すれば?すっごい気持ち良いんだよー。」

「いいよ。起きれなかったらヤバいし。」

⏰:08/12/08 21:01 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#129 [ゆーちん]
「アラームかけて寝ればいいんじゃない?」

「また今度な。斗美が昼寝してる隙に隣で添い寝しといてやるよ。」

「何で私が寝てる隙なの。」

「目が覚めたら王子様が隣で寝てるってロマンチックだろ〜、このこの〜。」

「アハハ。キモいし、王子様って誰だよー!バ〜カ。」

⏰:08/12/08 21:01 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#130 [ゆーちん]
こうして見つけたおさぼり友達。


次にサボった時には先生は来なかった。


その次も来なかった。


だけどその次は来た。

⏰:08/12/08 21:02 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#131 [ゆーちん]
いつも一緒にサボれるって訳じゃない。


先生だって授業があるんだから、いつもいつもサボってられないもんね。


だけど一緒にサボるとなれば、なぜか楽しくなれた。


昼寝せずに、くだらない話をする。


たったそれだけなのに、楽しくて安らげる時間だった。

⏰:08/12/08 21:03 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#132 [ゆーちん]
梅雨入りをした6月は屋上ではサボれない。


他にサボれる場所を探さないと。


先生はいつもどこでサボってんだろ。


屋上で話ている時に聞いておけばよかった。


学校内で先生とすれ違ってもお互い無視するし、連絡先ももちろん知らない。

⏰:08/12/08 21:04 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#133 [ゆーちん]
しばらくは先生とおさぼり出来ないのかなー、なんて思っていたら梅雨明けが訪れた。


驚く事に梅雨中、私は一度もサボらなかった。


迷っているうちに終わった梅雨期間。


授業に出ているのに、ちっとも賢くならない私。


太陽が暑く輝きだした。

⏰:08/12/08 21:04 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#134 [ゆーちん]
せみが鳴く。


うるさい。


屋上に上る。


暑い。


「久しぶりー。」

「やっぱり居た。居るような気がしてた。」


太陽より眩しい笑顔が煙草を手に持って、私を待ってくれていた。

⏰:08/12/08 21:05 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#135 [ゆーちん]
「しばらく見ない内に太ったんじゃない?」

「うるさい!」

「アハハ。嘘うそ。梅雨の間ずーっとサボらないで授業受けてたのー?」

「うん。屋上以外サボる場所知らないし。」

「俺も知らない。だから授業がない時はずーっと職員室で引きこもってた。」

⏰:08/12/08 21:06 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#136 [ゆーちん]
乾き過ぎて暑いくらいの屋上の床に座って、こう聞いた。


「私に会えなくて寂しかったでしょー?」


期待していたふざけた答えが返って来る事はなく、先生の笑顔がスッと消えた。

⏰:08/12/08 21:06 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#137 [ゆーちん]
「何でわかんのー。」


こうやって語尾を少し伸ばして喋る癖のある先生。


私はその口調が心地よくて安心できるの。


「何で俺が寂しかったって知ってんの?斗美も寂しかったの?」

「え?あ…いや、そうじゃなくて…えっと…」

⏰:08/12/08 21:07 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#138 [ゆーちん]
先生は煙草を携帯灰皿に捨てた。


「前にも言ったよね。」

「え?」

「俺も男なの。」


頭の後ろに先生の手が回ったと思ったら、次の瞬間には目の前に先生がいた。

⏰:08/12/08 21:08 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#139 [ゆーちん]
私の唇は先生の唇と重なっていて…教師と生徒の壁を越えてしまった瞬間だった。


驚いて開いたままだった目を、ゆっくり閉じて、キスに答えた私。


甘く長いキスだった。

⏰:08/12/08 21:08 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#140 [ゆーちん]
〔斗羽〕


高校生になってバイトを始めた。


駅前のカフェ。


人見知りをするというコンプレックスがあるからこそ、あえて接客業を選んだ。


どんな時でも笑顔を作ってなきゃいけないという役割。

⏰:08/12/08 21:09 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#141 [ゆーちん]
最初は恥ずかしかったものの、1ヵ月もすれば自然に笑顔を浮かべる事ができていた。


「斗羽ちゃん!」

「あ、いらっしゃいませ。来てくれたんだ。」


このバイトのおかげで人見知りが少しは治ったのか、中学時代なんかと比べられないくらい友達が増えた。

⏰:08/12/08 21:10 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#142 [ゆーちん]
「カフェオレ1つね。たっくんは?」


友達の恵は彼氏と来てくれた。


「俺アイスカプチーノ。」

「カフェオレ1つとアイスカプチーノ1つですね。合計720円になります。」

「はいよ〜ん。」

「あ、俺出すわ。」


たっくんと呼ばれる彼氏がお金を払うと、恵は甘えた声で『ありがとう。』と何度もお礼を言っていた。

⏰:08/12/08 21:10 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#143 [ゆーちん]
彼氏ねー…。


聡志以来、彼氏はいない。


欲しいと思うけど、今度付き合うならHなんかしない人がいいなー、なんて。


そんな性欲ゼロの人なんていないか。

⏰:08/12/08 21:11 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#144 [ゆーちん]
「ごゆっくりどうぞ。」

「ありがとね、斗羽。」


商品を受け取ると恵たちは奥のテーブルに向かった。


その後、店はなかなか忙しくて恵たちが、いつ帰ったのか気付かなかった。


いつの間にか上がる時間になっていて、店長から『上がっていいよ。』と言われたので、店の制服から学校の制服に着替え、家へと歩き出す。

⏰:08/12/08 21:11 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#145 [ゆーちん]
駅前は明るく賑わっているので怖くない。


だけど駅前から少し離れると急に暗くて不気味な道があり、いつもビクビクしながら帰ってた。


こんな時、送り届けてくれる彼氏とかいたらなー…。

⏰:08/12/08 21:12 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#146 [ゆーちん]
梅雨が明けると夏が来る。


店内は涼しくて、お客さんは涼みついでに来店してくるので毎日忙しかった。


「桜井さん、申し訳ないんだけど1時間延長してもらえる?」


店長に頭を下げられちゃ断るにも断れないよ…。


夜道が怖いから、出来るだけ早く帰りたいけど…仕方ないよね。


「はい、わかりました。」

⏰:08/12/08 21:13 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#147 [ゆーちん]
いつも21時に上がるけど、今日は22時上がり。


「お疲れ様でした。」


店を出ると、ムッとした暑さが私を待ち構えていた。


明るい駅前を歩き、嫌いな暗い道を歩く。


一人ぼっちだと怖い。


だけど誰かいても怖い。


どっちにしろ、この道は怖い。

⏰:08/12/08 21:13 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#148 [ゆーちん]
やだ、やだ。


早く帰ろ…。


と、その時だった。


「桜井さん。」


心臓が跳ね上がった。


誰もいないと思っていたのに後ろから声をかけられ、私は慌てて振り返った。

⏰:08/12/08 21:14 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#149 [ゆーちん]
「あ…園田さん。」


後ろにいたのは園田さんだった。


バイト先の正社員の人。


確か25歳って言ったかな。


「ごめん、驚かしちゃった?」


無邪気に笑う園田さんと、10も歳が離れてるなんて思えない。

⏰:08/12/08 21:15 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#150 [ゆーちん]
「あの、何してるんですか?こんな道で…」

「さて問題。園田さんは何をしてるんでしょーか?」


園田さんは歩き出した。


私は園田さんの隣を歩く。


「まだ勤務中ですよね。あ、わかった!買い出しだ。」

「お〜、さすが頭のいい高校行ってるだけあるね。正解。」

⏰:08/12/08 21:15 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#151 [ゆーちん]
久しぶり。


聡志以来だ。


この道を誰かと歩いて、怖いと感じなかったのは。


「やっぱり。何の買い出しですか?」

「ティッシュ。ストック切れてるのも忘れてたんだって。店長ボケてんじゃねーの?」


声を出して笑い合った。

⏰:08/12/08 21:16 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#152 [ゆーちん]
「店長にチクりますよ?」

「んな事したら桜井さんのロッカーにカエル入れてやるし。」

「やー!絶対嫌です!やめて下さいよ?」

「アハハ。桜井さん次第だねー。」

「言いませんよー!でも、なんでこんな道歩いてるんですか?駅前のコンビニでもティッシュぐらいありますよ。」

⏰:08/12/08 21:17 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#153 [ゆーちん]
「だってコンビニ高いじゃん。ここ通って行ったらドラッグストアあるっしょ?あそこ安いし、俺ポイントカードあるもん。」

「ポイントカードって!」

「あれ?ポイントカード、バカにしちゃう系?」

「バカにはしてないですけど、園田さんはポイントカードとか似合わなくって。」

⏰:08/12/08 21:17 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#154 [ゆーちん]
「あー、よく言われる。でもうちの奥さん、ポイントカードとか割引券とか好きでさ。その影響。」


…驚いた。


結婚、してたんだ。


私だけが知らなかったのかもしれないけど、指輪はしていないし、誰からも聞かなかったから驚きで言葉が出なかった。

⏰:08/12/08 21:18 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#155 [ゆーちん]
「煙草吸っていい?」

「あ、はい。」


歩き煙草する人は嫌い。


だけど園田さんは嫌いじゃない。


出たよ、私のわがままっぷり。


わがままって言うか矛盾してる筋の通ってないだけの女、みたいな。


やだな。

⏰:08/12/08 21:20 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#156 [ゆーちん]
「車で行けば一瞬だけどガソリン高いじゃん?どうせ仕事サボれるんだから、歩いて時間掛けまくってやろーって思ってさ。」

「健康にも、いいですもん…ね。」

「俺がメタボ予備軍とでも言いたいのか、女子高生め!」

「アハッ。違いますよ。」


結婚してるなんて驚きだったけど、私には関係ない。

⏰:08/12/08 21:20 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#157 [ゆーちん]
家の近くで別れ、園田さんは24時の閉店時間までの勤務を『仕方ないから頑張るわー。』と言って、ドラッグストアに向かって歩いて行った。


大きな背中を見えなくなるまで見送り、私は家に帰る。


「ただいま。」

「おかえり。遅かったわね。」


ママが出迎えてくれた。

⏰:08/12/08 21:21 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#158 [ゆーちん]
「1時間延長してさ。」

「夜道怖かったでしょ?」

「ううん。今日は怖くなかったよ。」


斗美はまだ帰ってないみたい。


「え?何で?」

「おさぼりさんが一緒だったから。」

「何それー?」


ママの不思議な顔を残し、私は部屋へと足を進めた。

⏰:08/12/08 21:22 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#159 [ゆーちん]
それから不思議なもので、園田さんと関わる事が多くなった。


雑用させられる時も園田さんと。


レジする時も園田さんと。


掃除の時も園田さんと。


店長、わざとですか?ってぐらい園田さんとシフトが一緒になる。


嫌じゃないけど、妻がいる人と話したりするのって…何だか妙に緊張しちゃう。

⏰:08/12/08 21:24 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#160 [ゆーちん]
「桜井さんってさー。」

「はい。」

「彼氏いんの?」

「いないです。」

「ふーん。モテそうなのにね。彼氏いた事は?」

「ありますよ。でも私がフッちゃいました。」

⏰:08/12/08 21:24 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#161 [ゆーちん]
店裏で雑用させられていたので何だかんだと雑談。


恋の話なんて普段しないのに。


やだなぁ。


緊張するよ…。


「何で?好きじゃなかったの?」

⏰:08/12/08 21:25 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#162 [ゆーちん]
「最初は好きじゃなかったです。知らない人だったんで。とりあえず付き合ってみて、優しい人だから私もいつの間にか好きになってました。でも…ちょっと冷めちゃって。」

「冷めちゃったの?」

「はい。急に彼氏への気持ちがサーッて冷めて、このままだと彼が可哀相だから別れました。変ですかね?」

「ん?何が?」

⏰:08/12/08 21:25 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#163 [ゆーちん]
「普通は冷めたりとかしないんですかね?初めての彼氏だから、よくわかんなくて。」

「普通だよ。変じゃない。俺も若い頃は桜井さんみたいな経験あるよ。あんな好きだったのに、何がきっかけか忘れたけど急に気持ちが空っぽになってたり。」

⏰:08/12/08 21:26 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#164 [ゆーちん]
「そっか…私だけじゃなかったんだ。」


今日は平日なのでわりと店も暇だった。


休日なら、こんなとこでサボりみたいな雑用なんかしてる時間もない。


平和な時間が流れている。

⏰:08/12/08 21:26 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#165 [ゆーちん]
「好きな人いる?」

「いないですね。」

「何で?恋愛しなよ。学生なのに勿体ない。俺も学生戻りたいな。」

「どんな高校生だったんですか?園田さんって。」

「俺?超〜人気者。」

「嘘だぁ。」


満面の笑みで笑ってる私と違い、園田さんは小さく笑っていただけだった。

⏰:08/12/08 21:27 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#166 [ゆーちん]
「ファンクラブもあったべ。」

「絶対嘘ですよねぇ!」

「本当だって。で…そのファンとやらに手ぇ出したらガキ出来て、高校辞めてここに就職。つまんねー学生時代だったわ。」


そう言って遠くを見て笑った。

⏰:08/12/08 21:27 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#167 [ゆーちん]
「そうなんですか。じゃあ、ここ、かなり長いんですね。」

「17の時からだからー…8年目?ガキもいつの間にか今年からランドセル背負ってっからね。」

「そんな大きいお子さんのバパなんですか。見えないです。」

⏰:08/12/08 21:28 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#168 [ゆーちん]
「本当?俺、見た目若い?」


つまらなさそうに笑った園田さん。


家族の話はもっと楽しく話せばいいのに。


「若いですよ。高校生でも通るんじゃないですか?」

「マジ?じゃあ高校生と恋愛してーな。」


【高校生】って単語だけで楽しそうになる園田さん。


親父じゃん!なーんて。

⏰:08/12/08 21:29 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#169 [ゆーちん]
「アハハ。高校生と?犯罪ですよっ。」


私は笑った。


すると園田さんの顔には小さな笑顔だけが浮かべ、私の目を見ていた。


「…じゃあ桜井さん、共犯者ね。」


そう言って、園田さんは私にキスをした。

⏰:08/12/08 21:30 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#170 [ゆーちん]
「…っ、やっ!」


思わず唇から離れた。


園田さんの顔が見れない。


「…何、したんですか。」

「キスだけど。」

「どうして…ですか。」


頭が上手く回らない。


パニックになっていた私の手を、園田さんは強く握った。

⏰:08/12/08 21:48 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#171 [ゆーちん]
「好きになっちゃった。」

「でも、結婚してるんじゃ‥」

「好きになっちゃダメなの?」


そんな、強い瞳で見ないでよ。


不倫なんて、ダメに決まってんじゃん…。


好きになっちゃダメです。


そう言えばいいだけなのに…私の唇は動かずに、またキスを交わしていた。

⏰:08/12/08 21:48 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#172 [ゆーちん]
ゴトッ…


「っ!」


人の気配がしたので慌てて唇を離した。


「園田さ〜ん、ちょっとレジの調子悪いんで来て貰ってもいいですかー?」

「あぁ、わかった。すぐ行く!」


私の手を離し、園田さんは立ち上がった。

⏰:08/12/08 21:49 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#173 [ゆーちん]
「邪魔くさいな。終わったらすぐ戻るね。」

「…。」


恥ずかしくてずっと俯いていた。


園田さんは小走りで店の方に戻って行く。

⏰:08/12/08 21:49 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#174 [ゆーちん]
一人で冷静に考えた。


これは…悪い事だよね。


悪い事だってわかってるのに、どうして二度目のキスを簡単に受け入れてしまっちゃったんだろう。


今、辞めればまだ間に合う。


不倫する気はない、ってちゃんと伝えよう。

⏰:08/12/08 21:50 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#175 [ゆーちん]
そう決めて、一人で雑用を再開した。


風がぬるい。


もっと冷たい風が吹いて、私の熱を冷ましてくれればいいのに。


そんな事を考えていると後ろから物音が聞こえた。


きっと園田さんだ。


ちゃんと…言わないと。

⏰:08/12/08 21:50 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#176 [ゆーちん]
何も言わず、スッと隣に座った園田さん。


「あ、園田さっ‥」


むせ返るようなキスだった。


早く、突き放せ。


さもないと私が悲しいだけじゃない。


早く、離れろ。


早く、ねぇ早くってば…。

⏰:08/12/08 21:51 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#177 [ゆーちん]
「ンッ…フッ…」


頭で思う事と、体での反応が違い、園田さんの舌が私の口の中で、私の舌は園田さんの口の中で暴れていた。


「ンンッ…っ…園田さ…ん。」


私の口の中から園田さんの舌が出て、首筋にゆっくり這わす。


「ダメです…誰か来ますよ…。」

⏰:08/12/08 21:52 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#178 [ゆーちん]
不倫だからダメなんじゃなくて、誰かに見られるかもしれないからダメ。


理不尽でしょ、私。


さっきまで決意していた事、もう頭にないよ。


「…大丈夫。」

「待って、ダメで…す。」

⏰:08/12/08 21:52 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


#179 [ゆーちん]
園田さんを押し退けると、首元にヒヤッと風が通り抜けた。


「じゃあ今度ね。」


園田さんの優しい笑顔。


「…。」


断れない。


私の頭は縦に動いた。

⏰:08/12/08 21:53 📱:SH901iC 🆔:xLeVnYmI


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