双子の秘密
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#501 [ゆーちん]
【う】で唇を突き出すと、先生は自分の唇を重ねた。
小技の効いたキスにやられた私は、脱衣所から去って行く先生を見送った。
頭を抱えながら照れていると、リビングから『アイス食べる?』と、先生の声が聞こえた。
「食べる!」
そう答えて、私は急いで服を着た。
:08/12/11 11:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#502 [ゆーちん]
〔斗羽〕
夏休みが終わって数日が経った。
夏休み中、朝から夕方までだったバイトも、学校が始まったので勤務時間が短くなった。
園田さんに会える割合は減ったけど、前より全然大丈夫だった。
少し強くなれた?
愛の力かもね。
:08/12/11 11:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#503 [ゆーちん]
「斗羽ちゃーん!」
「あ、恵。」
太一くんとは、まだ話ができていない。
園田さんと仲直りした日の夜、太一くんにやっぱり付き合えない事を告げた。
だけど納得してくれなくて…ちゃんと会って話そうって事になった。
:08/12/11 11:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#504 [ゆーちん]
だけど全然時間が合わなくて、会えずにいた。
「夏休み中、斗羽ちゃんのバイト先に何回か遊びに行ったけど一度も会わなかったね。」
「そうだね。私結構入ってたのに。休憩中とか雑用させられてた時だったのかもね。」
「アハハ。タイミング悪かった系?」
「きっとそうだよ。」
:08/12/11 11:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#505 [ゆーちん]
恵を見た瞬間、ゾッとしたけど…案外平気だった。
平然を装える自分に驚くばかり。
恵と話していた時だ。
太一くんからのメール。
《今日の夜、公園来れる?》
恵が目の前にいるのに…本当、タイミング悪い。
:08/12/11 11:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#506 [ゆーちん]
「あれ、メール?誰からぁ?」
「友達だよ。」
「そうなんだ。つまんなーい。斗羽ちゃん彼氏いないの?」
「うん、いないよ。」
園田さんは彼氏として、友達なんかに紹介できない。
妻子持ちの彼氏がいるだなんて言って、祝福されるはずない。
:08/12/11 11:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#507 [ゆーちん]
「たっくんに頼んで、誰か紹介してもらおっか?」
たっくんねぇ…。
そのたっくんとも付き合っちゃったんだよ、私。
恵、今目の前にいる私はたっくんの浮気相手だよ。
「仲良しだね。恵と彼氏。」
:08/12/11 11:54 :SH901iC :uyR.lwfs
#508 [ゆーちん]
「仲良しだよぉ!夏休み中はあんまり会えなかったんだけど、毎日連絡くれたし。」
「別れの危機とかなかったの?」
「危機?ぜ〜んぜんっ!超ラブラブだよ。」
ラブラブ。
その言葉に嫉妬した。
:08/12/11 12:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#509 [ゆーちん]
「いいね、ラブラブ。」
「エヘッ。絶対結婚するからねー。」
恵とは別れるって、あの日言ってたのに。
別れる気なんか更々ないんじゃん。
「結婚式呼んでね!」
作り笑顔を残し、私は恵とバイバイした。
これ以上聞きたくない。
:08/12/11 12:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#510 [ゆーちん]
《いいよ。》
太一くんに返事をして、そのままポケットに携帯電話を入れた。
9月の風はまだ温かい。
夜になれば涼しくなるだろうか。
夜になれば私の悩みは軽くなっているだろうか。
:08/12/11 12:20 :SH901iC :uyR.lwfs
#511 [ゆーちん]
太一くんときちんと終わらせている事を願いながら、バイトに向かった。
こんな日に限って園田さんは休み。
顔が見たかったのに…タイミングの悪魔にでも取り付かれてんじゃないかな、私。
「いらっしゃいませ。」
レジで笑顔を売るバイトが始まった。
:08/12/11 12:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#512 [ゆーちん]
一生懸命笑顔を作った。
心が不安定なせいでミスが出てしまわないように仕事に集中した。
おかげで上がりの時間までものすごく早かった。
「お疲れ様でした。」
毎日歩き慣れた暗い夜道を少し急ぎ足で歩く。
:08/12/11 12:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#513 [ゆーちん]
《着いたよ。》
そんなメールが10分前に受信してあったから。
小走りで公園に向かうと、ベンチに座りながら携帯電話を触っている太一くんがいた。
「…お待たせ。」
「あ、斗羽ちゃん。」
私に気付いた太一くんは携帯電話をポケットに入れた。
:08/12/11 12:22 :SH901iC :uyR.lwfs
#514 [ゆーちん]
隣に座った途端、太一くんは口を開いた。
「久しぶり。」
「うん、久しぶり。」
「元気だった?」
「元気だよ。太一くんは?」
こんな話をしてる場合じゃない。
ちゃんと話を切り出さないと。
「元気じゃない。」
「え?どうかしたの?」
:08/12/11 12:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#515 [ゆーちん]
「斗羽ちゃんに別れようって言われた。」
ありがたい事に太一くんから話を切り出してくれた。
「その事なんだけど、好きな人がいるんだ。だから太一くんとは付き合えない。」
「…。」
太一くんは何も言わずに私を見ていた。
:08/12/11 12:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#516 [ゆーちん]
「前に言ったでしょ?複雑なの、この恋は。太一くんが絡むと余計に複雑なる。」
少しキツい言い方だった。
これで私が嫌われればいいのに。
なのに太一くんは引かなかった。
「2番目でもいいから…別れるなんて言わないで。」
:08/12/11 12:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#517 [ゆーちん]
何でそんな事言うのかがわからない。
「私は太一くんの2番目なんて嫌だよ。」
「何言ってんの。斗羽ちゃんは1番だから。」
「嘘つかなくていいよ。恵と今日話したの。毎日たっくんはメールくれるって。結婚するんだって。」
:08/12/11 12:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#518 [ゆーちん]
太一くんの目が一瞬それた。
「恵にはバレてない。だから今のうちに別れて、もう終わらそう。」
「恵とは…別れるから。」
「その言葉、前にも聞いた。」
太一くんは苦い顔を浮かべた。
恵と別れる気なんかないんなら、私に手を出さないで欲しかった。
:08/12/11 12:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#519 [ゆーちん]
その手を握りしめた私も悪かったけど…嘘の優しさはもういらない。
「太一くんの事、好きだったよ。今までありがとうね。バイバイ。」
私はベンチから立ち上がった。
何も言わない太一くんを残して公園から出た。
:08/12/11 12:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#520 [ゆーちん]
その時だった。
走り寄る音がして、腕を掴まれて、振り返った時には太一くんの顔が目の前にあった。
…辞めて。
そんなキスなんかいらない。
:08/12/11 12:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#521 [ゆーちん]
首を振って、逃げようとすればするほど、太一くんが私の頭を押さえる力が強くなる。
痛い。
心が痛い。
嘘もいらないしキスもいらない。
2番目なんてもっといらない。
:08/12/11 12:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#522 [ゆーちん]
そう決めたんだから…そんな優しいキスしないで。
涙が出た。
太一くんの勝手さに?
いきなりキスをされたから?
違う。
自分の弱さに泣けて来たんだ。
:08/12/11 12:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#523 [ゆーちん]
あれだけ恵にラブラブ話を聞かされて、別れを決意したのに。
あれほど私には園田さんしかいないって、特別な恋を覚悟したのに。
もう、2番目の女って役割は園田さんだけで充分だよ。
なのに…太一くんのキスを受け入れた私は、彼の体を抱きしめていた。
:08/12/11 12:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#524 [ゆーちん]
頭と体の意見が噛み合ってない自分の弱さに涙が止まらなかった。
きっと、どこかに悪が潜んでいるんだ。
園田さんが好き。
だけど私は園田さんにとって2番目でしょ?
だったら私も他の人と付き合ってもいいんじゃないかな、って。
:08/12/11 12:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#525 [ゆーちん]
太一くんにも恵がいる。
どうせ私は2番目だから。
2番目。
普通の恋がしたいだけだったのに。
こんな不毛な恋をしてるって聡志が知ったら、笑われちゃうかな。
「…別れるなんて嘘だよな?」
:08/12/11 12:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#526 [ゆーちん]
太一くんのその質問に、特に返事などはせず、ただ彼の唇に自分から重ねに行った。
もう…どうにでもなれって思った。
園田さんも太一くんもどっちも好きなの。
叶わない恋だけど、私はそれでいいって決めたから…だから、このキスをもう少しだけ楽しませて。
:08/12/11 12:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#527 [ゆーちん]
〔斗美〕
「やだ!辞めて!辞めろってば!やだー!」
最悪。
これだから暗い夜道は嫌い。
もうすぐで家だったのに。
「静かにしろ!」
「離して!辞めて!」
:08/12/11 12:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#528 [ゆーちん]
いくら抵抗しても敵わない。
悔しい。
女である事、力がない事、そして…援交をしていた事を後悔した。
「淀江さんに言われたんでしょ?離して!こんな事して何になんのよ!」
変態親父の繋がりってのはわからない物で、今、私を車に無理矢理乗せようとしている男3人は以前の客。
:08/12/11 12:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#529 [ゆーちん]
よりによってこの3人は他の親父よりも、やや若め。
力がある男をわざわざ選んで、私を誘拐ですか。
車に乗せられ、どこかに向かって走りだした。
「どこ行くのよ。」
「大人しく座ってて。」
縛られたり目隠しなどはされていない。
なので怖くはなかった。
:08/12/11 12:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#530 [ゆーちん]
ただ、怒りだけが沸き上がっているだけ。
今ドアを開けて無理矢理車から脱出してやろうか。
だけどそんな事をしても、またこいつらは誘拐しに来るんだろうな。
無駄な抵抗はよせ、ってか。
:08/12/11 12:41 :SH901iC :uyR.lwfs
#531 [ゆーちん]
着いた先は事務所のようなビルだった。
何ここ。
私、何されるの。
ドアを開けて中に入れられると、やっぱり予感的中。
淀江さんがいた。
「…何の用?」
「ここは僕の事務所だから楽にしてくれていいよ。」
「事務所?てゆーかこの人達と何で知り合いなわけ?」
:08/12/11 12:42 :SH901iC :uyR.lwfs
#532 [ゆーちん]
私を誘拐した3人を指差した。
「知り合いも何も、僕の部下だ。」
「部下?」
男は言った。
「淀江さんはここの社長なんだよ。」
あー。
なるほど。
全て繋がった。
:08/12/11 12:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#533 [ゆーちん]
お金の羽振りがいい事や、高級なプレゼントを惜しみなく与えてくれる事。
ここの3人が文句も言わずに、一致団結してる事。
「で、その社長さんは私に何の用ですか?もう淀江さんと私は何の関係もないでしょ?」
「そんな寂しい事言わないでくれよ。」
淀江さんは笑った。
:08/12/11 12:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#534 [ゆーちん]
「帰して。いくら淀江さんだからって誘拐はダメでしょ。警察にチクるよ?」
「そんな事したら家族にも彼氏にも、今までのバイトの事がバレるんだぞ?」
「…彼氏にも?」
それはダメ。
親にバレてもどうって事ない。
:08/12/11 12:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#535 [ゆーちん]
だけど先生にバレる訳にはいかない。
「私にどうして欲しいの。」
「こうして欲しいんだよ。」
そう言った淀江さんに、押し倒された。
先生の家よりフカフカのソファーが憎い。
「やだ!」
:08/12/11 12:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#536 [ゆーちん]
「君は抜け出せないんだよ。SEXのプロだ。いつかはそういう道に進めばいいと僕は計画を立てている。」
「は?計画?私を風俗にでも売るつもり?」
「そうだ。君は人気者になれるよ。」
誰だ、こいつ。
私が知ってる淀江さんじゃない。
:08/12/11 12:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#537 [ゆーちん]
私の知ってる淀江さんは、いつも私に優しいんだ。
信用できる人だったの。
こんなふざけた事をする人じゃない。
「信じてたのに…淀江さんの事。」
「信じてた?僕を?」
スカートから伸びている私の足を撫でる淀江さんの手は乱暴だった。
:08/12/11 12:48 :SH901iC :uyR.lwfs
#538 [ゆーちん]
「誰よりも私に優しかったし、私に援交を教えてくれたから。」
「フフッ。たかが男が喜ぶSEXと金の稼ぎ方を教えただけで信用?」
「私に良くしてくれた。プレゼントもくれた。」
右手は足を、左手は胸を、楽しそうに散歩していた。
:08/12/11 12:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#539 [ゆーちん]
「そんなの、君に好かれたいからに決まってるじゃんか。困ったな。好意じゃなくて信頼を得てしまったよ。」
淀江さんが笑うと、部下の3人も笑った。
「好意?」
「好かれると、油断してくれるじゃないか。」
「意味わかんない。何の油断?私をSEXのプロにさせて、風俗に売るつもりだった?まさかね。」
:08/12/11 12:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#540 [ゆーちん]
「何だ、わかってるじゃないか。だったら文句言わずに、風俗かポルノ女優にでもなれるようにこれからも頑張りなさい。」
怒り、憎しみ、後悔。
全てが混ざって、吐きそうなくらい複雑な気分になった。
:08/12/11 12:50 :SH901iC :uyR.lwfs
#541 [ゆーちん]
最初から、私を商品としてしか見ていなかったって事か。
バカみたい。
淀江さんに騙されて、私は勝手に舞い上がっちゃってて…本当バカだよ、私。
先生の言う通り。
私はバカだ。
「泣いても無駄だ。君はこれからも援交をしてスキルアップするんだ。辞めるなんて許さない。」
:08/12/11 12:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#542 [ゆーちん]
私、何か淀江さんと契約でもした?
してないよね?
だから私にそんな事を命令する権利なんて淀江さんにはない。
「こんな事バレると捕まるのは淀江さんだよ。もう辞めて…」
:08/12/11 12:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#543 [ゆーちん]
抵抗する体力がどんどん弱くなる。
「だから言ってるじゃん。彼氏にバレるよ、って。」
やだ。
先生にバレるわけにいかない。
だからって援交続けるわけにもいかない。
どうすればいい。
「自業自得だ、私。」
泣きながら目を閉じた。
何も見たくない。
:08/12/11 12:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#544 [ゆーちん]
「嫌がってるわりに、体は素直だ。」
淀江さんのその言葉に、また涙した。
私、最低。
この体は先生にしか反応しちゃいけないんだよ。
なのに、何なの。
この有様は。
SEX独特の快楽に顔を歪める私を殴り殺してやりたいとまで思った。
:08/12/11 12:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#545 [ゆーちん]
◇◆◇◆◇◆◇
繋いだ手
◇◆◇◆◇◆◇
:08/12/11 12:54 :SH901iC :uyR.lwfs
#546 [ゆーちん]
翌日の私は放心状態だった。
淀江さんが果てた後、ずっと見ていた3人の中の1人が言った。
『援助交際を続けると約束しろ。』と。
『約束する。』と答えてしまった私。
そう言わないと、帰してもらえなかった。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#547 [ゆーちん]
どうにかして淀江さん達を騙せないだろうか。
…いくら考えても私の頭では無理だった。
解決のしない問題。
今は騙せても、いつか私を風俗へ売る為にまた誘拐に来るんじゃないかと思うと溜め息が溢れた。
:08/12/11 12:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#548 [ゆーちん]
何も解決しない。
学校を休んで一日中ベットの中で過ごした。
コンコン…
「斗美、学校は?」
ママがドアをノックしながら話しかけてくる。
「…行かない。」
「珍しいわね。斗美がサボるなんて。」
ママはそう言って部屋の前から離れて行った。
:08/12/11 12:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#549 [ゆーちん]
本当、珍しい。
家でサボるのなんて。
毎日ちゃんと学校には行ってる。
だけど屋上でサボってばっか。
ていうかサボるために学校行ってる。
サボって、先生に会うために。
:08/12/11 12:57 :SH901iC :uyR.lwfs
#550 [ゆーちん]
《どした?》
学校にいたのなら1時間目が始まる時間。
先生からメールが来た。
《風邪ひいた。》
…嘘。
バカは風邪ひかないもん。
《大丈夫?》
《大丈夫じゃない。》
大丈夫なんかじゃない。
もう…ボロボロだよ。
:08/12/11 12:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#551 [ゆーちん]
《絶対安静にしてろよ。じゃあ授業あるから行くわ!》
《ありがとう。頑張って。》
先生からのメールが嬉しかった。
眠りもせず、ただベットの中で過ごした。
終わらない問題の答えを探しながら。
:08/12/11 12:59 :SH901iC :uyR.lwfs
#552 [ゆーちん]
夕方、先生から電話が掛かって来た。
「…はい。」
「調子どうよ。」
「…悪い。」
「病院は?」
「行ってない。」
「連れてってあげようか?」
「いい、行かない。それより先生んちに連れてって欲しい。」
先生に会いたくない。
会っちゃいけない。
:08/12/11 13:00 :SH901iC :uyR.lwfs
#553 [ゆーちん]
淀江さんを受け入れてしまった、こんな汚い体で、先生に会えない。
だけど口から出た言葉は、本心だった。
会いたいんだ、先生に。
「ダメ。悪化するぞー。」
「先生に会えない方が悪化する。」
「ハハッ。何だそれ。」
:08/12/11 13:01 :SH901iC :uyR.lwfs
#554 [ゆーちん]
「ごめんなさい。ずる休みなの。」
「ずる休み?珍しいな。」
「だから悪化とかそういうの関係ないの。わがままだってわかってるけど、お願い。会いたいんだ。」
「…わかった。じゃあ迎え行くよ。家の前ついたら連絡するから待ってて。」
「ありがと。」
:08/12/11 13:02 :SH901iC :uyR.lwfs
#555 [ゆーちん]
何かを悟ってくれたのか、先生の声は優しかった。
化粧も髪も服装も、何も着飾らない。
ただ先生に会いたいだけ。
私はリビングで迎えが来るのを待った。
「斗美、晩ご飯は?」
「いらない。ちょっと出掛けてくる。」
「その格好で?」
:08/12/11 13:03 :SH901iC :uyR.lwfs
#556 [ゆーちん]
さすがのママも驚いていた。
それもそのはず。
今まですっぴんで出掛けた事はない。
その上、ジャージに髪はノーセット。
ママが驚いても仕方ない。
「彼氏だからいいの。」
「彼氏だからダメなんじゃないの?斗美、何か変わったね。」
うん、変わった。
:08/12/11 13:03 :SH901iC :uyR.lwfs
#557 [ゆーちん]
彼氏だから、こんな格好見られたくなかった。
彼氏じゃなくても、どんな人にでもダサい格好は見られたくない。
でもさ、先生は不思議とそんな恥じらいを感じさせない人なんだよね。
こんなダサい私も受け入れてくれてるし。
:08/12/11 13:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#558 [ゆーちん]
「体調はよくなった?」
「うん、平気。明日から学校行くから。」
「そう。」
平気なわけない。
学校も行きたくない。
でも、いつまでもこのままじゃいられない。
《ついたよ。》
先生からのメール。
「いってくる。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
:08/12/11 13:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#559 [ゆーちん]
ママに見送られてリビングを出た。
玄関を開けて、外に飛び出す。
先生の車があった。
一気に顔が綻ぶ。
「先生!」
「ずる休み女子高生!」
「アハハ。何そのあだ名。」
「はい、乗って下さいな。」
:08/12/11 13:06 :SH901iC :uyR.lwfs
#560 [ゆーちん]
先生はいつもと変わらない笑顔だった。
ねぇ。
私の笑顔もいつもと同じ?
910号室に着いた。
「お風呂ためて。」
「はーい。」
シャワーで浴槽を軽く流してからスイッチを押す。
たまったら、先生と一緒にお風呂に入ろう。
着替えなら、確かストックがあったはず…。
:08/12/11 13:07 :SH901iC :uyR.lwfs
#561 [ゆーちん]
リビングに戻った。
「先生。」
「ん?」
返事はキッチンから聞こえた。
「何してんの?」
「鍋焼きうどん作ってる。」
「へぇ。」
「誰かさんが体調悪いとか言うから、わざわざうどん買って来たんだよー。」
:08/12/11 13:08 :SH901iC :uyR.lwfs
#562 [ゆーちん]
「だから迎えが遅かったのか!」
「失礼ね、今時の女子高生は。」
「ハハッ。何でおかま口調なの!」
笑いながら鍋焼きうどんの完成を待った。
何から伝えればいいかな。
こんな幸せで安らぐ事って他にないの。
:08/12/11 13:09 :SH901iC :uyR.lwfs
#563 [ゆーちん]
ありきたりな言葉だけど、私にとって先生は…必要な存在なんだよ。
涙が出るくらい、先生に恋してる。
「いただきます!」
「召し上がれ!」
温かいと言うより熱い。
そんな鍋焼きうどんをつつきながら食べた。
美味しかった、すごく。
:08/12/11 13:10 :SH901iC :uyR.lwfs
#564 [ゆーちん]
食べ終わり、片付けを済ませて、テレビをつけた。
「先生。」
「はい、桜井。」
「好きだよ。」
「…おいおいおいおい。いきなり照れる事言わないでよ。熱でもある?」
「本当だよ。私さ、昔はね隣に誰かいると眠れなかったの。」
:08/12/11 13:11 :SH901iC :uyR.lwfs
#565 [ゆーちん]
今までの彼氏と、一緒に眠った事のない私。
「あぁ、だから初めて会った時いきなり起きたんだ。」
初めて会った時。
…そうだ。
屋上で昼寝していた私の隣に先生が来たんだっけ。
:08/12/11 13:11 :SH901iC :uyR.lwfs
#566 [ゆーちん]
「寝顔見ようと思ったらパッて起きちゃってさ。普通、寝てたら気付かないよ。」
「うん。でもさ、先生の隣だと眠れるんだよね。不思議でしょ?」
先生は私の肩を抱いた。
もう一方の手で私の両手を包み込んでくれた。
「不思議だよー。俺がこんなガキに惚れるなんて、人生不思議な事だらけ。」
:08/12/11 13:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#567 [ゆーちん]
ダメだ。
泣けてきた。
好きな人に好きと言われて、嬉しいに決まってるじゃん。
「先生、私さ…」
もう…隠し事は嫌だった。
「援こ‥」
「援交なら知ってるから。」
:08/12/11 13:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#568 [ゆーちん]
『え。』と小さな声を零した私に、先生は言った。
「ずっと知ってた。初めて会った時から、この子悪い事してるなって気付いてた。」
涙は勝手に零れて来た。
「何で…」
「いつか辞めるって信じてたから。だから言わなかった。」
:08/12/11 13:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#569 [ゆーちん]
繋いだ手に力が入ったのがわかった。
「俺、昔やんちゃだったからそういう事してる女友達いっぱい見て来たんだ。だから斗美もすぐにわかった。」
「私…汚いのに、何で優しくしてくれんの…」
「好きになっちゃったもん、仕方ないじゃん。」
:08/12/11 13:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#570 [ゆーちん]
こんなに私を想ってくれている人がいるのに、どうして早くに辞めてなかったんだろうと、後悔だけが私を支配していた。
「辞めてくれた時は嬉しかったよ。辛かったでしょ?ずっと頑張ってたもんね。」
何言ってんの。
先生だって辛かったくせに、こんな時も私をかばってくれる。
:08/12/11 13:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#571 [ゆーちん]
援交してた事叱らないの?
叱ってくれない方がキツいな。
「辞めたはずなのに、今日会った斗美はまた悩み事ある顔してるしさ。もう隠し事なしにしてよ。俺の事信じてみない?」
:08/12/11 13:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#572 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」
昨日の夜の事を話した。
誘拐された。
淀江さんとの関係。
将来風俗に売られるかもしんない。
それと…
「私、汚いんだ。先生以外の人にも…」
泣いていた私の手をずっと繋いでくれていた。
:08/12/11 13:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#573 [ゆーちん]
「淀江さんにも反応して…最低でしょ、私。ごめんな…さい。」
淀江さんのSEXに感じていた事が1番の汚点だった。
目が痛いくらい泣いた。
「ごめんなさい…。」
「ん、わかった。もういいよ。」
こんな時でも先生は優しかった。
:08/12/11 13:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#574 [ゆーちん]
「その淀江って奴、殺してやるから。」
先生が言うと洒落にならない。
本当に殺しそうで怖かった。
「辞めて…そんな事しないで。」
「人の女をバカにしやがって…親父ごときが調子乗ってると痛い目に遭うって事教えてやんないと。」
:08/12/11 13:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#575 [ゆーちん]
昔、不良だっただけあって何かしでかしそうで本当に怖い。
でもこれで私にも勝ち目はある。
先生にバレたくないから淀江さんに従っていたけど、もうこれで従う意味はなくなった。
「明日、警察行くから。」
:08/12/11 13:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#576 [ゆーちん]
警察に行けば何とかなる。
ひとまず先生の怒りを沈めた。
「風呂行くぞ。」
「…うん。」
機嫌が悪い先生。
当たり前だ。
私のせいなんだから。
私が悪い。
「斗美。」
「ん?」
:08/12/11 13:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#577 [ゆーちん]
湯舟につかり、正面に座る先生は言った。
「そんな自分を責めなくていいから。若気のいたりってやつだろ?反省してるならもういいから。斗美には怒ってないよ。俺は淀江に怒ってんだ。」
「でも…」
「おいで。」
手招きされ、私は先生の方に移動した。
:08/12/11 13:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#578 [ゆーちん]
抱きしめられたこの体は汚い体なのに、惜しみなく力強いハグだった。
「汚くないから。でもこれからは俺だけの体だからな。他のとこ行っちゃダメだぞー。」
「…うん。」
「はい、泣かなーい!もう16歳でしょ〜?」
:08/12/11 13:24 :SH901iC :uyR.lwfs
#579 [ゆーちん]
先生に抱き着いて、止まった涙をまた流した。
この人のために私は変わらないと。
私でも、幸せになれるんだ。
幸せになりたいんだよ。
:08/12/11 13:25 :SH901iC :uyR.lwfs
#580 [ゆーちん]
翌日、朝から警察に行った。
最初は相手にされなかったけど親切な警察官が対応してくれて、真剣に話を聞いてくれた。
その日の午後、淀江さんと他の3人は逮捕された。
未成年に売春行為をさせた事が理由。
もちろんママにもバレた。
:08/12/11 13:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#581 [ゆーちん]
事情聴取で、ママは…泣いていた。
私のために泣いてくれるなんて思ってなかったから、嬉しくて私も泣いた。
帰りはママと歩いて帰った。
叱られなかった。
逆に謝られてしまった。
:08/12/11 13:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#582 [ゆーちん]
「もっと斗美にも甘やかせてあげればよかったね。ママが悪かったよ。」
「そうだね、って言いたいけど…さすがにこれはママが原因じゃないもん。私が悪いの。悪いってわかっててあんな事したんだから。」
ママを困らせたくて援交をしていた。
:08/12/11 13:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#583 [ゆーちん]
その結果、本当にただ悲しませるだけのものとなってしまっていた。
「斗美は社交的だからあまり気にしてなかったの。お姉ちゃんだし、大丈夫かなって。斗羽ばっか構ってたから…ごめんね。」
泣きそうなのを我慢して『私もごめん。』と言った。
:08/12/11 13:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#584 [ゆーちん]
「私このまま彼氏んち行くから。」
「彼氏はこの事知ってるの?」
「うん。彼氏のおかげで自分ら警察行けたの。」
「そう。彼氏に感謝しないとね。今度連れて来なさい。」
「んー…考えとく。禁断の恋だからさ。」
「禁断?」
「彼氏、私の学校の先生なの。」
:08/12/11 13:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#585 [ゆーちん]
友達にも言った事ない言葉をママに言うって不思議な感じだった。
「そう。もうそんな事ぐらいじゃママ驚かないわ。」
ママは笑った。
「ごめんね。でも私さ、先生に出会って変われたの。」
優しい笑顔で笑ってくれた。
:08/12/11 13:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#586 [ゆーちん]
すっかり暗くなった夜道でママと別れ、私は910号室に帰った。
…ピンポーン。
「はい。」
「ずる休み2日目女子高生です。」
「入室拒否だな。」
そう言って笑った先生。
中から鍵を開けてくれた。
「お疲れさん。」
:08/12/11 13:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#587 [ゆーちん]
「うん。これからも事情聴取で警察行かなきゃだけど、もうこれで開放されたのかと思うと…泣けてきた。」
先生の胸に飛び込んで、私は声を出して泣いた。
泣かないって決めてたのに。
「先生ごめんね。ごめんなさい。」
:08/12/11 13:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#588 [ゆーちん]
逮捕されたとは言え、いつかはまた太陽の浴びる世界に出てくるであろう淀江さん。
また誘拐に来るかもしれない。
でももう逃げ隠れする必要はない。
だってさ…
「俺がずっと守ってあげるからねぇ。」
たくましい彼氏がいるんだもん。
:08/12/11 13:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#589 [ゆーちん]
ブランド物は売りに行こう。
捨てるのは可哀相でしょ?
バッグや財布に罪はない。
売れたお金は受け取らない。
もう、お金なんていらない。
秘密もいらない。
先生だけいればいい。
:08/12/11 13:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#590 [ゆーちん]
〔斗羽〕
冬が来た。
ラブホテルで園田さんとSEXをした。
「斗羽ちゃんって日に日にエッチになってくよね。」
「誰のせいですか?」
「アハハッ。俺?」
「そうですよ?」
そんな事を言って、園田さんと楽しい時間を過ごした。
だけどSEXは気持ち良くなんかなかった。
:08/12/11 13:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#591 [ゆーちん]
翌日、太一くんとSEXをした。
「アッ…ンンッ…」
「斗羽…ちゃ…」
二股の何が悪いの。
不倫や浮気の何がいけない?
好きになったんだから仕方ないじゃない。
「たい…ち…アァッ…ンン、ンッ…」
:08/12/11 13:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#592 [ゆーちん]
初めてSEXが気持ち良いものだって知った。
太一くんは初めて私をイかせてくれた。
これが本当のSEXなんだと思った。
園田さんより、太一くんに会う事が増える。
太一くんとのSEXも増える。
どんどんと大胆に体を重ね合わせていた。
:08/12/11 13:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#593 [ゆーちん]
冬休みが近付く12月は、人肌が心地よかった。
何度だってキスをしたい。
何度だって抱きしめられたい。
何度だってSEXしたい。
私は完全に狂い始めていた。
恵と別れない太一くんにももう悲しんだりしない。
私は2番目なんだから。
:08/12/11 13:37 :SH901iC :uyR.lwfs
#594 [ゆーちん]
「明日から冬休みだっけ?」
ママは私と斗美に問い掛けた。
「そうだよ。」
斗美が答えた。
不思議。
今まで、ママの質問には私が必ず答えていたのに。
斗美が答える事なんかほとんどなかった。
:08/12/11 13:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#595 [ゆーちん]
最近、斗美に近づきたいという意識はめっきり消え、私から離れて行ってるような気がする。
斗美とあまり関わらない内に、姉はまた綺麗になっていた。
雰囲気もどこか落ち着いている。
少し前まではピリピリと機嫌が悪い事が多くて、よく気を使ったっけ。
:08/12/11 13:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#596 [ゆーちん]
「しあさって、クリスマスイヴじゃない?二人共どうするの?」
そうだ。
明日は12月22日。
しあさっては12月24日。
どうしようかな…。
「私は彼氏んち行くよ。」
ママの質問に、斗美は迷い1つ見せずに答えた。
斗美、彼氏いるんだ。
:08/12/11 13:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#597 [ゆーちん]
前に言ってたよね。
私の彼氏は体目的だけで付き合ってる、って。
今の彼氏もそうなのかな?
あの時、斗美の言ってる意味なんかわからなかった。
だけど今なら、今の私なら、理解できるかもしれない。
:08/12/11 13:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#598 [ゆーちん]
園田さんも太一くんも、結局は私のこと体目的なのかもしれないよ。
「斗羽は?」
「まだ未定。」
園田さんはきっと仕事。
太一くんも恵と過ごすんだろうな。
クリスマスイヴなんか、いらないや。
「じゃあママと2人でパーティーでもする?」
「パパは?」
:08/12/11 13:42 :SH901iC :uyR.lwfs
#599 [ゆーちん]
「どうせ帰って来るの遅いんだもん。」
「ママとパーティーかぁ。考えとくよ。」
部屋に戻って、さっそく考えた。
友達と過ごそうか。
今から誘うのも面倒だしな。
やっぱりママと過ごそうか。
いや、でも…
:08/12/11 13:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#600 [ゆーちん]
《クリスマスイヴは仕事ですか?》
送信。
《クリスマスイヴは恵と過ごすの?》
送信。
一応ね、一応。
やっぱりクリスマスイヴくらい、好きな人と過ごしたいもの。
好きな人…?
私には2人も好きな人がいるんだ。
贅沢者。
:08/12/11 13:44 :SH901iC :uyR.lwfs
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