双子の秘密
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#601 [ゆーちん]
いつかバチが当たるとはわかっていた。
そのバチが、もうすぐ私に降り懸かるなんて、この時の私はこれっぽっちも思ってなかった。
《ごめんね。仕事だ。》
園田さんだ。
珍しく返事が早い。
やっぱり、仕事か。
残念。
:08/12/11 13:45 :SH901iC :uyR.lwfs
#602 [ゆーちん]
《そうですか。私は21時に上がりだから、会えたら会いたいです。》
《俺は22時上がりかな。でもたぶん会う時間ないと思う。ごめんね。また埋め合わせするから。》
断られちゃった…。
失恋にも近いような気分になる。
ベットで落ち込んでいると、また携帯が鳴った。
太一くんからの返事だ。
:08/12/11 13:45 :SH901iC :uyR.lwfs
#603 [ゆーちん]
《ごめんね。別の日にクリスマスパーティーしような!》
結局は私が2番目だから、この有様なんだ。
わかりきっていた結果じゃない。
落ち込む事ないのに…どうして泣きそうに辛いんだろう。
:08/12/11 13:46 :SH901iC :uyR.lwfs
#604 [ゆーちん]
翌日は終業式だった。
明日から冬休み。
みんな自然と浮かれていた。
「斗羽ちゃーん。」
恵が話し掛けて来た。
「冬休み遊ぼうね!」
「うん…。」
:08/12/11 13:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#605 [ゆーちん]
私なんかと遊びたい?
私はあなたの彼氏の浮気相手だよ。
…なんて、恵は知るはずないよね。
「明日、彼氏と過ごすの?」
「うん!たっくんの家に泊まり行くんだ。」
胸がチクリと痛んだ。
泊まり…かぁ。
彼氏の家に泊まるなんて、私には未知の世界だ。
:08/12/11 13:47 :SH901iC :uyR.lwfs
#606 [ゆーちん]
そして迎えたクリスマスイヴ。
この日は、私の運命の日だと思う。
そんな事、まだ知らない私はバイト先で笑顔を振りまいていた。
「桜井さん、休憩入って。」
店長からそう言われた私は休憩室へと向かった。
:08/12/11 13:48 :SH901iC :uyR.lwfs
#607 [ゆーちん]
「お疲れ様です。」
パートのおばさん達が帰って行く。
一気に静かになった休憩室の奥には…彼がいた。
目が合うと、園田さんはニコッと笑ってくれた。
「メリークリスマスイヴ。」
「アハハ。」
:08/12/11 13:49 :SH901iC :uyR.lwfs
#608 [ゆーちん]
夜、一緒に過ごせなくても、今こうやって少しでも話をする事ができて幸せだと感じた。
「今日、ごめんね。」
私は首を横に振った。
「今度、映画でも行こうね。」
気分が晴れた。
「…はい!」
笑顔が零れた。
その後、他の人も休憩室に入ってきたので二人っきりは終わり。
:08/12/11 13:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#609 [ゆーちん]
残念だったけど、みんなで楽しく話せたからよかった。
「それじゃあ俺、休憩終わりなんで!」
そう言って園田さんは言ってしまった。
私は基本レジだし、園田さんは裏で作業をしているので仕事中、なかなか会えない。
今日、またもう一度会えればいいな。
会えるかな…。
:08/12/11 13:51 :SH901iC :uyR.lwfs
#610 [ゆーちん]
クリスマスイヴだけあって、今日のお客さんはカップルが多かった。
恵と太一くんが来ないか心配だったけど、お蔭さまで来なかったみたい。
よかった。
二人が一緒にいるところは見たくないもの。
21時、店長は申し訳なさそうに言った。
:08/12/11 13:52 :SH901iC :uyR.lwfs
#611 [ゆーちん]
「桜井さん、悪いんだけど1時間延長してもらえないかな?」
明日、バイトは休みだし別にいっか。
どうせ何も用はない。
「いいですよ!」
「助かるよ。ごめんね。」
そういう訳で1時間延長。
夜だと言うのに客足はなかなか減らなかった。
:08/12/11 13:53 :SH901iC :uyR.lwfs
#612 [ゆーちん]
残りの1時間。
矢のように過ぎて行った。
「桜井さん、上がっていいよ。」
店長にそう言われて時計を見ると短い針が10を指していて驚いた。
さっき見た時は9だったじゃない。
60分が5分に感じるよ。
「お疲れ様でした。」
:08/12/11 14:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#613 [ゆーちん]
着替えを済ませ、裏口から外に出た。
…店長のバカ。
1時間、延長なんかしてなかったら、こんな辛い思いしなくてよかったのに。
その場から動けなかった。
見たくなかった。
21時上がりだと見なくて済んだのに。
園田さんが…キスをしているところを。
:08/12/11 14:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#614 [ゆーちん]
見た事のない女性。
でも誰かはわかるよ。
園田さんの右手に握られていた左手の薬指には指輪が輝いていた。
…奥さんだ。
きっと、いや、絶対。
何ヶ月も奥さんとSEXしていないって理由もわかった。
:08/12/11 14:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#615 [ゆーちん]
奥さんは、妊娠中だった。
お腹が大きい。
2人目を授かってるんだ。
今まで見た事のないような優しい顔で、園田さんは奥さんに笑いかけていた。
繋がれた手が、妙に目について、私の中で何かが崩れた。
二人は歩きだした。
園田さん、今日は車じゃないんだ…。
:08/12/11 14:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#616 [ゆーちん]
ふと気付いた。
園田さんの繋がれていない方の手に、指輪があった。
嘘でしょ?って叫びたくなった。
いつもつけてないじゃない。
奥さんの前ではつけるの?
そんなの…ズルい。
いつもポケットに入れてたりしてたのかな。
:08/12/11 14:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#617 [ゆーちん]
いつもどこかに奥さんとの愛を潜めて、私に笑ったりキスしたり抱きしめたりしてたのかな。
…涙は出なかった。
出たのは溜め息だけ。
もう、終わりだ。
キリがついた。
あんな姿見せられて、これ以上付き合えないよ。
:08/12/11 14:17 :SH901iC :uyR.lwfs
#618 [ゆーちん]
《映画には行かないです。もう会うのも辞めましょう。奥さんと仲良くしてください。元気な赤ちゃんが生まれますように。》
最後の文は嫌味だった。
二人の姿を見たよ、っていう皮肉たっぷりの言葉。
もう園田さんに愛を囁かれる事はない。
:08/12/11 14:18 :SH901iC :uyR.lwfs
#619 [ゆーちん]
前のように優しくされても、丸め込まれたりなんかしない。
ちゃんと断れる。
最初から不毛な恋だったんだ。
クリスマスイヴに終わった恋。
何もこんなイベントに終わらなくても…。
でも、こんな恋にはピッタリの終わり方だったのかもね。
:08/12/11 14:19 :SH901iC :uyR.lwfs
#620 [ゆーちん]
嫌な事は重なる物で、私にはもう一つ辛い事が降りかかってきた。
コンビニに寄ったのがいけなかったんだ。
「斗羽ちゃんっ!」
恵の笑顔の後ろには、目を反らす太一くんがいた。
「バイト帰り?」
「あ、うん…」
:08/12/11 14:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#621 [ゆーちん]
「私は今からたっくんち。お菓子買いに来たんだぁ。」
「そうなんだ。」
私の笑顔は引きつっていなかった?
太一くんの笑顔は、引きつってたよ。
「斗羽ちゃんは明日どうするの?バイト?」
「バイトは休み。」
「じゃあ誰かと出掛けるの?」
:08/12/11 14:21 :SH901iC :uyR.lwfs
#622 [ゆーちん]
太一くんは私を見ない。
何でよ。
こっち見てよ。
せっかく会えたのに。
「彼氏と過ごすの。」
小声になった私。
だって嘘だもん。
彼氏なんかいない。
「彼氏いたんだぁ!今度紹介してね?」
「…うん。」
「じゃあまた遊ぼうね!」
:08/12/11 14:22 :SH901iC :uyR.lwfs
#623 [ゆーちん]
支払いを済ませていた二人はコンビニから出て行く。
その瞬間、私は見逃さなかった。
太一くんから恵の手を繋ぎに行った事。
そんな連続で繋いだ手は見たくないよ。
:08/12/11 14:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#624 [ゆーちん]
もう太一くんとも終わりだって思った。
私から別れを切り出さなくても、太一くんはわかってくれたはず。
彼氏いるって嘘ついて、自分以外にもそういう相手がいるんだって思えばいい。
あれが私の精一杯の反抗。
最後の意地悪だよ。
…もう何もいらない。
:08/12/11 14:23 :SH901iC :uyR.lwfs
#625 [ゆーちん]
夜道を歩いていると、やっぱり携帯電話が鳴った。
《彼氏できたの?》
太一くんから。
やっぱりそこに食いついて来たか。
恵に隠れて送って来たんだ。
《太一くんに関係ない。恵と仲良くね。もう終わりにしよう。バイバイ。》
:08/12/11 14:24 :SH901iC :uyR.lwfs
#626 [ゆーちん]
それだけ送るともう返事は来なかった。
園田さんからも返事なし。
本当に終わったんだ。
もう期待はしない。
もう2番目は辞めよう。
「ただいま。」
玄関に入るとちょうど斗美がブーツを履いているところだった。
:08/12/11 14:26 :SH901iC :uyR.lwfs
#627 [ゆーちん]
「あー、おかえり。」
「ただいま。今から出掛けるの?」
「ううん。忘れ物取りに来ただけ。」
「そう。」
靴を脱いで私は中に入った。
すると後ろから斗美が言った。
「いいこと教えてあげよっか?」
「何?」
振り返るとブーツを履き終えた斗美が笑ってた。
:08/12/11 14:26 :SH901iC :uyR.lwfs
#628 [ゆーちん]
「30分ぐらい前かな。私が戻ってきた時、外に聡志来てたよ。」
「…聡志?」
「10分ぐらい待ってたけど帰った。」
「何しに来たんだろ。」
「さぁ?今日クリスマスイヴだし、意味ありげだね。」
斗美の笑顔はいつものように怪しい。
何か企んでいるような、そんな笑顔。
:08/12/11 14:27 :SH901iC :uyR.lwfs
#629 [ゆーちん]
「…連絡してみるよ。」
「いい事あるといいね。そんじゃ、よいクリスマスを!」
そう言って短いスカートから伸びる足を弾ませ、外に飛び出そうとした。
「あ、ねぇ斗美!」
ピタッと足を止め、『何?』と言う姉。
:08/12/11 14:28 :SH901iC :uyR.lwfs
#630 [ゆーちん]
「今の彼氏と上手くいってる?」
「は?何いきなり。」
「体目的だけの彼氏?」
「あー、そういうのはもう卒業した。今の彼氏はSEXしなくても愛が伝わってくるような人。」
そっか。
斗美は、幸せな恋愛をしているんだね。
よかったよ。
:08/12/11 14:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#631 [ゆーちん]
「いいね。私もそんな恋したい。」
「案外近くに待ってるかもよ。クリスマスイヴに家まで来てくれるなんて、私はただならぬ愛を感じたけど?じゃあね。」
怪しい笑顔だけ残し、斗美は出掛けて行った。
ブーツの音が遠退いていく。
斗美は幸せへと向かって行ったんだ。
:08/12/11 14:29 :SH901iC :uyR.lwfs
#632 [ゆーちん]
◆◇◆◇◆◇◆
秘密のない恋
◆◇◆◇◆◇◆
:08/12/11 14:30 :SH901iC :uyR.lwfs
#633 [ゆーちん]
「マジ?ありがとう!」
街はバレンタインというイベントに包まれていた。
去年のバレンタインは何してた?
何もしてなかったっけ。
2つの恋が終わり、空っぽ状態だったよね。
クリスマスイヴの奇跡は1年後に起こった。
:08/12/11 14:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#634 [ゆーちん]
高校2年のクリスマスイヴ。
私は聡志とヨリを戻した。
高1のクリスマスイヴに2つの恋を終わらせた。
翌日のクリスマスに聡志の気持ちを聞いた。
まだ私に恋心があると言ってくれた。
だけど私にはなかった。
付き合わなかった。
:08/12/11 14:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#635 [ゆーちん]
だけど1年かけて、私の恋心はまた聡志に傾いた。
そして数ヵ月前のクリスマスイヴ。
私は聡志に1年前の告白の返事を返した。
1番目。
2番目はもうおしまい。
私は聡志の1番目の彼女なんだ。
:08/12/11 14:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#636 [ゆーちん]
「まずかったらごめん。」
「まずかったら…うちで飼ってる犬にあげる!」
「…最低。」
「アハハ。嘘だって!ちゃんと食べるよ。」
手づくりのチョコレートケーキはママに教わった。
聡志とヨリを戻したと告げると、ママは喜んでいた。
:08/12/11 14:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#637 [ゆーちん]
「ケーキ食べないの?」
「ケーキの前に斗羽だろ?」
「…変態。」
聡志とのSEXはやっぱり気持ち良いと思わなかった。
:08/12/11 14:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#638 [ゆーちん]
太一くんのような気持ち良いSEXじゃなかったけど、不満はない。
徐々に気持ち良くなってるんだもん。
いつか必ずお互い満足するものになるよね。
「好きだよ、聡志。」
「俺も好き。」
だって、キスはこんなに心地いいんだもん。
いつかSEXだって心地よくなるはず。
:08/12/11 14:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#639 [ゆーちん]
家に帰ると斗美が帰って来ていた。
「おかえり。」
「斗美こそ、おかえり。どうしたの?家出?」
「ま、そんなとこ?」
ママが『違うでしょ。』と笑った。
「旦那さんが出張で、暇だから今日はこっちに泊まるんですって。」
「そうとも言うね。」
:08/12/11 14:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#640 [ゆーちん]
斗美は、高校を辞めた。
なぜなら、もうすぐ母親になるからだ。
「よっこいしょ。」
椅子から立ち上がるのも大きなお腹のせいで一苦労らしい。
「おばさんみたいな事言わないでよ。」
「だってさー、腰とか超〜痛いんだもん。」
:08/12/11 14:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#641 [ゆーちん]
もうすぐおばあちゃんになる、私たち双子の母は言った。
「双子だと人の倍、大変よ。」
そう、どうやら斗美のお腹には双子が宿っているらしい。
「あ、斗羽さぁ、あのチョコケーキまずかったよ。」
作りすぎたので、残りをテーブルに置いてあったのだ。
:08/12/11 14:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#642 [ゆーちん]
「え、じゃあマジで犬行きかもだ。」
「何が?」
「まずかったら犬にやるって聡志が。」
「犬もいらないって言うかもよ?甘すぎだよ、アレ。」
「ママに教わった通りにしたんだけどなぁ。」
:08/12/11 14:38 :SH901iC :uyR.lwfs
#643 [ゆーちん]
そんな事を言って過ごしながら、リビングでテレビを見た。
ママはお風呂。
パパはまだ仕事。
リビングには久しぶりに斗美と二人っきり。
「斗美。」
「ん?」
「赤ちゃん、楽しみ?」
:08/12/11 14:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#644 [ゆーちん]
「楽しみだよ。ちょっと怖いけどね。」
「そっかぁ。やっぱり楽しみなんだ。」
「斗羽もいつかわかるよ。」
「私は妊婦にはいい思い出ないから。」
そう言いながらも、私の手は斗美のお腹を撫でていた。
「何?」
「不倫相手の奥さんは妊娠中だったんだよね。」
「やっぱ不倫してたんだ。」
:08/12/11 14:39 :SH901iC :uyR.lwfs
#645 [ゆーちん]
昔、斗美にそんな話したもんね。
不倫とか浮気の相談。
やっぱり気付いてたか。
「1年ぐらい前に。前のカフェのバイト先の人。」
「じゃあうちの旦那も不倫しないか、注意しないとなー。」
「亮治さんなら大丈夫だよ。あの人は不倫なんかしない。」
:08/12/11 14:40 :SH901iC :uyR.lwfs
#646 [ゆーちん]
「そう?経験者に言われると説得力あるな。」
「不倫と浮気なら任せて。」
「アハッ。バカだ。」
斗美と、こんな風に過ごせるなんて思わなかった。
私も成長したし、斗美も成長したんだ。
:08/12/11 14:41 :SH901iC :uyR.lwfs
#647 [ゆーちん]
「聡志がいなかったら私、今もまだドン底だったのかも。」
「そうかもねー。」
「寄り道したけど、聡志がいてよかった。」
「大切にしなよー。聡志いい奴じゃん。」
「うん。」
双子の姉と、恋愛の話をするという事は私たちは変わったんだ。
:08/12/11 14:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#648 [ゆーちん]
険悪だった関係から、生まれ変わった。
双子って、ライバルだと思う。
ライバルだから、嫌いにもなるし好きにもなる。
険悪にもなれば、仲直りもする。
家族って、キョウダイって、双子って、そういう物だよ。
:08/12/11 14:43 :SH901iC :uyR.lwfs
#649 [ゆーちん]
確かに比べられるのは嫌だけど、仕方ないもん。
顔は同じでも、私と斗美は違うんだから。
比べられるのが嫌だと思っていた昔の自分は、本当に子供だったんだなって思う。
もうすぐ生まれる斗美の子供たちも、きっと張り合うんだろうな。
:08/12/11 14:44 :SH901iC :uyR.lwfs
#650 [ゆーちん]
姪か甥かはわかんないけど、もし子供たちが張り合ったり喧嘩した時、私は双子の先輩として教えてあげよう。
うんと相手を嫌いになりなよ、って。
嫌いになるから、いいところも見えてくるの。
私は最近、やっと斗美の好きなところ、見つける事ができたかもしれないの。
:08/12/11 14:45 :SH901iC :uyR.lwfs
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