冷たい彼女
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#128 [ゆーちん]
「きゃっ!」


慌てて振り返ると凜は転んでいた。


「うぉ!大丈夫?」


サンダルのヒールが砂のせいで埋もれてしまい、バランスが取れずに転んでしまったようだ。


俺は慌てて手を差し延べると、凜はガッと手を掴み、勢いよく立ち上がった。


「…どーも。」

「あ!」

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#129 [ゆーちん]
「何よ、うるさいな。」

「初めて手ぇ繋いだね!」


俺は繋いだ手を顔の前まで上げた。


凜と俺の手が繋がれている。


「…。」


凜は少し難しそうな顔をしていた。


「また転ぶと危ないから、このまま岩場まで行こ〜?」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#130 [ゆーちん]
凜は何も言わなかったので、手を繋いだまま歩いた。


凜の手は小さかった。


今まで数少ないながら繋いだ女子の手の中でも、1番小さかった。


そんな小ささを、また好きになってしまう。


この波音が妙にロマンチックで、改めて波打つ海に感謝した。


「凜ちゃん。」

「何。」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#131 [ゆーちん]
「あっちの岩場にしない?」


遠くの方を指さした俺。


「何で。」

「もっと繋いでたいもん。」


そう言うと、凜はパッと手を離して、目の前の岩場に座った。


「香奈に殺されても知らないよ?」

⏰:08/12/12 10:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#132 [ゆーちん]
シラッと言ったその言葉。


昨日の香奈の怖い顔を思い出してしまった。


「ごめん。明日も太陽が見たいから、ここでいいです。充分です。最高です。」

「香奈の名前聞いただけで焦りすぎでしょ。肝っ玉の小さい男は嫌いだからね。」


凜の隣に座ると、海が一望できた。

⏰:08/12/12 10:50 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#133 [ゆーちん]
滅多に夜の海なんか来ないから、いつも遊んでる場所とは違う感じがした。


「今日は爆発頭じゃないんだね。」

「爆発頭?」

「うん。学校には毎日アフロみたいに爆発頭で来てるじゃん。」


凜ちゃん、そりゃないよ。


あれは爆発頭でもなけりゃアフロでもない。

⏰:08/12/12 10:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#134 [ゆーちん]
「あれは、一応ワックスでセットしてんだけどぉ。」

「ふーん。そうだったの。」


わかってたくせに。


凜は俺を悲しませるのが得意みたいだ。


「シャワー浴びたから、もうワックスするの面倒でそのままにしたの。どっちのが似合う?」

⏰:08/12/12 10:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。


クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。


「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」


ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。


「ギャップにドキッとしたりとか‥」

「してないから安心して。」

⏰:08/12/12 10:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。


でもさ、俺も男じゃん。


1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。


「あんたさぁ‥」

「凜ちゃん。」

「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」

「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」

⏰:08/12/12 10:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。


最初は気にならなかった。


でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。


「何、いきなり。」

「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」

⏰:08/12/12 10:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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