冷たい彼女
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#1 [ゆーちん]
マイペース更新ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいm(__)m

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#2 [ゆーちん]
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感想板
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#3 [ゆーちん]
本当にあった×××な話
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双子の秘密
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#4 [ゆーちん]
○●○●○●○

転校生

○●○●○●○

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#5 [ゆーちん]
「凜ちゃんが彼女だったらいいのに。」

「…。」


俺の目を見てもくれない。


ちっせぇ顔。


でっけぇ目。


こんな美人になら騙されてもいいぞ、俺。

⏰:08/12/11 15:55 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#6 [ゆーちん]
「ねぇ、俺の彼女になってよ。」


どうせ無視だろ?


一応告白なんだけどな。


「いいよ。」


…。


あれ?


今、何て言いました?

⏰:08/12/11 15:56 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#7 [ゆーちん]
「えっ…本当に?」

「うん。本当。」


大きな目が俺に向けられた。


やっべぇ!


照れる!


嬉しい!


幸せ!

⏰:08/12/11 15:56 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#8 [ゆーちん]
椅子から立ち上がり、俺の近くにいた向井竜に抱き着いた。


「向井くーん!僕、やったよ!凜ちゃんの彼氏だよー!」

「あぁ、はいはい。聞いてたから知ってる。離れて。うぜぇ。」


竜の隣にいた中橋大輝が凜に言った。


「杉浦さーん。本当にいいの?心(シン)の奴、真に受けてるよ。」

⏰:08/12/11 15:58 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#9 [ゆーちん]
「…いいよ。」

「心のどこがいいの?」

「…別に。誰でもいい。知らない土地で一人ぼっちは寂しいもん。」


凜のその一言で俺のテンションは一気に下がった。


「元気出して。」


竜に励まされてもダメージでかいんですけど。

⏰:08/12/11 15:59 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#10 [ゆーちん]
この島は人口数百人の小さな島。


老若男女、全員の顔と名前を把握している。


小さな島だからこそ家族のような温かい付き合いだけど、小さな島だからこそプライバシーも糞もない筒抜けた島。


そんな島に生まれて15年。


同級生はたったの30人。

⏰:08/12/11 15:59 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#11 [ゆーちん]
小学校からクラス変えなんか無し。


喧嘩したり仲直りしたり、男女共仲良しこよしだった。


恋愛?


あー、竜と大輝は本島に彼女がいるみたい。


他にも本島に恋人か好きな人がいるって奴が多いな。


同じクラスで付き合うとか滅多にない。

⏰:08/12/11 16:00 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#12 [ゆーちん]
俺はなんだかんだ言って、この島が好きだった。


だからこの島を好きになれない奴は、これから付き合っていくのは不可能だって思ってる。


島を理由にフラれたからって未練はなかった。


そんな島に、生まれて初めての転校生が来た。

⏰:08/12/11 16:01 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#13 [ゆーちん]
島を出て行く転校生は何人かいたけど、島に来た転校生は初めて。


女って聞いてテンション上がった。


教室に入って来た時、かなりの美人でさらにテンション上がった。


で、凜ちゃんがこの中学校に来て2日目の今日。


凜ちゃんは僕の彼女になりました。

⏰:08/12/11 16:01 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#14 [ゆーちん]
「凜ちゃーん。そんな理由で俺と付き合うの〜?」

「他に何か理由いる?」


こうだもんなぁ…。


すっげぇ冷たい。


俺を好きじゃないのに付き合ってくれるんですか?


いや、嬉しいんですけど…理由が理由なだけでちょっと悲しい。

⏰:08/12/11 16:02 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#15 [ゆーちん]
まぁ俺もただ凜ちゃんが美人だから思い切って告白しただけで、中身を好きになった訳じゃない。


おあいこ様かな?


「凜ちゃんと交流を深める為に今日の放課後、海に行こう!」

「…やだ。」

「何でさぁ!」

「焼ける。」

⏰:08/12/11 16:03 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#16 [ゆーちん]
都会から来ただけあって凜には色気があった。


真っ白い肌に、キラキラと光るまぶた。


唇なんかプルプルしてて、本島の年上のお姉ちゃんって感じ。


「じゃあ日焼け止め塗ってけ!」


謎めいた瞳は、あまり俺に向けられない。

⏰:08/12/11 16:04 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#17 [ゆーちん]
そういえば凜ちゃんの笑った顔、知らないな。


「無理。やっぱりあんたみたいなガキと付き合うんじゃなかった。」

「えーっ!そんな事言わないでよ。凜ちゃんは俺の彼女なんだから、そんな寂しい事言わないでよ!」

⏰:08/12/11 16:04 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#18 [ゆーちん]
凜は椅子から立ち上がりもしてくれない。


それに比べて俺は、凜の近くを動いてばかり。


確かにガキかもしんねぇ。


でも俺の性格上、じっとしてらんねーんだよ。


「あんたってさ、童貞でしょ?」


凜さん。


ここ教室。


みんな俺らの会話聞いてるよ。

⏰:08/12/11 16:05 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#19 [ゆーちん]
俺はそういう話、嫌いじゃないけど凜ちゃん女の子じゃん。


うちのクラスの女子、そういう話に敏感な年頃なんだよ。


みんな引いてるよ。


友達できなくなるよ凜ちゃん!


「凜ちゃん、そういう話はみんながいる前でしない方が…」

⏰:08/12/11 16:06 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#20 [ゆーちん]
「何で?あんただってみんなが聞いてるのに私に告ってきたじゃん。」

「告白とそういう話は別なんじゃないかな〜なんて。」

「一緒だよ。付き合ったらキスもするしSEXもする。それくらいもう15なんだからわかるでしょ?」


教室は凜の声だけが響いた。

⏰:08/12/11 16:07 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#21 [ゆーちん]
さすがの俺も言い返す言葉がない。


だって…


「ごもっとも。」


竜も大輝も呆気に取られていた。


男同士では惜しみなく話す下ネタも、女子の前ではしないもん。


教室で【SEX】なんて言葉が響くなんて思ってもなかった。

⏰:08/12/11 16:07 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#22 [ゆーちん]
チャイムが鳴り、なんとか茶を濁した感じだった。


授業中も凜ばかり気になって、数学どころではない。


僕、厄介な彼女をゲットしちゃった感じですか?


「心。」


後ろから声をかけてきたのは菊地美帆。


「ん?」

「マジで付き合ったの?」

⏰:08/12/11 16:08 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#23 [ゆーちん]
「美帆はどう思う?あの返事はOKだったんだよな?」

「んー…たぶん。」

「微妙だよな。」

「ま、難しい人だけど彼女ゲットおめでと。」

「ありがちゅ。」

「彼女できたんだからそのチャラいキャラ辞めた方がいいよ。」

「…はい。」

⏰:08/12/11 16:09 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#24 [ゆーちん]
放課後になり、俺は凜の席に駆け寄った。


「りーんちゃんっ!」

「…。」


俺をチラッと見てすぐに視線を反らした凜。


「一緒に帰ろ!」


色々へこむ事だらけだけど俺の唯一の武器である笑顔を絶やさずに、凜に話し掛けた。

⏰:08/12/11 16:10 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#25 [ゆーちん]
「…何で?」


キープ・ザ・笑顔!


「俺たち付き合ってんじゃん!」

「だからって何で一緒に帰らないといけないの?」


心くん、笑顔だよ!


「凜ちゃんと一緒に帰りたいもん!」

「…理由になってないよ。」


なんだか泣きそうだよ。

⏰:08/12/11 16:11 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#26 [ゆーちん]
「心、帰るぞ。」


竜が呼びに来た。


「俺は今日、凜ちゃんと帰る!」

「あ、そう。じゃあな。」


竜は眠そうに教室から出て行った。


「何勝手に決めてんのよ。」

「一緒に帰ってくれるって言うまで帰さないからな!」

⏰:08/12/11 16:12 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#27 [ゆーちん]
「…うざ。これだから童貞はやなんだよ。」


笑顔、消失。


俺、童貞だなんて言った?


言ってないよね。


いや、童貞だけどね。


元カノと初めてやろうとした時、緊張して勃たなかったヘタレだよ。


童貞で悪いかよ。

⏰:08/12/11 16:12 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#28 [ゆーちん]
凜は俺の通せん坊を抜けて教室から出て行った。


こうなったらストーカーだな。


俺は下校する凜の後ろを着いて歩いた。


島には信号がない。


歩道もなければ車道もない。


抜け道や近道、たくさん知っている。

⏰:08/12/11 16:13 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#29 [ゆーちん]
だけどそんなの知らない島2日目の凜は、慣れない道を不思議そうに歩いていた。


短いスカートから伸びる細い足とサラサラと揺れる長い髪に俺の胸は騒いでいた。


「凜ちゃん。」

「…。」

「次の道を左だよ。そうすると近道だから。」

⏰:08/12/11 16:14 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#30 [ゆーちん]
凜は都会に住む両親が仕事で海外に行くので、この島に住むじいちゃんばあちゃんの家に預けられた。


海外について行くと言った凜だが、両親はついてくるなと言い、日本に残された。


渋々この島に来て、これから生活するんだ。


って、全部杉浦のじいちゃんとばあちゃんに聞いたんだけど。

⏰:08/12/11 16:14 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#31 [ゆーちん]
孫が来るって嬉しそうに話してた翌日に、こんな美人が孫だったなんて…夢にも思わなかった。


「左?」


凜は足を止めた。


「うん。左だよ。そうすると早く家に着くから。」

「何で私の家知ってんの。」

⏰:08/12/11 16:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#32 [ゆーちん]
凜は不思議がっていたけど俺らにすれば、1+1=何ですか?って聞かれているようなもんだった。


「ここの島の人は誰がどこの家に住んでるかなんてみんな知ってるよ。特に杉浦なんて1軒しかないからすぐにわかる。」

「…あっそ。」


凜は左に曲がった。

⏰:08/12/11 16:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#33 [ゆーちん]
蝉が鳴く初夏の日差しを避けながら、影を選んで歩く凜が可愛くて仕方ない。


「次、右ね。そうすると家の前だから。」


凜は何も言わず、右に曲がった。


杉浦家が見える。


するとまた足を止めて、振り返った。


「ありがと、ストーカーさん。」

⏰:08/12/11 16:16 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#34 [ゆーちん]
冷たい視線だけを送り、凜は家の中に入って行った。


「凜ちゃーん、バイバイ!また明日ね。」


俺の声に振り向きもしない。

⏰:08/12/11 16:16 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#35 [ゆーちん]
そんな俺の彼女。


今までで1番厄介な彼女。


口が少し悪いのかも。


でも根はいい子だと思う。


早く打ち解けて欲しいな。


そんな事を考えながら、自分の家へと帰って行った。

⏰:08/12/11 16:17 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#36 [ゆーちん]
●○●○●○●

キリがいいので
一旦STOP

●○●○●○●

⏰:08/12/11 16:18 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#37 [我輩は匿名である]
○●○●○●○

進歩

○●○●○●○

⏰:08/12/11 21:11 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#38 [我輩は匿名である]
それからの俺は毎日、放課後になると凜ちゃんのストーカー。


学校にいる間は話し掛けても、あまり相手にしてくれないから、二人っきりになれる下校がチャンス。


「凜ちゃんは雑誌とか読む〜?」

「…読む。」

「そっかぁ。この島に本屋ないから本島に行かないと買えないね。」

⏰:08/12/11 21:13 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#39 [我輩は匿名である]
「…そうだね。」


後ろに振り返ってはくれないものの、俺の質問には反応してくれるようになった。


「凜ちゃん、俺の事好き?」

「…。」


まぁ、答えてくれない事もあるけどね。

⏰:08/12/11 21:14 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#40 [ゆーちん]
「じゃあねー!また明日…じゃないや。また月曜にね!」


杉浦家の前でいつものように手を振って帰る。


今日は金曜日。


明日、明後日は会えないから寂しいですね。


「待って!」


…まさかの呼び止め。


「何?」


顔には自然と笑顔が浮かぶ。

⏰:08/12/11 21:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#41 [ゆーちん]
「明日、暇でしょ?」

「暇!すっげぇ暇!デートする?デート!」

「いいよ。デートしてあげる。」


来たよ、俺の時代が。


凜ちゃんと付き合って4日目。


初デートのお誘いをOKしていただきました!


「よっしゃあ!」

⏰:08/12/11 21:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#42 [ゆーちん]
騒ぐ俺とは別世界のような凜の表情は、いつものように冷たかった。


「どこ行く?」

「…10時に迎えに来て。じゃあ。」


それだけ言って、凜は家の中に入って行った。


「あ、うん。10時ね!バイバイ!」


この際、行き先なんてどこでもいい。


何てったって初デート!

⏰:08/12/11 21:16 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#43 [ゆーちん]
テンションの上がった俺はそのまま向井家に走った。


「りゅーうーちゃーん!」


インターホンなんてほとんどの家にない。


玄関を勝手に開けて、名前を叫ぶのがこの島の呼び出し方。

⏰:08/12/11 21:18 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#44 [ゆーちん]
「はーい。あら、心ちゃん。」


竜のばあちゃんが出迎えてくれた。


「ばあちゃん久しぶり!腰の調子どう?」

「ありがとうね。最近は調子いいんだよ。」

「本当?よかったねぇ。」

「おかげさまで。心ちゃん今日は何の用?」

「竜いてる?」

⏰:08/12/11 21:19 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#45 [ゆーちん]
「竜なら大輝ちゃんちに行ったよ。」

「大輝んち?わかった。ありがとね。ばあちゃんバイバイ!」

「走って転ばないようにねぇ。」


竜のばあちゃんは俺のばあちゃんみたいなもん。


つか、この島のばあちゃんはみんな俺のばあちゃんだな。

⏰:08/12/11 21:20 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#46 [ゆーちん]
竜のばあちゃんに見送られ、俺は中橋家まで走った。


「大輝ぃー!竜ぅー!いるかぁ〜?」


中橋家の玄関で叫ぶと、大輝が出迎えてくれた。


「何だ?」

「竜もいる?」

「おぉ。みんないる。」


…そうみたいですね。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#47 [ゆーちん]
玄関に脱ぎ捨てられているこの靴の量を見ればわかりました。


俺も靴を脱ぎ、部屋に上がった。


中橋家はなかなか大きな家なので、みんなのたまり場として集まる事が多かった。


大輝の部屋もこれまた広い。


俺の部屋の3倍はあるな。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#48 [ゆーちん]
「おぉ、心。」

「あれ?ストーカーは?」


みんなが口々に俺を出迎えてくれた。


「みなさん、よくぞお集まりいただきなすった。」

「日本語変だぞ。」

「そこ、うるさい!俺は国語が嫌いなんだ!」

「で、どしたの?」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#49 [ゆーちん]
「みんなに自慢したい事があるんですよ。」

「何〜?」

「なんと!明日、杉浦凜様とデートする事になりましたー!」


島中に聞こえるんじゃねぇかってぐらい大声で叫んでやった。


それなのにみんなの反応は最悪。


「…ふーん。」

「そうなんだ。」

「頑張って。」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#50 [ゆーちん]
「ちょちょちょちょ。何なの、その凜ちゃんのような冷たい反応。みんな凜ちゃん化ですか?」


漫画の続きを読み始めたり、携帯を触りだしたりと俺には見向きもしてくれなかった。


泣いちゃうぞー。


いつもながら俺への対応は冷たいものだ。


もう慣れたけどさぁ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#51 [ゆーちん]
凜の話はいつの間にか流れてしまい、他愛もない話で盛り上がった。


日が沈めば自然に家へと帰って行く。


不審者や痴漢、泥棒の出た事のないこの島の夜道は暗いけれど月が明るく、のんびりと歩きながら帰る事ができるんだ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#52 [ゆーちん]
翌日は学校に行く時間より早くに目が覚めた。


無駄に余った時間は携帯ゲームをして過ごした。


が、バカはやっぱりバカだった。


すっかり夢中になってしまい、時間を忘れていたんです。


「あんた一体何時に出掛けんのさ?」


母ちゃんが言った。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#53 [ゆーちん]
「あ?10時前。」

「んーなのとっくに過ぎてるよ。」


…え?


時計を見ると10時半を回っていた。


血の気が引いた。


「やっべぇ!」


携帯電話と財布をポケットに入れ、家を飛び出した。


杉浦家まで猛ダッシュ。


3分で到着だ…。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#54 [ゆーちん]
「り…ん、ちゃー…ん…」


息切れなんて久しぶり。


「あらあら、心ちゃんじゃないの。どうした?」


杉浦のばあちゃんが俺に笑顔を向ける。


「凜…ちゃん…は?」

「部屋にいるよ。」

「呼んで…来てく…れる?」

「あいよ。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#55 [ゆーちん]
ばあちゃんは立派な足取りで階段を上って行き、凜を呼んで来てくれた。


「おばあちゃん、私ちょっと出掛けるね。」

「心ちゃんとかい?」

「うん。」

「はいよ。気をつけてね。」

「いってきます。」

「ばあちゃん、いってきます。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#56 [ゆーちん]
初めて見た私服の凜は、口が開く程のものだった。


フワフワしたワンピースが見事に似合っている。


少し歩くと、凜は言った。


「童貞は時間も守れないわけ?」

「…ごめんなさい。ゲームしてたら時間忘れてました。」

「ゲームに負けたんだ、私。」

⏰:08/12/11 21:31 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#57 [ゆーちん]
「いや、決してそういう訳じゃないんだけど…」

「貸し1ね。」


そう言って凜は歩き出した。


「はい。」


俺もいつもと同じで、凜の後ろを着いて歩く。


6月末、とても暑い日だった。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#58 [ゆーちん]
「この島の案内して。」


凜は振り返りもせずに言う。


「案内?」

「そ。早くこの島に慣れたいの。」

「OK!じゃあ俺んち戻ろ。自転車取ってくるわ。」

「自転車?」


凜は振り返った。


…笑ってないけど、うん。


可愛い。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#59 [ゆーちん]
「後ろ乗せたげる。俺んちこっちだから!」


来た道を戻る。


今は俺が前で、凜が後ろ。


いつもと逆。


違和感たっぷり。


「ねぇ。」

「はい。」

「隣歩けば?」

「…いいの?」

「いいよ。デートなんでしょ?」

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#60 [ゆーちん]
素晴らしい進歩。


初デート。


初横並び歩き。


テンション上げずにいられないでしょ!


「手ぇ繋いでいい?」


そう、勢いでお願いしてみた。


「やだ。」


…無理でした。


うん、最初から欲張っちゃダメだよねー。

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#61 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」


とりあえず隣で歩ける事に感謝。


小さな凜と並んで歩ける事が幸せだった。


俺の家につき、自転車を出して、凜を後ろに座らせた。


「2ケツとか久しぶりだ。」

「どうせ男しか乗せた事ないんでしょ。」

⏰:08/12/11 21:34 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#62 [ゆーちん]
凜の言葉のナイフにグサグサと刺されながら自転車をこいだ。


「そんな事ないもーん。」

「あっそ。」

「でも、9割が男だね。」

「やっぱり。」

「残りの1割は女からのパシリですよ。」

「ダッセェ。」


風を切って走る自転車。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#63 [ゆーちん]
凜ちゃんの髪やワンピースは、さぞなびいているでしょう。


…全く見えないけど。


1軒1軒、島の案内をしていく。


抜け道や近道も教えてあげる。


あの家のじいちゃんはどうだとか、この家のばあちゃんはこうだとか。


凜は一生懸命、俺の話に耳を傾けてくれていた。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#64 [ゆーちん]
お昼は、島で唯一の食堂である【トメ食堂】食べた。


なぜ【トメ食堂】かと言うと、トメと言う名前のばあちゃんが営業しているから。


トメばあちゃんは島で1番の料理人だと俺は思う。


食べ終えると、また自転車の旅が始まる。


なるべく日影を走れという凜の指示に、俺は素直に従った。

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#65 [ゆーちん]
汗が流れる額。


凜のために流す汗は苦痛ではなかった。


日が暮れると、凜は言った。


「あんたがこの島で1番気に入ってる場所教えて。」

「1番?」

「そう。」

「ガッテン承知!」

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#66 [ゆーちん]
俺は涼しくなった風を切りながら、一生懸命自転車をこいだ。


この島で1番の好きな場所。


そんなのあそこ以外にないだろ。


ハンドルを握る俺の手は、慣れたようにあそこに向かっていた。


「凜ちゃーん!」

「何?」

「ここー!」

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#67 [ゆーちん]
坂を下ると、海が広がる。


俺は海が1番好きだ。


自転車を止めると、凜は後ろから降りて砂浜を歩いた。


髪とワンピースが揺れる。


ヤバイ…惚れ直した。


凜の姿があまりにも絵になるので、ついつい見取れてしまった。

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#68 [ゆーちん]
「ねぇ!」

「あ、うん、何?」

「何じゃないよ。ぼーっとしちゃってさ。」

「ごめん。どうしたの?」

「あんた正解。今日回った場所で、ここが1番いいよ。私の1番もここだ。」


凜と俺の1番が同じなのは、とても嬉しい事だ。


「本当?マジで?」

⏰:08/12/11 21:38 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#69 [ゆーちん]
「うん。この島の海は特別綺麗。」

「でしょ?俺もこの島の海が1番好き〜。」


夕日は沈んだ。


薄暗い海辺。


凜は言った。


「今日はありがと。あんたを彼氏にしてよかった。」

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#70 [ゆーちん]
笑顔は見せてくれなかったものの、その言葉はとても嬉しかった。


凜ちゃんは俺に気などない。


そんなのわかっている。


俺を足変わりにするのも、何の問題もない。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#71 [ゆーちん]
一緒にいてくれるだけで俺は嬉しいのに、『ありがとう。』と言われるのは、やっぱり嬉しい。


前に近道を教えた時も言ってくれたっけ。


冷たい彼女だけど、ありがとうを言える人は本当は心が温かいんだよ。


島のばあちゃんがよく言ってる。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#72 [ゆーちん]
「明日も付き合ってくれるんでしょ?」


…明日?


明日もあなたの隣を歩けるんですか!?


「もーちろんっ!明日でも明後日でもいつでも付き合うよ!」

「…。」


テンションが上がりすぎだと冷ややかに目で訴える凜ちゃん。

⏰:08/12/11 21:40 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#73 [ゆーちん]
「どこ行くの?」

「明日は本島で買い物がしたいから9時に迎えに来て。」

「わかった!9時ね!じゃあ9時半のフェリーだね。」

「…明日は今日と違って、遅刻は許されないからね。」

「はい、わかってます。」


こうして明日のデートの約束をして俺らは海を後にした。

⏰:08/12/11 21:41 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#74 [ゆーちん]
●○●○●○●

ではまた明日

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/11 21:59 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#75 [我輩は匿名である]
早くみたいまた時間ある時にゆっくりお願いしま-す今日はお疲れさまで-す

⏰:08/12/12 01:01 📱:SH906i 🆔:FlUtrXSA


#76 [ゆーちん]
>>75さん
ありがとうございます
マイペースな更新ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

⏰:08/12/12 08:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#77 [ゆーちん]
そして翌日、俺は8時半に凜を迎えに行った。


「おはよう!」


俺が玄関から叫ぶと、じいちゃんが出迎えてくれた。


「おぉ、心ちゃん。おはよう。」

「じいちゃんおはよう!凜ちゃんは?」

「凜?朝ごはん食べてるよ。」

「じゃあ食べ終わったら外に来てって伝えて。」

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#78 [ゆーちん]
「上がって行かんかい。」

「や、凜ちゃんに叱られそうだから辞めとくよ。んじゃ。」


外に出て、玄関口にしゃがみ込んだ。


男は同じ失敗はしない。


30分前行動だ。


どうだこの野郎!

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#79 [ゆーちん]
天気良好。


体調良好。


おまけに海も良好。


こんなデート日和なかなか無いですよ。


恵まれてんだな、俺。


せみの鳴き声を聞きながら空を見上げたり、道行く人に挨拶したり。


そんな事をしていると30分なんてあっという間だった。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#80 [ゆーちん]
「ストーカー。」


振り返ると凜ちゃんがいた。


「おはよう!9時ちょうどだね!」

「30分も前に来るなんてバカとしか思えない。」

「だって遅刻できないもん!はい、乗って。」


今日も自転車。


凜は呆れた顔をしていた。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#81 [ゆーちん]
今日の凜も素敵だった。


昨日とは違い、カッコイイ感じ。


短いズボンに、クールなTシャツ。


大人っぽいハンチングを頭に乗せて、爽やかな香水を香らせていた。


「今日の凜ちゃんもカッコイイし可愛いね〜。」

「今日は動きやすい方がいいから。」

⏰:08/12/12 08:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#82 [ゆーちん]
「本島で何するの?買い物?」

「うん。」

「買い物かぁ!いいね、いいね。楽しみ。」

「…あんたって単純だよね。」

「えぇ?そう?」

「バカみたいに前向きだし。」


それは相手が凜ちゃんだから。


…とか言ったら、またバカにされるかもな。

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#83 [ゆーちん]
フェリー乗り場についた。


切符を買って、フェリーで本島に向かう。


本島は今日も賑わっていた。


「何買うの?服?」


凜は首を横に振る。


「服は島に行く前にたくさん買った。とりあえず化粧品や雑貨が目当て。あの島に店がないってのは盲点だった。」

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#84 [ゆーちん]
まぁ、確かにね。


お洒落盛りの女の子には、あの島は何もなさすぎる。


「まずは雑貨屋。あんたが1番だと思う雑貨屋連れてって。」

「おう!任せて!」


自転車も一緒に本島に来たおかげで、こっちの移動も自転車が使える。

⏰:08/12/12 08:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#85 [ゆーちん]
今日も汗をかきながら自転車をこぐ。


何だかんだ言って楽しいんだよな。


その日のお店は俺のお気に入りの店をたくさん回った。


途中、凜が気に入っている店のチェーン店があったりもして立ち寄った。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#86 [ゆーちん]
昼は安くつくのでファミレスで済ませる。


中学生は金がないんだよ。


凜は例外みたいだけど。


「うちは金持ちだから親に言えばいくらでも通帳に入れてくれるの。」


グラタンを頬張りながら凜はそう言ってた。


「凜ちゃんはどうして親についてかなかったの?」

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#87 [ゆーちん]
「親がダメだって。海外を転々とするから。それに高校生になったら一人暮ししてもいいって言われてるの。とりあえず中3の1年間は心配だからおじいちゃん達と暮らせってさ。」


まるで他人事のように話してくれた。


じいちゃん達が言ってた事は本当だったんだ。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#88 [ゆーちん]
「お母さん側のおじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってるから、お父さんの実家に預けられてるの。お父さんはお正月にも里帰りなんかしないから、初めてあの島に行ったけど…田舎すぎて驚いた。」


都会から来た人はあの島が田舎すぎる事に絶対驚く。

⏰:08/12/12 08:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#89 [ゆーちん]
「あの島、嫌い?」

「ううん。嫌いじゃないよ。あんたが昨日色んなとこ連れてってくれたから、好きになりかけてる。」


嬉しすぎる。


島を好きになってもらえる事。


それに、凜が色んな話を俺にしてくれる。


まだ笑ってもらってないけど、凜は俺を頼ってくれてるんだと思うと心底嬉しくなれた。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#90 [ゆーちん]
「高校生になったら一人暮らしするの?」

「うん。」

「そっか。本島の高校?」

「たぶんね。だからこっちの島にも慣れないと。」


少し寂しい。


凜ちゃんが島から出て行くのは。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#91 [ゆーちん]
「俺はたぶん家から通うよ。」

「ふーん。」

「凜ちゃんも杉浦のじいちゃんちから通えばいいじゃん。」


凜は首を横に振る。


「おじいちゃん達にあんまり迷惑かけられないよ。」


孫なのに、気をつかう事はないんじゃないかなと思ったけど…言わなかった。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#92 [ゆーちん]
プライバシーもないような筒抜け島だけど、凜は都会から来たんだ。


あまり入り込まれるのは好きじゃないかもしれない。


凜にも何か考えがあるんだろう。


聞きたい気持ちを、ぐっと耐えた。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#93 [ゆーちん]
午後からもたくさん買い物をした。


俺は荷物係。


荷物が1つ増えるたびに、凜は『ありがとう。』と言ってくれた。


これくらいどうって事ないのに。


その言葉を聞くたびに、俺は凜を好きになった。


日も傾いて来た頃。


「そろそろ帰ろっか。」

⏰:08/12/12 08:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#94 [ゆーちん]
「そうだなぁ。今フェリー乗り場行けばちょうどいい時間のがあると思うよ!」


俺は自転車をこいだ。


乗り遅れるといけないから、一生懸命こいだ。


おかげでちょうどいい時間のフェリーがあった。


それに乗って、俺、凜、自転車はまた島へと戻る。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#95 [ゆーちん]
そんな感じで休日デート終了。


俺の心は満たされていた。


少しずつ、でも確実に俺は進歩している。


凜の手を握る事を目標に、明日からまた一週間。


俺は放課後のストーカーを頑張りたいと思います。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#96 [ゆーちん]
○●○●○●○

名前

○●○●○●○

⏰:08/12/12 08:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#97 [ゆーちん]
凜が島に来て3週間。


7月らしい気候が島を包んでいた。


先々週は島案内と本島案内。


先週は凜に用があるとの事でデートせず、竜たちと過ごした。


で、今週。


明日は土曜日。


俺は凜にデートを申し込んだ。


「えー、めんどくさい。」

⏰:08/12/12 08:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#98 [ゆーちん]
…玉砕。


デートを、めんどくさいって…。


「何でよぉ!どうせ暇なんでしょ?」

「明日は用があるの。」

「じゃあ明後日!」

「日曜?日曜もダメ。」

「え〜。いつならデートできんのさ!」

「んー…夜。」

「へ?」

「明日の夜ならいいよ。日中は用があるから無理だけど。」

⏰:08/12/12 08:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#99 [ゆーちん]
思わず叫んだ。


「やったー!」


教室で俺がこうやって叫んでも、もう誰も驚かない。


凜にべったりな俺に、みんなマンネリ化してきてるみたいだわ。


「…うるさい。」

「じゃあ明日の夜ね!」

「8時に迎えに来て。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#100 [ゆーちん]
「うん!OK、OK!」


と、俺が喜んでいると凜の隣に座っていた西山香奈が呟いた。


「童貞が夜遊びすんじゃねーよ。」


俺は睨んだ。


が、香奈の睨みには勝てない。


怖い女だ。


「あー…香奈の言う通りだね。やっぱ夜は辞めとこっか?」

「こらこら!何で凜ちゃんは丸め込まれてんのさ。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#101 [ゆーちん]
香奈は、たぶん今んところ島1番の派手な奴。


前まで1番は、香奈の姉ちゃんだった。


だけど姉ちゃんが島を出て言ってから、たぶん香奈が1番。


派手だし、男みたいな性格だし、美人だけど怖いし、俺の事いっつもバカにするし…嫌いじゃないけど好きでもない。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#102 [ゆーちん]
凜が来るまで、香奈は一匹オオカミみたいな奴だった。


そりゃ女だから友達はいるんだろうけど、本島の奴らとの方が仲が良いらしい。


まぁ、強いて言うならこのクラスで仲良くしてたのは美帆かな。


あいつは誰とでも仲良いし。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#103 [ゆーちん]
香奈は4つ上の大学生の姉ちゃんとすげぇ仲が良い。


だから姉ちゃんの同級生とも仲が良い。


つーことは、恋愛も年上とする。


姉ちゃんの男友達と付き合ってるみたいで、どんどん大人びてきていた。


そして先月、凜がこの学校にやって来た。

⏰:08/12/12 08:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#104 [ゆーちん]
化粧してる子なんて香奈以外いないと思っていたら、クリクリお目めで登場した凜。


香奈と凜が仲良くなるのに時間はかからなかった。


先週の凜の用ってのも、香奈と本島に行ってたかららしい。


まぁ、友達も大事だから仕方ないよな。


でもちょっとジェラシー。

⏰:08/12/12 08:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#105 [ゆーちん]
一匹オオカミと美人転校生が一緒にいることで、かなり目立っていた。


俺の存在どんどん薄れてる気がして、香奈にヤキモチ妬いちゃってるんです、僕。


「とにかく!明日8時に行くからね!」

「はいはい。」


呆れながら返事をした凜は教室から出て行った。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#106 [ゆーちん]
「心。凜が嫌がる事したら、二度と太陽拝めなくするからね。」


香奈はそう言葉を残し、凜を追い掛けて教室から出て行った。


…つーか、普通に怖いよ。


香奈が言うと冗談に聞こえない!


俺はこの太陽が好きなので、凜ちゃんに嫌がる事はしません。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#107 [ゆーちん]
そして翌日。


昼まで寝て、午後からばあちゃんの畑仕事手伝った。


普段手伝いなんかしないけど、今日は気分がいいから。


それにばあちゃん孝行もしないとだし?


あともう一つ、企んでる事があるからさ。


「珍しい事もあるんだね。」

「何がぁ?」

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#108 [ゆーちん]
「心が畑を手伝ってくれるなんて明日は雨かもしれないな。」

「んなバカな。」


夕方、どろどろに汚れた体をシャワーで流した。


そう、これが企んでる事。


汗でもかかなきゃシャワーなんかさせてもらえない。


母ちゃんケチだから。

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#109 [ゆーちん]
凜ちゃんに会う時ぐらい、いい匂いで会いたいじゃん!


男心って奴だよ。


汗をかいた事を理由にシャワーをして綺麗になった俺。


ちょっとお気に入りの服を着て、夕飯を済ませた。


「心。」

「んあ?」


母ちゃんが冷ややかな目で息子の俺を見る。

⏰:08/12/12 08:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#110 [ゆーちん]
「何で、パジャマじゃなくて普通の服着てんのさ。」

「ちょっと出掛ける〜。」


すると父ちゃんがビールを飲みながら笑った。


「色気づきやがって!バカ息子がぁ!」


それを聞いた母ちゃんの目の輝きは一気に変わった。


「え、何、デート?こんな時間から?どういう事!」

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#111 [ゆーちん]
父ちゃんのバカ。


毎回毎回、息子の色恋沙汰になるとテンションの上がる母親。


いい加減げっそりだわ。


また騒がれるのも面倒だから黙ってたのに、さすが父ちゃん。


鋭いぞ。

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#112 [ゆーちん]
「違います。深入りしてこないで下さい。」

「何言ってんの!どんな子?何でそんな楽しそうな話隠してたの!もっと聞かせてよぉ。」


うぜぇ。


母ちゃんのこの性格と俺の性格はよく似てる、なんて言われるけど…どこが似てるんだか。


いつまでたってもギャーギャー喚くなんて…ガキか。

⏰:08/12/12 08:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#113 [ゆーちん]
ばあちゃんもじいちゃんもニヤニヤと俺を見る。


そんなに孫の恋愛が気になるのか?


「なるほどね。それで今日は畑仕事手伝ってくれたんだぁ。」


と、ばあちゃん。


「単純だな。」


と、じいちゃん。


みんなしてバカにしやがって。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#114 [ゆーちん]
15歳の旬の男が彼女の1人もいないでどうすんだっつーの。


「心。」

「何だよ。」


父ちゃん、まだからかう気か?


「避妊はちゃんとしろよ〜。」


…酔っ払いが。


さっさと寝ろ。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#115 [ゆーちん]
うちの家族はどうもお気楽な感じで、今みたいな下ネタは日常茶飯事だった。


「そうよ、心。あなたまだ中3なんだし、子供なんかできたとか言って泣き付いて来ないでね。」


母ちゃん、そりゃないよ。


「じいちゃんは、ひ孫大歓迎だからな!」

「ばあちゃんも大歓迎。」

⏰:08/12/12 08:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#116 [ゆーちん]
無茶苦茶だ。


呆れて物も言えない。


つーか、4人共さぁ…俺まだ童貞だぞ?


子供だのひ孫だの、いつの話になるやら。


「ごちそうさまいってきます。」


2つの単語を息継ぎせずに言い終えると俺は家から飛び出した。

⏰:08/12/12 08:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#117 [ゆーちん]
あー、財布忘れた。


慌てて出てきたから携帯だけしか持って来なかった。


まぁ、いっか。


この島でいると金を使う事なんか滅多にない。


自販機も少ないし。


財布は邪魔な荷物として扱われる事が多かった。


ぶっちゃけ携帯もあんまり使わないんだけど…時計変わりだな。

⏰:08/12/12 10:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#118 [ゆーちん]
…つーか慌てて出て来て正解じゃん。


また遅刻するところだった。


少し傷んで茶色くなりかけていた俺の髪が、夜風にもて遊ばれる。


自転車のペダルも自然と軽い気がした。


早く凜を乗せて、人の重みを感じたい。


杉浦家についたのは5分後だった。

⏰:08/12/12 10:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#119 [ゆーちん]
時間ちょうど。


完璧。


「こんばんにゃ〜。凜ちゃーん!」


居間から杉浦のばあちゃんが出てきた。


「はいはい、どこの猫かと思ったら江森んちの猫かい。」

「そ、僕、江森心くん!」

「凜ちゃんならもうすぐ来るから、上がって待つかい?」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#120 [ゆーちん]
今まで杉浦家なんて数え切れないくらいお邪魔した。


だけど凜が来てから特別な家に思えて、なかなか上がれないんだ。


「ううん、ここにいるよ!」

「そうかい。もうちょっと待っててやって。」

「おう!」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#121 [ゆーちん]
玄関の置物を見ながら待っていると3分もしないうちに凜が現れた。


「凜ちゃん!こんばんは〜。」

「あんたは時間に極端だね。」


俺に目もくれず、凜は『いってきます。』と居間にいるじいちゃんばあちゃんに叫んでから、サンダルを履いて外に出た。

⏰:08/12/12 10:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#122 [ゆーちん]
俺も杉浦のじいちゃんばあちゃんに『いってきます。』を言ってから外に出た。


「やっぱ夜風は気持ちいいね〜!」


今日はいつもみたいにお洒落していない。


キャミソールにスウェットの短パン。


裸足でサンダル。

⏰:08/12/12 10:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#123 [春菜]
初めて読みました。

面白いです。

頑張ってください

⏰:08/12/12 10:42 📱:PC 🆔:fqhnNpXI


#124 [ゆーちん]
髪は巻いたりせず真っ直ぐのまま。


アクセサリーもなし。


化粧だけはいつも通りだったけど。


「凜ちゃん、海行こう!」

「…いいよ。」


凜は笑わない。


だけど声で気分がわかるんだ。


今日の声は機嫌がいい。


怒ってもないし、悲しんでもない。


普通の状態。

⏰:08/12/12 10:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#125 [ゆーちん]
慣れた動きで自転車の後ろに乗り、凜は言った。


「あ、携帯忘れた。」

「取って来る?」

「…いいや。別にいらない。この島に来てから携帯依存症治ったし。」


携帯依存症?


何の事かわからないが、とりあえず俺は出発した。

⏰:08/12/12 10:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#126 [ゆーちん]
海は、誰もいなかった。


誰かいたとしても知り合いだから、それはそれで面倒だし恥ずかしい。


貸し切りでよかった。


「あそこ座ろう!」

「…うん。」


俺らがいつも溜まる岩場を指さした。


砂浜に足を取られながらも、今日は俺の後ろを一生懸命ついて来てくれる凜。

⏰:08/12/12 10:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#127 [ゆーちん]
最初は一目惚れだったけど、俺どんどん中身も好きになってる気がする。


俺に冷たい事言っといて、こうやって付き合ってくれる。


根はいい子なのに、どうして冷たい態度ばかりなんだろう。


そんな事を気にしていると後ろから声がした。

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#128 [ゆーちん]
「きゃっ!」


慌てて振り返ると凜は転んでいた。


「うぉ!大丈夫?」


サンダルのヒールが砂のせいで埋もれてしまい、バランスが取れずに転んでしまったようだ。


俺は慌てて手を差し延べると、凜はガッと手を掴み、勢いよく立ち上がった。


「…どーも。」

「あ!」

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#129 [ゆーちん]
「何よ、うるさいな。」

「初めて手ぇ繋いだね!」


俺は繋いだ手を顔の前まで上げた。


凜と俺の手が繋がれている。


「…。」


凜は少し難しそうな顔をしていた。


「また転ぶと危ないから、このまま岩場まで行こ〜?」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#130 [ゆーちん]
凜は何も言わなかったので、手を繋いだまま歩いた。


凜の手は小さかった。


今まで数少ないながら繋いだ女子の手の中でも、1番小さかった。


そんな小ささを、また好きになってしまう。


この波音が妙にロマンチックで、改めて波打つ海に感謝した。


「凜ちゃん。」

「何。」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#131 [ゆーちん]
「あっちの岩場にしない?」


遠くの方を指さした俺。


「何で。」

「もっと繋いでたいもん。」


そう言うと、凜はパッと手を離して、目の前の岩場に座った。


「香奈に殺されても知らないよ?」

⏰:08/12/12 10:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#132 [ゆーちん]
シラッと言ったその言葉。


昨日の香奈の怖い顔を思い出してしまった。


「ごめん。明日も太陽が見たいから、ここでいいです。充分です。最高です。」

「香奈の名前聞いただけで焦りすぎでしょ。肝っ玉の小さい男は嫌いだからね。」


凜の隣に座ると、海が一望できた。

⏰:08/12/12 10:50 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#133 [ゆーちん]
滅多に夜の海なんか来ないから、いつも遊んでる場所とは違う感じがした。


「今日は爆発頭じゃないんだね。」

「爆発頭?」

「うん。学校には毎日アフロみたいに爆発頭で来てるじゃん。」


凜ちゃん、そりゃないよ。


あれは爆発頭でもなけりゃアフロでもない。

⏰:08/12/12 10:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#134 [ゆーちん]
「あれは、一応ワックスでセットしてんだけどぉ。」

「ふーん。そうだったの。」


わかってたくせに。


凜は俺を悲しませるのが得意みたいだ。


「シャワー浴びたから、もうワックスするの面倒でそのままにしたの。どっちのが似合う?」

⏰:08/12/12 10:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。


クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。


「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」


ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。


「ギャップにドキッとしたりとか‥」

「してないから安心して。」

⏰:08/12/12 10:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。


でもさ、俺も男じゃん。


1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。


「あんたさぁ‥」

「凜ちゃん。」

「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」

「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」

⏰:08/12/12 10:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。


最初は気にならなかった。


でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。


「何、いきなり。」

「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」

⏰:08/12/12 10:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#138 [ゆーちん]
凜の大きな目はじっと俺を見ていた。


「もう、あんたって呼ばれんの嫌だ。」

「…。」


強い瞳。


俺も強い目で凜を見た。


「…知ってるよ。」

「え。」

「名前。江森心。」


竜くん。


僕いま泣きそうに嬉しいんですけど。

⏰:08/12/12 10:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#139 [ゆーちん]
「名前呼んでよ。」

「…やだ。」

「何でさぁ。」

「あんたはあんただもん。呼び慣れた。」

「えぇー、そんなぁ。」


大輝くん。


嬉しいと悲しいが混ざった涙を流したいんですけど、いいですか?

⏰:08/12/12 10:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#140 [ゆーちん]
しばらくすると凜は話し始めた。


「私さぁ、前の街ではこんな風にのんびり過ごした事なかった。」

「のんびり?」

「うん。毎日毎日携帯触って誰かとアポ取って、用もないのに外に出掛けてさ。」

「あ…さっき言ってた携帯依存症とかって、その事?」

⏰:08/12/12 10:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#141 [ゆーちん]
月明かりが凜を照らしていた。


こんな明るい夜は滅多にないよ。


「うん。寝ても覚めても携帯触ってた。誰かと連絡取ってないと不安だったの。でもさ、それって結構疲れんの。そんな時ちょうどこの島に来てさ、かなり驚いた。」

⏰:08/12/12 11:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#142 [ゆーちん]
「何が?」

「みんな時間にルーズで、おじいちゃんもおばあちゃんも優しくて、島のみんなが笑ってる。私、前は隣の人に挨拶した事もなかったのに…この島の人はみんな家族みたいに優しくしてくれる。」


俺はこの島のことしか知らない。

⏰:08/12/12 11:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#143 [ゆーちん]
都会でどんな近所付き合いをしてるかなんか、もっと知らない。


最近、物騒な世の中だってよくニュースで見るけど、同じ日本だとは思えない。


殺人とか誘拐とか、この島には無縁だ。


「友達と離れるのは寂しかったけど、そんなの最初だけ。」

⏰:08/12/12 11:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#144 [ゆーちん]
「そうなの?」

「みんな上辺だけの付き合いしかしないの。でも、この島の人は違った。毎日メールや電話なんかしなくても、次の日も普通に接してくれる。あんたや香奈がいい例だよ。」


確かにね。

⏰:08/12/12 11:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#145 [ゆーちん]
歩いて会える距離にいるのにメールや電話なんかしなくてもって感じだし。


「美帆だって千夏だって澪だって…みんなこの島の人は優しい。私ってこんな性格だから嫌われる事もあるの。だけどここは違った。イジメもないし、はぶられる事もない。香奈はちょっと浮いてて都会人みたいな感じだったけど、でも優しい。」

⏰:08/12/12 11:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#146 [ゆーちん]
凜が自分の事をたくさん話してくれるのは嬉しかった。


どんな内容だろうが、凜と話したり一緒にいれるだけでココロが落ち着く。


「上辺だけの付き合いって寂しそうだね。俺そんなのわかんないけど。」

「羨ましい奴ね。あんな寂しいの体験してないなんて。」

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#147 [ゆーちん]
「だから俺も凜ちゃんと上辺だけだなんて嫌だからね。」

「私も。もう上辺だけの彼氏なんかいらない。ヤる時だけ優しくしてくれるのはもう嫌。」


そう言った凜の声は寂しさに満ち溢れていた。


凜の顔が見れず、ずっと海を見ていた。

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#148 [ゆーちん]
「凜ちゃん。」

「ん?」

「その話から判断すると、俺とは上辺だけで付き合ってないんだよね?」

「そうだよ。チャラチャラした奴だけど今までの上辺だけしか付き合えないような男とは違うってわかるから。」

「え、何でわかるの?」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#149 [ゆーちん]
「…名前。」

「名前?」

「私、異性から凜ちゃんなんて呼ばれた事ないの。名前何?って聞かれて、凜って答えると、もう呼び捨て。凜、凜って。でも凜ちゃんって呼んでくれてるじゃん。もし私の事、呼び捨てしてくるんじゃ私はあなたの彼女じゃなかったよ。」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#150 [ゆーちん]
何気なく呼んでいた凜の名前。


呼び捨てしない理由は、馴れ馴れしいのは失礼だと思ったから。


都会の人はみんな馴れ馴れしいのかな。


少なくとも俺は初対面の人を呼び捨てになんかするような環境で育ってない。

⏰:08/12/12 11:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#151 [ゆーちん]
都会をバカにしてるんじゃないよ?


でも、凜はその事を気にしていたんだと言う事を知って、お互い名前にコンプレックスがあるんだと思った。


まぁ俺のコンプレックスなんてちっぽけだろうけど。


名前を呼ばれたいって言うね。

⏰:08/12/12 11:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#152 [ゆーちん]
「転校初日に凜ちゃん凜ちゃんって話し掛けて来て、2日目には告白。見た目も行動も軽いけど、中身は違うんだって思った。この島のみんなは凜ちゃんって呼んでくれるのかもしれないけど、この人を信じてみようと思った。だから彼女になった。」

「そんな事思ってくれてたんだぁ。なんか照れるんだけど。」

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#153 [ゆーちん]
「信じてよかった。今までの男とは違うよ…心。」


…言った?


咳ばらいじゃないよな。


犬の鳴き声でもないよな。


今、凜ちゃんが『心。』って言ったよな!

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#154 [ゆーちん]
「名前‥」


慌てて振り向くと、凜は小さく笑ってた。


「わ、笑ってる!」

「え?」

「凜ちゃんの笑った顔、初めて見たよ!」


今日は良いことだらけで本当に泣きそう。


手を繋ぎ、名前を呼ばれ、笑顔も見せてくれた。

⏰:08/12/12 11:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#155 [ゆーちん]
「呼び捨ては嫌?」

「ううん!俺は名前呼んでくれるなら何でもいい。」

「そう。私ももういいよ。心は信用できるってわかったから、凜って呼んでも。」

「信用?俺、凜ちゃんに信用されてるの?マジ?」

「…そのテンションの高さはまだ理解できないけど。」

⏰:08/12/12 11:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#156 [ゆーちん]
何にせよ、俺は凜に信用されてるという事実にマジで泣けてきた。


「やべぇ。泣いてもいい?」

「は?ダメに決まってんじゃん。バカじゃないの。」


言う言葉はキツいけど、それでもいい。


凜にまた一歩近づけた。

⏰:08/12/12 11:14 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#157 [ゆーちん]
「んもー!凜ちゃんやっぱり冷たい!俺の事まだ好きじゃないのぉ?」


子供みたいに半ベソかきながら海を見ていた。


凜を見ると絶対泣いてしまいそうだから。


鼻の奥が痛い。


「心。」


やっぱり、名前呼ばれるのっていいですね。


「はい?」


涙をこらえながら横を向いた。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#158 [ゆーちん]
…ら!


俺の目の前に凜の顔があった。


頭真っ白。


何?


これ、何?


すぐに凜は離れていき、さっきのような小さな笑顔を浮かべた。


「私は好きな人にしかキスはしないよ。」


嬉し涙を流しました。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#159 [ゆーちん]
「凜ちゃ…ん…」

「あー、もぉウザイ。男のくせに泣くなっつーの。」

「だって…今…キス…」

「まさかキスも初めてだった?」

「ごめん…キスは…初めてじゃないです…」

「あっそ。正直者だね。」

「俺…目ぇ開けたまんま…」

⏰:08/12/12 11:17 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#160 [ゆーちん]
泣きながら凜を見続けていると、凜が滲んだ。


涙を拭く。


やっぱり少し凜は滲んでいた。


「困ったくんだね。」

「ごめんなさい。」

「まぁ、童貞だから仕方ないか…」


凜はゆっくり顔を近づけながら目を閉じて行く。


俺も目を閉じた。

⏰:08/12/12 11:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#161 [ゆーちん]
2度目のキスは幸せすぎて涙が止まった。


普通、女の子が泣いて男の子がリードするもんだよな。


見事に逆。


でもいいや。


幸せなんだから。


もうどっちがどっちでもいい。


海だけが俺らの真逆キスシーンを見ている、そんな夜だった。

⏰:08/12/12 11:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#162 [ゆーちん]
○●○●○●○

部屋

○●○●○●○

⏰:08/12/12 11:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#163 [ゆーちん]
凜の彼氏になって2ヵ月が経った。


付き合って3週間目の夜にキスをしてから、何も進展なし。


童貞の俺に、凜を誘う度胸なんかない。


キスなら大丈夫。


「凜ちゃん。」

「ん?」

「チューしよ。」

「は?」

「しようよ、ね?」

「変態…」

⏰:08/12/12 11:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#164 [ゆーちん]
そう言って、柔らかな唇を奪う俺。


凜からキスを誘われた事なんかないけど、俺が誘うと拒否された事は今のところ無し。


そう。


俺らは順調だった。


8月になり夏休み真っ最中の俺は、毎日凜をデートに誘ってた。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#165 [ゆーちん]
「明日は?」

「無理。香奈と本島行く。」

「じゃあ明後日。」

「無理。澪んち泊まりに行く。」

「じゃあ来週。」

「千夏と遊ぶ。」


…信じてもらえないかもだけど、俺ら順調なんだよ?


「…ごめんね、心。」


すねる俺の手を握ってくれた凜。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#166 [ゆーちん]
そんな可愛い顔で可愛い事されちゃ、許すしかないじゃん。


「凜ちゃんからチューしてくれるなら許してあげる。」

「…じゃあ別に一生許してもらわなくてもいいや。」

「何それ!」


そう言って立ち上がり、俺の手を離した凜。


そんなに自分からキスしたくないの?

⏰:08/12/12 11:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#167 [ゆーちん]
冷たいんだか照れ屋なんだか…可愛い奴。


俺を見下ろす顔もこれまた絵になる!


…って、マジで凜ちゃんにベタ惚れだな、俺。


「はぁ…しょうがない彼氏だわ。」


凜は呆れていた。


でも笑ってる。


呆れ過ぎて笑ってるんだ。

⏰:08/12/12 11:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#168 [ゆーちん]
それでもいい。


どんな笑顔でも、俺は凜が笑っているのが嬉しい。


思わず手を伸ばし、凜の頭を自分の方に引っ張り、唇を押し当てた。


夜風のせいで凜の髪が俺の頬に触る。


シャンプーの匂いがした。


長いキスだった。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#169 [ゆーちん]
せっかく彼女のいる夏休みなのに、竜や大輝と過ごした時間の方が長かった。


あっという間に過ぎた夏休みだったけど、思い出はたくさんある。


まずはクラスのみんなで海で遊んだ事。


凜は日焼けが嫌だって言うから木陰で見学。


『凜の水着姿が見たい!』ってわがまま言ってたら香奈に尻を蹴られたっけ。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#170 [ゆーちん]
他は本島デートかな。


2人で買い物して、ご飯食べて、フェリーの甲板でキスをした。


何度してもキスは飽きない。


毎回ドキドキする。


凜もそうだといいな。

⏰:08/12/12 11:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#171 [ゆーちん]
2学期が始まった。


2学期は楽しい事だらけ。


でもハード。


体力持つかなって今から心配だ。


「凜ちゃん!同じ班なろうね〜。」

「…は?主語が抜けてるから何の事かわかんないんだけど。」


そうですね。


興奮しすぎて主語が抜けました。

⏰:08/12/12 11:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#172 [ゆーちん]
「ごめん。あのね、修学旅行の班!」

「修学旅行…。」

「そっ!来月に修学旅行があるでしょ?その自由行動は5〜6人ぐらいで班作るの。」

「あぁ。なるほど。」

「で!男女混合の班OKだから一緒になろうねって言う話。」

⏰:08/12/12 11:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#173 [ゆーちん]
俺の笑顔のお誘いに、平然と冷たい目で聞いていた凜。


「だってさ。どうする、香奈?」


いつも凜の隣に座ってる香奈。


こいつも冷たい、つーか怖い目で俺を見ていた。


凜に話しを振られた香奈は言った。


「やだ。」

⏰:08/12/12 11:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#174 [ゆーちん]
「何でさ!香奈に決められる程、俺らの愛は弱くないよ!」


とは言ってみたものの…


「香奈が嫌だってさ。残念。私のことは諦めて。」


凜ちゃんまでそんな事言うんだもんなぁ…。


いじけるなぁ。


泣けてくるなぁ。

⏰:08/12/12 11:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#175 [ゆーちん]
「まぁまぁ。香奈も凜ちゃんも、もうちょっと考えてやってよ。」


そんな俺に見兼ねたのか、助け舟を出してくれたのが大輝だ。


「俺も竜も彼女がいるじゃん。で、香奈も彼氏いるっしょ?心と凜ちゃんも付き合ってるって事はだよ?」

⏰:08/12/12 11:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#176 [ゆーちん]
「…何よ。」


大輝の話しに香奈は食いついてくれた。


その調子だ!


頑張って、中橋大輝様!


「フリーの子と組むよりいいんじゃない?香奈の彼氏も心配しないだろうし。同じ班の子はみんな彼女がいるから安心して、みたいな。」

「まぁ…確かにね。」

⏰:08/12/12 11:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#177 [ゆーちん]
「俺と竜の彼女も同じ班の子は彼氏持ちだから心配すんなって言ったら、安心してたし。香奈の彼氏も安心してくれんじゃねぇかなって。」

「…え。大輝、もう彼女に私たちと組む前提で話したの?」

「あ、うん。だって心が大丈夫って言い切るんだもん。」


こらこら、中橋。


そんな余計な事言うんじゃないよ!

⏰:08/12/12 11:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#178 [ゆーちん]
凜は鼻で笑いながら言った。


「全然大丈夫じゃないじゃん。断られてるのに。」


もう、竜に頼るしかないよね。


「竜ぅ〜。」

「お前ら見てると情けないわ。」

「凜ちゃんと香奈、説得してよぉ〜。」

⏰:08/12/12 11:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#179 [ゆーちん]
俺と大輝じゃ、香奈に敵わない。


昔から影の支配者と言われていた向井竜様にお願いするしかないよな。


竜と香奈、凜の3人が話しているのを後ろで待つ。


『口を挟んで墓穴掘るかもしんねぇから、どけ!』と竜様がおっしゃったので。


「心。」


香奈が呼ぶ。

⏰:08/12/12 11:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#180 [ゆーちん]
「はい!」

「凜にべったりしすぎた時点で飛行機から落下さすからな。」


だからさ、香奈が言ったら洒落になんないって。


「わかってる!凜ちゃんと同じ班になれるだけで幸せなんでっ!」

「じゃあ…とりあえずOKって事で。」

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#181 [ゆーちん]
竜ったら何を言ってくれたのかしら。


彼は天才だ。


凜と香奈を丸め込んだ竜は『トメ食堂おごれよ。』と言ってきた。


…もちろん。


喜んでおごらせてもらいますとも!


ありがとう、竜、香奈、そして凜ちゃん!


楽しい修学旅行になりそうだね。

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#182 [ゆーちん]
ウキウキ状態の俺に、香奈は言った。


「つーかさぁ旅行の前に文化祭じゃん?その文化祭の班も確か旅行と同じ班でするんじゃなかったっけ?」


あぁ!


そういえば担任がそんな事言ってたっけ。


「いいじゃん!この5人なら完璧だって。」

⏰:08/12/12 11:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#183 [ゆーちん]
「ふっざけんな。竜はどうせ何もしないし、大輝と心は足手まとい。私と凜ばっか働かなきゃなんない気がする!」

「そんな事ない!足手まとわないようにするよ。」

「俺も!心よりは役に立つ自信ある。」

「本当かよ〜、もう。先が思いやれるってこの事だな。」

⏰:08/12/12 11:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#184 [ゆーちん]
そんな風にして決まった俺たちの班。


竜、大輝、香奈、凜、俺。


最強だな。


文化祭も修学旅行も絶対楽しい思い出作れそう!


放課後、俺はいつも通り凜と一緒に下校した。


「心。」

「ん?」

「私、心みたいなタイプ初めてだよ。」

「へ?初めて?何が?」

⏰:08/12/12 11:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#185 [ゆーちん]
俺の隣を歩いてくれる凜は、真っ直ぐ前だけを見ていた。


「みんなのいる前で告白とか、同じ班なろうとか。」

「俺、隠れてこそこそできるタイプじゃないのかも。」

「女の子みたいだよね。男らしい仕草ゼロだもん。」

⏰:08/12/12 12:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#186 [ゆーちん]
「えっ!それはショックだわ。やっぱ凜ちゃんも、彼氏が男らしくないと嫌だよね?」


凜の横顔は、本当に見取れてしまうぐらい綺麗で、思わず触りたくなるようなサラサラとした髪が顔の横でなびいている。


「別に。心みたいな優しい人と付き合うの初めてだからちょっと違和感あるだけ。」

⏰:08/12/12 12:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#187 [ゆーちん]
「違和感?」

「人前で色々と誘われたりする事ってなかったから。ナンパ以外。」

「えっ!凜ちゃんナンパされた事あるの?」

「あるよ。心はないの?逆ナンされたり。」

「ないない。ナンパした事ないし、された事もない。」

「ふーん。やっぱこの島はいいところだよ。」

⏰:08/12/12 12:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#188 [ゆーちん]
つくづく思う。


凜が住んでいたところと、この島は別世界のようだって。


一体、都会にはどんな魔物がいるんだ!とまで思ってしまう。


都会の人は、その魔物に操られ過ぎだよ。


たまにはこういう島にきて、のんびりするのも悪くないよぉ。

⏰:08/12/12 12:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#189 [ゆーちん]
「男らしくならなくてもいいから、ずっと優しいままでいて。変わらないで。ずっと今のままの心でいてくれれば、それでいいよ。」


凜ちゃん。


その言葉、笑顔で言われてたら、俺また泣いてたかもしんない。

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#190 [ゆーちん]
無表情でサラッと言っただけなのに、俺の胸はキュッと締め付けられて、嬉しくて嬉しくてぶっ倒れそうだもん。


「うん!凜ちゃん大好きなんだけど!」

「あぁ、そう。そりゃどうも。」

「キスしてもいいですか?」

「こんな道端でそんな言葉叫ばないでよ。恥ずかしいなぁ。」

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#191 [ゆーちん]
「でも、こんな俺に惚れたんでしょ?」

「…。」


凜の目は、やっと俺に向けられた。


「違うの?」

「自惚れるなよ、童貞。」


そう言って笑った顔は、どこか香奈に似ていた。


あの見下す感じ。


やだよ。


凜ちゃんまで、怖い香奈に似ていかないでね。

⏰:08/12/12 12:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#192 [ゆーちん]
「何それー。」

「キスならこないだした。」

「俺は毎日でもしたいの!」

「あっそ。」


素っ気ない凜。


何だか寂しい気分になった。


「ちょっと来て!」


俺は凜の手を引っ張って、走り出した。

⏰:08/12/12 12:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#193 [ゆーちん]
「えっ、ちょっと!何?」


驚く凜を引っ張って、俺は道具小屋に向かった。


畑の近くに必ずある道具小屋は、名前の通り道具が置いてある。


島に、いくつものある道具小屋の中でもお気に入りの場所があった。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#194 [ゆーちん]
小さい頃、竜たちと秘密基地だと言って、よく集まったっけ。


土クサイ小屋は、俺の懐かしい気持ちを蘇らせてくれた。


「何、ここ。」

「小屋。道端じゃないよ。」

「は?何言って‥」

「キスしたい!」


凜は驚いていた。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#195 [ゆーちん]
そりゃそうだ。


俺がキスがしたいがために、わざわざ小屋まで引っ張られて来たんだもんな。


俺だってちょっとビックリ。


「ここなら誰にも見られないから。小屋の持ち主も今の時間なら来ないよ。」


ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。

⏰:08/12/12 12:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#196 [ゆーちん]
そこまでしてキスしたいの?って嫌がられてるんじゃないかって、心配にもなった。


だけど凜は笑ってくれた。


「やっぱり、心みたいなタイプは初めてだわ。こんな面白い事してくれるの、後にも先にも心しかいないよ。」

⏰:08/12/12 12:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#197 [ゆーちん]
「…それは褒め言葉?」

「さぁ?どうだろ。自分で考えたら?」


そう言って笑う凜の腕は、俺の首に絡み付いて来た。


「どっちだっていいや。凜ちゃん笑ってくれんなら。」


お互いの目が閉じ、唇が重なった。

⏰:08/12/12 12:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#198 [ゆーちん]
凜の小さな体を抱きしめると、守ってやらないとって思わされる。


凜はいいって言ったけど、男らしくならないといけないのかなぁ…。


なんて考えていると、凜のいきなりの行動に思わず目を開いてしまい、唇を離してしまった。


凜はキョトンとした顔で俺に言った。

⏰:08/12/12 12:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#199 [ゆーちん]
「え…舌入れられるの初めて?」


凜のキスはあまりにも大人っぽくて、思わず腰が引けてしまった。


頭を縦に振ると、凜は『嫌だった?』と聞いてきた。


「嫌とかじゃないけど…びっくりした。」

「元カノとキスとかしなかったんだ。」

⏰:08/12/12 12:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#200 [ゆーちん]
「いや、キスはしたけど…今みたいなのはした事ない。」

「そう。ごめん。」

「え、謝んないでよ。つーかもっかい!」


俺がそうお願いすると、凜は笑った。


「変態度、高まって来たね。」

「え、そう?」

「バカは嫌いじゃないよ。」

⏰:08/12/12 12:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#201 [ゆーちん]
再び重なった唇。


しばらくすると、凜はさっきのように俺の口の中に舌を入れて来た。


何じゃこりゃ!ってのが素直な感想だったけど…変な話、凜が舌を動かすたびにドキドキさせられる。


気持ち良いとか、幸せとか、そういうんじゃない。

⏰:08/12/12 12:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#202 [ゆーちん]
凜を体で感じる事ができて嬉しいって思う気持ちのが強い。


「…心も、舌。」

「え?」

「入れていいよ。」


何だか、おかしな話。


女の子にリードされちゃってさ。


土クサイ小屋で心臓ドキドキさせられちゃってさ。


凜の口に、舌入れちゃってさ…。

⏰:08/12/12 12:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#203 [ゆーちん]
「ンンッ…」


凜から漏れた甘い言葉は、急に俺の鼓動を早くさせた。


ヤバイ。


緊張のドキドキが、いやらしいドキドキになりそう。


ストップしないと…。


でも、このキスが心地よくて、なかなか唇を離せずにいた。

⏰:08/12/12 12:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#204 [ゆーちん]
凜が俺の首に巻き付けた腕にも力が入っていた。


体もピッタリくっついて、いやらしい気持ちにならない方が変だよね。


好きな子とキスして、好きな子が甘い声出してるのに、何の欲情もしない人がいたら見てみたいもんですよ。

⏰:08/12/12 12:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#205 [ゆーちん]
「…凜、ちゃん。」


離れた凜の唇から、小さな息がハァと零れた。


「…ん?」

「帰ろ。幸せすぎるくらいのお時間を、どうもありがとうございました。」

「…そう。」

「これ以上いると、止まらなくなりそうだしね。」

「別に我慢しなくていいのに。わざわざ小屋まで来たんだし。」

⏰:08/12/12 12:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#206 [ゆーちん]
「うん、でもまぁ…いいや。ごめんね、こんなとこ引っ張って来ちゃって。」

「どうしたの。さっきまでの威勢とは全然違うけど。そんな大人しくなっちゃってさ。」


暴走した自分にちょっと反省と、大人になった優越感でぼーっとしちゃっていた俺。

⏰:08/12/12 12:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#207 [ゆーちん]
手を繋ぎながら小屋から出て、杉浦家まで歩いた。


「じゃあまた明日ね。」


いつものように玄関でバイバイして、自分の家に帰ろうとしていた。


「あっ、ねぇ!」


凜が呼び止める。


「ん?」


凜は辺りをキョロキョロと見てから、俺に小声で問い掛けて来た。

⏰:08/12/12 12:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#208 [ゆーちん]
「何?」

「心さぁ。」

「うん。」

「SEXしたいと思わないの?」


そりゃー…ねぇ。


「えっ…いきなりどうしたの。」

「付き合って3ヵ月でしょ?なんでSEXしないのか不思議でさぁ。」

⏰:08/12/12 12:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#209 [ゆーちん]
じいちゃんばあちゃんに聞かれたら大変だもんな。


凜が確認していたけど、思わず俺も辺りを確認にしてしまった。


うん、誰もいない。


「いや、何つーかさぁ…。」

「童貞だから?」


凜は笑顔1つ見せない。


不思議そうな顔のまま。

⏰:08/12/12 12:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#210 [ゆーちん]
「それもそうだけど…」

「緊張する?」

「うん、まぁ…」

「大丈夫だよ。私、教えてあげるし。我慢しなくていいから。」


それはそれは嬉しいお言葉です。


「凜ちゃんは、今まで付き合ってどれくらいで…その…してたの?」

⏰:08/12/12 12:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#211 [ゆーちん]
「付き合ったその日にしたり、付き合う前にもした事もあった。大体1ヵ月もしないうちにヤられちゃってたかな。」


やっぱり都会には魔物がいるんだ。


何でそんなませてんのさ。


聞いてるこっちは恥ずかしいし、理解できないしで、倒れそうだわ。

⏰:08/12/12 12:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#212 [ゆーちん]
「つーか…俺は童貞だから手ぇ出さない訳じゃないよ。そりゃ緊張もしてるけど、凜ちゃんの事、大事だもん。」

「…え?」

「そんなヤるだけの為に、俺は凜ちゃんに彼女になってもらってるんじゃないし。」

「…そう、なの?」

「そうだよ。」

⏰:08/12/12 12:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#213 [ゆーちん]
そりゃさ、緊張もするよ?


タイミングもわかんない。


手順もわかんない。


興奮してムラムラしちゃう事もある。


でもさ、SEXって慌ててするもんじゃないじゃん。


お互いの気持ちが一致した時でいいじゃん。


キスと同じ。

⏰:08/12/12 12:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#214 [ゆーちん]
いつも俺が誘って、凜は嫌がってるけど、最後は凜ちゃんからもキスを求めて来てくれんじゃん。


それと同じで、お互い求め合えた時でいいんじゃないの?


上手く言えねぇけど、とにかく凜が大事だからさ。


こう考える俺は、やっぱりバカなのかな。

⏰:08/12/12 12:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#215 [ゆーちん]
凜は俯いて、少し黙っていた。


機嫌悪くさせちゃったかな。


「凜ちゃん?」

「そんなさ…」

「え?」

「そんな嬉しい事言わないでよ。初めて言われた。大事だなんて。」


嬉しいようで寂しい。


凜は今まで付き合った人に大事にされなかったのかな、って。

⏰:08/12/12 12:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#216 [ゆーちん]
同じ歳なはずなのに、俺の倍、辛い事を経験してるんだろうなって思う。


「ありがと。本当、嬉しい。つーか恥ずかしい。」

「別にお礼言われるような事じゃないけど…。」

「家、入るね。また明日ね。バイバイ。」

「うん、バイバイ。」

⏰:08/12/12 12:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#217 [ゆーちん]
凜は俯いたまま、家に入って言った。


そんな嬉しかった?


なんか、わかんないな。


凜ちゃんの恋愛に対しての価値観。


価値観とかえらそうなこと言ってるけど、これが原因で別れるって言うのもよくある事だし…。

⏰:08/12/12 12:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#218 [ゆーちん]
俺らは価値観ガタガタにズレてるみたいだけど、何とか大丈夫そう。


俺が凜の、凜が俺の歩幅に合わせようとお互い必死って感じだけどな。

⏰:08/12/12 12:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#219 [ゆーちん]
翌日から文化祭の準備が始まった。


盛大な事はできないけど、こじんまりやるのが、うちの学校の文化祭。


各学年…つっても3クラスしかないけど。


1年は劇、2年も劇、3年の俺らは作品展示。

⏰:08/12/12 12:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#220 [ゆーちん]
文化祭って言っても島の人がお客さんな訳で、交流会みたいな感じだけど。


「何で今年は劇じゃねぇの。」


竜が、画用紙をはさみで切りながら呟いた。


「ネタ尽きたらしい。」


ダンボールをカッターで切りながら大輝が答えた。

⏰:08/12/12 12:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#221 [ゆーちん]
「桃太郎まだしてねぇじゃん。」

「小1でしたよ。」

「そうだっけ。じゃあシンデレラは?」

「小6でした。」

「かぐやひめ。」

「小3。」

「一寸ぼうし、金太郎、白雪姫。」

「幼稚園から考えると、もう全部したんじゃない?」

⏰:08/12/12 12:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#222 [ゆーちん]
竜と大輝の会話を聞きながら過去を辿ると、確かにしたような記憶が。


「もっかいリセットしようぜ。凜ちゃんは初めてなんだし、今までのチャラにすればいいじゃん。」

「つーかもう作品展示に決まったし。今更文句言っても遅いよ、竜。」

「くっそー。ボケ担任め。」

⏰:08/12/12 12:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#223 [ゆーちん]
文化祭イコール劇という法則で育ってきたせいか、作品展示という目標では、どうも竜の気が乗らないらしい。


「私は逆に劇なんかした事ないよ。」


凜が言った言葉に、俺・竜・大輝・香奈は叫びながら驚いた。


「凜、劇した事ないの?」

「あんなじいちゃんばあちゃんが喜んでくれる催し、他にないぞ!」

⏰:08/12/12 12:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#224 [ゆーちん]
「文化祭にお年寄りは来ないからさぁ。」


苦笑いする凜。


「凜ちゃんの住んでた場所とこの島って、別世界みたいだよな。」


あ、大輝もそう思う?


俺もそう思ってたよ。


凜のいた場所、知りたいようで知りたくないな。

⏰:08/12/12 12:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#225 [ゆーちん]
文化祭の準備と、修学旅行の準備でとにかく大忙しだった。


授業中にコソコソと隠れながら文化祭の準備をしていると、先生におもいっきり頭殴られるし、みんなに笑われるし。


でも授業中も作業しないと、俺らの班だけ群を抜いて準備が遅かった。

⏰:08/12/12 12:53 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#226 [ゆーちん]
香奈がカンカンに怒って、俺と大輝に怒鳴り散らしていたけど全然はかどらない。


「それ難しいから私やったげるよ。心はこっちの簡単な方やって。」

「…凜、ちゃ…ん。」

「泣かないでね、うっとーしぃから。」

「…はい。」

⏰:08/12/12 12:53 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#227 [ゆーちん]
凜に助けられながら、何とか頑張って文化祭に向けて毎日作業した。


そして10月を迎えた俺達はラストスパートをかける事に。


「決めた、大輝んち集合して夜も作業するよ。」

⏰:08/12/12 12:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#228 [ゆーちん]
この香奈の一言で俺たちは学校が終わっても文化祭の作業をする事になった。


「やーだー!学校で頑張ってんじゃん!俺んち来てまでしなくてもさぁ…。」

「やだ、だぁ?誰のせいでわざわざ学校終わってまで集まらないといけなくなったと思ってんのよ!大輝と心がトロくさいからだよ!」

⏰:08/12/12 12:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#229 [ゆーちん]
香奈のお叱りに一同納得。


香奈も凜も頑張っているのに、どうして他の班より作業が遅れてるかって?


竜は文句ばっか言ってやる気なし、大輝はやる事が遅い、俺は細かい作業が苦手。


そう、俺たち3人のせいで凜と香奈に迷惑かけていたのは誰が見てもわかるものだった。

⏰:08/12/12 12:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#230 [ゆーちん]
こうして香奈の提案で始まった、放課後の作業。


大輝の家が使えない日は竜の家でした。


でもある日、大輝の家も竜の家も使えない事になってしまった。

「どうするよ。心の部屋じゃ狭いし、今日は辞める?」


と、大輝。

⏰:08/12/12 12:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#231 [ゆーちん]
「は?何言ってんの。私らに一日足りとも休む暇がない事ぐらいわかるでしょ?狭いだろうが何だろうが心の家でやるよ。」

「えー、マジかよぉ。」


香奈の言う事は絶対だった。


俺らに拒否権無しかよ、ってな。


まぁ逆らう勇気はないんだけどね。

⏰:08/12/12 12:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#232 [ゆーちん]
こうして今日の放課後は江森家に集合する事になった。


学校が終わり5人で俺の家へと向かう。


「ねぇ、みんな。」

「ん?」

「何?」


みんなに呼び掛けたのに、返事をしてくれたのは竜と大輝だけだった。


香奈と凜はクールに無視。

⏰:08/12/12 12:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#233 [ゆーちん]
「作業の前にまずは掃除からしないと、座る場所ないかもぉ…。」


そう言うと竜と大輝にまで無視されてしまった。


冷ややかな空気が5人を包む。


そんな時、香奈はボソッと呟いた。


「どこまで足引っ張ったら気ぃ済むの。」

「…すみません。」


恐縮しながら歩いた帰り道。

⏰:08/12/12 12:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#234 [ゆーちん]
江森家につくと、母ちゃんが出迎えてくれた。


「あら!みんなお揃いでどうしたの?」

「文化祭の準備すんだよ。邪魔しに来るなよ!」

「はいはい。…あら?この子、どちらさん?」


母ちゃんは凜に問い掛けた。

⏰:08/12/12 13:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#235 [ゆーちん]
「はじめまして。杉浦凜って言います。6月にこの島へ引っ越して来たんです。」

「あぁ、そう!杉浦って事は、あの杉浦のじいちゃんばあちゃん家で住んでるの?」

「はい。」


母ちゃんと話す凜の顔は、俺には見せた事のない澄ました笑顔だった。


「おばちゃん。」

⏰:08/12/12 13:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#236 [ゆーちん]
「何よ、大輝。つーか、あんた久しぶりだね。」


大輝がニヤニヤしながら母ちゃんに言った。


「凜ちゃん、心の彼女なんだよぉ。」


…大輝。


お前、嫌い。

⏰:08/12/12 13:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#237 [ゆーちん]
「えぇぇ!心の彼女?えっ、噂の心の彼女?何それ!こんな可愛い子と付き合ってんの?信じらんない。」


信じらんない?


俺だって信じらんないよ!


こんなテンションの高い母ちゃんがいるって凜ちゃんにバレた事が!

⏰:08/12/12 13:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#238 [ゆーちん]
「もぉー、母ちゃん、うるさい。凜ちゃんビックリしちゃってるじゃんかぁ。」


大輝はいつのまにか香奈と竜と先に、俺の部屋に逃げていた。


言い逃げ大輝。


覚えとけよ。

⏰:08/12/12 13:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#239 [ゆーちん]
「心、あんたなんで内緒にしてたのよ!」


それはね、母ちゃん。


あんたが騒ぐからだよ。


うるさいんだもん。


本当にもう勘弁して。


「凜ちゃん、だっけ。心に変な事されたらすぐに殴るなり蹴るなりするのよ?」

「あぁ、はい。」

⏰:08/12/12 13:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#240 [ゆーちん]
凜は笑ってたけど、絶対母ちゃんのテンションに引いてるよ。


もぉー、母ちゃんのバカ!


騒がしい母親がいるせいで嫌われたらどうすんだよ!


「凜ちゃん、俺らも部屋行こ。」

「あ、うん。」

⏰:08/12/12 13:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#241 [ゆーちん]
俺は凜を連れて、無理矢理母ちゃんから逃げた。


「ゆっくりしてってね!」

「はい、ありがとうございます。」


いつも素っ気ない凜も、こういう時は幼い少女。


「…緊張した。」

「え?何が。」

「だって、心のお母さんだし。」


緊張だってするんだよ。


あの凜ちゃんが!

⏰:08/12/12 13:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#242 [ゆーちん]
それもうちの母ちゃんで!


何か割に合わない気が…。


部屋に入ると3人は勝手に作業を始めていた。


「凜ちゃんも適当に座って。」

「うん。」

⏰:08/12/12 13:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#243 [ゆーちん]
「おいコラ大輝。」

「アハハ!おばちゃんめちゃめちゃテンション上がってたじゃん。」

「ああなるから内緒にしてようと思ったのに。」

「え、何。凜って心の家来るの初めてなの?」


香奈が問い掛けると、凜は首を縦に振った。

⏰:08/12/12 13:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#244 [ゆーちん]
「マジ?いつもどこで遊んでんのさ。」

「海とか本島だよね!」


凜が答える前に俺が答えると、『お前に聞いてねぇよ!』と香奈に叱られた。


「まぁこんな汚い部屋だと彼女呼ぶにも呼べねぇわな。」


竜にいじわる言われながら俺は隣に腰を降ろした。

⏰:08/12/12 13:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#245 [ゆーちん]
「つーかさ、おばちゃんが騒ぐから彼女を紹介しないってのも、凜からすれば寂しい話だよね。」


香奈は作業しながら話した。


「理由はどうあれ、親に紹介したくないって事は女からすれば寂しいもん。だよね、凜。」


俺は香奈の言ってる事がよくわからなかった。

⏰:08/12/12 13:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#246 [ゆーちん]
今まで親に彼女を紹介しようなんて思った事なかったから。


凜を大事にすると言っておきながら、そういうところはまだまだ子供だ。


全然凜の気持ちを考えてあげられなかったのかも。

⏰:08/12/12 13:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#247 [ゆーちん]
「そう…なんだ。凜ちゃんごめんね。別に変な意味はなかったんだよ。ただ母ちゃんが騒ぐとうるさいから内緒にしてただけで。」

「ううん。明るくていいお母さんじゃん。それに私もあんまり親への紹介とかの意味がわかんないんだよね。」


香奈は『そうなの?』と驚いていた。

⏰:08/12/12 13:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#248 [ゆーちん]
「ちゃんとした付き合いってした事ないからさ。彼氏の親に会う事もなかったし。だからさっきはめちゃくちゃ緊張しちゃったよ。」


そう言って笑った凜はたまらなく可愛かった。


キスしてぇ。


…って今言ったら殴られそうだね。

⏰:08/12/12 13:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#249 [ゆーちん]
文化祭の準備のせいで、あの小屋でキスしたキリ、俺と凜は触れ合っていなかった。


手を繋ぐだけでいいから、凜に触れたかった。


みんながいるから触れられない。


早く文化祭が終わればいいのにと思う一方で、作業が間に合わないかもしれないから文化祭まだ来るなっつ思う気持ちもある。

⏰:08/12/12 13:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#250 [ゆーちん]
わがままな俺。


その日は8時まで作業した。


母ちゃんが作ったチャーハンを5人で食べてから解散。


明日もうちでするんだって。


本当に終わるのかな、この作業。

⏰:08/12/12 13:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#251 [ゆーちん]
不安や諦めもあったけど、何とか間に合った。


文化祭当日。


素晴らしい作品が運動場に飾られた。


ダンボールで作った大きな地球儀。


画用紙や折り紙で大陸や海を作ったり、飾り付けをして華やかにする。

⏰:08/12/12 13:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#252 [ゆーちん]
まさに汗と涙の3年生の作品は、堂々と運動場で来客を見下ろしてくれている。


「あ、あそこ俺が貼った大陸だ!」


地球儀に向かって指さすと凜は言った。


「どうりで貼り方が汚いはずだ。」


たまには褒めてくれてもいいんじゃないですか、凜ちゃんよ。

⏰:08/12/12 13:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#253 [ゆーちん]
劇をしない文化祭はやっぱりどこか暇だった。


だけど作品を完成できた達成感には満ち溢れていた。


「心。」

「はい?」

「今日文化祭終わったらウチ来る?」

「…え?」


まさかのお誘い!


まさかの杉浦家!


まさかの…凜ちゃんの部屋。

⏰:08/12/12 13:16 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#254 [ゆーちん]
「心の家ばっか言ってて、うちには来た事ないからさ。」

「行った事ないから行く!てゆーか行った事はあるけど。」

「私の部屋は初めてでしょ?」

「うん!行く行く行く!」

「わかったから、その子供みたいな反応辞めて。恥ずかしい。」

⏰:08/12/12 13:17 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#255 [ゆーちん]
1年生の劇、2年生の劇を見て、カラオケ大会的なものもして、文化祭終了。


「凜ちゃん帰ろう!」


俺が凜の席に駆け寄ると、後ろから香奈が言った。


「何言ってんの。後片付けサボる気?」


おっと。


俺とした事が、先走りすぎました。

⏰:08/12/12 13:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#256 [ゆーちん]
凜ちゃんに『バカ。』と言われたけど、楽しみな事が待っているとどんなに面倒な後片付けでも楽しかったりする。


「せっかく作ったのに燃やすの勿体ないよなー。」

「記念に写真撮っとくか。」


竜の提案で地球儀の前で5人で写真を撮った。


一生の宝。

⏰:08/12/12 13:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#257 [ゆーちん]
運動場にキャンプファイヤーのような火が立ち上る。


地球儀を焼き、作品とおさらば。


みんな炎を見ながら騒いでいた。


「凜ちゃん。」

「ん?」

「今のうちに帰っちゃおうよ。」

「抜け駆けって奴?」

「そう。」

⏰:08/12/12 13:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#258 [ゆーちん]
「そんなに私の部屋来たいの?」

「行きたい行きたい!」

「本当、変態バカだね。」


凜が手を差し延べたので、俺はその小さな手を握り締めた。


竜や大輝、香奈には何も言わないで学校から抜け出して、杉浦家に向かった。

⏰:08/12/12 13:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#259 [ゆーちん]
近道を使い、杉浦家に到着。


「やべぇー!緊張して来た。」

「別に何もないよ。」


凜が玄関のドアを開けると、家の中は電気が消えていた。


「お邪魔しま〜す。」

「おじいちゃん達、まだ帰って来てないみたい。」

⏰:08/12/12 13:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#260 [ゆーちん]
杉浦のじいちゃんばあちゃんも文化祭に来ていたらしい。


キャンプファイヤー見ながらみんなと喋ってんのかな?


何にせよ、杉浦家には俺と凜の二人きり。


階段を上がり、ずっと物置だった部屋が今の凜の部屋になっていて、俺の知ってる杉浦家じゃない気がして妙に緊張した。

⏰:08/12/12 13:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#261 [ゆーちん]
凜の部屋は甘い匂いがした。


「何でこんないい匂いすんの?」

「お香焚いてるから。」

「なるほど!俺も今度、本島に行ったらお香買お。」

「んー、じゃあさ。」

「え?」


凜は引き出しの中を漁り、1つの袋を取り出した。

⏰:08/12/12 13:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#262 [ゆーちん]
「これあげるよ。前まで使ってたんだけど今はもう使わないし。お香立ても入ってるよ。」

「…凜ちゃん。」

「何でいつもすぐに泣きそうな顔になるのよ!」

「だって〜!凜ちゃんが俺にプレゼントなんて初めてだよ?」

「…そうだっけ。」

⏰:08/12/12 13:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#263 [ゆーちん]
凜は袋を持って、ベットにもたれて座る俺の隣に腰を降ろした。


「はい、匂い嗅いで。」


凜が袋を開けると、部屋とはまた違う爽やかな匂いがした。


「超いいじゃん。」

「でしょ?だから、はい。あげる。」


袋を受け取り『ありがとう。』を何度も言った。

⏰:08/12/12 13:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#264 [ゆーちん]
何度も何度も言う俺に、凜は『わかったよ。』と笑ってくれた。


それから文化祭の話をしたり、島の話をしたり、修学旅行の話をした。


途中テレビをつけたが、夕方はニュースばかりで面白い番組はやっていなかったので、音楽を流してもらった。

⏰:08/12/12 13:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#265 [ゆーちん]
「洋楽とか聞くんだ。」

「…うん。心は聞かないの?」

「あんまり。」

「貸して欲しかったらいつでも貸したげるよ。」

「凜ちゃん…優しいねぇ。」

「またその顔。泣きそうな顔が武器とでも思ってんの?」


思ってないよ。


本当に、泣きそうなくらい嬉しいんだよ。

⏰:08/12/12 13:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#266 [ゆーちん]
「でもいい!聞きたくなったら凜ちゃんの部屋にくれば聞けるでしょ?」


そうだよ。


だって俺ら恋人だし〜!


「そんな迷惑な行動しないでよ。」


…また断られました。


「えぇー!何でさぁ!いいじゃんか!」

⏰:08/12/12 13:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#267 [ゆーちん]
「うるさいなぁ、もう。わかったよ。聞きたきゃいつでも来ればいいよ!」


叱られたけど…結果オーライ?


「やった〜。」

「本当、心みたいな人と付き合ってると退屈しないわ。」


凜ちゃん。


そういう嬉しい事は笑顔で言って欲しいんだけど。

⏰:08/12/12 13:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#268 [ゆーちん]
でもまぁいいや。


褒められてるのに変わりはない。


「俺も凜ちゃんみたいな子、初めてだよ。」

「ふーん。私みたいな性格の悪い子とは付き合った事ないんだ。」

「そうじゃないよ。それに凜ちゃん性格悪くないし。」

「お人よしだね。」

⏰:08/12/12 13:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#269 [ゆーちん]
「凜ちゃんみたいな素直な子、初めて。」

「…素直?私が?」

「うん。思ってる事ちゃんと言ってくれるもん。」


言い方は冷たいけど、ちゃんと自分の意見を言ってくれる。


元カノとかは遠慮して意見とかぶつけてくんなかったし。


凜ちゃんみたいにちゃんと言ってくれる子の方が、俺には合うみたい。

⏰:08/12/12 13:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#270 [ゆーちん]
「そんなの褒められたの初めて。」

「初めて?」

「初めて。」

「俺も初めて。初めてだらけだね、俺ら。」

「そうだね。」


少しだけ凜に近寄ると触れている右半身が熱く思えた。


人肌の温かさと、緊張の熱さ。

⏰:08/12/12 13:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#271 [ゆーちん]
「凜ちゃん。」

「ん?」


我慢できず、振り向いた凜の唇を奪っていた。


久しぶりのキスを凜は嫌がる事なく受け入れてくれた。


「…ごめん。」

「何が?」

「いきなりキスして。」

「別に。嫌じゃないよ。」


そう言って凜から俺にキスをくれた。

⏰:08/12/12 13:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#272 [ゆーちん]
洋楽が優しく俺らを包む。


初めて部屋に来て、初めてプレゼントをもらって、おまけに幸せなキスまでさせてもらって。


文化祭の準備を頑張った俺へのご褒美ですか?


だとしたら最高です。


凜にも何かご褒美あげないと…。

⏰:08/12/12 13:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#273 [ゆーちん]
●○●○●○●

白い肌

●○●○●○●

⏰:08/12/12 13:53 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#274 [ゆーちん]
修学旅行は、本当に楽しかった。


アルバムに載せきれない程の思い出ってやつ?


自由行動は1秒1秒全てが思い出だった。


凜はたくさん笑っていた。


香奈も竜も大輝も、そして俺も。


5人でたくさん写真も撮った。

⏰:08/12/12 13:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#275 [ゆーちん]
本島に行かないとカメラ屋のないような島だけど、思い出は大切にしたい奴らばっか。


現地の人に誰それ構わず声をかけ、5人の写真を増やしていった。


そのせいで修学旅行から帰って来てからは、たまらなく脱力感に満ち溢れていた。

⏰:08/12/12 13:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#276 [我輩は匿名である]
頑張ってください

⏰:08/12/12 13:59 📱:F703i 🆔:x2r.3iP6


#277 [ゆーちん]
そんなたくさん笑った10月も、寒くて寒くて凜から手を握って来てくれた11月も矢のように過ぎた。


12月。


凜が島に来て半年が経った。


同時に、俺と付き合って半年が経つ。


数えきれないくらい手を繋いでキスもした。

⏰:08/12/12 14:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#278 [ゆーちん]
でも抱きしめた回数は両手で数えられる程だった。


SEX?


もちろん、まだ。


全然焦ってないし、しなくても平気。


…なーんて余裕ぶっといて、実はそれが原因で凜を悲しませていた。


冬休みが明日から始まる12月22日。


凜の部屋に俺はいた。

⏰:08/12/12 14:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#279 [ゆーちん]
「いや。」


いつもみたくキスを断られた俺。


「何で?」


いつもは『変態だ。』とか『童貞とはしないよ。』とかってからかわれるんだけど、今日の返事は違った。


「キス以上、進まないから。」


凜の部屋の甘い匂いが好き。


凜の部屋の匂いって言うより、凜の匂いだ。

⏰:08/12/12 14:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#280 [ゆーちん]
「え?」

「大事にしてくれんのは嬉しいけど、キス以上の事もしたいって思う私は、心より変態かな?」


凜にそんな事を言わせて、つくづく俺は情けない奴だと自覚した。


「私だって心が大事だよ。大事だから、心が知りたいんだよ。」

⏰:08/12/12 14:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#281 [ゆーちん]
ちょっと切なげにそう言った凜に、俺は謝った。


「ごめんね…。」

「謝られても困る。」

「うん。」

「嫌ならいいの。でもキスだけじゃ足りないって言う私の気持ちも知っといてね。」


凜が動くと甘い匂いも動いてる気がした。

⏰:08/12/12 14:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#282 [ゆーちん]
ベットに座り、床に座る俺を見下ろす姿がとても大人っぽくて顔が熱くなった。


「本当にいいの?」

「何が?」

「凜ちゃんに手ぇ出した時点で、大切にしてないじゃんって思われるのが嫌だったから、俺も…我慢してた。」

⏰:08/12/12 14:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#283 [ゆーちん]
「やっぱり我慢してたんじゃん。しなくていいって前に言ったのに。」

「我慢なんかしてないってカッコつけたけど、俺も男だからたまにムラっとしちゃったりするんだよね。エヘッ。」

「エヘッじゃないよ。心が私を大事にしてくれてるのは、もう充分感じてるから。心の事信じてるし、今までのバカな元カレとは違うってちゃんとわかってるからさ。」

⏰:08/12/12 14:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#284 [ゆーちん]
思わず目を伏せた。


だって目の奥が痛くなったから。


「…凜ちゃん。俺、泣いてしまいそうです。」

「そうやってすぐ泣きそうになるところも心の優しさ出てるよね。」

⏰:08/12/12 14:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#285 [ゆーちん]
そんな褒めても、お金なんて出ないですよ。


いや、そうじゃなくて…。


かなり嬉しいんだよ。


「泣き虫な男でごめんなさい。」


するとベットから、床に座る俺の傍に凜の匂いがフワッと動いてきた。


俯く俺の顔を凜の小さな手が包み、顔を上げさせてくれた。

⏰:08/12/12 14:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#286 [ゆーちん]
「…痛い。」


包んでいたはずの凜の手は俺の頬を引っ張り出した。


「泣き虫だろうが何だろうが、私はそんな心が好きなの。」


ぶっきらぼうにそう言うと、凜の手が勢いよく離れ、頬がヒリヒリ痛んだ。

⏰:08/12/12 14:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#287 [ゆーちん]
でもその痛みでさえ幸せだった。


いや、マゾとかじゃなくてさ。


…俺に好きって言ってくれたから。


マジで泣いてしまいそうだったので、家に帰る事にした。


「あ、凜ちゃん。」

「ん?」

「今度いつ会える?」

「明日は香奈と本島に行くから会えないけど、イヴは会えるから。」

⏰:08/12/12 14:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#288 [ゆーちん]
「じゃあ24日に遊ぼ。」

「いいよ。」


クリスマスイヴとクリスマスに彼女がいるなんて初めてで、かなりテンションが上がった。


そのテンションは翌日になっても変わらず、竜に幸せを分けてやるために朝から向井家にお邪魔した。

⏰:08/12/12 14:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#289 [ゆーちん]
「んなの分けていらねぇから!」

「最近別れてロンリークリスマスの竜ちゃんに、少しでも幸せをおすそ分けしないとって思ってくれる友達に向かって失礼な!」

「童貞から幸せなんか分けていらねぇし。」


そう言ってベットに潜った竜。

⏰:08/12/12 14:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#290 [ゆーちん]
「その事なんだけどさぁ。」

「どの事!」

「童貞の事。」

「何!」

「いや、あの…てゆーか何でそんなピリピリしてんの。」

「朝っぱらからのろけ話しに来る男のせいだよ!」

「あ、俺か。ごめんね。アハハッ。」

「うっざ。」

⏰:08/12/12 14:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#291 [ゆーちん]
布団から顔を出して怖い目で俺を睨む竜に、勇気を出して聞いてみた。


「SEXって、どうやんの?」


竜の怖かった目はたちまち丸い目に変わる。


「はぁ?」

「変な話、凜ちゃんからOK出てんだけど手順がわかんねぇのよ。」

「手順ってお前、元カノと途中までやったんだろ?」

⏰:08/12/12 14:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#292 [ゆーちん]
「あぁ。でもあんなのほとんど俺が襲われちゃってたし。」

「手順って言われてもさぁ…大輝に聞け。」


そう言われたので俺は中橋家に走った。


もちろん竜も連れて。


大輝は竜と違い、ケロッとした顔で出迎えてくれた。

⏰:08/12/12 14:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#293 [ゆーちん]
「そんなの、キスして押し倒して…あとは野となれ山となれだろ。」


大輝の回答は、何ともまぁめんどくさそうな対応だった。


「その野と山のところが聞きたいんだよ!」

「えー、口で説明するようなもんじゃねぇし。」

⏰:08/12/12 14:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#294 [ゆーちん]
「そこを何とかお願いしますよ中橋さん!」


2人で騒いでいると、大輝の部屋でもベットでゴロゴロしている竜が言った。


「つーか凜ちゃんにリードしてもらえばいい話じゃん。処女じゃねぇんだし、手取り足取り教えてくれるって。」

⏰:08/12/12 14:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#295 [ゆーちん]
うん。


まぁ、それもありだけどさ…何かちょっと恥ずかしくない?


初めてキスした時も、ディープキスした時も、SEX誘ってきたのも全部凜ちゃんからだし。


今度こそ俺がリードしねぇとって思うんだよね。

⏰:08/12/12 14:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#296 [ゆーちん]
「そうじゃん。相手が凜ちゃんなら心配ないって。お前は避妊だけ心配してればいい。」


大輝も竜の意見に乗っかる。


「つーわけだ。俺はしばらく使わないんで、これあげるね。心ちゃん!」


嫌みたっぷりの竜の笑顔と一緒に贈られたコンドームを受け取り、俺はふに落ちないまま頷いた。

⏰:08/12/12 14:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#297 [ゆーちん]
「え、つーか竜いつもズボンのポケットにゴム入れてたわけ?」

「うっせ!聞くな!」

「ブハッ。まぁ俺もポケットに入れておく派だけどね。」


竜と大輝が盛り上がってるのも無視し、俺はちょっと妄想してみた。


………。


無理。

⏰:08/12/12 14:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#298 [ゆーちん]
未知の世界だから、途中からどう妄想すればいいのかわかんない。


そもそも元カノと失敗した時、服とか脱いでないしね。


だから女の子の裸っつーのがまず想像つかない。


エロ本なんか売ってないこの島をちょっと恨んだ瞬間だった。

⏰:08/12/12 14:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#299 [ゆーちん]
○●○●○●○

お昼ご飯食べて来ます

途中コメントくださった方
ありがとうございます

一気に投稿してるので
全然気付かなくて

よければ感想板の方に
お願いします

後ほど更新できたら
またしますね

>>2

○●○●○●○●○

⏰:08/12/12 14:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#300 [ゆーちん]
●○●○●○●

少しだけ更新

●○●○●○●

⏰:08/12/12 16:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#301 [ゆーちん]
そして迎えたクリスマスイヴ。


今日、いっちょデカい花火でも打ち上げようって事で俺のポケットには昨日竜からもらったアイツが潜んでいる。


それともう一つ。


俺から凜ちゃんにあげる初めてのプレゼント。


「はい、クリスマスプレゼント!」

⏰:08/12/12 16:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#302 [ゆーちん]
「…うっそ。信じらんない。すごい嬉しい。」


在り来りだけどハートのネックレスをプレゼント。


凜は驚きながら受け取ってくれた。


「あ、これ私もプレゼント。」

「マジありがとうね!泣きそうだわ。」

⏰:08/12/12 16:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#303 [ゆーちん]
お互いプレゼントを開けた。


凜がくれたプレゼントはレザーのブレスレットだった。


「うっわ、マジ嬉しい。」

「気に入った?」

「うん、かなり!」

「よかった。私もこれ、気に入った。」


今日は凜にも笑顔が溢れている。

⏰:08/12/12 16:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#304 [ゆーちん]
その笑顔だけでも充分すぎる、素敵なプレゼントなんだけどな。


なんてキザな事言ってるとバカにされそうだから言わないでおこう。


「掃除機とブレスとどっちにしようか悩んだんだけどね。」

「掃除機?」

「この部屋汚いからさ。」

⏰:08/12/12 16:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#305 [ゆーちん]
まぁね。


何が汚いってガラクタが多い。


お菓子の食べカスがとか、ホコリが舞い上がってとか、そういう汚いじゃないんだよ。


物が多いっつーの?


読まなくなった雑誌や教科書。


漫画も床に散らばったまま。

⏰:08/12/12 16:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#306 [ゆーちん]
「年末の大掃除、手伝ってあげるよ。」


「…うん、ありがとね。」


情けない。


何で俺って収納とか下手くそなんだろ。


「あ、お香もう残り1本じゃん。また買いに行かないとね。」

⏰:08/12/12 16:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#307 [ゆーちん]
「一緒に買いに行こうね〜。」


「えぇー。やだぁ。」



そう言いながら凜は慣れた手つきでお香に火をつけた。

⏰:08/12/12 16:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#308 [ゆーちん]
「んー。懐かしい匂い。ずっと自分が使ってたのに、今じゃこの匂いイコール心って感じだよ。」


俺、このままだと凜ちゃんを好きになりすぎて、壊れちゃうんじゃないでしょうか。


だってさ、この笑顔は反則でしょ。


花火打ち上げるぞー、なんて意気込んでいなくても、この笑顔見たら誰でも打ち上げたくなるっつーの。

⏰:08/12/12 16:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#309 [ゆーちん]
まぁ、勝手に打ち上げられても困るけど。


俺の彼女だし。


「…ンッ…」


突然交わした甘いキスも、優しく受け入れてくれた。


キスだけじゃなく体も。

⏰:08/12/12 16:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#310 [ゆーちん]
凜と俺はゆっくりとベットに倒れ込んだ。


「…電気。」


凜が呟いたその言葉で、俺は慌てて部屋の電気を消した。


そして暗闇で再び凜とキスをする。


俺は、自分で自分の行動に驚いていた。


何もしらない童貞男だけど、体は本能のまま動くんだって。

⏰:08/12/12 16:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#311 [ゆーちん]
この手順が正解かなんてわからないけど、俺はゆっくりとためらいながらも凜に触れていった。


初めて見た凜の体は、暗闇でもわかるくらい白い肌だった。


余計に緊張してしまい、あまり見れなかったんだ。

⏰:08/12/12 16:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#312 [ゆーちん]
下半身に触れると、凜が可愛い声を零していた。


その色っぽい声のせいで、俺の手や唇は暴走するばかりだった。


「ンアッ…心…もう、入れ…てよ…」

「いいの?」

「いいよ…」


凜の荒い息使いが部屋に響く。

⏰:08/12/12 16:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#313 [ゆーちん]
とうとう迎えた大人への一歩。


父ちゃん母ちゃんじいちゃんばあちゃん。


俺は同じ失敗2回もしないぜ。


つーか前の失敗は元カノが無理矢理襲って来て恐かったっつーのも一理あるんだけどね。


まぁでも今、目の前にいる彼女は俺の大事で大好きな彼女なわけで。

⏰:08/12/12 16:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#314 [ゆーちん]
おかげさまで幸せな初体験を迎える事ができました。


数分前まで童貞だった俺ですが、ありがたい事に昇天までさせていただき…非常に幸せなクリスマスイヴでした。


「心、やばい…」

「え?」

「かなり気持ち良かったよ。本当に初めて?」

「初めてですー。」

⏰:08/12/12 16:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#315 [ゆーちん]
終わった後も、凜を抱きしめながらベットの中でゴロゴロっつう幸せ尽くしの俺。


こんな幸せだと、いつか大変な事起こるんじゃないかな。


このまま幸せが続けばいいのに、って願わずにはいられなかった。

⏰:08/12/12 16:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#316 [ゆーちん]
翌25日は、竜の為に5人集まってクリスマスパーティーをした。


本島のカラオケボックスで竜の失恋慰安会。


失恋の歌ばかり唄う竜と打って変わって、幸せな4人はテンションの上がる歌やアニメソングやらと竜の気持ちなんかお構いなしだった。

⏰:08/12/12 16:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#317 [ゆーちん]
「香奈と一緒にクリスマス過ごすなんて思いもしなかったんだけど。」


大輝が言った。


「あ?そういう大輝も、クリスマスなんかに彼女ほっといて大丈夫なの?」

「友達と過ごすってさ。香奈の彼氏は?」

「大学のサークルの飲み会だって。ま、昨日一緒だったし別にいいよ。」

⏰:08/12/12 16:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#318 [ゆーちん]
「俺も昨日一緒だったから今日は友達と過ごそうって事になったんだよね。」

「まぁこいつらは昨日も今日も一緒っていううざいパターンだけどね。」


そう言って香奈は俺と凜を指さした。


「エヘッ。」

「うっざーい。」

「竜なんか昨日1日中テレビ見てたらしいぞ。」

⏰:08/12/12 16:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#319 [ゆーちん]
「ロンリーロンリークリスマスイヴじゃん。」


当の竜は、失恋ソングを熱唱。


俺と真逆だな。


可哀相に。


…なんて同情しちゃったりする俺。


でも、昨日の今日で凜と話すのがちょっと恥ずかしかったりする。

⏰:08/12/12 16:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#320 [ゆーちん]
竜が唄い終わり、しばらく曲を入れずに5人で話をした。


「進路決めた?」


と、香奈。


「俺はA高だな。家から通う。」

「俺も。」

「マジ?俺も〜。」


大輝、竜、俺は本島にあるそんなに頭は賢くなくても入れる高校に島から通う予定。

⏰:08/12/12 16:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#321 [ゆーちん]
「香奈は?」

「私は島出るよ。本島のB高行く。」


B高は女子が多く、寮生活できる高校だ。


「寮入るの?」

「うん。彼氏んちと寮が近いからさ。」

「凜ちゃんは?」

「まだ考え中。」

⏰:08/12/12 16:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#322 [ゆーちん]
あれ?


確か前に言ってたよな。


凜、一人暮らしするって。


考え変わったのかな。


不思議に思い、フェリーの中で2人っきりになったので聞いてみた。


「一人暮らししないの?」

⏰:08/12/12 16:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#323 [ゆーちん]
「んー。ちょっと悩んでて。」

「何?」

「島、好きだから離れたくないの。でもおじいちゃん達に迷惑かけたくないし。」

「そっか。」

「でももう親には一人暮らしする予定で話が進んでるって言われてるし、この島とバイバイなのかもね。」

⏰:08/12/12 16:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#324 [ゆーちん]
「そっか。」


寂しいけど、寂しいって言わなかった。


凜の将来だもん。


俺が寂しいって言って、考えがブレると悪いから。


そう思って口にしなかったけど、凜は言った。

⏰:08/12/12 16:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#325 [ゆーちん]
「心と会えなくなるの、寂しいよ。」


俺に寂しいって、素直に言ったんだ。


『俺も寂しい。』って言えない。


「離れたくないな。島とも…心とも。」


『俺も離れたくない。』って言えない。

⏰:08/12/12 16:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#326 [ゆーちん]
どうして急に素直になれなくなったんだろう。


それはきっと、凜の将来を邪魔しちゃいけないっていう訳のわかんない遠慮。

⏰:08/12/12 16:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#327 [ゆーちん]
そんなの、男らしく、凜の未来に乗り込んでやればいいのに。


凜の将来に、俺がいるようにすればいいのに。


なのに、なぜか勇気がなくて凜の未来に入ろうとしなかった。

⏰:08/12/12 16:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#328 [ゆーちん]
本心はずっとずっといつまでも凜といたい。


本当だよ。


俺の未来予想図には凜がいる。


凜とずっと一緒に歩もうって思っていたけど、その頃の俺はそこまで大人になれなかったんだ。


まだまだ幼い自分に、凜の未来に口を挟む資格なんてないと思ってたんだ。

⏰:08/12/12 16:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#329 [ゆーちん]
結局、凜の進路はあやふやなまま年が明けた。


中学生でいられるのもあと少し。


3月になると、この中学校ともさよならだ。


そんな1月。

⏰:08/12/12 16:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#330 [ゆーちん]
凜と2回目のSEXをした。


大輝がテストで0点取った。


香奈の髪が黒くなった。


凜の髪も黒くなった。


美帆に彼氏ができた。


竜に彼女ができた。


トメばあちゃんにひ孫ができた。


そんな1月。


例年より寒い1月だった。

⏰:08/12/12 16:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#331 [ゆーちん]
●○●○●○●

キリがいいので
STOPします

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/12 16:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#332 [ゆーちん]
○●○●○●○

寂しさ

○●○●○●○

⏰:08/12/12 23:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#333 [ゆーちん]
「島、出る事にした。」


海を見ながら凜が俺にそう言ったのは2月14日。


バレンタインデーのチョコをもらった直後だった。


「…そっか。」

「一人暮らしのマンションがC高に近いから、たぶんC高に行く。」

⏰:08/12/12 23:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#334 [ゆーちん]
「じゃあA高と近いから制服デートできるねぇ!」


俺は精一杯、応援の笑顔で振る舞った。


だけどその笑顔は、逆に凜を悲しませてしまった。


「…寂しいんだけど。」

「…。」


何も言えない。


「心は寂しくないの?私が島出てっても平気なの?」

⏰:08/12/12 23:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#335 [ゆーちん]
寂しいに決まってんじゃん。


平気な訳ないじゃん。


本当の事言えば、凜の考えを鈍らせてしまいそうで恐かったんだ。


だからって上手い嘘をつけるほど、俺はひねくれて育ってない。


「…行くなって言ってくんないの?」

「…。」


チョコレートを握る手に力が入る。

⏰:08/12/12 23:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#336 [ゆーちん]
「嘘でもいいから、引き止めるような言葉、聞きたかったんだけどな。」


凜はそう言って、俺の前を横切って行った。


嘘なんかつけるわけないじゃん。


一人きりになった海は、泣けてくるほど寒かった。

⏰:08/12/12 23:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#337 [ゆーちん]
凜に置き去られて正解だ。


でも何かショックでさ。


可愛らしいピンクの紙袋に入れてラッピングされていたチョコレートを持ちながら、島中を歩いていた。


あてもない。


自分の家に帰る気になれず、竜か大輝の家に行こうと思ったけど…辞めた。

⏰:08/12/12 23:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#338 [ゆーちん]
だからブラブラしてた。


「心?」


呼び止められて振り向くと、美帆がいた。


「おぉ、美帆。」

「何してんの、こんなとこで。家と真逆の方向じゃん。」

「放浪中。」

「そんな可愛い袋持って?」

「あぁ…うん。」

⏰:08/12/12 23:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#339 [ゆーちん]
美帆は何か感づいたらしく、ニヤッと笑った。


「凜と何かあったんだ。」

「…。」

「バレンタインの夜にこんな場所で、そんな暗い顔してるなんて千夏が知ったら怒るよ?」

「…千夏?」

⏰:08/12/12 23:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#340 [ゆーちん]
「うん。今日はチョコ渡す相手がいないってピリピリしてた。恋人がいる奴は誰ふり構わず殴り倒してやるーって叫んでたもん。」

「ハハッ。何だそりゃ。」


千夏が暴れるところを想像すると、俺にも笑みが零れた。


「で?恋人のいる幸せな心さんは、なんで泣きそうな顔してんのさ。」

「んー…。」

⏰:08/12/12 23:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#341 [ゆーちん]
俺の濁る笑顔を見て、美帆は言った。


「うちおいで。」


俺を抜かして美帆は前をスタスタと歩き始めた。


俺は何も言わずに美帆の後ろをついてった。


「やべー、菊地家とか久しぶりだわ。」

「小学生のころは毎日来てたのにね。中学上がって、心に彼女ができて、それから全然来なくなった。」

⏰:08/12/12 23:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#342 [ゆーちん]
「そうだっけ。でもその彼女とは、すーぐ別れちゃったよ。」

「初めての彼女できたってあんな喜んでたのにね。」

「そうだねー。」


懐かしい過去は溜め息が出るくらい背伸びするのに必死だった。

⏰:08/12/12 23:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#343 [ゆーちん]
カッコつけてた中1の俺。


カッコつけるのに疲れてきた中2の俺。


カッコつけるのを辞めた中3の今の俺。


子供のままなら、素直に寂しいって言えてたんだ。


もっと大人だったら、凜の未来に入り込む勇気を持てたんだ。

⏰:08/12/12 23:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#344 [ゆーちん]
どっちにしろ成長したのかしてないのかわからない自分に嫌気がさす。


「お邪魔します。」


菊地家は何も変わっていなかった。


小学生の頃、よく来た菊地家のままだった。


「心ちゃん!久しぶり〜。」


美帆の母ちゃんは笑って出迎えてくれた。

⏰:08/12/12 23:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#345 [ゆーちん]
「こりゃまた色気のない部屋だな〜。」

「は?黙れって。」


ジャマイカちっくな美帆の部屋。


この部屋だけは、いつの間にかガラリと変わってしまっていた。


「あぁ〜。」


溜め息が混ざった声でベットにダイブすると『遠慮ってものを知らないんですか?』と美帆に文句を言われた。

⏰:08/12/12 23:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#346 [ゆーちん]
今さら遠慮も糞もねぇよ。


美帆は小さなソファーに座って、俺に聞いた。


「凜と何あったの?」


いきなりですか…。


いや、別に世間話するつもりもないんだけどね。


俺は思い切って美帆に全てを話してみた。

⏰:08/12/12 23:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#347 []
ええおお

⏰:08/12/12 23:36 📱:W45T 🆔:vPlfI7z6


#348 []
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400

⏰:08/12/12 23:37 📱:W45T 🆔:vPlfI7z6


#349 [我輩は匿名である]
アンカあるっつの

⏰:08/12/13 00:52 📱:F01A 🆔:3VvYcdSU


#350 []
長くて見えないのI

⏰:08/12/13 00:59 📱:W45T 🆔:JMGXsVVg


#351 [ナイト]
めちゃめちゃおもしろいです
はやく続きがみたい

⏰:08/12/13 01:48 📱:SH903i 🆔:GS9ms8SM


#352 [我輩は匿名である]
>>350
自己中なことしてんじゃねーよヴォケ

⏰:08/12/13 08:15 📱:N905imyu 🆔:kTKoX66M


#353 [ゆーちん]
●○●○●○●

すみません

昨日いきなり携帯の調子が悪くなっちゃって更新できませんでした

次からアンカーは50区切りでしますねすみません

●○●○●○●

⏰:08/12/13 16:17 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#354 [ゆーちん]
包み隠さず、全てを相談した。


『島を出てく。』って言われて何にも言えなかった事。


寂しいとか、行くなって言ってくれないの?って凜に聞かれて…何にも言えなかった事。


それは凜が決めた将来を惑わせるのが嫌だから何も言わないんだって事。


本当は行くなって、寂しいって、言いたい事。

⏰:08/12/13 16:19 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#355 [ゆーちん]
美帆はずっと『うん。』とか『それで?』とか、所々に相槌を入れながら聞いてくれた。


「どうしていいかわかんねぇんだわ。」


そんな相槌しか打たなかった美帆は、いきなり強い目で問い掛けた。

⏰:08/12/13 16:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#356 [ゆーちん]
「心の考えてるのもあながち間違ってないよ。凜の事を考えてあげてるのって凄い良い事だもん。でもさ!」


美帆は一呼吸置いてから言った。


「うちらまだ中学生だよ?」


当たり前の言葉を、すごく真剣に言った美帆から、目が離せられなかった。

⏰:08/12/13 16:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#357 [ゆーちん]
「将来の事もいいけど、大事なのは今じゃん。何カッコつけてんの。あの凜に、寂しいとか行くなって言って欲しかったって言われたんだよ?情けなくないの?」


情けないよ。


そんなのわかってる。


「でもさ…」

⏰:08/12/13 16:21 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#358 [ゆーちん]
「でもって何?中学生らしい恋愛すればいいじゃん。大人ぶるのは外見だけで充分だよ。所詮、中身はまだ15のガキなんだから思った事を素直に伝えればいいんだって。いつからそんな臆病になっちゃったの?」


美帆の言葉に殴られた俺。


何も言えなかった。

⏰:08/12/13 16:22 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#359 [ゆーちん]
「寂しいって思ってるなら、寂しいって言えばいいじゃん。心は凜の素直なところを好きになったんでしょ?だったら心も、素直なところを好きになってもらわないと。」

「…ごもっとも。」

⏰:08/12/13 16:23 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#360 [ゆーちん]
何を恐れていたのだろう。

俺が好きなのは凜ちゃん。


凜に寂しい思いをさせて、何が凜の将来の邪魔をしたくないだよ。


カッコつけてただけ。


知ってる。


「美帆。」

「何。」

「ほんっとありがと。お前に殴られて目が覚めた。」

⏰:08/12/13 16:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#361 [ゆーちん]
「殴った覚えないし。」

「とにかくサンキュな!」

「単純でバカなのが心なんだから、変にカッコつけなくていいんだよ。凜はそんなバカな心が好きなんだから。」

「おい、こら、美帆。そんな嬉しい言葉をサラッと言うな。泣きそうだ。」

⏰:08/12/13 16:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#362 [ゆーちん]
美帆は『やっぱバカだ。』と笑ってから、俺の背中を手の平で叩いた。


叩いたっつーか殴った。


すげぇ痛かったもん。


喝ってやつだな。


効いたぞ!


お前の喝。


菊地家から、可愛い袋を持って飛び出した。

⏰:08/12/13 16:25 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#363 [ゆーちん]
真っ暗になってしまった道を俺は走った。


冷たい風が俺の顔を引き攣らせていた。


「こんばんは!」


杉浦家の玄関を開けるやいなや、俺は居間にいるじいちゃんばあちゃんに『凜ちゃんいる?』と聞いた。


「部屋だよ。」

「お邪魔するね!」

「あぁ…うん。」

⏰:08/12/13 16:26 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#364 [ゆーちん]
突然の来客にも驚かず、じいちゃんばあちゃんはテレビを見ていた。


俺は階段を上り、ノックもせずに凜の部屋に入った。


「…心。」


じいちゃんばあちゃんとは違い、凜はすごく驚いていた。


温かい部屋の中は、冷えた体を一気に暖めてくれた。

⏰:08/12/13 16:27 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#365 [ゆーちん]
「寂しいから行かないで!」

「…。」


俺の言った意味がすぐにわかったらしく、凜は切なげな顔をした。


「ごめんね。カッコつけて、わざと言わなかったんだ。凜ちゃんの将来の邪魔したくなくて寂しいとか行かないでって言わなかったの。」

⏰:08/12/13 16:28 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#366 [ゆーちん]
凜は眉を下げたまま笑った。


「何でカッコなんかつけんの。私はバカな心が好きなのに。」


美帆から聞いてた言葉は、凜から聞くとまた一味違った嬉しさが込み上げた。


凜は立ち上がり、俺の傍に来て、指先で鼻を触った。

⏰:08/12/13 16:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#367 [ゆーちん]
「こんな風に鼻真っ赤にして、いきなり部屋に上がり込んでくる心が好きなんだよ。」


体は勝手に動いてた。


小さな凜を抱きしめると、すっげぇ温かかった。


「好き過ぎて泣きそう。」

「泣いていいよ。」


そう言ってくれたけど、凜の許可が降りる前に涙は零れていたのは…内緒にしておこう。

⏰:08/12/13 16:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#368 [ゆーちん]
「おいてきぼりにされた時、マジで別れちゃうのかと思った。」

「それは私のセリフ。引き止めてくんないし、心の気持ちは冷めたんだって悲しくなった。」

「冷めるわけないから。」

「そりゃどーも。」


初めてキスした時のように、唇が触れた瞬間から俺の涙は止まった。

⏰:08/12/13 16:33 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#369 [ゆーちん]
「私が出てったら寂しい?」

「寂しい。」

「行かないで欲しい?」

「行かないで。」

「本音?」

「うん。」

「ふーん。」


でも凜は行っちゃうんだ。


泣いても喚いても、それは変えられない。

⏰:08/12/13 16:34 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#370 [ゆーちん]
「愛されてるって知りたかったの。寂しいから行くなって言ってもらえると、安心して行けるから。」

「ごめんね。」

「もう大丈夫。泣いてる心見て安心しない方がおかしいもん。」

「愛してるよ?」

「…知ってる。」

「凜ちゃんは?」

⏰:08/12/13 16:35 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#371 [ゆーちん]
「さぁ、どうだろ。秘密。」


こうやってすぐに茶を濁すところも好き。


照れ屋なのか冷たいのかわかんないけど、そこが好き。


「一人暮らしは寂しいから、頻繁に現れてね?」

「毎日現れる予定だけど。」

「それは迷惑だから嫌。」


ほら、俺はそういうとこが好きなんだ。

⏰:08/12/13 16:35 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#372 [ゆーちん]
バレンタインに互いの気持ちがわかってよかった。


だって、その約2週間後の今日には中学校を卒業だもん。


早かったな。


この3年間。


つーか、この1年間もかなり早かった。


凜が来てから毎日毎日、24時間じゃ足りないくらい充実していた。

⏰:08/12/13 16:38 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#373 [ゆーちん]
辛い事もあったけど、楽しい事の方が多かったな。


…なんて考えていると卒業式は終わっていた。


香奈、澪、大輝は笑えるぐらい泣いていた。


美帆や千夏、ほとんどの奴は感動でチラリと涙を見せたり目を潤ませていた。


俺もその一人。

⏰:08/12/13 16:39 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#374 [ゆーちん]
泣かない奴もいる。


それが凜。


強い目で、ずっと前を見ていた。


卒業式でも泣かない凜はかっこよくて、何だかちょっと寂しかった。


「今日が最後の下校かぁ〜。」

「…そうだね。」


卒業式は午前中に終わり、昼からトメ食堂で打ち上げ。


だからこれが最後の下校。

⏰:08/12/13 16:40 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#375 [ゆーちん]
「最後ぐらい手ぇ繋いでいい?」

「…いいよ。」


差し出された小さな手を握り、寄り添った凜と同じ歩幅でゆっくりと歩いた。


「泣いてなかったね。」

「え?」

「式。やっぱ1年足らずじゃ思い入れ無いか。」

⏰:08/12/13 16:41 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#376 [ゆーちん]
一緒に過ごした1年間。


離ればなれになる友達。


後輩たちとの別れ。


やっぱそれなりに俺は寂しくて、泣けたんだ。


「そうじゃないよ。」

「…ん?」

「ココロの中では泣いてた。表面で泣かなかったのは、ちゃんと目に焼き付けたかったから。」

⏰:08/12/13 16:42 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#377 [ゆーちん]
凜の冷たかった手が、俺の温もりを受け継いで、どんどん暖まって来た。


「この中学校の事ほとんど何にも知らないまま卒業もやだなって思って、せめて卒業式って行事だけでもココロに焼き付けないと、って。こういう考えって変?」

⏰:08/12/13 16:42 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#378 [ゆーちん]
ちっとも変じゃない。


凜ちゃんらしい考えだと思う。


やっぱりカッコイイよ。


「俺はいい彼女を捕まえたなぁ〜。」

「…フフッ。何だそれ。」

「いい男にはいい女。」

「いい男?どこよ、それ。」

「…泣いちゃうぞぉ。」

⏰:08/12/13 16:43 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#379 [ゆーちん]
「まだ泣く気?式であんなに泣いてたくせに。」

「香奈や大輝よりマシだっつーの!」


笑い声を響かせながら最後の下校が終わった。


後でまた会えるし、一緒に手を繋いで歩く事もできる。


でも制服を着て【下校】するのは、これが最後なんだ。


寂しい。

⏰:08/12/13 16:45 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#380 [ゆーちん]
杉浦家を後にし、のんびり歩いて江森家に到着。


「ただいま〜。」


玄関のドアを開けた直後だった。


「心!」


振り向くと、息の上がった凜がいた。


「えっ、どうしたの。」

「忘れてた!」

「え?」

⏰:08/12/13 16:48 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#381 [ゆーちん]
「…写真。」


凜の手にはカメラが握られていた。


小さく笑った凜の息は、もう元に戻っている。


「写真?」

「制服着るの最後だよ。記念に撮ろう?二人でなんか滅多に撮らないし。」


凜の嬉しい誘いは、断るという選択肢なんてない。

⏰:08/12/13 16:49 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#382 [ゆーちん]
開いたままのドアから、家の中に向かって俺は叫んだ。


「母ちゃーん!ちょっと来て!」

「えー、何?」


卒業式後の母ちゃんは、まだ着替えもせずに、ちょっと着飾ったままの格好だった。


「写真撮って。」

「写真?」

⏰:08/12/13 16:49 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#383 [ゆーちん]
外に出てくると、母ちゃんに気付いた凜は笑顔で頭を下げた。


「あぁ、凜ちゃん!」

「こんにちは。」

「写真って凜ちゃんと?」


母ちゃんの質問に俺は低い声で答えた。


「こういう写真は普通、校門前で撮るんだけどなぁ。」

⏰:08/12/13 16:50 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#384 [ゆーちん]
母ちゃんは場所に文句があるらしく、なかなかシャッターを押してくれなかった。


「海をバックにしようよ。」


凜の提案に母ちゃんは食いつき、ほんの数歩だけ歩いて、俺らの背景を海と決めた。


「うん。今日は天気いいから海も良い感じだわ。」

「んじゃ撮って。」

「…はい、ポーズ。」

⏰:08/12/13 16:51 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#385 [ゆーちん]
カメラが光る。


ボタン一つで何十年も先まで思い出が作られるのは、本当すげぇ話だよな。


「もう一枚ね。」


ポーズを変えて、もう一枚。


「はい、OK!」

「ありがとうございます。」


2枚を撮り終えた母ちゃんは言った。

⏰:08/12/13 16:52 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#386 [ゆーちん]
「心、撮って。」

「は?」

「私だって凜ちゃんと撮りたいもん!」

「何でさ?」

「記念よ!」


隣に彼氏の母親を迎えた凜は戸惑っていたが、すぐにいつもの笑顔を咲かせた。


「はい、ポーズ。」


撮り終えると、今度は凜。

⏰:08/12/13 16:53 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#387 [ゆーちん]
「親子で撮ったげるね。」


俺は反対した。


だけど女2人に無理矢理立たされて、強引ながらも笑顔を咲かせて、母息子という珍しいショットもおさめた。


「んじゃ凜ちゃん送ってくるわ。」

「いいよ。私が勝手に来たんだし一人で帰る。」

⏰:08/12/13 16:53 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#388 [ゆーちん]
凜は珍しく遠慮した。


それを見ていた母ちゃんは俺の頭を叩いてきた。


「バカ!」

「痛っ!」

「彼女を送っていかない男なんか、男じゃないね。」

「送っていかないなんて言ってないじゃん!」

「凜ちゃんも!遠慮なんかしないでいいのよ。こんなバカ息子でいいなら、いつでもコキ使ってちょうだい。」

⏰:08/12/13 16:54 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#389 [ゆーちん]
「あっ…はい。」


さすがの凜もうちの母ちゃんのパワフルさには慣れていなくて、圧倒されていたみたいだった。


「じゃあ凜ちゃん行こう。」

「あ、うん。ありがと。」

⏰:08/12/13 16:55 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#390 [ゆーちん]
母ちゃんにわざわざお礼を言ってから、凜は俺の隣まで追い付いて来た。


「ごめんね。うっさい母ちゃんで。」

「ううん。私、おばさん好きだよ。」

「そういえば凜ちゃんの両親、式に来なかったね。」

「うん。忙しいんだって。」

⏰:08/12/13 16:55 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#391 [ゆーちん]
「寂しいでしょ?」

「別に。おじいちゃん達が来てくれたもん。」


本当は寂しいに決まってる。


これは俺みたいにカッコつけてるんじゃない。


納得した上での寂しさだったんだろう。


凜は俺より、うんと大人だ。

⏰:08/12/13 16:56 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#392 [ゆーちん]
●○●○●○●

更新STOP

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/13 16:56 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#393 [ゆーちん]
●○●○●○●

やっぱり後少しだけ
更新します

●○●○●○●

⏰:08/12/13 17:03 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#394 [ゆーちん]
杉浦家に凜を送り届け、30分後にまた迎えに来ると告げてから自分ん家に戻った。


「心。」

「んー?」


母ちゃんはやっと着替えたらしく、いつもの楽そうな格好だった。


「凜ちゃん、C高だっけ?」

「うん。C高の近くのマンションで一人暮らしだって。」

「…寂しくなるね。」

⏰:08/12/13 17:04 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#395 [ゆーちん]
「寂しいよー。」


照れてしまい、ちょっとふざけながら答えたけど、マジで寂しいよ。


凜が越して来てから、毎日一緒だった。


こんなに長く付き合う人は始めてだし、マジで感じてんだよ。


運命ってやつ。

⏰:08/12/13 17:04 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#396 [ゆーちん]
だから余計に寂しいんだ。


「遠距離はね、相手を信じていれば大丈夫なもんだから。」

「何を知ったような口叩いてんのさ。」

「知ってるもん。」

「はぁ?」

「父ちゃんと遠距離恋愛だったのよ?」


始めて聞く両親の恋愛話。

⏰:08/12/13 17:05 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#397 [ゆーちん]
別に聞きたくないんですけど、まぁ…遠距離恋愛者の先輩ですから?


ちょっと耳を傾けてみようかな、と。


「あんたはまだマシじゃない。フェリーで行けば会えるんだし。私は新幹線使わないと、ここまで来れなかったんだから!」

⏰:08/12/13 17:06 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#398 [名無し]
>>44-100

⏰:08/12/13 17:09 📱:W51T 🆔:☆☆☆


#399 [ゆーちん]
少々怒り気味だった母ちゃん。


そんなもん、今さら俺に文句言われてもねぇ。


「2回ぐらい別れたのかな。でも父ちゃんは私しかいないって〜。」


怒ってたんじゃねぇのかよ。


思い出し笑いしてるし。

⏰:08/12/13 17:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#400 [ゆーちん]
少女みたいに嬉しそうな顔をした母親なんか見たくないんですけど。


「浮気は?」

「は?」

「父ちゃん浮気とかしなかったの?」

「さぁ?してたんじゃない。知らない。」


シラッと答えた母ちゃん。


怪獣百面相だな。

⏰:08/12/13 17:21 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#401 [ゆーちん]
「問い詰めたりしなかったの?」

「しない。いちいち疑う為に顔を合わせてる訳じゃないもん。」

「ふーん。」

「まぁ、浮気の1つや2つ、男の特権だよ。私はココロが広いの。その前に大事なこともあるでしょ?」

「…何?」

「父ちゃん、信じてたし。」

⏰:08/12/13 17:22 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#402 [ゆーちん]
その言葉があまりにもずっしり胸に響いた。


「束縛もなかったよ。今の若い子はどうして束縛とかするのかな。理解できないわ。」

「何で?」

「束縛は相手を信じてないからするものだし。」

⏰:08/12/13 17:23 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#403 [ゆーちん]
まただ。


母ちゃんの言葉は、えらく重みがあった。


「でもたまには束縛って言うか、わがまま言ってあげないと悲しむ子もいるみたいだけどね。放っておかれてるって勘違いするみたいだし。」

⏰:08/12/13 17:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#404 [ゆーちん]
「40手前になっても恋愛ごとは詳しいんですね。」

「当たり前よ!恋愛は人生の永遠のテーマだもん。」


こういう母親だから、いつも自分の息子の恋愛に首を突っ込んでくんだな。

⏰:08/12/13 17:25 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#405 [ゆーちん]
テーマとか、別に勝手に決めてもらってもいいんだけど、俺にあんまり危害加えないで欲しいという本音は…今日は言わないでおこう。


だって今日は、案外、タメになる言葉聞けたし。


母ちゃんもたまには役立つじゃん。


信じるっていう大切さ、かなりわかった気がする。

⏰:08/12/13 17:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#406 [ゆーちん]
礼も何も言わずに、俺は部屋に戻り、制服を脱いだ。


3年間ご苦労だった、我が制服。


私服に着替えてから時計を見た。


どうやら、母ちゃんの話を20分も聞いていたらしく、そろそろ凜を迎えに行く時間となっていた。

⏰:08/12/13 17:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#407 [ゆーちん]
もう一度、居間に行くと母ちゃんは昼ご飯を食べていた。


「貧相な昼飯だな。俺ら今からトメ食堂で美味いもん食って来るわ。」

「あっそ。そりゃようございますね。」

「こんな貧相な昼飯の為に遠恋してたわけじゃないのにーって後悔してる?」

⏰:08/12/13 17:30 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#408 [ゆーちん]
「…全然。こんな貧相な昼飯を食べる事ができる幸せがあるから遠恋しててよかったって思える。」


ちょっと感動した。


母ちゃんにとって、父ちゃんとの日々は何1つ後悔していなくて、俺もそんな風に凜との未来を夢見たいって思えた。

⏰:08/12/13 17:31 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#409 [ゆーちん]
「はぁ…。俺も結婚してぇ。」

「何言ってんのよ。あと10年は許さないからね。」

「…いってきます。」

「あいよ。」


先10年は結婚の許可が降りなかった俺は、杉浦家に向かった。


出迎えてくれたじいちゃんが『卒業おめでとう。』と言ってくれた。

⏰:08/12/13 17:32 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#410 [ゆーちん]
『ありがとう!』なんて話していると、凜が二階から降りて来た。


「仲良しだなぁ、お前ら。」

「心がまとわり付いてるだけ。それじゃあいってきます。」


あんな冷たい事言っといて、トメ食堂まで手を繋いで歩いてくれた凜。


可愛い彼女。

⏰:08/12/13 17:33 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#411 [ゆーちん]
「25歳になった時、貧相な昼飯食べながら、俺との恋愛は後悔はなかったって思えるようになっててね。」

「…ごめん。話が見えない。」

「いいの。こっちの話。」

「独り言なら一人のときに言ってよね。」

「…はい。」

⏰:08/12/13 17:33 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#412 [ゆーちん]
トメ食堂につくと、みんなから『やっと来た!』とか『遅い。』とヤジを飛ばされながら出迎えてもらった。


「凜はこっちー!」


香奈が手招きするテーブルに連れて行かれた凜。


「心はこっち来るなよ。」


そう言った竜の隣に座った俺。

⏰:08/12/13 17:35 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#413 [ゆーちん]
しばらくすると全員が集まったらしく、1番前にトメばあちゃんが立った。


背が小さいのでコンテナの上に登って、トメばあちゃんは話し出した。


「これから、笑って泣いて怒って哀しんで、人生の壁にぶちあたる。そんな時はドーンと素直にぶちあたれ。ぶちあたって怪我したら、いつでも島に帰ってこい。ばあちゃんはここにいる。白飯と豚汁と漬物くらいなら食わせてやる。」

⏰:08/12/13 17:36 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#414 [ゆーちん]
帰る場所があるって、こういう事なんだ。


トメばあちゃんの激励はみんなのココロを打っただろう。

⏰:08/12/13 17:37 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#415 [ゆーちん]
「悔いのない人生を送れ。15の子供達の旅に幸あれ。中学卒業おめでとう。はい、かんぱーい!」


トメばあちゃんのシンプルな言葉のあと、みんなも『乾杯!』と続いた。


宴の始まり。


毎年、中学の卒業式のあとはトメ食堂で打ち上げがある。

⏰:08/12/13 17:37 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#416 [ゆーちん]
それがこの島の伝統みたいなもん。


だからこの日ばかりはトメ食堂は貸し切り休業だ。


去年も、一昨年も、そのまた前の卒業生もトメばあちゃんの激励を受けて旅立ったり成長したり。


俺らも明日からその中の1人になるんだ。

⏰:08/12/13 17:39 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#417 [ゆーちん]
●○●○●○●

STOPします

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/13 17:39 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#418 [ゆーちん]
夕方5時まで食って騒いで盛り上がった。


「はーい、お開き!」


トメばあちゃんの声1つで5時になると例外なしに追い出される。


30人が食堂前に出る。


一気に辺りが賑やかになった。


「そんじゃあみんな、またな!」

「バイバーイ。」

⏰:08/12/13 23:11 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#419 [ゆーちん]
みんなそれぞれ散って行く。


凜も美穂や千夏、澪たちとバイバイしていた。


「心。」


香奈は肩越しに俺の名前を呼んだ。


「ん?」

「海行こうぜぇ。」

「賛成。」


近くにいた竜と大輝も賛成。

⏰:08/12/13 23:12 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#420 [ゆーちん]
4人で凜を呼びに行き、俺らは海に向かった。


3年生の後半からは5人でいることがほとんどだった。


きっかけは文化祭と修学旅行。


そういえば修学旅行で撮った写真、早く焼き増ししてんくんねぇかな。


まだ貰ってないのがたくさんある。

⏰:08/12/13 23:13 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#421 [ゆーちん]
でもまぁいつでも貰えるか。


俺ら、たぶんこれからもずっとツルんでいくんだろうし。


海につくと男3人はダッシュした。


寒い潮風が髪を乱した。


靴のまま海の水を踏む。


テンションが上がった。

⏰:08/12/13 23:14 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#422 [ゆーちん]
冷たいだの、やめろだの、たくさん騒いだ。


めちゃくちゃ青春だよ。


薄暗くなった海辺は影が砂浜へと伸びていて、とても印象深い1シーン。


「香奈!」

「ん?」

「この海の向こうにいる本島の彼氏に一言ぉ〜!」


こんなフリ、いつもの香奈なら絶対ノッてくれない。


だけど今日は違った。

⏰:08/12/13 23:14 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#423 [ゆーちん]
今日は特別な日だから、大輝のリクエストにすんなり答えた。


「世界1好きぃーっ!」


香奈の叫びに続いて、大輝も海に向かって叫んだ。


「宝くじが当たりますよーにぃーっ!」

⏰:08/12/13 23:15 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#424 [ゆーちん]
「アハハッ。彼女に向けてじゃねぇのかよ。」

「ただの願望。」

「んじゃ俺も。」


竜も叫んだ。


「将来、子供は3人欲しいぞぉーっ!」


4人で大笑いした。


顔に似合わず、そんな可愛い願いを叫ぶもんだから。

⏰:08/12/13 23:16 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#425 [ゆーちん]
「ギャハハハ!」

「父親キャラでもないくせに。」

「あ?文句あんのかよ。俺は子沢山な家族を夢見てんだよ。」


照れもせずに、向井竜はやりきった感たっぷりで潮風に髪を揺らされていた。


「次、凜か心。」

「んじゃ俺〜。」

⏰:08/12/13 23:16 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#426 [ゆーちん]
腹いっぱい息を吸い込んでいると、大輝は隣で呟いた。


「愛してるよ凜ちゃーん、とかなら別に聞きたくないから。」

「ゲホッ!」

「あら、図星?」

「何でわかんの!」


焦っていると竜までもが、

「そんな愛の言葉は二人っきりのときに囁いてやれ。。」

と文句をつけに来た。


急遽、発言、変更。

⏰:08/12/13 23:17 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#427 [ゆーちん]
考えに考えて結局は、

「いつか江森凜になってねーっ!」

というプロポーズのような言葉。


「うっわ、タチ悪いっつーの。」

「ガッカリだね。」

「2人、うるさい!さぁ凜ちゃんの返事は?」

⏰:08/12/13 23:18 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#428 [ゆーちん]
香奈が笑う隣で、凜は叫んだ。


「やーだよっ!」


その返事に竜と大輝と香奈は大笑いしていた。


「はい、心くん残念でした!」

「ギャハハハ、玉砕!」

「プロポーズ失敗だよ!」


凜も一緒に笑ってた。


「泣いてもいいですかーっ!」

⏰:08/12/13 23:19 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#429 [ゆーちん]
「ダメ!」

「泣くな、玉砕男!」

「アハハハッ!」


これでいい。


凜に断られようがバカにされようが、みんなが笑っていられるなら、それでいい。


いつか笑えないほどカッコいいプロポーズすっから、凜ちゃん待っててよ?

⏰:08/12/13 23:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#430 [ゆーちん]
ひたすら海で騒いだ後、辺りが真っ暗になって来たので解散。


またな、って言ってバイバイした。


俺は凜を送って行く。


手を繋ぎながら。


「寒い〜。凜ちゃんの手、暖かい。」

「水なんか触ってるからだよ。」


俺の冷たい手を、凜の小さな暖かい手が包んでくれていた。

⏰:08/12/13 23:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#431 [ゆーちん]
「あ、心?」

「はぁい?」

「卒業祝いあげる。」

「ん?卒業祝い?」

「…はい。」


目の前に差し出されたのは、鍵。


「鍵?」

「春から私が住む部屋の鍵。あげる。」

⏰:08/12/13 23:21 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#432 [ゆーちん]
冷たい金属が、せっかく凜のおかげで温もりかけていた俺の手に触れた。


「えっ、つーか、これっていわゆる…」

「合い鍵だよー。無くすなよー。」

「ちょっと待って。マジだめだって。」


立ち止まってしまった俺。


凜は笑っていた。


「何がダメ?そんな泣いてちゃ、私が泣かせたみたいに思われるじゃん。」

⏰:08/12/13 23:22 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#433 [ゆーちん]
「凜ちゃんが泣かせたんだよ…。」

「覚えがないなぁ?」

「…ありがと。本当、嬉しい。」


凜が俺の顔を覗き込みながら言った。


「私も嬉しい。鍵一つで泣いてくれるなんてさ。」

⏰:08/12/13 23:22 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#434 [ゆーちん]
凜の笑顔。


凜の手の温もり。


凜の言葉。


そして、鍵の冷たさ。


距離が何だよ。


そんなの、同じ海の上じゃん。


寂しいなんて言ってらんない。


こうやって、いつでも会える機会を与えてくれたんだから、悲しんでちゃバチが当たる。

⏰:08/12/13 23:23 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#435 [ゆーちん]
「引っ越しの日、笑顔で見送ってあげられる気がする。」

「それはよかった。みんなの前で泣かれちゃたまんないもん。」

「寂しくなったら、これでいつでも会いに行っていい?」

「その為の合い鍵なんだけど。」

⏰:08/12/13 23:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#436 [ゆーちん]
「凜ちゃんも寂しくなったら、すぐに俺んち来るんだよ?うち、鍵はいつでも開いてるから。」

「アハハッ。知ってる。」


暗くなった道で、軽くキスをした。


軽くだったのに、どんどん止まらなくなった。


「私も卒業祝いちょうだいよ。」

「何も持ってないんだけど。」

⏰:08/12/13 23:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#437 [ゆーちん]
「…心が欲しい、っていうリクエストは却下される?」


こうやって、大人っぽい色気を出す凜は本当に同じ歳なのか不思議に思う。


あんな言葉、反則でしょ。


「凜ちゃんち行っていい?」

「…いいよ。」

⏰:08/12/13 23:25 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#438 [ゆーちん]
杉浦家まで凜の手を引っ張って走った。


凜は『走らなくても私、逃げないよ。』って笑ってた。


何だかおかしくて、二人で大笑いしながら走った。


「ただいま〜。」


居間にいるじいちゃんばあちゃんに顔を見せてから、凜の部屋に直行した。

⏰:08/12/13 23:26 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#439 [ゆーちん]
「心ってポーカーフェ‥」


最後まで言い終わる前に俺は凜の言葉を邪魔した。


怖いくらい凜が好き。


怖いくらい凜の匂いが好き。


そんな事思ってると、止まったはずのものが滲んで来た。


唇を離した凜が笑った。

⏰:08/12/13 23:26 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#440 [ゆーちん]
「何でそんな泣き虫なの?」

「知らない。」

「何で今、泣いてんの?」

「幸せだから。怖いくらい。」


俺の頬を撫でる凜の手は小さくて温かかった。


「私は最悪だよ。」

「何で?」

「泣き虫が…移ったから。」

⏰:08/12/13 23:27 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#441 [ゆーちん]
始めて見た凜の涙は、不謹慎ながらも綺麗だと思った。


「何で凜ちゃんまで泣くのさ。」

「幸せなの。怖いくらい。」


男と女が抱きしめ合いながら泣いた、卒業式の夜。


いつもと違う、ロマンチックな夜だった。


SEXだって、ロマンチック。

⏰:08/12/13 23:28 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#442 [ゆーちん]
俺の彼女は冷たいよ。


でもさ、そのぶん温かいところに触れたら、普通の数倍嬉しいんだ。


素っ気ないし、笑わない。


でもそんな彼女だからこそ、笑ったり泣いてくれたりすると、幸せを感じられんだよね。

⏰:08/12/13 23:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#443 [ゆーちん]
まだまだ子供な考えかもしんないけど、俺、絶対に【杉浦凜】を【江森凜】にすっからな!


「あ、さっきのプロポーズの返事。」

「嫌なんでしょ?もう聞きたくな‥」

「考えといてあげるね。」

⏰:08/12/13 23:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#444 [ゆーちん]
母ちゃん。


結婚10年早いって言ったけど…俺、案外早く嫁を貰えるかも?


END

⏰:08/12/13 23:29 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#445 [ゆーちん]
●○●○●○●

あとがき

●○●○●○●

⏰:08/12/13 23:30 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#446 [ゆーちん]
最後まで読んでいただきありがとうございました。

長編にするつもりが、私の事情で結構削除しちゃいました(:_;)

本当は凜が島を出てからの高校生活も書きたかったんですけど…

なので、また続編も書きますね(^^)

⏰:08/12/13 23:31 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#447 [ゆーちん]
さてさて、この作品に携帯依存症というのが出てきましたよね。

現代社会の問題だと思います。

誰かと連絡を取っていないと不安。

私も昔はそうでした。

⏰:08/12/13 23:31 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#448 [ゆーちん]
でも心が住むような田舎に行って、凜と同じく携帯依存症が治った?って感じなんです。

だからこの話はちょっと実話が混ざってますね!

でも携帯小説ポチポチしちゃってる時点で、まだ治ってないのかな?笑

いやでも昔よりは確実に治ったんですよ!

⏰:08/12/13 23:33 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#449 [ゆーちん]
心と凜、最後はラブラブでしたが最初はバランスの悪いカップルでしたよね。

素っ気ない凜ですが、心の一途な気持ちが伝わるというところ。

一途な気持ちは、いつか絶対伝わるんですよ!

って、そういうのを伝えたくて最初はバランスの悪いカップルにしました。

⏰:08/12/13 23:33 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#450 [ゆーちん]
それに、凜を冷たい彼女にしたのは、凜みたいな子が最近多いらしいからです。

感情を上手くコントロールできない子。

女の子だけではなく男の子もです。

⏰:08/12/13 23:34 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#451 [ゆーちん]
せっかく神様に与えられた口、目、そしてココロがあるんならどんどん伝えないと!

心のような人に出会うのも、一つの手かもしれませんが、あんな優しい人なんか滅多にいないのが現状です。笑

⏰:08/12/13 23:35 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#452 [ゆーちん]
だからこの作品で少しでも勇気が出た、とか思えてもらえたらなぁと思いまして。

舞台を田舎にしたのも、ちゃんと理由もあります(v_v)

田舎でしか味わえない温かみなども知っていただけたらな、と思いました。

⏰:08/12/13 23:35 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#453 [ゆーちん]
都会が汚れてるというわけではないですよ。

でも、都会で疲れたなら、静かな場所でいつもと違う生活を送るのもいいかもしれません。

自分を変えたいと思う人は、絶対変われます!

心や凜のように涙流せるほど幸せになりましょうね。

⏰:08/12/13 23:36 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#454 [ゆーちん]
ではまた新作を書き始めたら、ここにもURL載せるんでよろしくお願いします!

>>2

⏰:08/12/13 23:37 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#455 [梨乃]
ゆーちんサンの小説
全部大好きです

更新早すぎるし、
もおファンすぎます

凛ちゃんと心の続編
楽しみにしてます

⏰:08/12/13 23:39 📱:P905iTV 🆔:kf9BagHA


#456 [我輩は匿名である]
あげます(・∀・)

⏰:08/12/14 00:01 📱:SH904i 🆔:☆☆☆


#457 [我輩は匿名である]
アンカー失礼L


>>340-390
>>391-430
>>431-480
>>481-520

⏰:08/12/14 00:19 📱:W45T 🆔:dtfe3St.


#458 [匿名]
めっちゃおもしろかったです

また書いてくださいね

⏰:08/12/14 01:35 📱:SO906i 🆔:8QO1Nu1Y


#459 [じぃーちゃん]
やばいッ!!
超─面白い

続編も期待してますッット

⏰:08/12/14 06:05 📱:W54T 🆔:W4.hj9wQ


#460 [我輩は匿名である]
失礼します
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500

⏰:08/12/14 07:32 📱:W53T 🆔:1pHnHDrg


#461 [ナイト]
続編みたいっす

⏰:08/12/14 08:34 📱:SH903i 🆔:7a5xJFOI


#462 [ガチャピン]
マジはまったN

続編も見てぇ鴒

⏰:08/12/15 16:31 📱:824P 🆔:fKWewTFU


#463 [優菜]
超おもしろかった
ありがとうです

⏰:08/12/17 00:31 📱:SH904i 🆔:7OIye85o


#464 [ゆーちん]
皆様ありがとうございます

期間が開いてしまったのですが、また近々新作を書きますのでよろしくお願いします

ちなみにその新作は、この冷たい彼女の続編ではありません

続編はもう少しお待ち下さい

まだ頭の中で整理しきれてないんです

ごめんなさいm(__)m

いつか必ず書くんで待っててやって下さい

>>2

⏰:08/12/27 23:09 📱:SH901iC 🆔:DNjpLWGM


#465 [(´・ω・`)]
失礼します
>>1-40
>>41-80
>>81-120
>>121-160
>>161-200
>>201-240
>>241-280
>>281-320
>>321-360
>>361-400
>>401ー440
>>441ー480
>>481ー520

⏰:08/12/28 16:10 📱:N906imyu 🆔:ry4ZdA3E


#466 [(´・ω・`)]
たびたびごめんなさい
(pω、)
>>1-40
>>41-80
>>81-120
>>121-160
>>161-200
>>201-240
>>241-280
>>281-320
>>321-360
>>361-400
>>401-440
>>441-480
>>481-520

⏰:08/12/28 16:11 📱:N906imyu 🆔:ry4ZdA3E


#467 [ゆーちん]
転校生
>>5-35

進歩
>>38-95

名前
>>97-161

部屋
>>162-272

白い肌
>>274-330

寂しさ
>>333-444

あとがき
>>446-454

⏰:09/01/04 23:21 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#468 [ゆーちん]

章ごとに
区切りましたので
よかったらこちらからも
ご覧下さい

続編は、いま書いている
闇の中の光が完結したら
書きますので
もう少しお待ち下さい

⏰:09/01/04 23:23 📱:SH901iC 🆔:bKxDy5AQ


#469 [梨乃]
続編が楽しみ

⏰:09/01/29 04:55 📱:P905iTV 🆔:nImrBq9Y


#470 [ゆーちん]
続編です

bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9851/

⏰:09/01/31 15:34 📱:SH901iC 🆔:27oj1HQU


#471 [我輩は匿名である]
>>50-100
>>150-200
>>250-300
>>350-400
>>450-500

⏰:09/02/07 10:04 📱:W51SA 🆔:kRfoL.co


#472 [ユウ]
すごいなあ!ゆーちんさん!3日?で450…凄すぎます!!

⏰:09/03/27 01:37 📱:F03A 🆔:774XmLPU


#473 [ゆーちん]
ユウさん

書いたっていうか
コピーしただけです

一気にコピー更新したんで
3日で終わる事ができました

⏰:09/04/10 08:57 📱:SH901iC 🆔:MY4.82P2


#474 [かえで]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>200-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400

⏰:09/05/08 21:16 📱:re 🆔:☆☆☆


#475 [かえで]
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650

⏰:09/05/08 21:16 📱:re 🆔:☆☆☆


#476 [さや]
またまた前作をあげてしまい申し訳ありません。
この作品もすばらしい作品だとおもいます。
まぢゆーちんさんのファンですねケ

⏰:09/05/17 16:25 📱:W62SA 🆔:nG/lV9hE


#477 [我輩は匿名である]
>>157

⏰:09/05/23 23:27 📱:N903i 🆔:☆☆☆


#478 [我輩は匿名である]
あげます

⏰:09/08/19 07:43 📱:P903iTV 🆔:☆☆☆


#479 [´ω`]
あっげゆー

⏰:09/10/01 00:25 📱:820N 🆔:38xTVtAQ


#480 [MiChi]
超ヤバィです‥

まぢ心カッコイィ!
なんか暖かくなりました

ハッピーエンド過ぎて感動
本当に良かった

⏰:09/10/01 04:01 📱:N04A 🆔:NK7wuCrE


#481 [我輩は匿名である]

⏰:10/06/21 14:24 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#482 [我輩は匿名である]
心がすき

⏰:11/02/06 21:47 📱:D902i 🆔:☆☆☆


#483 [我輩は匿名である]
12345

⏰:14/04/14 23:32 📱:PC 🆔:nyiUQo0w


#484 [我輩は匿名である]
242424

⏰:14/04/14 23:56 📱:PC 🆔:nyiUQo0w


#485 [ぱ]
あああかさ

jpg 26KB
⏰:15/01/10 00:35 📱:iPhone 🆔:IaCe8M9.


#486 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/02 03:42 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#487 [ん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:22/10/26 19:35 📱:Android 🆔:AtV/.tU6


#488 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:23/01/26 09:42 📱:Android 🆔:gmyD7Q62


#489 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:23/01/26 09:46 📱:Android 🆔:gmyD7Q62


#490 [わをん◇◇]
>>420-450

⏰:23/01/26 09:46 📱:Android 🆔:gmyD7Q62


#491 [わをん◇◇]
>>410-440

⏰:23/01/26 09:47 📱:Android 🆔:gmyD7Q62


#492 [わをん◇◇]
>>410-450

⏰:23/01/26 09:48 📱:Android 🆔:gmyD7Q62


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