冷たい彼女
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#391 [ゆーちん]
「寂しいでしょ?」
「別に。おじいちゃん達が来てくれたもん。」
本当は寂しいに決まってる。
これは俺みたいにカッコつけてるんじゃない。
納得した上での寂しさだったんだろう。
凜は俺より、うんと大人だ。
:08/12/13 16:56 :SH901iC :1vm0Oe8g
#392 [ゆーちん]
●○●○●○●
更新STOP
>>2●○●○●○●
:08/12/13 16:56 :SH901iC :1vm0Oe8g
#393 [ゆーちん]
●○●○●○●
やっぱり後少しだけ
更新します
●○●○●○●
:08/12/13 17:03 :SH901iC :1vm0Oe8g
#394 [ゆーちん]
杉浦家に凜を送り届け、30分後にまた迎えに来ると告げてから自分ん家に戻った。
「心。」
「んー?」
母ちゃんはやっと着替えたらしく、いつもの楽そうな格好だった。
「凜ちゃん、C高だっけ?」
「うん。C高の近くのマンションで一人暮らしだって。」
「…寂しくなるね。」
:08/12/13 17:04 :SH901iC :1vm0Oe8g
#395 [ゆーちん]
「寂しいよー。」
照れてしまい、ちょっとふざけながら答えたけど、マジで寂しいよ。
凜が越して来てから、毎日一緒だった。
こんなに長く付き合う人は始めてだし、マジで感じてんだよ。
運命ってやつ。
:08/12/13 17:04 :SH901iC :1vm0Oe8g
#396 [ゆーちん]
だから余計に寂しいんだ。
「遠距離はね、相手を信じていれば大丈夫なもんだから。」
「何を知ったような口叩いてんのさ。」
「知ってるもん。」
「はぁ?」
「父ちゃんと遠距離恋愛だったのよ?」
始めて聞く両親の恋愛話。
:08/12/13 17:05 :SH901iC :1vm0Oe8g
#397 [ゆーちん]
別に聞きたくないんですけど、まぁ…遠距離恋愛者の先輩ですから?
ちょっと耳を傾けてみようかな、と。
「あんたはまだマシじゃない。フェリーで行けば会えるんだし。私は新幹線使わないと、ここまで来れなかったんだから!」
:08/12/13 17:06 :SH901iC :1vm0Oe8g
#398 [名無し]
:08/12/13 17:09 :W51T :☆☆☆
#399 [ゆーちん]
少々怒り気味だった母ちゃん。
そんなもん、今さら俺に文句言われてもねぇ。
「2回ぐらい別れたのかな。でも父ちゃんは私しかいないって〜。」
怒ってたんじゃねぇのかよ。
思い出し笑いしてるし。
:08/12/13 17:20 :SH901iC :1vm0Oe8g
#400 [ゆーちん]
少女みたいに嬉しそうな顔をした母親なんか見たくないんですけど。
「浮気は?」
「は?」
「父ちゃん浮気とかしなかったの?」
「さぁ?してたんじゃない。知らない。」
シラッと答えた母ちゃん。
怪獣百面相だな。
:08/12/13 17:21 :SH901iC :1vm0Oe8g
#401 [ゆーちん]
「問い詰めたりしなかったの?」
「しない。いちいち疑う為に顔を合わせてる訳じゃないもん。」
「ふーん。」
「まぁ、浮気の1つや2つ、男の特権だよ。私はココロが広いの。その前に大事なこともあるでしょ?」
「…何?」
「父ちゃん、信じてたし。」
:08/12/13 17:22 :SH901iC :1vm0Oe8g
#402 [ゆーちん]
その言葉があまりにもずっしり胸に響いた。
「束縛もなかったよ。今の若い子はどうして束縛とかするのかな。理解できないわ。」
「何で?」
「束縛は相手を信じてないからするものだし。」
:08/12/13 17:23 :SH901iC :1vm0Oe8g
#403 [ゆーちん]
まただ。
母ちゃんの言葉は、えらく重みがあった。
「でもたまには束縛って言うか、わがまま言ってあげないと悲しむ子もいるみたいだけどね。放っておかれてるって勘違いするみたいだし。」
:08/12/13 17:24 :SH901iC :1vm0Oe8g
#404 [ゆーちん]
「40手前になっても恋愛ごとは詳しいんですね。」
「当たり前よ!恋愛は人生の永遠のテーマだもん。」
こういう母親だから、いつも自分の息子の恋愛に首を突っ込んでくんだな。
:08/12/13 17:25 :SH901iC :1vm0Oe8g
#405 [ゆーちん]
テーマとか、別に勝手に決めてもらってもいいんだけど、俺にあんまり危害加えないで欲しいという本音は…今日は言わないでおこう。
だって今日は、案外、タメになる言葉聞けたし。
母ちゃんもたまには役立つじゃん。
信じるっていう大切さ、かなりわかった気がする。
:08/12/13 17:29 :SH901iC :1vm0Oe8g
#406 [ゆーちん]
礼も何も言わずに、俺は部屋に戻り、制服を脱いだ。
3年間ご苦労だった、我が制服。
私服に着替えてから時計を見た。
どうやら、母ちゃんの話を20分も聞いていたらしく、そろそろ凜を迎えに行く時間となっていた。
:08/12/13 17:29 :SH901iC :1vm0Oe8g
#407 [ゆーちん]
もう一度、居間に行くと母ちゃんは昼ご飯を食べていた。
「貧相な昼飯だな。俺ら今からトメ食堂で美味いもん食って来るわ。」
「あっそ。そりゃようございますね。」
「こんな貧相な昼飯の為に遠恋してたわけじゃないのにーって後悔してる?」
:08/12/13 17:30 :SH901iC :1vm0Oe8g
#408 [ゆーちん]
「…全然。こんな貧相な昼飯を食べる事ができる幸せがあるから遠恋しててよかったって思える。」
ちょっと感動した。
母ちゃんにとって、父ちゃんとの日々は何1つ後悔していなくて、俺もそんな風に凜との未来を夢見たいって思えた。
:08/12/13 17:31 :SH901iC :1vm0Oe8g
#409 [ゆーちん]
「はぁ…。俺も結婚してぇ。」
「何言ってんのよ。あと10年は許さないからね。」
「…いってきます。」
「あいよ。」
先10年は結婚の許可が降りなかった俺は、杉浦家に向かった。
出迎えてくれたじいちゃんが『卒業おめでとう。』と言ってくれた。
:08/12/13 17:32 :SH901iC :1vm0Oe8g
#410 [ゆーちん]
『ありがとう!』なんて話していると、凜が二階から降りて来た。
「仲良しだなぁ、お前ら。」
「心がまとわり付いてるだけ。それじゃあいってきます。」
あんな冷たい事言っといて、トメ食堂まで手を繋いで歩いてくれた凜。
可愛い彼女。
:08/12/13 17:33 :SH901iC :1vm0Oe8g
#411 [ゆーちん]
「25歳になった時、貧相な昼飯食べながら、俺との恋愛は後悔はなかったって思えるようになっててね。」
「…ごめん。話が見えない。」
「いいの。こっちの話。」
「独り言なら一人のときに言ってよね。」
「…はい。」
:08/12/13 17:33 :SH901iC :1vm0Oe8g
#412 [ゆーちん]
トメ食堂につくと、みんなから『やっと来た!』とか『遅い。』とヤジを飛ばされながら出迎えてもらった。
「凜はこっちー!」
香奈が手招きするテーブルに連れて行かれた凜。
「心はこっち来るなよ。」
そう言った竜の隣に座った俺。
:08/12/13 17:35 :SH901iC :1vm0Oe8g
#413 [ゆーちん]
しばらくすると全員が集まったらしく、1番前にトメばあちゃんが立った。
背が小さいのでコンテナの上に登って、トメばあちゃんは話し出した。
「これから、笑って泣いて怒って哀しんで、人生の壁にぶちあたる。そんな時はドーンと素直にぶちあたれ。ぶちあたって怪我したら、いつでも島に帰ってこい。ばあちゃんはここにいる。白飯と豚汁と漬物くらいなら食わせてやる。」
:08/12/13 17:36 :SH901iC :1vm0Oe8g
#414 [ゆーちん]
帰る場所があるって、こういう事なんだ。
トメばあちゃんの激励はみんなのココロを打っただろう。
:08/12/13 17:37 :SH901iC :1vm0Oe8g
#415 [ゆーちん]
「悔いのない人生を送れ。15の子供達の旅に幸あれ。中学卒業おめでとう。はい、かんぱーい!」
トメばあちゃんのシンプルな言葉のあと、みんなも『乾杯!』と続いた。
宴の始まり。
毎年、中学の卒業式のあとはトメ食堂で打ち上げがある。
:08/12/13 17:37 :SH901iC :1vm0Oe8g
#416 [ゆーちん]
それがこの島の伝統みたいなもん。
だからこの日ばかりはトメ食堂は貸し切り休業だ。
去年も、一昨年も、そのまた前の卒業生もトメばあちゃんの激励を受けて旅立ったり成長したり。
俺らも明日からその中の1人になるんだ。
:08/12/13 17:39 :SH901iC :1vm0Oe8g
#417 [ゆーちん]
●○●○●○●
STOPします
>>2●○●○●○●
:08/12/13 17:39 :SH901iC :1vm0Oe8g
#418 [ゆーちん]
夕方5時まで食って騒いで盛り上がった。
「はーい、お開き!」
トメばあちゃんの声1つで5時になると例外なしに追い出される。
30人が食堂前に出る。
一気に辺りが賑やかになった。
「そんじゃあみんな、またな!」
「バイバーイ。」
:08/12/13 23:11 :SH901iC :1vm0Oe8g
#419 [ゆーちん]
みんなそれぞれ散って行く。
凜も美穂や千夏、澪たちとバイバイしていた。
「心。」
香奈は肩越しに俺の名前を呼んだ。
「ん?」
「海行こうぜぇ。」
「賛成。」
近くにいた竜と大輝も賛成。
:08/12/13 23:12 :SH901iC :1vm0Oe8g
#420 [ゆーちん]
4人で凜を呼びに行き、俺らは海に向かった。
3年生の後半からは5人でいることがほとんどだった。
きっかけは文化祭と修学旅行。
そういえば修学旅行で撮った写真、早く焼き増ししてんくんねぇかな。
まだ貰ってないのがたくさんある。
:08/12/13 23:13 :SH901iC :1vm0Oe8g
#421 [ゆーちん]
でもまぁいつでも貰えるか。
俺ら、たぶんこれからもずっとツルんでいくんだろうし。
海につくと男3人はダッシュした。
寒い潮風が髪を乱した。
靴のまま海の水を踏む。
テンションが上がった。
:08/12/13 23:14 :SH901iC :1vm0Oe8g
#422 [ゆーちん]
冷たいだの、やめろだの、たくさん騒いだ。
めちゃくちゃ青春だよ。
薄暗くなった海辺は影が砂浜へと伸びていて、とても印象深い1シーン。
「香奈!」
「ん?」
「この海の向こうにいる本島の彼氏に一言ぉ〜!」
こんなフリ、いつもの香奈なら絶対ノッてくれない。
だけど今日は違った。
:08/12/13 23:14 :SH901iC :1vm0Oe8g
#423 [ゆーちん]
今日は特別な日だから、大輝のリクエストにすんなり答えた。
「世界1好きぃーっ!」
香奈の叫びに続いて、大輝も海に向かって叫んだ。
「宝くじが当たりますよーにぃーっ!」
:08/12/13 23:15 :SH901iC :1vm0Oe8g
#424 [ゆーちん]
「アハハッ。彼女に向けてじゃねぇのかよ。」
「ただの願望。」
「んじゃ俺も。」
竜も叫んだ。
「将来、子供は3人欲しいぞぉーっ!」
4人で大笑いした。
顔に似合わず、そんな可愛い願いを叫ぶもんだから。
:08/12/13 23:16 :SH901iC :1vm0Oe8g
#425 [ゆーちん]
「ギャハハハ!」
「父親キャラでもないくせに。」
「あ?文句あんのかよ。俺は子沢山な家族を夢見てんだよ。」
照れもせずに、向井竜はやりきった感たっぷりで潮風に髪を揺らされていた。
「次、凜か心。」
「んじゃ俺〜。」
:08/12/13 23:16 :SH901iC :1vm0Oe8g
#426 [ゆーちん]
腹いっぱい息を吸い込んでいると、大輝は隣で呟いた。
「愛してるよ凜ちゃーん、とかなら別に聞きたくないから。」
「ゲホッ!」
「あら、図星?」
「何でわかんの!」
焦っていると竜までもが、
「そんな愛の言葉は二人っきりのときに囁いてやれ。。」
と文句をつけに来た。
急遽、発言、変更。
:08/12/13 23:17 :SH901iC :1vm0Oe8g
#427 [ゆーちん]
考えに考えて結局は、
「いつか江森凜になってねーっ!」
というプロポーズのような言葉。
「うっわ、タチ悪いっつーの。」
「ガッカリだね。」
「2人、うるさい!さぁ凜ちゃんの返事は?」
:08/12/13 23:18 :SH901iC :1vm0Oe8g
#428 [ゆーちん]
香奈が笑う隣で、凜は叫んだ。
「やーだよっ!」
その返事に竜と大輝と香奈は大笑いしていた。
「はい、心くん残念でした!」
「ギャハハハ、玉砕!」
「プロポーズ失敗だよ!」
凜も一緒に笑ってた。
「泣いてもいいですかーっ!」
:08/12/13 23:19 :SH901iC :1vm0Oe8g
#429 [ゆーちん]
「ダメ!」
「泣くな、玉砕男!」
「アハハハッ!」
これでいい。
凜に断られようがバカにされようが、みんなが笑っていられるなら、それでいい。
いつか笑えないほどカッコいいプロポーズすっから、凜ちゃん待っててよ?
:08/12/13 23:20 :SH901iC :1vm0Oe8g
#430 [ゆーちん]
ひたすら海で騒いだ後、辺りが真っ暗になって来たので解散。
またな、って言ってバイバイした。
俺は凜を送って行く。
手を繋ぎながら。
「寒い〜。凜ちゃんの手、暖かい。」
「水なんか触ってるからだよ。」
俺の冷たい手を、凜の小さな暖かい手が包んでくれていた。
:08/12/13 23:20 :SH901iC :1vm0Oe8g
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