冷たい彼女
最新 最初 🆕
#321 [ゆーちん]
「香奈は?」

「私は島出るよ。本島のB高行く。」


B高は女子が多く、寮生活できる高校だ。


「寮入るの?」

「うん。彼氏んちと寮が近いからさ。」

「凜ちゃんは?」

「まだ考え中。」

⏰:08/12/12 16:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#322 [ゆーちん]
あれ?


確か前に言ってたよな。


凜、一人暮らしするって。


考え変わったのかな。


不思議に思い、フェリーの中で2人っきりになったので聞いてみた。


「一人暮らししないの?」

⏰:08/12/12 16:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#323 [ゆーちん]
「んー。ちょっと悩んでて。」

「何?」

「島、好きだから離れたくないの。でもおじいちゃん達に迷惑かけたくないし。」

「そっか。」

「でももう親には一人暮らしする予定で話が進んでるって言われてるし、この島とバイバイなのかもね。」

⏰:08/12/12 16:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#324 [ゆーちん]
「そっか。」


寂しいけど、寂しいって言わなかった。


凜の将来だもん。


俺が寂しいって言って、考えがブレると悪いから。


そう思って口にしなかったけど、凜は言った。

⏰:08/12/12 16:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#325 [ゆーちん]
「心と会えなくなるの、寂しいよ。」


俺に寂しいって、素直に言ったんだ。


『俺も寂しい。』って言えない。


「離れたくないな。島とも…心とも。」


『俺も離れたくない。』って言えない。

⏰:08/12/12 16:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#326 [ゆーちん]
どうして急に素直になれなくなったんだろう。


それはきっと、凜の将来を邪魔しちゃいけないっていう訳のわかんない遠慮。

⏰:08/12/12 16:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#327 [ゆーちん]
そんなの、男らしく、凜の未来に乗り込んでやればいいのに。


凜の将来に、俺がいるようにすればいいのに。


なのに、なぜか勇気がなくて凜の未来に入ろうとしなかった。

⏰:08/12/12 16:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#328 [ゆーちん]
本心はずっとずっといつまでも凜といたい。


本当だよ。


俺の未来予想図には凜がいる。


凜とずっと一緒に歩もうって思っていたけど、その頃の俺はそこまで大人になれなかったんだ。


まだまだ幼い自分に、凜の未来に口を挟む資格なんてないと思ってたんだ。

⏰:08/12/12 16:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#329 [ゆーちん]
結局、凜の進路はあやふやなまま年が明けた。


中学生でいられるのもあと少し。


3月になると、この中学校ともさよならだ。


そんな1月。

⏰:08/12/12 16:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#330 [ゆーちん]
凜と2回目のSEXをした。


大輝がテストで0点取った。


香奈の髪が黒くなった。


凜の髪も黒くなった。


美帆に彼氏ができた。


竜に彼女ができた。


トメばあちゃんにひ孫ができた。


そんな1月。


例年より寒い1月だった。

⏰:08/12/12 16:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#331 [ゆーちん]
●○●○●○●

キリがいいので
STOPします

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/12 16:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#332 [ゆーちん]
○●○●○●○

寂しさ

○●○●○●○

⏰:08/12/12 23:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#333 [ゆーちん]
「島、出る事にした。」


海を見ながら凜が俺にそう言ったのは2月14日。


バレンタインデーのチョコをもらった直後だった。


「…そっか。」

「一人暮らしのマンションがC高に近いから、たぶんC高に行く。」

⏰:08/12/12 23:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#334 [ゆーちん]
「じゃあA高と近いから制服デートできるねぇ!」


俺は精一杯、応援の笑顔で振る舞った。


だけどその笑顔は、逆に凜を悲しませてしまった。


「…寂しいんだけど。」

「…。」


何も言えない。


「心は寂しくないの?私が島出てっても平気なの?」

⏰:08/12/12 23:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#335 [ゆーちん]
寂しいに決まってんじゃん。


平気な訳ないじゃん。


本当の事言えば、凜の考えを鈍らせてしまいそうで恐かったんだ。


だからって上手い嘘をつけるほど、俺はひねくれて育ってない。


「…行くなって言ってくんないの?」

「…。」


チョコレートを握る手に力が入る。

⏰:08/12/12 23:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#336 [ゆーちん]
「嘘でもいいから、引き止めるような言葉、聞きたかったんだけどな。」


凜はそう言って、俺の前を横切って行った。


嘘なんかつけるわけないじゃん。


一人きりになった海は、泣けてくるほど寒かった。

⏰:08/12/12 23:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#337 [ゆーちん]
凜に置き去られて正解だ。


でも何かショックでさ。


可愛らしいピンクの紙袋に入れてラッピングされていたチョコレートを持ちながら、島中を歩いていた。


あてもない。


自分の家に帰る気になれず、竜か大輝の家に行こうと思ったけど…辞めた。

⏰:08/12/12 23:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#338 [ゆーちん]
だからブラブラしてた。


「心?」


呼び止められて振り向くと、美帆がいた。


「おぉ、美帆。」

「何してんの、こんなとこで。家と真逆の方向じゃん。」

「放浪中。」

「そんな可愛い袋持って?」

「あぁ…うん。」

⏰:08/12/12 23:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#339 [ゆーちん]
美帆は何か感づいたらしく、ニヤッと笑った。


「凜と何かあったんだ。」

「…。」

「バレンタインの夜にこんな場所で、そんな暗い顔してるなんて千夏が知ったら怒るよ?」

「…千夏?」

⏰:08/12/12 23:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#340 [ゆーちん]
「うん。今日はチョコ渡す相手がいないってピリピリしてた。恋人がいる奴は誰ふり構わず殴り倒してやるーって叫んでたもん。」

「ハハッ。何だそりゃ。」


千夏が暴れるところを想像すると、俺にも笑みが零れた。


「で?恋人のいる幸せな心さんは、なんで泣きそうな顔してんのさ。」

「んー…。」

⏰:08/12/12 23:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#341 [ゆーちん]
俺の濁る笑顔を見て、美帆は言った。


「うちおいで。」


俺を抜かして美帆は前をスタスタと歩き始めた。


俺は何も言わずに美帆の後ろをついてった。


「やべー、菊地家とか久しぶりだわ。」

「小学生のころは毎日来てたのにね。中学上がって、心に彼女ができて、それから全然来なくなった。」

⏰:08/12/12 23:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#342 [ゆーちん]
「そうだっけ。でもその彼女とは、すーぐ別れちゃったよ。」

「初めての彼女できたってあんな喜んでたのにね。」

「そうだねー。」


懐かしい過去は溜め息が出るくらい背伸びするのに必死だった。

⏰:08/12/12 23:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#343 [ゆーちん]
カッコつけてた中1の俺。


カッコつけるのに疲れてきた中2の俺。


カッコつけるのを辞めた中3の今の俺。


子供のままなら、素直に寂しいって言えてたんだ。


もっと大人だったら、凜の未来に入り込む勇気を持てたんだ。

⏰:08/12/12 23:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#344 [ゆーちん]
どっちにしろ成長したのかしてないのかわからない自分に嫌気がさす。


「お邪魔します。」


菊地家は何も変わっていなかった。


小学生の頃、よく来た菊地家のままだった。


「心ちゃん!久しぶり〜。」


美帆の母ちゃんは笑って出迎えてくれた。

⏰:08/12/12 23:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#345 [ゆーちん]
「こりゃまた色気のない部屋だな〜。」

「は?黙れって。」


ジャマイカちっくな美帆の部屋。


この部屋だけは、いつの間にかガラリと変わってしまっていた。


「あぁ〜。」


溜め息が混ざった声でベットにダイブすると『遠慮ってものを知らないんですか?』と美帆に文句を言われた。

⏰:08/12/12 23:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#346 [ゆーちん]
今さら遠慮も糞もねぇよ。


美帆は小さなソファーに座って、俺に聞いた。


「凜と何あったの?」


いきなりですか…。


いや、別に世間話するつもりもないんだけどね。


俺は思い切って美帆に全てを話してみた。

⏰:08/12/12 23:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#347 []
ええおお

⏰:08/12/12 23:36 📱:W45T 🆔:vPlfI7z6


#348 []
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400

⏰:08/12/12 23:37 📱:W45T 🆔:vPlfI7z6


#349 [我輩は匿名である]
アンカあるっつの

⏰:08/12/13 00:52 📱:F01A 🆔:3VvYcdSU


#350 []
長くて見えないのI

⏰:08/12/13 00:59 📱:W45T 🆔:JMGXsVVg


#351 [ナイト]
めちゃめちゃおもしろいです
はやく続きがみたい

⏰:08/12/13 01:48 📱:SH903i 🆔:GS9ms8SM


#352 [我輩は匿名である]
>>350
自己中なことしてんじゃねーよヴォケ

⏰:08/12/13 08:15 📱:N905imyu 🆔:kTKoX66M


#353 [ゆーちん]
●○●○●○●

すみません

昨日いきなり携帯の調子が悪くなっちゃって更新できませんでした

次からアンカーは50区切りでしますねすみません

●○●○●○●

⏰:08/12/13 16:17 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#354 [ゆーちん]
包み隠さず、全てを相談した。


『島を出てく。』って言われて何にも言えなかった事。


寂しいとか、行くなって言ってくれないの?って凜に聞かれて…何にも言えなかった事。


それは凜が決めた将来を惑わせるのが嫌だから何も言わないんだって事。


本当は行くなって、寂しいって、言いたい事。

⏰:08/12/13 16:19 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#355 [ゆーちん]
美帆はずっと『うん。』とか『それで?』とか、所々に相槌を入れながら聞いてくれた。


「どうしていいかわかんねぇんだわ。」


そんな相槌しか打たなかった美帆は、いきなり強い目で問い掛けた。

⏰:08/12/13 16:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#356 [ゆーちん]
「心の考えてるのもあながち間違ってないよ。凜の事を考えてあげてるのって凄い良い事だもん。でもさ!」


美帆は一呼吸置いてから言った。


「うちらまだ中学生だよ?」


当たり前の言葉を、すごく真剣に言った美帆から、目が離せられなかった。

⏰:08/12/13 16:20 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#357 [ゆーちん]
「将来の事もいいけど、大事なのは今じゃん。何カッコつけてんの。あの凜に、寂しいとか行くなって言って欲しかったって言われたんだよ?情けなくないの?」


情けないよ。


そんなのわかってる。


「でもさ…」

⏰:08/12/13 16:21 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#358 [ゆーちん]
「でもって何?中学生らしい恋愛すればいいじゃん。大人ぶるのは外見だけで充分だよ。所詮、中身はまだ15のガキなんだから思った事を素直に伝えればいいんだって。いつからそんな臆病になっちゃったの?」


美帆の言葉に殴られた俺。


何も言えなかった。

⏰:08/12/13 16:22 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#359 [ゆーちん]
「寂しいって思ってるなら、寂しいって言えばいいじゃん。心は凜の素直なところを好きになったんでしょ?だったら心も、素直なところを好きになってもらわないと。」

「…ごもっとも。」

⏰:08/12/13 16:23 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#360 [ゆーちん]
何を恐れていたのだろう。

俺が好きなのは凜ちゃん。


凜に寂しい思いをさせて、何が凜の将来の邪魔をしたくないだよ。


カッコつけてただけ。


知ってる。


「美帆。」

「何。」

「ほんっとありがと。お前に殴られて目が覚めた。」

⏰:08/12/13 16:24 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194