冷たい彼女
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#38 [我輩は匿名である]
それからの俺は毎日、放課後になると凜ちゃんのストーカー。


学校にいる間は話し掛けても、あまり相手にしてくれないから、二人っきりになれる下校がチャンス。


「凜ちゃんは雑誌とか読む〜?」

「…読む。」

「そっかぁ。この島に本屋ないから本島に行かないと買えないね。」

⏰:08/12/11 21:13 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#39 [我輩は匿名である]
「…そうだね。」


後ろに振り返ってはくれないものの、俺の質問には反応してくれるようになった。


「凜ちゃん、俺の事好き?」

「…。」


まぁ、答えてくれない事もあるけどね。

⏰:08/12/11 21:14 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#40 [ゆーちん]
「じゃあねー!また明日…じゃないや。また月曜にね!」


杉浦家の前でいつものように手を振って帰る。


今日は金曜日。


明日、明後日は会えないから寂しいですね。


「待って!」


…まさかの呼び止め。


「何?」


顔には自然と笑顔が浮かぶ。

⏰:08/12/11 21:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#41 [ゆーちん]
「明日、暇でしょ?」

「暇!すっげぇ暇!デートする?デート!」

「いいよ。デートしてあげる。」


来たよ、俺の時代が。


凜ちゃんと付き合って4日目。


初デートのお誘いをOKしていただきました!


「よっしゃあ!」

⏰:08/12/11 21:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#42 [ゆーちん]
騒ぐ俺とは別世界のような凜の表情は、いつものように冷たかった。


「どこ行く?」

「…10時に迎えに来て。じゃあ。」


それだけ言って、凜は家の中に入って行った。


「あ、うん。10時ね!バイバイ!」


この際、行き先なんてどこでもいい。


何てったって初デート!

⏰:08/12/11 21:16 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#43 [ゆーちん]
テンションの上がった俺はそのまま向井家に走った。


「りゅーうーちゃーん!」


インターホンなんてほとんどの家にない。


玄関を勝手に開けて、名前を叫ぶのがこの島の呼び出し方。

⏰:08/12/11 21:18 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#44 [ゆーちん]
「はーい。あら、心ちゃん。」


竜のばあちゃんが出迎えてくれた。


「ばあちゃん久しぶり!腰の調子どう?」

「ありがとうね。最近は調子いいんだよ。」

「本当?よかったねぇ。」

「おかげさまで。心ちゃん今日は何の用?」

「竜いてる?」

⏰:08/12/11 21:19 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#45 [ゆーちん]
「竜なら大輝ちゃんちに行ったよ。」

「大輝んち?わかった。ありがとね。ばあちゃんバイバイ!」

「走って転ばないようにねぇ。」


竜のばあちゃんは俺のばあちゃんみたいなもん。


つか、この島のばあちゃんはみんな俺のばあちゃんだな。

⏰:08/12/11 21:20 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#46 [ゆーちん]
竜のばあちゃんに見送られ、俺は中橋家まで走った。


「大輝ぃー!竜ぅー!いるかぁ〜?」


中橋家の玄関で叫ぶと、大輝が出迎えてくれた。


「何だ?」

「竜もいる?」

「おぉ。みんないる。」


…そうみたいですね。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#47 [ゆーちん]
玄関に脱ぎ捨てられているこの靴の量を見ればわかりました。


俺も靴を脱ぎ、部屋に上がった。


中橋家はなかなか大きな家なので、みんなのたまり場として集まる事が多かった。


大輝の部屋もこれまた広い。


俺の部屋の3倍はあるな。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#48 [ゆーちん]
「おぉ、心。」

「あれ?ストーカーは?」


みんなが口々に俺を出迎えてくれた。


「みなさん、よくぞお集まりいただきなすった。」

「日本語変だぞ。」

「そこ、うるさい!俺は国語が嫌いなんだ!」

「で、どしたの?」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#49 [ゆーちん]
「みんなに自慢したい事があるんですよ。」

「何〜?」

「なんと!明日、杉浦凜様とデートする事になりましたー!」


島中に聞こえるんじゃねぇかってぐらい大声で叫んでやった。


それなのにみんなの反応は最悪。


「…ふーん。」

「そうなんだ。」

「頑張って。」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#50 [ゆーちん]
「ちょちょちょちょ。何なの、その凜ちゃんのような冷たい反応。みんな凜ちゃん化ですか?」


漫画の続きを読み始めたり、携帯を触りだしたりと俺には見向きもしてくれなかった。


泣いちゃうぞー。


いつもながら俺への対応は冷たいものだ。


もう慣れたけどさぁ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#51 [ゆーちん]
凜の話はいつの間にか流れてしまい、他愛もない話で盛り上がった。


日が沈めば自然に家へと帰って行く。


不審者や痴漢、泥棒の出た事のないこの島の夜道は暗いけれど月が明るく、のんびりと歩きながら帰る事ができるんだ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#52 [ゆーちん]
翌日は学校に行く時間より早くに目が覚めた。


無駄に余った時間は携帯ゲームをして過ごした。


が、バカはやっぱりバカだった。


すっかり夢中になってしまい、時間を忘れていたんです。


「あんた一体何時に出掛けんのさ?」


母ちゃんが言った。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#53 [ゆーちん]
「あ?10時前。」

「んーなのとっくに過ぎてるよ。」


…え?


時計を見ると10時半を回っていた。


血の気が引いた。


「やっべぇ!」


携帯電話と財布をポケットに入れ、家を飛び出した。


杉浦家まで猛ダッシュ。


3分で到着だ…。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#54 [ゆーちん]
「り…ん、ちゃー…ん…」


息切れなんて久しぶり。


「あらあら、心ちゃんじゃないの。どうした?」


杉浦のばあちゃんが俺に笑顔を向ける。


「凜…ちゃん…は?」

「部屋にいるよ。」

「呼んで…来てく…れる?」

「あいよ。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#55 [ゆーちん]
ばあちゃんは立派な足取りで階段を上って行き、凜を呼んで来てくれた。


「おばあちゃん、私ちょっと出掛けるね。」

「心ちゃんとかい?」

「うん。」

「はいよ。気をつけてね。」

「いってきます。」

「ばあちゃん、いってきます。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#56 [ゆーちん]
初めて見た私服の凜は、口が開く程のものだった。


フワフワしたワンピースが見事に似合っている。


少し歩くと、凜は言った。


「童貞は時間も守れないわけ?」

「…ごめんなさい。ゲームしてたら時間忘れてました。」

「ゲームに負けたんだ、私。」

⏰:08/12/11 21:31 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#57 [ゆーちん]
「いや、決してそういう訳じゃないんだけど…」

「貸し1ね。」


そう言って凜は歩き出した。


「はい。」


俺もいつもと同じで、凜の後ろを着いて歩く。


6月末、とても暑い日だった。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#58 [ゆーちん]
「この島の案内して。」


凜は振り返りもせずに言う。


「案内?」

「そ。早くこの島に慣れたいの。」

「OK!じゃあ俺んち戻ろ。自転車取ってくるわ。」

「自転車?」


凜は振り返った。


…笑ってないけど、うん。


可愛い。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#59 [ゆーちん]
「後ろ乗せたげる。俺んちこっちだから!」


来た道を戻る。


今は俺が前で、凜が後ろ。


いつもと逆。


違和感たっぷり。


「ねぇ。」

「はい。」

「隣歩けば?」

「…いいの?」

「いいよ。デートなんでしょ?」

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#60 [ゆーちん]
素晴らしい進歩。


初デート。


初横並び歩き。


テンション上げずにいられないでしょ!


「手ぇ繋いでいい?」


そう、勢いでお願いしてみた。


「やだ。」


…無理でした。


うん、最初から欲張っちゃダメだよねー。

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#61 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」


とりあえず隣で歩ける事に感謝。


小さな凜と並んで歩ける事が幸せだった。


俺の家につき、自転車を出して、凜を後ろに座らせた。


「2ケツとか久しぶりだ。」

「どうせ男しか乗せた事ないんでしょ。」

⏰:08/12/11 21:34 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#62 [ゆーちん]
凜の言葉のナイフにグサグサと刺されながら自転車をこいだ。


「そんな事ないもーん。」

「あっそ。」

「でも、9割が男だね。」

「やっぱり。」

「残りの1割は女からのパシリですよ。」

「ダッセェ。」


風を切って走る自転車。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#63 [ゆーちん]
凜ちゃんの髪やワンピースは、さぞなびいているでしょう。


…全く見えないけど。


1軒1軒、島の案内をしていく。


抜け道や近道も教えてあげる。


あの家のじいちゃんはどうだとか、この家のばあちゃんはこうだとか。


凜は一生懸命、俺の話に耳を傾けてくれていた。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#64 [ゆーちん]
お昼は、島で唯一の食堂である【トメ食堂】食べた。


なぜ【トメ食堂】かと言うと、トメと言う名前のばあちゃんが営業しているから。


トメばあちゃんは島で1番の料理人だと俺は思う。


食べ終えると、また自転車の旅が始まる。


なるべく日影を走れという凜の指示に、俺は素直に従った。

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#65 [ゆーちん]
汗が流れる額。


凜のために流す汗は苦痛ではなかった。


日が暮れると、凜は言った。


「あんたがこの島で1番気に入ってる場所教えて。」

「1番?」

「そう。」

「ガッテン承知!」

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#66 [ゆーちん]
俺は涼しくなった風を切りながら、一生懸命自転車をこいだ。


この島で1番の好きな場所。


そんなのあそこ以外にないだろ。


ハンドルを握る俺の手は、慣れたようにあそこに向かっていた。


「凜ちゃーん!」

「何?」

「ここー!」

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#67 [ゆーちん]
坂を下ると、海が広がる。


俺は海が1番好きだ。


自転車を止めると、凜は後ろから降りて砂浜を歩いた。


髪とワンピースが揺れる。


ヤバイ…惚れ直した。


凜の姿があまりにも絵になるので、ついつい見取れてしまった。

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#68 [ゆーちん]
「ねぇ!」

「あ、うん、何?」

「何じゃないよ。ぼーっとしちゃってさ。」

「ごめん。どうしたの?」

「あんた正解。今日回った場所で、ここが1番いいよ。私の1番もここだ。」


凜と俺の1番が同じなのは、とても嬉しい事だ。


「本当?マジで?」

⏰:08/12/11 21:38 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#69 [ゆーちん]
「うん。この島の海は特別綺麗。」

「でしょ?俺もこの島の海が1番好き〜。」


夕日は沈んだ。


薄暗い海辺。


凜は言った。


「今日はありがと。あんたを彼氏にしてよかった。」

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#70 [ゆーちん]
笑顔は見せてくれなかったものの、その言葉はとても嬉しかった。


凜ちゃんは俺に気などない。


そんなのわかっている。


俺を足変わりにするのも、何の問題もない。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#71 [ゆーちん]
一緒にいてくれるだけで俺は嬉しいのに、『ありがとう。』と言われるのは、やっぱり嬉しい。


前に近道を教えた時も言ってくれたっけ。


冷たい彼女だけど、ありがとうを言える人は本当は心が温かいんだよ。


島のばあちゃんがよく言ってる。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#72 [ゆーちん]
「明日も付き合ってくれるんでしょ?」


…明日?


明日もあなたの隣を歩けるんですか!?


「もーちろんっ!明日でも明後日でもいつでも付き合うよ!」

「…。」


テンションが上がりすぎだと冷ややかに目で訴える凜ちゃん。

⏰:08/12/11 21:40 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#73 [ゆーちん]
「どこ行くの?」

「明日は本島で買い物がしたいから9時に迎えに来て。」

「わかった!9時ね!じゃあ9時半のフェリーだね。」

「…明日は今日と違って、遅刻は許されないからね。」

「はい、わかってます。」


こうして明日のデートの約束をして俺らは海を後にした。

⏰:08/12/11 21:41 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#74 [ゆーちん]
●○●○●○●

ではまた明日

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/11 21:59 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#75 [我輩は匿名である]
早くみたいまた時間ある時にゆっくりお願いしま-す今日はお疲れさまで-す

⏰:08/12/12 01:01 📱:SH906i 🆔:FlUtrXSA


#76 [ゆーちん]
>>75さん
ありがとうございます
マイペースな更新ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

⏰:08/12/12 08:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#77 [ゆーちん]
そして翌日、俺は8時半に凜を迎えに行った。


「おはよう!」


俺が玄関から叫ぶと、じいちゃんが出迎えてくれた。


「おぉ、心ちゃん。おはよう。」

「じいちゃんおはよう!凜ちゃんは?」

「凜?朝ごはん食べてるよ。」

「じゃあ食べ終わったら外に来てって伝えて。」

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#78 [ゆーちん]
「上がって行かんかい。」

「や、凜ちゃんに叱られそうだから辞めとくよ。んじゃ。」


外に出て、玄関口にしゃがみ込んだ。


男は同じ失敗はしない。


30分前行動だ。


どうだこの野郎!

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#79 [ゆーちん]
天気良好。


体調良好。


おまけに海も良好。


こんなデート日和なかなか無いですよ。


恵まれてんだな、俺。


せみの鳴き声を聞きながら空を見上げたり、道行く人に挨拶したり。


そんな事をしていると30分なんてあっという間だった。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#80 [ゆーちん]
「ストーカー。」


振り返ると凜ちゃんがいた。


「おはよう!9時ちょうどだね!」

「30分も前に来るなんてバカとしか思えない。」

「だって遅刻できないもん!はい、乗って。」


今日も自転車。


凜は呆れた顔をしていた。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#81 [ゆーちん]
今日の凜も素敵だった。


昨日とは違い、カッコイイ感じ。


短いズボンに、クールなTシャツ。


大人っぽいハンチングを頭に乗せて、爽やかな香水を香らせていた。


「今日の凜ちゃんもカッコイイし可愛いね〜。」

「今日は動きやすい方がいいから。」

⏰:08/12/12 08:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#82 [ゆーちん]
「本島で何するの?買い物?」

「うん。」

「買い物かぁ!いいね、いいね。楽しみ。」

「…あんたって単純だよね。」

「えぇ?そう?」

「バカみたいに前向きだし。」


それは相手が凜ちゃんだから。


…とか言ったら、またバカにされるかもな。

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#83 [ゆーちん]
フェリー乗り場についた。


切符を買って、フェリーで本島に向かう。


本島は今日も賑わっていた。


「何買うの?服?」


凜は首を横に振る。


「服は島に行く前にたくさん買った。とりあえず化粧品や雑貨が目当て。あの島に店がないってのは盲点だった。」

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#84 [ゆーちん]
まぁ、確かにね。


お洒落盛りの女の子には、あの島は何もなさすぎる。


「まずは雑貨屋。あんたが1番だと思う雑貨屋連れてって。」

「おう!任せて!」


自転車も一緒に本島に来たおかげで、こっちの移動も自転車が使える。

⏰:08/12/12 08:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#85 [ゆーちん]
今日も汗をかきながら自転車をこぐ。


何だかんだ言って楽しいんだよな。


その日のお店は俺のお気に入りの店をたくさん回った。


途中、凜が気に入っている店のチェーン店があったりもして立ち寄った。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#86 [ゆーちん]
昼は安くつくのでファミレスで済ませる。


中学生は金がないんだよ。


凜は例外みたいだけど。


「うちは金持ちだから親に言えばいくらでも通帳に入れてくれるの。」


グラタンを頬張りながら凜はそう言ってた。


「凜ちゃんはどうして親についてかなかったの?」

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#87 [ゆーちん]
「親がダメだって。海外を転々とするから。それに高校生になったら一人暮ししてもいいって言われてるの。とりあえず中3の1年間は心配だからおじいちゃん達と暮らせってさ。」


まるで他人事のように話してくれた。


じいちゃん達が言ってた事は本当だったんだ。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#88 [ゆーちん]
「お母さん側のおじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってるから、お父さんの実家に預けられてるの。お父さんはお正月にも里帰りなんかしないから、初めてあの島に行ったけど…田舎すぎて驚いた。」


都会から来た人はあの島が田舎すぎる事に絶対驚く。

⏰:08/12/12 08:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#89 [ゆーちん]
「あの島、嫌い?」

「ううん。嫌いじゃないよ。あんたが昨日色んなとこ連れてってくれたから、好きになりかけてる。」


嬉しすぎる。


島を好きになってもらえる事。


それに、凜が色んな話を俺にしてくれる。


まだ笑ってもらってないけど、凜は俺を頼ってくれてるんだと思うと心底嬉しくなれた。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#90 [ゆーちん]
「高校生になったら一人暮らしするの?」

「うん。」

「そっか。本島の高校?」

「たぶんね。だからこっちの島にも慣れないと。」


少し寂しい。


凜ちゃんが島から出て行くのは。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#91 [ゆーちん]
「俺はたぶん家から通うよ。」

「ふーん。」

「凜ちゃんも杉浦のじいちゃんちから通えばいいじゃん。」


凜は首を横に振る。


「おじいちゃん達にあんまり迷惑かけられないよ。」


孫なのに、気をつかう事はないんじゃないかなと思ったけど…言わなかった。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#92 [ゆーちん]
プライバシーもないような筒抜け島だけど、凜は都会から来たんだ。


あまり入り込まれるのは好きじゃないかもしれない。


凜にも何か考えがあるんだろう。


聞きたい気持ちを、ぐっと耐えた。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#93 [ゆーちん]
午後からもたくさん買い物をした。


俺は荷物係。


荷物が1つ増えるたびに、凜は『ありがとう。』と言ってくれた。


これくらいどうって事ないのに。


その言葉を聞くたびに、俺は凜を好きになった。


日も傾いて来た頃。


「そろそろ帰ろっか。」

⏰:08/12/12 08:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#94 [ゆーちん]
「そうだなぁ。今フェリー乗り場行けばちょうどいい時間のがあると思うよ!」


俺は自転車をこいだ。


乗り遅れるといけないから、一生懸命こいだ。


おかげでちょうどいい時間のフェリーがあった。


それに乗って、俺、凜、自転車はまた島へと戻る。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#95 [ゆーちん]
そんな感じで休日デート終了。


俺の心は満たされていた。


少しずつ、でも確実に俺は進歩している。


凜の手を握る事を目標に、明日からまた一週間。


俺は放課後のストーカーを頑張りたいと思います。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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