冷たい彼女
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#97 [ゆーちん]
凜が島に来て3週間。


7月らしい気候が島を包んでいた。


先々週は島案内と本島案内。


先週は凜に用があるとの事でデートせず、竜たちと過ごした。


で、今週。


明日は土曜日。


俺は凜にデートを申し込んだ。


「えー、めんどくさい。」

⏰:08/12/12 08:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#98 [ゆーちん]
…玉砕。


デートを、めんどくさいって…。


「何でよぉ!どうせ暇なんでしょ?」

「明日は用があるの。」

「じゃあ明後日!」

「日曜?日曜もダメ。」

「え〜。いつならデートできんのさ!」

「んー…夜。」

「へ?」

「明日の夜ならいいよ。日中は用があるから無理だけど。」

⏰:08/12/12 08:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#99 [ゆーちん]
思わず叫んだ。


「やったー!」


教室で俺がこうやって叫んでも、もう誰も驚かない。


凜にべったりな俺に、みんなマンネリ化してきてるみたいだわ。


「…うるさい。」

「じゃあ明日の夜ね!」

「8時に迎えに来て。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#100 [ゆーちん]
「うん!OK、OK!」


と、俺が喜んでいると凜の隣に座っていた西山香奈が呟いた。


「童貞が夜遊びすんじゃねーよ。」


俺は睨んだ。


が、香奈の睨みには勝てない。


怖い女だ。


「あー…香奈の言う通りだね。やっぱ夜は辞めとこっか?」

「こらこら!何で凜ちゃんは丸め込まれてんのさ。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#101 [ゆーちん]
香奈は、たぶん今んところ島1番の派手な奴。


前まで1番は、香奈の姉ちゃんだった。


だけど姉ちゃんが島を出て言ってから、たぶん香奈が1番。


派手だし、男みたいな性格だし、美人だけど怖いし、俺の事いっつもバカにするし…嫌いじゃないけど好きでもない。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#102 [ゆーちん]
凜が来るまで、香奈は一匹オオカミみたいな奴だった。


そりゃ女だから友達はいるんだろうけど、本島の奴らとの方が仲が良いらしい。


まぁ、強いて言うならこのクラスで仲良くしてたのは美帆かな。


あいつは誰とでも仲良いし。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#103 [ゆーちん]
香奈は4つ上の大学生の姉ちゃんとすげぇ仲が良い。


だから姉ちゃんの同級生とも仲が良い。


つーことは、恋愛も年上とする。


姉ちゃんの男友達と付き合ってるみたいで、どんどん大人びてきていた。


そして先月、凜がこの学校にやって来た。

⏰:08/12/12 08:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#104 [ゆーちん]
化粧してる子なんて香奈以外いないと思っていたら、クリクリお目めで登場した凜。


香奈と凜が仲良くなるのに時間はかからなかった。


先週の凜の用ってのも、香奈と本島に行ってたかららしい。


まぁ、友達も大事だから仕方ないよな。


でもちょっとジェラシー。

⏰:08/12/12 08:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#105 [ゆーちん]
一匹オオカミと美人転校生が一緒にいることで、かなり目立っていた。


俺の存在どんどん薄れてる気がして、香奈にヤキモチ妬いちゃってるんです、僕。


「とにかく!明日8時に行くからね!」

「はいはい。」


呆れながら返事をした凜は教室から出て行った。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#106 [ゆーちん]
「心。凜が嫌がる事したら、二度と太陽拝めなくするからね。」


香奈はそう言葉を残し、凜を追い掛けて教室から出て行った。


…つーか、普通に怖いよ。


香奈が言うと冗談に聞こえない!


俺はこの太陽が好きなので、凜ちゃんに嫌がる事はしません。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#107 [ゆーちん]
そして翌日。


昼まで寝て、午後からばあちゃんの畑仕事手伝った。


普段手伝いなんかしないけど、今日は気分がいいから。


それにばあちゃん孝行もしないとだし?


あともう一つ、企んでる事があるからさ。


「珍しい事もあるんだね。」

「何がぁ?」

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#108 [ゆーちん]
「心が畑を手伝ってくれるなんて明日は雨かもしれないな。」

「んなバカな。」


夕方、どろどろに汚れた体をシャワーで流した。


そう、これが企んでる事。


汗でもかかなきゃシャワーなんかさせてもらえない。


母ちゃんケチだから。

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#109 [ゆーちん]
凜ちゃんに会う時ぐらい、いい匂いで会いたいじゃん!


男心って奴だよ。


汗をかいた事を理由にシャワーをして綺麗になった俺。


ちょっとお気に入りの服を着て、夕飯を済ませた。


「心。」

「んあ?」


母ちゃんが冷ややかな目で息子の俺を見る。

⏰:08/12/12 08:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#110 [ゆーちん]
「何で、パジャマじゃなくて普通の服着てんのさ。」

「ちょっと出掛ける〜。」


すると父ちゃんがビールを飲みながら笑った。


「色気づきやがって!バカ息子がぁ!」


それを聞いた母ちゃんの目の輝きは一気に変わった。


「え、何、デート?こんな時間から?どういう事!」

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#111 [ゆーちん]
父ちゃんのバカ。


毎回毎回、息子の色恋沙汰になるとテンションの上がる母親。


いい加減げっそりだわ。


また騒がれるのも面倒だから黙ってたのに、さすが父ちゃん。


鋭いぞ。

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#112 [ゆーちん]
「違います。深入りしてこないで下さい。」

「何言ってんの!どんな子?何でそんな楽しそうな話隠してたの!もっと聞かせてよぉ。」


うぜぇ。


母ちゃんのこの性格と俺の性格はよく似てる、なんて言われるけど…どこが似てるんだか。


いつまでたってもギャーギャー喚くなんて…ガキか。

⏰:08/12/12 08:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#113 [ゆーちん]
ばあちゃんもじいちゃんもニヤニヤと俺を見る。


そんなに孫の恋愛が気になるのか?


「なるほどね。それで今日は畑仕事手伝ってくれたんだぁ。」


と、ばあちゃん。


「単純だな。」


と、じいちゃん。


みんなしてバカにしやがって。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#114 [ゆーちん]
15歳の旬の男が彼女の1人もいないでどうすんだっつーの。


「心。」

「何だよ。」


父ちゃん、まだからかう気か?


「避妊はちゃんとしろよ〜。」


…酔っ払いが。


さっさと寝ろ。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#115 [ゆーちん]
うちの家族はどうもお気楽な感じで、今みたいな下ネタは日常茶飯事だった。


「そうよ、心。あなたまだ中3なんだし、子供なんかできたとか言って泣き付いて来ないでね。」


母ちゃん、そりゃないよ。


「じいちゃんは、ひ孫大歓迎だからな!」

「ばあちゃんも大歓迎。」

⏰:08/12/12 08:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#116 [ゆーちん]
無茶苦茶だ。


呆れて物も言えない。


つーか、4人共さぁ…俺まだ童貞だぞ?


子供だのひ孫だの、いつの話になるやら。


「ごちそうさまいってきます。」


2つの単語を息継ぎせずに言い終えると俺は家から飛び出した。

⏰:08/12/12 08:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#117 [ゆーちん]
あー、財布忘れた。


慌てて出てきたから携帯だけしか持って来なかった。


まぁ、いっか。


この島でいると金を使う事なんか滅多にない。


自販機も少ないし。


財布は邪魔な荷物として扱われる事が多かった。


ぶっちゃけ携帯もあんまり使わないんだけど…時計変わりだな。

⏰:08/12/12 10:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#118 [ゆーちん]
…つーか慌てて出て来て正解じゃん。


また遅刻するところだった。


少し傷んで茶色くなりかけていた俺の髪が、夜風にもて遊ばれる。


自転車のペダルも自然と軽い気がした。


早く凜を乗せて、人の重みを感じたい。


杉浦家についたのは5分後だった。

⏰:08/12/12 10:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#119 [ゆーちん]
時間ちょうど。


完璧。


「こんばんにゃ〜。凜ちゃーん!」


居間から杉浦のばあちゃんが出てきた。


「はいはい、どこの猫かと思ったら江森んちの猫かい。」

「そ、僕、江森心くん!」

「凜ちゃんならもうすぐ来るから、上がって待つかい?」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#120 [ゆーちん]
今まで杉浦家なんて数え切れないくらいお邪魔した。


だけど凜が来てから特別な家に思えて、なかなか上がれないんだ。


「ううん、ここにいるよ!」

「そうかい。もうちょっと待っててやって。」

「おう!」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#121 [ゆーちん]
玄関の置物を見ながら待っていると3分もしないうちに凜が現れた。


「凜ちゃん!こんばんは〜。」

「あんたは時間に極端だね。」


俺に目もくれず、凜は『いってきます。』と居間にいるじいちゃんばあちゃんに叫んでから、サンダルを履いて外に出た。

⏰:08/12/12 10:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#122 [ゆーちん]
俺も杉浦のじいちゃんばあちゃんに『いってきます。』を言ってから外に出た。


「やっぱ夜風は気持ちいいね〜!」


今日はいつもみたいにお洒落していない。


キャミソールにスウェットの短パン。


裸足でサンダル。

⏰:08/12/12 10:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#123 [春菜]
初めて読みました。

面白いです。

頑張ってください

⏰:08/12/12 10:42 📱:PC 🆔:fqhnNpXI


#124 [ゆーちん]
髪は巻いたりせず真っ直ぐのまま。


アクセサリーもなし。


化粧だけはいつも通りだったけど。


「凜ちゃん、海行こう!」

「…いいよ。」


凜は笑わない。


だけど声で気分がわかるんだ。


今日の声は機嫌がいい。


怒ってもないし、悲しんでもない。


普通の状態。

⏰:08/12/12 10:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#125 [ゆーちん]
慣れた動きで自転車の後ろに乗り、凜は言った。


「あ、携帯忘れた。」

「取って来る?」

「…いいや。別にいらない。この島に来てから携帯依存症治ったし。」


携帯依存症?


何の事かわからないが、とりあえず俺は出発した。

⏰:08/12/12 10:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#126 [ゆーちん]
海は、誰もいなかった。


誰かいたとしても知り合いだから、それはそれで面倒だし恥ずかしい。


貸し切りでよかった。


「あそこ座ろう!」

「…うん。」


俺らがいつも溜まる岩場を指さした。


砂浜に足を取られながらも、今日は俺の後ろを一生懸命ついて来てくれる凜。

⏰:08/12/12 10:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#127 [ゆーちん]
最初は一目惚れだったけど、俺どんどん中身も好きになってる気がする。


俺に冷たい事言っといて、こうやって付き合ってくれる。


根はいい子なのに、どうして冷たい態度ばかりなんだろう。


そんな事を気にしていると後ろから声がした。

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#128 [ゆーちん]
「きゃっ!」


慌てて振り返ると凜は転んでいた。


「うぉ!大丈夫?」


サンダルのヒールが砂のせいで埋もれてしまい、バランスが取れずに転んでしまったようだ。


俺は慌てて手を差し延べると、凜はガッと手を掴み、勢いよく立ち上がった。


「…どーも。」

「あ!」

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#129 [ゆーちん]
「何よ、うるさいな。」

「初めて手ぇ繋いだね!」


俺は繋いだ手を顔の前まで上げた。


凜と俺の手が繋がれている。


「…。」


凜は少し難しそうな顔をしていた。


「また転ぶと危ないから、このまま岩場まで行こ〜?」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#130 [ゆーちん]
凜は何も言わなかったので、手を繋いだまま歩いた。


凜の手は小さかった。


今まで数少ないながら繋いだ女子の手の中でも、1番小さかった。


そんな小ささを、また好きになってしまう。


この波音が妙にロマンチックで、改めて波打つ海に感謝した。


「凜ちゃん。」

「何。」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#131 [ゆーちん]
「あっちの岩場にしない?」


遠くの方を指さした俺。


「何で。」

「もっと繋いでたいもん。」


そう言うと、凜はパッと手を離して、目の前の岩場に座った。


「香奈に殺されても知らないよ?」

⏰:08/12/12 10:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#132 [ゆーちん]
シラッと言ったその言葉。


昨日の香奈の怖い顔を思い出してしまった。


「ごめん。明日も太陽が見たいから、ここでいいです。充分です。最高です。」

「香奈の名前聞いただけで焦りすぎでしょ。肝っ玉の小さい男は嫌いだからね。」


凜の隣に座ると、海が一望できた。

⏰:08/12/12 10:50 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#133 [ゆーちん]
滅多に夜の海なんか来ないから、いつも遊んでる場所とは違う感じがした。


「今日は爆発頭じゃないんだね。」

「爆発頭?」

「うん。学校には毎日アフロみたいに爆発頭で来てるじゃん。」


凜ちゃん、そりゃないよ。


あれは爆発頭でもなけりゃアフロでもない。

⏰:08/12/12 10:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#134 [ゆーちん]
「あれは、一応ワックスでセットしてんだけどぉ。」

「ふーん。そうだったの。」


わかってたくせに。


凜は俺を悲しませるのが得意みたいだ。


「シャワー浴びたから、もうワックスするの面倒でそのままにしたの。どっちのが似合う?」

⏰:08/12/12 10:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。


クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。


「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」


ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。


「ギャップにドキッとしたりとか‥」

「してないから安心して。」

⏰:08/12/12 10:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。


でもさ、俺も男じゃん。


1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。


「あんたさぁ‥」

「凜ちゃん。」

「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」

「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」

⏰:08/12/12 10:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。


最初は気にならなかった。


でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。


「何、いきなり。」

「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」

⏰:08/12/12 10:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#138 [ゆーちん]
凜の大きな目はじっと俺を見ていた。


「もう、あんたって呼ばれんの嫌だ。」

「…。」


強い瞳。


俺も強い目で凜を見た。


「…知ってるよ。」

「え。」

「名前。江森心。」


竜くん。


僕いま泣きそうに嬉しいんですけど。

⏰:08/12/12 10:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#139 [ゆーちん]
「名前呼んでよ。」

「…やだ。」

「何でさぁ。」

「あんたはあんただもん。呼び慣れた。」

「えぇー、そんなぁ。」


大輝くん。


嬉しいと悲しいが混ざった涙を流したいんですけど、いいですか?

⏰:08/12/12 10:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#140 [ゆーちん]
しばらくすると凜は話し始めた。


「私さぁ、前の街ではこんな風にのんびり過ごした事なかった。」

「のんびり?」

「うん。毎日毎日携帯触って誰かとアポ取って、用もないのに外に出掛けてさ。」

「あ…さっき言ってた携帯依存症とかって、その事?」

⏰:08/12/12 10:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#141 [ゆーちん]
月明かりが凜を照らしていた。


こんな明るい夜は滅多にないよ。


「うん。寝ても覚めても携帯触ってた。誰かと連絡取ってないと不安だったの。でもさ、それって結構疲れんの。そんな時ちょうどこの島に来てさ、かなり驚いた。」

⏰:08/12/12 11:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#142 [ゆーちん]
「何が?」

「みんな時間にルーズで、おじいちゃんもおばあちゃんも優しくて、島のみんなが笑ってる。私、前は隣の人に挨拶した事もなかったのに…この島の人はみんな家族みたいに優しくしてくれる。」


俺はこの島のことしか知らない。

⏰:08/12/12 11:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#143 [ゆーちん]
都会でどんな近所付き合いをしてるかなんか、もっと知らない。


最近、物騒な世の中だってよくニュースで見るけど、同じ日本だとは思えない。


殺人とか誘拐とか、この島には無縁だ。


「友達と離れるのは寂しかったけど、そんなの最初だけ。」

⏰:08/12/12 11:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#144 [ゆーちん]
「そうなの?」

「みんな上辺だけの付き合いしかしないの。でも、この島の人は違った。毎日メールや電話なんかしなくても、次の日も普通に接してくれる。あんたや香奈がいい例だよ。」


確かにね。

⏰:08/12/12 11:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#145 [ゆーちん]
歩いて会える距離にいるのにメールや電話なんかしなくてもって感じだし。


「美帆だって千夏だって澪だって…みんなこの島の人は優しい。私ってこんな性格だから嫌われる事もあるの。だけどここは違った。イジメもないし、はぶられる事もない。香奈はちょっと浮いてて都会人みたいな感じだったけど、でも優しい。」

⏰:08/12/12 11:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#146 [ゆーちん]
凜が自分の事をたくさん話してくれるのは嬉しかった。


どんな内容だろうが、凜と話したり一緒にいれるだけでココロが落ち着く。


「上辺だけの付き合いって寂しそうだね。俺そんなのわかんないけど。」

「羨ましい奴ね。あんな寂しいの体験してないなんて。」

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#147 [ゆーちん]
「だから俺も凜ちゃんと上辺だけだなんて嫌だからね。」

「私も。もう上辺だけの彼氏なんかいらない。ヤる時だけ優しくしてくれるのはもう嫌。」


そう言った凜の声は寂しさに満ち溢れていた。


凜の顔が見れず、ずっと海を見ていた。

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#148 [ゆーちん]
「凜ちゃん。」

「ん?」

「その話から判断すると、俺とは上辺だけで付き合ってないんだよね?」

「そうだよ。チャラチャラした奴だけど今までの上辺だけしか付き合えないような男とは違うってわかるから。」

「え、何でわかるの?」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#149 [ゆーちん]
「…名前。」

「名前?」

「私、異性から凜ちゃんなんて呼ばれた事ないの。名前何?って聞かれて、凜って答えると、もう呼び捨て。凜、凜って。でも凜ちゃんって呼んでくれてるじゃん。もし私の事、呼び捨てしてくるんじゃ私はあなたの彼女じゃなかったよ。」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#150 [ゆーちん]
何気なく呼んでいた凜の名前。


呼び捨てしない理由は、馴れ馴れしいのは失礼だと思ったから。


都会の人はみんな馴れ馴れしいのかな。


少なくとも俺は初対面の人を呼び捨てになんかするような環境で育ってない。

⏰:08/12/12 11:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#151 [ゆーちん]
都会をバカにしてるんじゃないよ?


でも、凜はその事を気にしていたんだと言う事を知って、お互い名前にコンプレックスがあるんだと思った。


まぁ俺のコンプレックスなんてちっぽけだろうけど。


名前を呼ばれたいって言うね。

⏰:08/12/12 11:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#152 [ゆーちん]
「転校初日に凜ちゃん凜ちゃんって話し掛けて来て、2日目には告白。見た目も行動も軽いけど、中身は違うんだって思った。この島のみんなは凜ちゃんって呼んでくれるのかもしれないけど、この人を信じてみようと思った。だから彼女になった。」

「そんな事思ってくれてたんだぁ。なんか照れるんだけど。」

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#153 [ゆーちん]
「信じてよかった。今までの男とは違うよ…心。」


…言った?


咳ばらいじゃないよな。


犬の鳴き声でもないよな。


今、凜ちゃんが『心。』って言ったよな!

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#154 [ゆーちん]
「名前‥」


慌てて振り向くと、凜は小さく笑ってた。


「わ、笑ってる!」

「え?」

「凜ちゃんの笑った顔、初めて見たよ!」


今日は良いことだらけで本当に泣きそう。


手を繋ぎ、名前を呼ばれ、笑顔も見せてくれた。

⏰:08/12/12 11:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#155 [ゆーちん]
「呼び捨ては嫌?」

「ううん!俺は名前呼んでくれるなら何でもいい。」

「そう。私ももういいよ。心は信用できるってわかったから、凜って呼んでも。」

「信用?俺、凜ちゃんに信用されてるの?マジ?」

「…そのテンションの高さはまだ理解できないけど。」

⏰:08/12/12 11:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#156 [ゆーちん]
何にせよ、俺は凜に信用されてるという事実にマジで泣けてきた。


「やべぇ。泣いてもいい?」

「は?ダメに決まってんじゃん。バカじゃないの。」


言う言葉はキツいけど、それでもいい。


凜にまた一歩近づけた。

⏰:08/12/12 11:14 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#157 [ゆーちん]
「んもー!凜ちゃんやっぱり冷たい!俺の事まだ好きじゃないのぉ?」


子供みたいに半ベソかきながら海を見ていた。


凜を見ると絶対泣いてしまいそうだから。


鼻の奥が痛い。


「心。」


やっぱり、名前呼ばれるのっていいですね。


「はい?」


涙をこらえながら横を向いた。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#158 [ゆーちん]
…ら!


俺の目の前に凜の顔があった。


頭真っ白。


何?


これ、何?


すぐに凜は離れていき、さっきのような小さな笑顔を浮かべた。


「私は好きな人にしかキスはしないよ。」


嬉し涙を流しました。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#159 [ゆーちん]
「凜ちゃ…ん…」

「あー、もぉウザイ。男のくせに泣くなっつーの。」

「だって…今…キス…」

「まさかキスも初めてだった?」

「ごめん…キスは…初めてじゃないです…」

「あっそ。正直者だね。」

「俺…目ぇ開けたまんま…」

⏰:08/12/12 11:17 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#160 [ゆーちん]
泣きながら凜を見続けていると、凜が滲んだ。


涙を拭く。


やっぱり少し凜は滲んでいた。


「困ったくんだね。」

「ごめんなさい。」

「まぁ、童貞だから仕方ないか…」


凜はゆっくり顔を近づけながら目を閉じて行く。


俺も目を閉じた。

⏰:08/12/12 11:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#161 [ゆーちん]
2度目のキスは幸せすぎて涙が止まった。


普通、女の子が泣いて男の子がリードするもんだよな。


見事に逆。


でもいいや。


幸せなんだから。


もうどっちがどっちでもいい。


海だけが俺らの真逆キスシーンを見ている、そんな夜だった。

⏰:08/12/12 11:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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