冷たい彼女
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#5 [ゆーちん]
「凜ちゃんが彼女だったらいいのに。」
「…。」
俺の目を見てもくれない。
ちっせぇ顔。
でっけぇ目。
こんな美人になら騙されてもいいぞ、俺。
:08/12/11 15:55 :SH901iC :uyR.lwfs
#6 [ゆーちん]
「ねぇ、俺の彼女になってよ。」
どうせ無視だろ?
一応告白なんだけどな。
「いいよ。」
…。
あれ?
今、何て言いました?
:08/12/11 15:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#7 [ゆーちん]
「えっ…本当に?」
「うん。本当。」
大きな目が俺に向けられた。
やっべぇ!
照れる!
嬉しい!
幸せ!
:08/12/11 15:56 :SH901iC :uyR.lwfs
#8 [ゆーちん]
椅子から立ち上がり、俺の近くにいた向井竜に抱き着いた。
「向井くーん!僕、やったよ!凜ちゃんの彼氏だよー!」
「あぁ、はいはい。聞いてたから知ってる。離れて。うぜぇ。」
竜の隣にいた中橋大輝が凜に言った。
「杉浦さーん。本当にいいの?心(シン)の奴、真に受けてるよ。」
:08/12/11 15:58 :SH901iC :uyR.lwfs
#9 [ゆーちん]
「…いいよ。」
「心のどこがいいの?」
「…別に。誰でもいい。知らない土地で一人ぼっちは寂しいもん。」
凜のその一言で俺のテンションは一気に下がった。
「元気出して。」
竜に励まされてもダメージでかいんですけど。
:08/12/11 15:59 :SH901iC :uyR.lwfs
#10 [ゆーちん]
この島は人口数百人の小さな島。
老若男女、全員の顔と名前を把握している。
小さな島だからこそ家族のような温かい付き合いだけど、小さな島だからこそプライバシーも糞もない筒抜けた島。
そんな島に生まれて15年。
同級生はたったの30人。
:08/12/11 15:59 :SH901iC :uyR.lwfs
#11 [ゆーちん]
小学校からクラス変えなんか無し。
喧嘩したり仲直りしたり、男女共仲良しこよしだった。
恋愛?
あー、竜と大輝は本島に彼女がいるみたい。
他にも本島に恋人か好きな人がいるって奴が多いな。
同じクラスで付き合うとか滅多にない。
:08/12/11 16:00 :SH901iC :uyR.lwfs
#12 [ゆーちん]
俺はなんだかんだ言って、この島が好きだった。
だからこの島を好きになれない奴は、これから付き合っていくのは不可能だって思ってる。
島を理由にフラれたからって未練はなかった。
そんな島に、生まれて初めての転校生が来た。
:08/12/11 16:01 :SH901iC :uyR.lwfs
#13 [ゆーちん]
島を出て行く転校生は何人かいたけど、島に来た転校生は初めて。
女って聞いてテンション上がった。
教室に入って来た時、かなりの美人でさらにテンション上がった。
で、凜ちゃんがこの中学校に来て2日目の今日。
凜ちゃんは僕の彼女になりました。
:08/12/11 16:01 :SH901iC :uyR.lwfs
#14 [ゆーちん]
「凜ちゃーん。そんな理由で俺と付き合うの〜?」
「他に何か理由いる?」
こうだもんなぁ…。
すっげぇ冷たい。
俺を好きじゃないのに付き合ってくれるんですか?
いや、嬉しいんですけど…理由が理由なだけでちょっと悲しい。
:08/12/11 16:02 :SH901iC :uyR.lwfs
#15 [ゆーちん]
まぁ俺もただ凜ちゃんが美人だから思い切って告白しただけで、中身を好きになった訳じゃない。
おあいこ様かな?
「凜ちゃんと交流を深める為に今日の放課後、海に行こう!」
「…やだ。」
「何でさぁ!」
「焼ける。」
:08/12/11 16:03 :SH901iC :uyR.lwfs
#16 [ゆーちん]
都会から来ただけあって凜には色気があった。
真っ白い肌に、キラキラと光るまぶた。
唇なんかプルプルしてて、本島の年上のお姉ちゃんって感じ。
「じゃあ日焼け止め塗ってけ!」
謎めいた瞳は、あまり俺に向けられない。
:08/12/11 16:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#17 [ゆーちん]
そういえば凜ちゃんの笑った顔、知らないな。
「無理。やっぱりあんたみたいなガキと付き合うんじゃなかった。」
「えーっ!そんな事言わないでよ。凜ちゃんは俺の彼女なんだから、そんな寂しい事言わないでよ!」
:08/12/11 16:04 :SH901iC :uyR.lwfs
#18 [ゆーちん]
凜は椅子から立ち上がりもしてくれない。
それに比べて俺は、凜の近くを動いてばかり。
確かにガキかもしんねぇ。
でも俺の性格上、じっとしてらんねーんだよ。
「あんたってさ、童貞でしょ?」
凜さん。
ここ教室。
みんな俺らの会話聞いてるよ。
:08/12/11 16:05 :SH901iC :uyR.lwfs
#19 [ゆーちん]
俺はそういう話、嫌いじゃないけど凜ちゃん女の子じゃん。
うちのクラスの女子、そういう話に敏感な年頃なんだよ。
みんな引いてるよ。
友達できなくなるよ凜ちゃん!
「凜ちゃん、そういう話はみんながいる前でしない方が…」
:08/12/11 16:06 :SH901iC :uyR.lwfs
#20 [ゆーちん]
「何で?あんただってみんなが聞いてるのに私に告ってきたじゃん。」
「告白とそういう話は別なんじゃないかな〜なんて。」
「一緒だよ。付き合ったらキスもするしSEXもする。それくらいもう15なんだからわかるでしょ?」
教室は凜の声だけが響いた。
:08/12/11 16:07 :SH901iC :uyR.lwfs
#21 [ゆーちん]
さすがの俺も言い返す言葉がない。
だって…
「ごもっとも。」
竜も大輝も呆気に取られていた。
男同士では惜しみなく話す下ネタも、女子の前ではしないもん。
教室で【SEX】なんて言葉が響くなんて思ってもなかった。
:08/12/11 16:07 :SH901iC :uyR.lwfs
#22 [ゆーちん]
チャイムが鳴り、なんとか茶を濁した感じだった。
授業中も凜ばかり気になって、数学どころではない。
僕、厄介な彼女をゲットしちゃった感じですか?
「心。」
後ろから声をかけてきたのは菊地美帆。
「ん?」
「マジで付き合ったの?」
:08/12/11 16:08 :SH901iC :uyR.lwfs
#23 [ゆーちん]
「美帆はどう思う?あの返事はOKだったんだよな?」
「んー…たぶん。」
「微妙だよな。」
「ま、難しい人だけど彼女ゲットおめでと。」
「ありがちゅ。」
「彼女できたんだからそのチャラいキャラ辞めた方がいいよ。」
「…はい。」
:08/12/11 16:09 :SH901iC :uyR.lwfs
#24 [ゆーちん]
放課後になり、俺は凜の席に駆け寄った。
「りーんちゃんっ!」
「…。」
俺をチラッと見てすぐに視線を反らした凜。
「一緒に帰ろ!」
色々へこむ事だらけだけど俺の唯一の武器である笑顔を絶やさずに、凜に話し掛けた。
:08/12/11 16:10 :SH901iC :uyR.lwfs
#25 [ゆーちん]
「…何で?」
キープ・ザ・笑顔!
「俺たち付き合ってんじゃん!」
「だからって何で一緒に帰らないといけないの?」
心くん、笑顔だよ!
「凜ちゃんと一緒に帰りたいもん!」
「…理由になってないよ。」
なんだか泣きそうだよ。
:08/12/11 16:11 :SH901iC :uyR.lwfs
#26 [ゆーちん]
「心、帰るぞ。」
竜が呼びに来た。
「俺は今日、凜ちゃんと帰る!」
「あ、そう。じゃあな。」
竜は眠そうに教室から出て行った。
「何勝手に決めてんのよ。」
「一緒に帰ってくれるって言うまで帰さないからな!」
:08/12/11 16:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#27 [ゆーちん]
「…うざ。これだから童貞はやなんだよ。」
笑顔、消失。
俺、童貞だなんて言った?
言ってないよね。
いや、童貞だけどね。
元カノと初めてやろうとした時、緊張して勃たなかったヘタレだよ。
童貞で悪いかよ。
:08/12/11 16:12 :SH901iC :uyR.lwfs
#28 [ゆーちん]
凜は俺の通せん坊を抜けて教室から出て行った。
こうなったらストーカーだな。
俺は下校する凜の後ろを着いて歩いた。
島には信号がない。
歩道もなければ車道もない。
抜け道や近道、たくさん知っている。
:08/12/11 16:13 :SH901iC :uyR.lwfs
#29 [ゆーちん]
だけどそんなの知らない島2日目の凜は、慣れない道を不思議そうに歩いていた。
短いスカートから伸びる細い足とサラサラと揺れる長い髪に俺の胸は騒いでいた。
「凜ちゃん。」
「…。」
「次の道を左だよ。そうすると近道だから。」
:08/12/11 16:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#30 [ゆーちん]
凜は都会に住む両親が仕事で海外に行くので、この島に住むじいちゃんばあちゃんの家に預けられた。
海外について行くと言った凜だが、両親はついてくるなと言い、日本に残された。
渋々この島に来て、これから生活するんだ。
って、全部杉浦のじいちゃんとばあちゃんに聞いたんだけど。
:08/12/11 16:14 :SH901iC :uyR.lwfs
#31 [ゆーちん]
孫が来るって嬉しそうに話してた翌日に、こんな美人が孫だったなんて…夢にも思わなかった。
「左?」
凜は足を止めた。
「うん。左だよ。そうすると早く家に着くから。」
「何で私の家知ってんの。」
:08/12/11 16:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#32 [ゆーちん]
凜は不思議がっていたけど俺らにすれば、1+1=何ですか?って聞かれているようなもんだった。
「ここの島の人は誰がどこの家に住んでるかなんてみんな知ってるよ。特に杉浦なんて1軒しかないからすぐにわかる。」
「…あっそ。」
凜は左に曲がった。
:08/12/11 16:15 :SH901iC :uyR.lwfs
#33 [ゆーちん]
蝉が鳴く初夏の日差しを避けながら、影を選んで歩く凜が可愛くて仕方ない。
「次、右ね。そうすると家の前だから。」
凜は何も言わず、右に曲がった。
杉浦家が見える。
するとまた足を止めて、振り返った。
「ありがと、ストーカーさん。」
:08/12/11 16:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#34 [ゆーちん]
冷たい視線だけを送り、凜は家の中に入って行った。
「凜ちゃーん、バイバイ!また明日ね。」
俺の声に振り向きもしない。
:08/12/11 16:16 :SH901iC :uyR.lwfs
#35 [ゆーちん]
そんな俺の彼女。
今までで1番厄介な彼女。
口が少し悪いのかも。
でも根はいい子だと思う。
早く打ち解けて欲しいな。
そんな事を考えながら、自分の家へと帰って行った。
:08/12/11 16:17 :SH901iC :uyR.lwfs
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