冷たい彼女
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#101 [ゆーちん]
香奈は、たぶん今んところ島1番の派手な奴。


前まで1番は、香奈の姉ちゃんだった。


だけど姉ちゃんが島を出て言ってから、たぶん香奈が1番。


派手だし、男みたいな性格だし、美人だけど怖いし、俺の事いっつもバカにするし…嫌いじゃないけど好きでもない。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#102 [ゆーちん]
凜が来るまで、香奈は一匹オオカミみたいな奴だった。


そりゃ女だから友達はいるんだろうけど、本島の奴らとの方が仲が良いらしい。


まぁ、強いて言うならこのクラスで仲良くしてたのは美帆かな。


あいつは誰とでも仲良いし。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#103 [ゆーちん]
香奈は4つ上の大学生の姉ちゃんとすげぇ仲が良い。


だから姉ちゃんの同級生とも仲が良い。


つーことは、恋愛も年上とする。


姉ちゃんの男友達と付き合ってるみたいで、どんどん大人びてきていた。


そして先月、凜がこの学校にやって来た。

⏰:08/12/12 08:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#104 [ゆーちん]
化粧してる子なんて香奈以外いないと思っていたら、クリクリお目めで登場した凜。


香奈と凜が仲良くなるのに時間はかからなかった。


先週の凜の用ってのも、香奈と本島に行ってたかららしい。


まぁ、友達も大事だから仕方ないよな。


でもちょっとジェラシー。

⏰:08/12/12 08:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#105 [ゆーちん]
一匹オオカミと美人転校生が一緒にいることで、かなり目立っていた。


俺の存在どんどん薄れてる気がして、香奈にヤキモチ妬いちゃってるんです、僕。


「とにかく!明日8時に行くからね!」

「はいはい。」


呆れながら返事をした凜は教室から出て行った。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#106 [ゆーちん]
「心。凜が嫌がる事したら、二度と太陽拝めなくするからね。」


香奈はそう言葉を残し、凜を追い掛けて教室から出て行った。


…つーか、普通に怖いよ。


香奈が言うと冗談に聞こえない!


俺はこの太陽が好きなので、凜ちゃんに嫌がる事はしません。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#107 [ゆーちん]
そして翌日。


昼まで寝て、午後からばあちゃんの畑仕事手伝った。


普段手伝いなんかしないけど、今日は気分がいいから。


それにばあちゃん孝行もしないとだし?


あともう一つ、企んでる事があるからさ。


「珍しい事もあるんだね。」

「何がぁ?」

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#108 [ゆーちん]
「心が畑を手伝ってくれるなんて明日は雨かもしれないな。」

「んなバカな。」


夕方、どろどろに汚れた体をシャワーで流した。


そう、これが企んでる事。


汗でもかかなきゃシャワーなんかさせてもらえない。


母ちゃんケチだから。

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#109 [ゆーちん]
凜ちゃんに会う時ぐらい、いい匂いで会いたいじゃん!


男心って奴だよ。


汗をかいた事を理由にシャワーをして綺麗になった俺。


ちょっとお気に入りの服を着て、夕飯を済ませた。


「心。」

「んあ?」


母ちゃんが冷ややかな目で息子の俺を見る。

⏰:08/12/12 08:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#110 [ゆーちん]
「何で、パジャマじゃなくて普通の服着てんのさ。」

「ちょっと出掛ける〜。」


すると父ちゃんがビールを飲みながら笑った。


「色気づきやがって!バカ息子がぁ!」


それを聞いた母ちゃんの目の輝きは一気に変わった。


「え、何、デート?こんな時間から?どういう事!」

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#111 [ゆーちん]
父ちゃんのバカ。


毎回毎回、息子の色恋沙汰になるとテンションの上がる母親。


いい加減げっそりだわ。


また騒がれるのも面倒だから黙ってたのに、さすが父ちゃん。


鋭いぞ。

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#112 [ゆーちん]
「違います。深入りしてこないで下さい。」

「何言ってんの!どんな子?何でそんな楽しそうな話隠してたの!もっと聞かせてよぉ。」


うぜぇ。


母ちゃんのこの性格と俺の性格はよく似てる、なんて言われるけど…どこが似てるんだか。


いつまでたってもギャーギャー喚くなんて…ガキか。

⏰:08/12/12 08:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#113 [ゆーちん]
ばあちゃんもじいちゃんもニヤニヤと俺を見る。


そんなに孫の恋愛が気になるのか?


「なるほどね。それで今日は畑仕事手伝ってくれたんだぁ。」


と、ばあちゃん。


「単純だな。」


と、じいちゃん。


みんなしてバカにしやがって。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#114 [ゆーちん]
15歳の旬の男が彼女の1人もいないでどうすんだっつーの。


「心。」

「何だよ。」


父ちゃん、まだからかう気か?


「避妊はちゃんとしろよ〜。」


…酔っ払いが。


さっさと寝ろ。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#115 [ゆーちん]
うちの家族はどうもお気楽な感じで、今みたいな下ネタは日常茶飯事だった。


「そうよ、心。あなたまだ中3なんだし、子供なんかできたとか言って泣き付いて来ないでね。」


母ちゃん、そりゃないよ。


「じいちゃんは、ひ孫大歓迎だからな!」

「ばあちゃんも大歓迎。」

⏰:08/12/12 08:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#116 [ゆーちん]
無茶苦茶だ。


呆れて物も言えない。


つーか、4人共さぁ…俺まだ童貞だぞ?


子供だのひ孫だの、いつの話になるやら。


「ごちそうさまいってきます。」


2つの単語を息継ぎせずに言い終えると俺は家から飛び出した。

⏰:08/12/12 08:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#117 [ゆーちん]
あー、財布忘れた。


慌てて出てきたから携帯だけしか持って来なかった。


まぁ、いっか。


この島でいると金を使う事なんか滅多にない。


自販機も少ないし。


財布は邪魔な荷物として扱われる事が多かった。


ぶっちゃけ携帯もあんまり使わないんだけど…時計変わりだな。

⏰:08/12/12 10:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#118 [ゆーちん]
…つーか慌てて出て来て正解じゃん。


また遅刻するところだった。


少し傷んで茶色くなりかけていた俺の髪が、夜風にもて遊ばれる。


自転車のペダルも自然と軽い気がした。


早く凜を乗せて、人の重みを感じたい。


杉浦家についたのは5分後だった。

⏰:08/12/12 10:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#119 [ゆーちん]
時間ちょうど。


完璧。


「こんばんにゃ〜。凜ちゃーん!」


居間から杉浦のばあちゃんが出てきた。


「はいはい、どこの猫かと思ったら江森んちの猫かい。」

「そ、僕、江森心くん!」

「凜ちゃんならもうすぐ来るから、上がって待つかい?」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#120 [ゆーちん]
今まで杉浦家なんて数え切れないくらいお邪魔した。


だけど凜が来てから特別な家に思えて、なかなか上がれないんだ。


「ううん、ここにいるよ!」

「そうかい。もうちょっと待っててやって。」

「おう!」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#121 [ゆーちん]
玄関の置物を見ながら待っていると3分もしないうちに凜が現れた。


「凜ちゃん!こんばんは〜。」

「あんたは時間に極端だね。」


俺に目もくれず、凜は『いってきます。』と居間にいるじいちゃんばあちゃんに叫んでから、サンダルを履いて外に出た。

⏰:08/12/12 10:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#122 [ゆーちん]
俺も杉浦のじいちゃんばあちゃんに『いってきます。』を言ってから外に出た。


「やっぱ夜風は気持ちいいね〜!」


今日はいつもみたいにお洒落していない。


キャミソールにスウェットの短パン。


裸足でサンダル。

⏰:08/12/12 10:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#123 [春菜]
初めて読みました。

面白いです。

頑張ってください

⏰:08/12/12 10:42 📱:PC 🆔:fqhnNpXI


#124 [ゆーちん]
髪は巻いたりせず真っ直ぐのまま。


アクセサリーもなし。


化粧だけはいつも通りだったけど。


「凜ちゃん、海行こう!」

「…いいよ。」


凜は笑わない。


だけど声で気分がわかるんだ。


今日の声は機嫌がいい。


怒ってもないし、悲しんでもない。


普通の状態。

⏰:08/12/12 10:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#125 [ゆーちん]
慣れた動きで自転車の後ろに乗り、凜は言った。


「あ、携帯忘れた。」

「取って来る?」

「…いいや。別にいらない。この島に来てから携帯依存症治ったし。」


携帯依存症?


何の事かわからないが、とりあえず俺は出発した。

⏰:08/12/12 10:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#126 [ゆーちん]
海は、誰もいなかった。


誰かいたとしても知り合いだから、それはそれで面倒だし恥ずかしい。


貸し切りでよかった。


「あそこ座ろう!」

「…うん。」


俺らがいつも溜まる岩場を指さした。


砂浜に足を取られながらも、今日は俺の後ろを一生懸命ついて来てくれる凜。

⏰:08/12/12 10:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#127 [ゆーちん]
最初は一目惚れだったけど、俺どんどん中身も好きになってる気がする。


俺に冷たい事言っといて、こうやって付き合ってくれる。


根はいい子なのに、どうして冷たい態度ばかりなんだろう。


そんな事を気にしていると後ろから声がした。

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#128 [ゆーちん]
「きゃっ!」


慌てて振り返ると凜は転んでいた。


「うぉ!大丈夫?」


サンダルのヒールが砂のせいで埋もれてしまい、バランスが取れずに転んでしまったようだ。


俺は慌てて手を差し延べると、凜はガッと手を掴み、勢いよく立ち上がった。


「…どーも。」

「あ!」

⏰:08/12/12 10:47 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#129 [ゆーちん]
「何よ、うるさいな。」

「初めて手ぇ繋いだね!」


俺は繋いだ手を顔の前まで上げた。


凜と俺の手が繋がれている。


「…。」


凜は少し難しそうな顔をしていた。


「また転ぶと危ないから、このまま岩場まで行こ〜?」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#130 [ゆーちん]
凜は何も言わなかったので、手を繋いだまま歩いた。


凜の手は小さかった。


今まで数少ないながら繋いだ女子の手の中でも、1番小さかった。


そんな小ささを、また好きになってしまう。


この波音が妙にロマンチックで、改めて波打つ海に感謝した。


「凜ちゃん。」

「何。」

⏰:08/12/12 10:48 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#131 [ゆーちん]
「あっちの岩場にしない?」


遠くの方を指さした俺。


「何で。」

「もっと繋いでたいもん。」


そう言うと、凜はパッと手を離して、目の前の岩場に座った。


「香奈に殺されても知らないよ?」

⏰:08/12/12 10:49 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#132 [ゆーちん]
シラッと言ったその言葉。


昨日の香奈の怖い顔を思い出してしまった。


「ごめん。明日も太陽が見たいから、ここでいいです。充分です。最高です。」

「香奈の名前聞いただけで焦りすぎでしょ。肝っ玉の小さい男は嫌いだからね。」


凜の隣に座ると、海が一望できた。

⏰:08/12/12 10:50 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#133 [ゆーちん]
滅多に夜の海なんか来ないから、いつも遊んでる場所とは違う感じがした。


「今日は爆発頭じゃないんだね。」

「爆発頭?」

「うん。学校には毎日アフロみたいに爆発頭で来てるじゃん。」


凜ちゃん、そりゃないよ。


あれは爆発頭でもなけりゃアフロでもない。

⏰:08/12/12 10:51 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#134 [ゆーちん]
「あれは、一応ワックスでセットしてんだけどぉ。」

「ふーん。そうだったの。」


わかってたくせに。


凜は俺を悲しませるのが得意みたいだ。


「シャワー浴びたから、もうワックスするの面倒でそのままにしたの。どっちのが似合う?」

⏰:08/12/12 10:52 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#135 [ゆーちん]
俺は母ちゃん譲りの猫っ毛。


クセが付かないから毎朝ワックスで自分の髪と格闘している。


「どっちでも。あんたの頭なんか興味ない。」


ザブーンっと波音だけが虚しく響いた。


「ギャップにドキッとしたりとか‥」

「してないから安心して。」

⏰:08/12/12 10:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#136 [ゆーちん]
最近、凜ちゃんに冷たくされるのにも慣れて来たかも。


でもさ、俺も男じゃん。


1つだけ慣れないっつーか、慣れちゃいけないとこがあるんだよね。


「あんたさぁ‥」

「凜ちゃん。」

「えっ、何?今から私が話そうとしてたのに。」

「凜ちゃん、俺の名前知ってる?」

⏰:08/12/12 10:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#137 [ゆーちん]
凜は今まで一度も俺の名前を呼んだ事がない。


最初は気にならなかった。


でも『あんた。』って言われるたびに、溝は縮まらないなって寂しかった。


「何、いきなり。」

「俺の名前知らないなら教えるから、ちゃんと名前で呼んでよ。」

⏰:08/12/12 10:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#138 [ゆーちん]
凜の大きな目はじっと俺を見ていた。


「もう、あんたって呼ばれんの嫌だ。」

「…。」


強い瞳。


俺も強い目で凜を見た。


「…知ってるよ。」

「え。」

「名前。江森心。」


竜くん。


僕いま泣きそうに嬉しいんですけど。

⏰:08/12/12 10:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#139 [ゆーちん]
「名前呼んでよ。」

「…やだ。」

「何でさぁ。」

「あんたはあんただもん。呼び慣れた。」

「えぇー、そんなぁ。」


大輝くん。


嬉しいと悲しいが混ざった涙を流したいんですけど、いいですか?

⏰:08/12/12 10:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#140 [ゆーちん]
しばらくすると凜は話し始めた。


「私さぁ、前の街ではこんな風にのんびり過ごした事なかった。」

「のんびり?」

「うん。毎日毎日携帯触って誰かとアポ取って、用もないのに外に出掛けてさ。」

「あ…さっき言ってた携帯依存症とかって、その事?」

⏰:08/12/12 10:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#141 [ゆーちん]
月明かりが凜を照らしていた。


こんな明るい夜は滅多にないよ。


「うん。寝ても覚めても携帯触ってた。誰かと連絡取ってないと不安だったの。でもさ、それって結構疲れんの。そんな時ちょうどこの島に来てさ、かなり驚いた。」

⏰:08/12/12 11:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#142 [ゆーちん]
「何が?」

「みんな時間にルーズで、おじいちゃんもおばあちゃんも優しくて、島のみんなが笑ってる。私、前は隣の人に挨拶した事もなかったのに…この島の人はみんな家族みたいに優しくしてくれる。」


俺はこの島のことしか知らない。

⏰:08/12/12 11:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#143 [ゆーちん]
都会でどんな近所付き合いをしてるかなんか、もっと知らない。


最近、物騒な世の中だってよくニュースで見るけど、同じ日本だとは思えない。


殺人とか誘拐とか、この島には無縁だ。


「友達と離れるのは寂しかったけど、そんなの最初だけ。」

⏰:08/12/12 11:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#144 [ゆーちん]
「そうなの?」

「みんな上辺だけの付き合いしかしないの。でも、この島の人は違った。毎日メールや電話なんかしなくても、次の日も普通に接してくれる。あんたや香奈がいい例だよ。」


確かにね。

⏰:08/12/12 11:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#145 [ゆーちん]
歩いて会える距離にいるのにメールや電話なんかしなくてもって感じだし。


「美帆だって千夏だって澪だって…みんなこの島の人は優しい。私ってこんな性格だから嫌われる事もあるの。だけどここは違った。イジメもないし、はぶられる事もない。香奈はちょっと浮いてて都会人みたいな感じだったけど、でも優しい。」

⏰:08/12/12 11:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#146 [ゆーちん]
凜が自分の事をたくさん話してくれるのは嬉しかった。


どんな内容だろうが、凜と話したり一緒にいれるだけでココロが落ち着く。


「上辺だけの付き合いって寂しそうだね。俺そんなのわかんないけど。」

「羨ましい奴ね。あんな寂しいの体験してないなんて。」

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#147 [ゆーちん]
「だから俺も凜ちゃんと上辺だけだなんて嫌だからね。」

「私も。もう上辺だけの彼氏なんかいらない。ヤる時だけ優しくしてくれるのはもう嫌。」


そう言った凜の声は寂しさに満ち溢れていた。


凜の顔が見れず、ずっと海を見ていた。

⏰:08/12/12 11:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#148 [ゆーちん]
「凜ちゃん。」

「ん?」

「その話から判断すると、俺とは上辺だけで付き合ってないんだよね?」

「そうだよ。チャラチャラした奴だけど今までの上辺だけしか付き合えないような男とは違うってわかるから。」

「え、何でわかるの?」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#149 [ゆーちん]
「…名前。」

「名前?」

「私、異性から凜ちゃんなんて呼ばれた事ないの。名前何?って聞かれて、凜って答えると、もう呼び捨て。凜、凜って。でも凜ちゃんって呼んでくれてるじゃん。もし私の事、呼び捨てしてくるんじゃ私はあなたの彼女じゃなかったよ。」

⏰:08/12/12 11:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#150 [ゆーちん]
何気なく呼んでいた凜の名前。


呼び捨てしない理由は、馴れ馴れしいのは失礼だと思ったから。


都会の人はみんな馴れ馴れしいのかな。


少なくとも俺は初対面の人を呼び捨てになんかするような環境で育ってない。

⏰:08/12/12 11:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#151 [ゆーちん]
都会をバカにしてるんじゃないよ?


でも、凜はその事を気にしていたんだと言う事を知って、お互い名前にコンプレックスがあるんだと思った。


まぁ俺のコンプレックスなんてちっぽけだろうけど。


名前を呼ばれたいって言うね。

⏰:08/12/12 11:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#152 [ゆーちん]
「転校初日に凜ちゃん凜ちゃんって話し掛けて来て、2日目には告白。見た目も行動も軽いけど、中身は違うんだって思った。この島のみんなは凜ちゃんって呼んでくれるのかもしれないけど、この人を信じてみようと思った。だから彼女になった。」

「そんな事思ってくれてたんだぁ。なんか照れるんだけど。」

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#153 [ゆーちん]
「信じてよかった。今までの男とは違うよ…心。」


…言った?


咳ばらいじゃないよな。


犬の鳴き声でもないよな。


今、凜ちゃんが『心。』って言ったよな!

⏰:08/12/12 11:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#154 [ゆーちん]
「名前‥」


慌てて振り向くと、凜は小さく笑ってた。


「わ、笑ってる!」

「え?」

「凜ちゃんの笑った顔、初めて見たよ!」


今日は良いことだらけで本当に泣きそう。


手を繋ぎ、名前を呼ばれ、笑顔も見せてくれた。

⏰:08/12/12 11:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#155 [ゆーちん]
「呼び捨ては嫌?」

「ううん!俺は名前呼んでくれるなら何でもいい。」

「そう。私ももういいよ。心は信用できるってわかったから、凜って呼んでも。」

「信用?俺、凜ちゃんに信用されてるの?マジ?」

「…そのテンションの高さはまだ理解できないけど。」

⏰:08/12/12 11:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#156 [ゆーちん]
何にせよ、俺は凜に信用されてるという事実にマジで泣けてきた。


「やべぇ。泣いてもいい?」

「は?ダメに決まってんじゃん。バカじゃないの。」


言う言葉はキツいけど、それでもいい。


凜にまた一歩近づけた。

⏰:08/12/12 11:14 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#157 [ゆーちん]
「んもー!凜ちゃんやっぱり冷たい!俺の事まだ好きじゃないのぉ?」


子供みたいに半ベソかきながら海を見ていた。


凜を見ると絶対泣いてしまいそうだから。


鼻の奥が痛い。


「心。」


やっぱり、名前呼ばれるのっていいですね。


「はい?」


涙をこらえながら横を向いた。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#158 [ゆーちん]
…ら!


俺の目の前に凜の顔があった。


頭真っ白。


何?


これ、何?


すぐに凜は離れていき、さっきのような小さな笑顔を浮かべた。


「私は好きな人にしかキスはしないよ。」


嬉し涙を流しました。

⏰:08/12/12 11:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#159 [ゆーちん]
「凜ちゃ…ん…」

「あー、もぉウザイ。男のくせに泣くなっつーの。」

「だって…今…キス…」

「まさかキスも初めてだった?」

「ごめん…キスは…初めてじゃないです…」

「あっそ。正直者だね。」

「俺…目ぇ開けたまんま…」

⏰:08/12/12 11:17 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#160 [ゆーちん]
泣きながら凜を見続けていると、凜が滲んだ。


涙を拭く。


やっぱり少し凜は滲んでいた。


「困ったくんだね。」

「ごめんなさい。」

「まぁ、童貞だから仕方ないか…」


凜はゆっくり顔を近づけながら目を閉じて行く。


俺も目を閉じた。

⏰:08/12/12 11:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#161 [ゆーちん]
2度目のキスは幸せすぎて涙が止まった。


普通、女の子が泣いて男の子がリードするもんだよな。


見事に逆。


でもいいや。


幸せなんだから。


もうどっちがどっちでもいい。


海だけが俺らの真逆キスシーンを見ている、そんな夜だった。

⏰:08/12/12 11:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#162 [ゆーちん]
○●○●○●○

部屋

○●○●○●○

⏰:08/12/12 11:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#163 [ゆーちん]
凜の彼氏になって2ヵ月が経った。


付き合って3週間目の夜にキスをしてから、何も進展なし。


童貞の俺に、凜を誘う度胸なんかない。


キスなら大丈夫。


「凜ちゃん。」

「ん?」

「チューしよ。」

「は?」

「しようよ、ね?」

「変態…」

⏰:08/12/12 11:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#164 [ゆーちん]
そう言って、柔らかな唇を奪う俺。


凜からキスを誘われた事なんかないけど、俺が誘うと拒否された事は今のところ無し。


そう。


俺らは順調だった。


8月になり夏休み真っ最中の俺は、毎日凜をデートに誘ってた。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#165 [ゆーちん]
「明日は?」

「無理。香奈と本島行く。」

「じゃあ明後日。」

「無理。澪んち泊まりに行く。」

「じゃあ来週。」

「千夏と遊ぶ。」


…信じてもらえないかもだけど、俺ら順調なんだよ?


「…ごめんね、心。」


すねる俺の手を握ってくれた凜。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#166 [ゆーちん]
そんな可愛い顔で可愛い事されちゃ、許すしかないじゃん。


「凜ちゃんからチューしてくれるなら許してあげる。」

「…じゃあ別に一生許してもらわなくてもいいや。」

「何それ!」


そう言って立ち上がり、俺の手を離した凜。


そんなに自分からキスしたくないの?

⏰:08/12/12 11:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#167 [ゆーちん]
冷たいんだか照れ屋なんだか…可愛い奴。


俺を見下ろす顔もこれまた絵になる!


…って、マジで凜ちゃんにベタ惚れだな、俺。


「はぁ…しょうがない彼氏だわ。」


凜は呆れていた。


でも笑ってる。


呆れ過ぎて笑ってるんだ。

⏰:08/12/12 11:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#168 [ゆーちん]
それでもいい。


どんな笑顔でも、俺は凜が笑っているのが嬉しい。


思わず手を伸ばし、凜の頭を自分の方に引っ張り、唇を押し当てた。


夜風のせいで凜の髪が俺の頬に触る。


シャンプーの匂いがした。


長いキスだった。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#169 [ゆーちん]
せっかく彼女のいる夏休みなのに、竜や大輝と過ごした時間の方が長かった。


あっという間に過ぎた夏休みだったけど、思い出はたくさんある。


まずはクラスのみんなで海で遊んだ事。


凜は日焼けが嫌だって言うから木陰で見学。


『凜の水着姿が見たい!』ってわがまま言ってたら香奈に尻を蹴られたっけ。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#170 [ゆーちん]
他は本島デートかな。


2人で買い物して、ご飯食べて、フェリーの甲板でキスをした。


何度してもキスは飽きない。


毎回ドキドキする。


凜もそうだといいな。

⏰:08/12/12 11:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#171 [ゆーちん]
2学期が始まった。


2学期は楽しい事だらけ。


でもハード。


体力持つかなって今から心配だ。


「凜ちゃん!同じ班なろうね〜。」

「…は?主語が抜けてるから何の事かわかんないんだけど。」


そうですね。


興奮しすぎて主語が抜けました。

⏰:08/12/12 11:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#172 [ゆーちん]
「ごめん。あのね、修学旅行の班!」

「修学旅行…。」

「そっ!来月に修学旅行があるでしょ?その自由行動は5〜6人ぐらいで班作るの。」

「あぁ。なるほど。」

「で!男女混合の班OKだから一緒になろうねって言う話。」

⏰:08/12/12 11:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#173 [ゆーちん]
俺の笑顔のお誘いに、平然と冷たい目で聞いていた凜。


「だってさ。どうする、香奈?」


いつも凜の隣に座ってる香奈。


こいつも冷たい、つーか怖い目で俺を見ていた。


凜に話しを振られた香奈は言った。


「やだ。」

⏰:08/12/12 11:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#174 [ゆーちん]
「何でさ!香奈に決められる程、俺らの愛は弱くないよ!」


とは言ってみたものの…


「香奈が嫌だってさ。残念。私のことは諦めて。」


凜ちゃんまでそんな事言うんだもんなぁ…。


いじけるなぁ。


泣けてくるなぁ。

⏰:08/12/12 11:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#175 [ゆーちん]
「まぁまぁ。香奈も凜ちゃんも、もうちょっと考えてやってよ。」


そんな俺に見兼ねたのか、助け舟を出してくれたのが大輝だ。


「俺も竜も彼女がいるじゃん。で、香奈も彼氏いるっしょ?心と凜ちゃんも付き合ってるって事はだよ?」

⏰:08/12/12 11:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#176 [ゆーちん]
「…何よ。」


大輝の話しに香奈は食いついてくれた。


その調子だ!


頑張って、中橋大輝様!


「フリーの子と組むよりいいんじゃない?香奈の彼氏も心配しないだろうし。同じ班の子はみんな彼女がいるから安心して、みたいな。」

「まぁ…確かにね。」

⏰:08/12/12 11:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#177 [ゆーちん]
「俺と竜の彼女も同じ班の子は彼氏持ちだから心配すんなって言ったら、安心してたし。香奈の彼氏も安心してくれんじゃねぇかなって。」

「…え。大輝、もう彼女に私たちと組む前提で話したの?」

「あ、うん。だって心が大丈夫って言い切るんだもん。」


こらこら、中橋。


そんな余計な事言うんじゃないよ!

⏰:08/12/12 11:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#178 [ゆーちん]
凜は鼻で笑いながら言った。


「全然大丈夫じゃないじゃん。断られてるのに。」


もう、竜に頼るしかないよね。


「竜ぅ〜。」

「お前ら見てると情けないわ。」

「凜ちゃんと香奈、説得してよぉ〜。」

⏰:08/12/12 11:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#179 [ゆーちん]
俺と大輝じゃ、香奈に敵わない。


昔から影の支配者と言われていた向井竜様にお願いするしかないよな。


竜と香奈、凜の3人が話しているのを後ろで待つ。


『口を挟んで墓穴掘るかもしんねぇから、どけ!』と竜様がおっしゃったので。


「心。」


香奈が呼ぶ。

⏰:08/12/12 11:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#180 [ゆーちん]
「はい!」

「凜にべったりしすぎた時点で飛行機から落下さすからな。」


だからさ、香奈が言ったら洒落になんないって。


「わかってる!凜ちゃんと同じ班になれるだけで幸せなんでっ!」

「じゃあ…とりあえずOKって事で。」

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#181 [ゆーちん]
竜ったら何を言ってくれたのかしら。


彼は天才だ。


凜と香奈を丸め込んだ竜は『トメ食堂おごれよ。』と言ってきた。


…もちろん。


喜んでおごらせてもらいますとも!


ありがとう、竜、香奈、そして凜ちゃん!


楽しい修学旅行になりそうだね。

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#182 [ゆーちん]
ウキウキ状態の俺に、香奈は言った。


「つーかさぁ旅行の前に文化祭じゃん?その文化祭の班も確か旅行と同じ班でするんじゃなかったっけ?」


あぁ!


そういえば担任がそんな事言ってたっけ。


「いいじゃん!この5人なら完璧だって。」

⏰:08/12/12 11:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#183 [ゆーちん]
「ふっざけんな。竜はどうせ何もしないし、大輝と心は足手まとい。私と凜ばっか働かなきゃなんない気がする!」

「そんな事ない!足手まとわないようにするよ。」

「俺も!心よりは役に立つ自信ある。」

「本当かよ〜、もう。先が思いやれるってこの事だな。」

⏰:08/12/12 11:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#184 [ゆーちん]
そんな風にして決まった俺たちの班。


竜、大輝、香奈、凜、俺。


最強だな。


文化祭も修学旅行も絶対楽しい思い出作れそう!


放課後、俺はいつも通り凜と一緒に下校した。


「心。」

「ん?」

「私、心みたいなタイプ初めてだよ。」

「へ?初めて?何が?」

⏰:08/12/12 11:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#185 [ゆーちん]
俺の隣を歩いてくれる凜は、真っ直ぐ前だけを見ていた。


「みんなのいる前で告白とか、同じ班なろうとか。」

「俺、隠れてこそこそできるタイプじゃないのかも。」

「女の子みたいだよね。男らしい仕草ゼロだもん。」

⏰:08/12/12 12:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#186 [ゆーちん]
「えっ!それはショックだわ。やっぱ凜ちゃんも、彼氏が男らしくないと嫌だよね?」


凜の横顔は、本当に見取れてしまうぐらい綺麗で、思わず触りたくなるようなサラサラとした髪が顔の横でなびいている。


「別に。心みたいな優しい人と付き合うの初めてだからちょっと違和感あるだけ。」

⏰:08/12/12 12:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#187 [ゆーちん]
「違和感?」

「人前で色々と誘われたりする事ってなかったから。ナンパ以外。」

「えっ!凜ちゃんナンパされた事あるの?」

「あるよ。心はないの?逆ナンされたり。」

「ないない。ナンパした事ないし、された事もない。」

「ふーん。やっぱこの島はいいところだよ。」

⏰:08/12/12 12:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#188 [ゆーちん]
つくづく思う。


凜が住んでいたところと、この島は別世界のようだって。


一体、都会にはどんな魔物がいるんだ!とまで思ってしまう。


都会の人は、その魔物に操られ過ぎだよ。


たまにはこういう島にきて、のんびりするのも悪くないよぉ。

⏰:08/12/12 12:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#189 [ゆーちん]
「男らしくならなくてもいいから、ずっと優しいままでいて。変わらないで。ずっと今のままの心でいてくれれば、それでいいよ。」


凜ちゃん。


その言葉、笑顔で言われてたら、俺また泣いてたかもしんない。

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#190 [ゆーちん]
無表情でサラッと言っただけなのに、俺の胸はキュッと締め付けられて、嬉しくて嬉しくてぶっ倒れそうだもん。


「うん!凜ちゃん大好きなんだけど!」

「あぁ、そう。そりゃどうも。」

「キスしてもいいですか?」

「こんな道端でそんな言葉叫ばないでよ。恥ずかしいなぁ。」

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#191 [ゆーちん]
「でも、こんな俺に惚れたんでしょ?」

「…。」


凜の目は、やっと俺に向けられた。


「違うの?」

「自惚れるなよ、童貞。」


そう言って笑った顔は、どこか香奈に似ていた。


あの見下す感じ。


やだよ。


凜ちゃんまで、怖い香奈に似ていかないでね。

⏰:08/12/12 12:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#192 [ゆーちん]
「何それー。」

「キスならこないだした。」

「俺は毎日でもしたいの!」

「あっそ。」


素っ気ない凜。


何だか寂しい気分になった。


「ちょっと来て!」


俺は凜の手を引っ張って、走り出した。

⏰:08/12/12 12:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#193 [ゆーちん]
「えっ、ちょっと!何?」


驚く凜を引っ張って、俺は道具小屋に向かった。


畑の近くに必ずある道具小屋は、名前の通り道具が置いてある。


島に、いくつものある道具小屋の中でもお気に入りの場所があった。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#194 [ゆーちん]
小さい頃、竜たちと秘密基地だと言って、よく集まったっけ。


土クサイ小屋は、俺の懐かしい気持ちを蘇らせてくれた。


「何、ここ。」

「小屋。道端じゃないよ。」

「は?何言って‥」

「キスしたい!」


凜は驚いていた。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#195 [ゆーちん]
そりゃそうだ。


俺がキスがしたいがために、わざわざ小屋まで引っ張られて来たんだもんな。


俺だってちょっとビックリ。


「ここなら誰にも見られないから。小屋の持ち主も今の時間なら来ないよ。」


ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。

⏰:08/12/12 12:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#196 [ゆーちん]
そこまでしてキスしたいの?って嫌がられてるんじゃないかって、心配にもなった。


だけど凜は笑ってくれた。


「やっぱり、心みたいなタイプは初めてだわ。こんな面白い事してくれるの、後にも先にも心しかいないよ。」

⏰:08/12/12 12:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#197 [ゆーちん]
「…それは褒め言葉?」

「さぁ?どうだろ。自分で考えたら?」


そう言って笑う凜の腕は、俺の首に絡み付いて来た。


「どっちだっていいや。凜ちゃん笑ってくれんなら。」


お互いの目が閉じ、唇が重なった。

⏰:08/12/12 12:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#198 [ゆーちん]
凜の小さな体を抱きしめると、守ってやらないとって思わされる。


凜はいいって言ったけど、男らしくならないといけないのかなぁ…。


なんて考えていると、凜のいきなりの行動に思わず目を開いてしまい、唇を離してしまった。


凜はキョトンとした顔で俺に言った。

⏰:08/12/12 12:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#199 [ゆーちん]
「え…舌入れられるの初めて?」


凜のキスはあまりにも大人っぽくて、思わず腰が引けてしまった。


頭を縦に振ると、凜は『嫌だった?』と聞いてきた。


「嫌とかじゃないけど…びっくりした。」

「元カノとキスとかしなかったんだ。」

⏰:08/12/12 12:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#200 [ゆーちん]
「いや、キスはしたけど…今みたいなのはした事ない。」

「そう。ごめん。」

「え、謝んないでよ。つーかもっかい!」


俺がそうお願いすると、凜は笑った。


「変態度、高まって来たね。」

「え、そう?」

「バカは嫌いじゃないよ。」

⏰:08/12/12 12:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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