冷たい彼女
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#81 [ゆーちん]
今日の凜も素敵だった。


昨日とは違い、カッコイイ感じ。


短いズボンに、クールなTシャツ。


大人っぽいハンチングを頭に乗せて、爽やかな香水を香らせていた。


「今日の凜ちゃんもカッコイイし可愛いね〜。」

「今日は動きやすい方がいいから。」

⏰:08/12/12 08:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#82 [ゆーちん]
「本島で何するの?買い物?」

「うん。」

「買い物かぁ!いいね、いいね。楽しみ。」

「…あんたって単純だよね。」

「えぇ?そう?」

「バカみたいに前向きだし。」


それは相手が凜ちゃんだから。


…とか言ったら、またバカにされるかもな。

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#83 [ゆーちん]
フェリー乗り場についた。


切符を買って、フェリーで本島に向かう。


本島は今日も賑わっていた。


「何買うの?服?」


凜は首を横に振る。


「服は島に行く前にたくさん買った。とりあえず化粧品や雑貨が目当て。あの島に店がないってのは盲点だった。」

⏰:08/12/12 08:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#84 [ゆーちん]
まぁ、確かにね。


お洒落盛りの女の子には、あの島は何もなさすぎる。


「まずは雑貨屋。あんたが1番だと思う雑貨屋連れてって。」

「おう!任せて!」


自転車も一緒に本島に来たおかげで、こっちの移動も自転車が使える。

⏰:08/12/12 08:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#85 [ゆーちん]
今日も汗をかきながら自転車をこぐ。


何だかんだ言って楽しいんだよな。


その日のお店は俺のお気に入りの店をたくさん回った。


途中、凜が気に入っている店のチェーン店があったりもして立ち寄った。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#86 [ゆーちん]
昼は安くつくのでファミレスで済ませる。


中学生は金がないんだよ。


凜は例外みたいだけど。


「うちは金持ちだから親に言えばいくらでも通帳に入れてくれるの。」


グラタンを頬張りながら凜はそう言ってた。


「凜ちゃんはどうして親についてかなかったの?」

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#87 [ゆーちん]
「親がダメだって。海外を転々とするから。それに高校生になったら一人暮ししてもいいって言われてるの。とりあえず中3の1年間は心配だからおじいちゃん達と暮らせってさ。」


まるで他人事のように話してくれた。


じいちゃん達が言ってた事は本当だったんだ。

⏰:08/12/12 08:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#88 [ゆーちん]
「お母さん側のおじいちゃんとおばあちゃんは亡くなってるから、お父さんの実家に預けられてるの。お父さんはお正月にも里帰りなんかしないから、初めてあの島に行ったけど…田舎すぎて驚いた。」


都会から来た人はあの島が田舎すぎる事に絶対驚く。

⏰:08/12/12 08:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#89 [ゆーちん]
「あの島、嫌い?」

「ううん。嫌いじゃないよ。あんたが昨日色んなとこ連れてってくれたから、好きになりかけてる。」


嬉しすぎる。


島を好きになってもらえる事。


それに、凜が色んな話を俺にしてくれる。


まだ笑ってもらってないけど、凜は俺を頼ってくれてるんだと思うと心底嬉しくなれた。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#90 [ゆーちん]
「高校生になったら一人暮らしするの?」

「うん。」

「そっか。本島の高校?」

「たぶんね。だからこっちの島にも慣れないと。」


少し寂しい。


凜ちゃんが島から出て行くのは。

⏰:08/12/12 08:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#91 [ゆーちん]
「俺はたぶん家から通うよ。」

「ふーん。」

「凜ちゃんも杉浦のじいちゃんちから通えばいいじゃん。」


凜は首を横に振る。


「おじいちゃん達にあんまり迷惑かけられないよ。」


孫なのに、気をつかう事はないんじゃないかなと思ったけど…言わなかった。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#92 [ゆーちん]
プライバシーもないような筒抜け島だけど、凜は都会から来たんだ。


あまり入り込まれるのは好きじゃないかもしれない。


凜にも何か考えがあるんだろう。


聞きたい気持ちを、ぐっと耐えた。

⏰:08/12/12 08:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#93 [ゆーちん]
午後からもたくさん買い物をした。


俺は荷物係。


荷物が1つ増えるたびに、凜は『ありがとう。』と言ってくれた。


これくらいどうって事ないのに。


その言葉を聞くたびに、俺は凜を好きになった。


日も傾いて来た頃。


「そろそろ帰ろっか。」

⏰:08/12/12 08:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#94 [ゆーちん]
「そうだなぁ。今フェリー乗り場行けばちょうどいい時間のがあると思うよ!」


俺は自転車をこいだ。


乗り遅れるといけないから、一生懸命こいだ。


おかげでちょうどいい時間のフェリーがあった。


それに乗って、俺、凜、自転車はまた島へと戻る。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#95 [ゆーちん]
そんな感じで休日デート終了。


俺の心は満たされていた。


少しずつ、でも確実に俺は進歩している。


凜の手を握る事を目標に、明日からまた一週間。


俺は放課後のストーカーを頑張りたいと思います。

⏰:08/12/12 08:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#96 [ゆーちん]
○●○●○●○

名前

○●○●○●○

⏰:08/12/12 08:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#97 [ゆーちん]
凜が島に来て3週間。


7月らしい気候が島を包んでいた。


先々週は島案内と本島案内。


先週は凜に用があるとの事でデートせず、竜たちと過ごした。


で、今週。


明日は土曜日。


俺は凜にデートを申し込んだ。


「えー、めんどくさい。」

⏰:08/12/12 08:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#98 [ゆーちん]
…玉砕。


デートを、めんどくさいって…。


「何でよぉ!どうせ暇なんでしょ?」

「明日は用があるの。」

「じゃあ明後日!」

「日曜?日曜もダメ。」

「え〜。いつならデートできんのさ!」

「んー…夜。」

「へ?」

「明日の夜ならいいよ。日中は用があるから無理だけど。」

⏰:08/12/12 08:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#99 [ゆーちん]
思わず叫んだ。


「やったー!」


教室で俺がこうやって叫んでも、もう誰も驚かない。


凜にべったりな俺に、みんなマンネリ化してきてるみたいだわ。


「…うるさい。」

「じゃあ明日の夜ね!」

「8時に迎えに来て。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#100 [ゆーちん]
「うん!OK、OK!」


と、俺が喜んでいると凜の隣に座っていた西山香奈が呟いた。


「童貞が夜遊びすんじゃねーよ。」


俺は睨んだ。


が、香奈の睨みには勝てない。


怖い女だ。


「あー…香奈の言う通りだね。やっぱ夜は辞めとこっか?」

「こらこら!何で凜ちゃんは丸め込まれてんのさ。」

⏰:08/12/12 08:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#101 [ゆーちん]
香奈は、たぶん今んところ島1番の派手な奴。


前まで1番は、香奈の姉ちゃんだった。


だけど姉ちゃんが島を出て言ってから、たぶん香奈が1番。


派手だし、男みたいな性格だし、美人だけど怖いし、俺の事いっつもバカにするし…嫌いじゃないけど好きでもない。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#102 [ゆーちん]
凜が来るまで、香奈は一匹オオカミみたいな奴だった。


そりゃ女だから友達はいるんだろうけど、本島の奴らとの方が仲が良いらしい。


まぁ、強いて言うならこのクラスで仲良くしてたのは美帆かな。


あいつは誰とでも仲良いし。

⏰:08/12/12 08:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#103 [ゆーちん]
香奈は4つ上の大学生の姉ちゃんとすげぇ仲が良い。


だから姉ちゃんの同級生とも仲が良い。


つーことは、恋愛も年上とする。


姉ちゃんの男友達と付き合ってるみたいで、どんどん大人びてきていた。


そして先月、凜がこの学校にやって来た。

⏰:08/12/12 08:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#104 [ゆーちん]
化粧してる子なんて香奈以外いないと思っていたら、クリクリお目めで登場した凜。


香奈と凜が仲良くなるのに時間はかからなかった。


先週の凜の用ってのも、香奈と本島に行ってたかららしい。


まぁ、友達も大事だから仕方ないよな。


でもちょっとジェラシー。

⏰:08/12/12 08:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#105 [ゆーちん]
一匹オオカミと美人転校生が一緒にいることで、かなり目立っていた。


俺の存在どんどん薄れてる気がして、香奈にヤキモチ妬いちゃってるんです、僕。


「とにかく!明日8時に行くからね!」

「はいはい。」


呆れながら返事をした凜は教室から出て行った。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#106 [ゆーちん]
「心。凜が嫌がる事したら、二度と太陽拝めなくするからね。」


香奈はそう言葉を残し、凜を追い掛けて教室から出て行った。


…つーか、普通に怖いよ。


香奈が言うと冗談に聞こえない!


俺はこの太陽が好きなので、凜ちゃんに嫌がる事はしません。

⏰:08/12/12 08:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#107 [ゆーちん]
そして翌日。


昼まで寝て、午後からばあちゃんの畑仕事手伝った。


普段手伝いなんかしないけど、今日は気分がいいから。


それにばあちゃん孝行もしないとだし?


あともう一つ、企んでる事があるからさ。


「珍しい事もあるんだね。」

「何がぁ?」

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#108 [ゆーちん]
「心が畑を手伝ってくれるなんて明日は雨かもしれないな。」

「んなバカな。」


夕方、どろどろに汚れた体をシャワーで流した。


そう、これが企んでる事。


汗でもかかなきゃシャワーなんかさせてもらえない。


母ちゃんケチだから。

⏰:08/12/12 08:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#109 [ゆーちん]
凜ちゃんに会う時ぐらい、いい匂いで会いたいじゃん!


男心って奴だよ。


汗をかいた事を理由にシャワーをして綺麗になった俺。


ちょっとお気に入りの服を着て、夕飯を済ませた。


「心。」

「んあ?」


母ちゃんが冷ややかな目で息子の俺を見る。

⏰:08/12/12 08:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#110 [ゆーちん]
「何で、パジャマじゃなくて普通の服着てんのさ。」

「ちょっと出掛ける〜。」


すると父ちゃんがビールを飲みながら笑った。


「色気づきやがって!バカ息子がぁ!」


それを聞いた母ちゃんの目の輝きは一気に変わった。


「え、何、デート?こんな時間から?どういう事!」

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#111 [ゆーちん]
父ちゃんのバカ。


毎回毎回、息子の色恋沙汰になるとテンションの上がる母親。


いい加減げっそりだわ。


また騒がれるのも面倒だから黙ってたのに、さすが父ちゃん。


鋭いぞ。

⏰:08/12/12 08:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#112 [ゆーちん]
「違います。深入りしてこないで下さい。」

「何言ってんの!どんな子?何でそんな楽しそうな話隠してたの!もっと聞かせてよぉ。」


うぜぇ。


母ちゃんのこの性格と俺の性格はよく似てる、なんて言われるけど…どこが似てるんだか。


いつまでたってもギャーギャー喚くなんて…ガキか。

⏰:08/12/12 08:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#113 [ゆーちん]
ばあちゃんもじいちゃんもニヤニヤと俺を見る。


そんなに孫の恋愛が気になるのか?


「なるほどね。それで今日は畑仕事手伝ってくれたんだぁ。」


と、ばあちゃん。


「単純だな。」


と、じいちゃん。


みんなしてバカにしやがって。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#114 [ゆーちん]
15歳の旬の男が彼女の1人もいないでどうすんだっつーの。


「心。」

「何だよ。」


父ちゃん、まだからかう気か?


「避妊はちゃんとしろよ〜。」


…酔っ払いが。


さっさと寝ろ。

⏰:08/12/12 08:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#115 [ゆーちん]
うちの家族はどうもお気楽な感じで、今みたいな下ネタは日常茶飯事だった。


「そうよ、心。あなたまだ中3なんだし、子供なんかできたとか言って泣き付いて来ないでね。」


母ちゃん、そりゃないよ。


「じいちゃんは、ひ孫大歓迎だからな!」

「ばあちゃんも大歓迎。」

⏰:08/12/12 08:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#116 [ゆーちん]
無茶苦茶だ。


呆れて物も言えない。


つーか、4人共さぁ…俺まだ童貞だぞ?


子供だのひ孫だの、いつの話になるやら。


「ごちそうさまいってきます。」


2つの単語を息継ぎせずに言い終えると俺は家から飛び出した。

⏰:08/12/12 08:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#117 [ゆーちん]
あー、財布忘れた。


慌てて出てきたから携帯だけしか持って来なかった。


まぁ、いっか。


この島でいると金を使う事なんか滅多にない。


自販機も少ないし。


財布は邪魔な荷物として扱われる事が多かった。


ぶっちゃけ携帯もあんまり使わないんだけど…時計変わりだな。

⏰:08/12/12 10:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#118 [ゆーちん]
…つーか慌てて出て来て正解じゃん。


また遅刻するところだった。


少し傷んで茶色くなりかけていた俺の髪が、夜風にもて遊ばれる。


自転車のペダルも自然と軽い気がした。


早く凜を乗せて、人の重みを感じたい。


杉浦家についたのは5分後だった。

⏰:08/12/12 10:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#119 [ゆーちん]
時間ちょうど。


完璧。


「こんばんにゃ〜。凜ちゃーん!」


居間から杉浦のばあちゃんが出てきた。


「はいはい、どこの猫かと思ったら江森んちの猫かい。」

「そ、僕、江森心くん!」

「凜ちゃんならもうすぐ来るから、上がって待つかい?」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#120 [ゆーちん]
今まで杉浦家なんて数え切れないくらいお邪魔した。


だけど凜が来てから特別な家に思えて、なかなか上がれないんだ。


「ううん、ここにいるよ!」

「そうかい。もうちょっと待っててやって。」

「おう!」

⏰:08/12/12 10:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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