冷たい彼女
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#41 [ゆーちん]
「明日、暇でしょ?」

「暇!すっげぇ暇!デートする?デート!」

「いいよ。デートしてあげる。」


来たよ、俺の時代が。


凜ちゃんと付き合って4日目。


初デートのお誘いをOKしていただきました!


「よっしゃあ!」

⏰:08/12/11 21:15 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#42 [ゆーちん]
騒ぐ俺とは別世界のような凜の表情は、いつものように冷たかった。


「どこ行く?」

「…10時に迎えに来て。じゃあ。」


それだけ言って、凜は家の中に入って行った。


「あ、うん。10時ね!バイバイ!」


この際、行き先なんてどこでもいい。


何てったって初デート!

⏰:08/12/11 21:16 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#43 [ゆーちん]
テンションの上がった俺はそのまま向井家に走った。


「りゅーうーちゃーん!」


インターホンなんてほとんどの家にない。


玄関を勝手に開けて、名前を叫ぶのがこの島の呼び出し方。

⏰:08/12/11 21:18 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#44 [ゆーちん]
「はーい。あら、心ちゃん。」


竜のばあちゃんが出迎えてくれた。


「ばあちゃん久しぶり!腰の調子どう?」

「ありがとうね。最近は調子いいんだよ。」

「本当?よかったねぇ。」

「おかげさまで。心ちゃん今日は何の用?」

「竜いてる?」

⏰:08/12/11 21:19 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#45 [ゆーちん]
「竜なら大輝ちゃんちに行ったよ。」

「大輝んち?わかった。ありがとね。ばあちゃんバイバイ!」

「走って転ばないようにねぇ。」


竜のばあちゃんは俺のばあちゃんみたいなもん。


つか、この島のばあちゃんはみんな俺のばあちゃんだな。

⏰:08/12/11 21:20 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#46 [ゆーちん]
竜のばあちゃんに見送られ、俺は中橋家まで走った。


「大輝ぃー!竜ぅー!いるかぁ〜?」


中橋家の玄関で叫ぶと、大輝が出迎えてくれた。


「何だ?」

「竜もいる?」

「おぉ。みんないる。」


…そうみたいですね。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#47 [ゆーちん]
玄関に脱ぎ捨てられているこの靴の量を見ればわかりました。


俺も靴を脱ぎ、部屋に上がった。


中橋家はなかなか大きな家なので、みんなのたまり場として集まる事が多かった。


大輝の部屋もこれまた広い。


俺の部屋の3倍はあるな。

⏰:08/12/11 21:25 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#48 [ゆーちん]
「おぉ、心。」

「あれ?ストーカーは?」


みんなが口々に俺を出迎えてくれた。


「みなさん、よくぞお集まりいただきなすった。」

「日本語変だぞ。」

「そこ、うるさい!俺は国語が嫌いなんだ!」

「で、どしたの?」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#49 [ゆーちん]
「みんなに自慢したい事があるんですよ。」

「何〜?」

「なんと!明日、杉浦凜様とデートする事になりましたー!」


島中に聞こえるんじゃねぇかってぐらい大声で叫んでやった。


それなのにみんなの反応は最悪。


「…ふーん。」

「そうなんだ。」

「頑張って。」

⏰:08/12/11 21:26 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#50 [ゆーちん]
「ちょちょちょちょ。何なの、その凜ちゃんのような冷たい反応。みんな凜ちゃん化ですか?」


漫画の続きを読み始めたり、携帯を触りだしたりと俺には見向きもしてくれなかった。


泣いちゃうぞー。


いつもながら俺への対応は冷たいものだ。


もう慣れたけどさぁ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#51 [ゆーちん]
凜の話はいつの間にか流れてしまい、他愛もない話で盛り上がった。


日が沈めば自然に家へと帰って行く。


不審者や痴漢、泥棒の出た事のないこの島の夜道は暗いけれど月が明るく、のんびりと歩きながら帰る事ができるんだ。

⏰:08/12/11 21:27 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#52 [ゆーちん]
翌日は学校に行く時間より早くに目が覚めた。


無駄に余った時間は携帯ゲームをして過ごした。


が、バカはやっぱりバカだった。


すっかり夢中になってしまい、時間を忘れていたんです。


「あんた一体何時に出掛けんのさ?」


母ちゃんが言った。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#53 [ゆーちん]
「あ?10時前。」

「んーなのとっくに過ぎてるよ。」


…え?


時計を見ると10時半を回っていた。


血の気が引いた。


「やっべぇ!」


携帯電話と財布をポケットに入れ、家を飛び出した。


杉浦家まで猛ダッシュ。


3分で到着だ…。

⏰:08/12/11 21:29 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#54 [ゆーちん]
「り…ん、ちゃー…ん…」


息切れなんて久しぶり。


「あらあら、心ちゃんじゃないの。どうした?」


杉浦のばあちゃんが俺に笑顔を向ける。


「凜…ちゃん…は?」

「部屋にいるよ。」

「呼んで…来てく…れる?」

「あいよ。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#55 [ゆーちん]
ばあちゃんは立派な足取りで階段を上って行き、凜を呼んで来てくれた。


「おばあちゃん、私ちょっと出掛けるね。」

「心ちゃんとかい?」

「うん。」

「はいよ。気をつけてね。」

「いってきます。」

「ばあちゃん、いってきます。」

⏰:08/12/11 21:30 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#56 [ゆーちん]
初めて見た私服の凜は、口が開く程のものだった。


フワフワしたワンピースが見事に似合っている。


少し歩くと、凜は言った。


「童貞は時間も守れないわけ?」

「…ごめんなさい。ゲームしてたら時間忘れてました。」

「ゲームに負けたんだ、私。」

⏰:08/12/11 21:31 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#57 [ゆーちん]
「いや、決してそういう訳じゃないんだけど…」

「貸し1ね。」


そう言って凜は歩き出した。


「はい。」


俺もいつもと同じで、凜の後ろを着いて歩く。


6月末、とても暑い日だった。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#58 [ゆーちん]
「この島の案内して。」


凜は振り返りもせずに言う。


「案内?」

「そ。早くこの島に慣れたいの。」

「OK!じゃあ俺んち戻ろ。自転車取ってくるわ。」

「自転車?」


凜は振り返った。


…笑ってないけど、うん。


可愛い。

⏰:08/12/11 21:32 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#59 [ゆーちん]
「後ろ乗せたげる。俺んちこっちだから!」


来た道を戻る。


今は俺が前で、凜が後ろ。


いつもと逆。


違和感たっぷり。


「ねぇ。」

「はい。」

「隣歩けば?」

「…いいの?」

「いいよ。デートなんでしょ?」

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#60 [ゆーちん]
素晴らしい進歩。


初デート。


初横並び歩き。


テンション上げずにいられないでしょ!


「手ぇ繋いでいい?」


そう、勢いでお願いしてみた。


「やだ。」


…無理でした。


うん、最初から欲張っちゃダメだよねー。

⏰:08/12/11 21:33 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#61 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」


とりあえず隣で歩ける事に感謝。


小さな凜と並んで歩ける事が幸せだった。


俺の家につき、自転車を出して、凜を後ろに座らせた。


「2ケツとか久しぶりだ。」

「どうせ男しか乗せた事ないんでしょ。」

⏰:08/12/11 21:34 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#62 [ゆーちん]
凜の言葉のナイフにグサグサと刺されながら自転車をこいだ。


「そんな事ないもーん。」

「あっそ。」

「でも、9割が男だね。」

「やっぱり。」

「残りの1割は女からのパシリですよ。」

「ダッセェ。」


風を切って走る自転車。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#63 [ゆーちん]
凜ちゃんの髪やワンピースは、さぞなびいているでしょう。


…全く見えないけど。


1軒1軒、島の案内をしていく。


抜け道や近道も教えてあげる。


あの家のじいちゃんはどうだとか、この家のばあちゃんはこうだとか。


凜は一生懸命、俺の話に耳を傾けてくれていた。

⏰:08/12/11 21:35 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#64 [ゆーちん]
お昼は、島で唯一の食堂である【トメ食堂】食べた。


なぜ【トメ食堂】かと言うと、トメと言う名前のばあちゃんが営業しているから。


トメばあちゃんは島で1番の料理人だと俺は思う。


食べ終えると、また自転車の旅が始まる。


なるべく日影を走れという凜の指示に、俺は素直に従った。

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#65 [ゆーちん]
汗が流れる額。


凜のために流す汗は苦痛ではなかった。


日が暮れると、凜は言った。


「あんたがこの島で1番気に入ってる場所教えて。」

「1番?」

「そう。」

「ガッテン承知!」

⏰:08/12/11 21:36 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#66 [ゆーちん]
俺は涼しくなった風を切りながら、一生懸命自転車をこいだ。


この島で1番の好きな場所。


そんなのあそこ以外にないだろ。


ハンドルを握る俺の手は、慣れたようにあそこに向かっていた。


「凜ちゃーん!」

「何?」

「ここー!」

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#67 [ゆーちん]
坂を下ると、海が広がる。


俺は海が1番好きだ。


自転車を止めると、凜は後ろから降りて砂浜を歩いた。


髪とワンピースが揺れる。


ヤバイ…惚れ直した。


凜の姿があまりにも絵になるので、ついつい見取れてしまった。

⏰:08/12/11 21:37 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#68 [ゆーちん]
「ねぇ!」

「あ、うん、何?」

「何じゃないよ。ぼーっとしちゃってさ。」

「ごめん。どうしたの?」

「あんた正解。今日回った場所で、ここが1番いいよ。私の1番もここだ。」


凜と俺の1番が同じなのは、とても嬉しい事だ。


「本当?マジで?」

⏰:08/12/11 21:38 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#69 [ゆーちん]
「うん。この島の海は特別綺麗。」

「でしょ?俺もこの島の海が1番好き〜。」


夕日は沈んだ。


薄暗い海辺。


凜は言った。


「今日はありがと。あんたを彼氏にしてよかった。」

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#70 [ゆーちん]
笑顔は見せてくれなかったものの、その言葉はとても嬉しかった。


凜ちゃんは俺に気などない。


そんなのわかっている。


俺を足変わりにするのも、何の問題もない。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#71 [ゆーちん]
一緒にいてくれるだけで俺は嬉しいのに、『ありがとう。』と言われるのは、やっぱり嬉しい。


前に近道を教えた時も言ってくれたっけ。


冷たい彼女だけど、ありがとうを言える人は本当は心が温かいんだよ。


島のばあちゃんがよく言ってる。

⏰:08/12/11 21:39 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#72 [ゆーちん]
「明日も付き合ってくれるんでしょ?」


…明日?


明日もあなたの隣を歩けるんですか!?


「もーちろんっ!明日でも明後日でもいつでも付き合うよ!」

「…。」


テンションが上がりすぎだと冷ややかに目で訴える凜ちゃん。

⏰:08/12/11 21:40 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#73 [ゆーちん]
「どこ行くの?」

「明日は本島で買い物がしたいから9時に迎えに来て。」

「わかった!9時ね!じゃあ9時半のフェリーだね。」

「…明日は今日と違って、遅刻は許されないからね。」

「はい、わかってます。」


こうして明日のデートの約束をして俺らは海を後にした。

⏰:08/12/11 21:41 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#74 [ゆーちん]
●○●○●○●

ではまた明日

>>2

●○●○●○●

⏰:08/12/11 21:59 📱:SH901iC 🆔:uyR.lwfs


#75 [我輩は匿名である]
早くみたいまた時間ある時にゆっくりお願いしま-す今日はお疲れさまで-す

⏰:08/12/12 01:01 📱:SH906i 🆔:FlUtrXSA


#76 [ゆーちん]
>>75さん
ありがとうございます
マイペースな更新ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

⏰:08/12/12 08:18 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#77 [ゆーちん]
そして翌日、俺は8時半に凜を迎えに行った。


「おはよう!」


俺が玄関から叫ぶと、じいちゃんが出迎えてくれた。


「おぉ、心ちゃん。おはよう。」

「じいちゃんおはよう!凜ちゃんは?」

「凜?朝ごはん食べてるよ。」

「じゃあ食べ終わったら外に来てって伝えて。」

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#78 [ゆーちん]
「上がって行かんかい。」

「や、凜ちゃんに叱られそうだから辞めとくよ。んじゃ。」


外に出て、玄関口にしゃがみ込んだ。


男は同じ失敗はしない。


30分前行動だ。


どうだこの野郎!

⏰:08/12/12 08:19 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#79 [ゆーちん]
天気良好。


体調良好。


おまけに海も良好。


こんなデート日和なかなか無いですよ。


恵まれてんだな、俺。


せみの鳴き声を聞きながら空を見上げたり、道行く人に挨拶したり。


そんな事をしていると30分なんてあっという間だった。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#80 [ゆーちん]
「ストーカー。」


振り返ると凜ちゃんがいた。


「おはよう!9時ちょうどだね!」

「30分も前に来るなんてバカとしか思えない。」

「だって遅刻できないもん!はい、乗って。」


今日も自転車。


凜は呆れた顔をしていた。

⏰:08/12/12 08:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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