冷たい彼女
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#162 [ゆーちん]
○●○●○●○

部屋

○●○●○●○

⏰:08/12/12 11:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#163 [ゆーちん]
凜の彼氏になって2ヵ月が経った。


付き合って3週間目の夜にキスをしてから、何も進展なし。


童貞の俺に、凜を誘う度胸なんかない。


キスなら大丈夫。


「凜ちゃん。」

「ん?」

「チューしよ。」

「は?」

「しようよ、ね?」

「変態…」

⏰:08/12/12 11:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#164 [ゆーちん]
そう言って、柔らかな唇を奪う俺。


凜からキスを誘われた事なんかないけど、俺が誘うと拒否された事は今のところ無し。


そう。


俺らは順調だった。


8月になり夏休み真っ最中の俺は、毎日凜をデートに誘ってた。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#165 [ゆーちん]
「明日は?」

「無理。香奈と本島行く。」

「じゃあ明後日。」

「無理。澪んち泊まりに行く。」

「じゃあ来週。」

「千夏と遊ぶ。」


…信じてもらえないかもだけど、俺ら順調なんだよ?


「…ごめんね、心。」


すねる俺の手を握ってくれた凜。

⏰:08/12/12 11:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#166 [ゆーちん]
そんな可愛い顔で可愛い事されちゃ、許すしかないじゃん。


「凜ちゃんからチューしてくれるなら許してあげる。」

「…じゃあ別に一生許してもらわなくてもいいや。」

「何それ!」


そう言って立ち上がり、俺の手を離した凜。


そんなに自分からキスしたくないの?

⏰:08/12/12 11:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#167 [ゆーちん]
冷たいんだか照れ屋なんだか…可愛い奴。


俺を見下ろす顔もこれまた絵になる!


…って、マジで凜ちゃんにベタ惚れだな、俺。


「はぁ…しょうがない彼氏だわ。」


凜は呆れていた。


でも笑ってる。


呆れ過ぎて笑ってるんだ。

⏰:08/12/12 11:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#168 [ゆーちん]
それでもいい。


どんな笑顔でも、俺は凜が笑っているのが嬉しい。


思わず手を伸ばし、凜の頭を自分の方に引っ張り、唇を押し当てた。


夜風のせいで凜の髪が俺の頬に触る。


シャンプーの匂いがした。


長いキスだった。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#169 [ゆーちん]
せっかく彼女のいる夏休みなのに、竜や大輝と過ごした時間の方が長かった。


あっという間に過ぎた夏休みだったけど、思い出はたくさんある。


まずはクラスのみんなで海で遊んだ事。


凜は日焼けが嫌だって言うから木陰で見学。


『凜の水着姿が見たい!』ってわがまま言ってたら香奈に尻を蹴られたっけ。

⏰:08/12/12 11:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#170 [ゆーちん]
他は本島デートかな。


2人で買い物して、ご飯食べて、フェリーの甲板でキスをした。


何度してもキスは飽きない。


毎回ドキドキする。


凜もそうだといいな。

⏰:08/12/12 11:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#171 [ゆーちん]
2学期が始まった。


2学期は楽しい事だらけ。


でもハード。


体力持つかなって今から心配だ。


「凜ちゃん!同じ班なろうね〜。」

「…は?主語が抜けてるから何の事かわかんないんだけど。」


そうですね。


興奮しすぎて主語が抜けました。

⏰:08/12/12 11:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#172 [ゆーちん]
「ごめん。あのね、修学旅行の班!」

「修学旅行…。」

「そっ!来月に修学旅行があるでしょ?その自由行動は5〜6人ぐらいで班作るの。」

「あぁ。なるほど。」

「で!男女混合の班OKだから一緒になろうねって言う話。」

⏰:08/12/12 11:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#173 [ゆーちん]
俺の笑顔のお誘いに、平然と冷たい目で聞いていた凜。


「だってさ。どうする、香奈?」


いつも凜の隣に座ってる香奈。


こいつも冷たい、つーか怖い目で俺を見ていた。


凜に話しを振られた香奈は言った。


「やだ。」

⏰:08/12/12 11:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#174 [ゆーちん]
「何でさ!香奈に決められる程、俺らの愛は弱くないよ!」


とは言ってみたものの…


「香奈が嫌だってさ。残念。私のことは諦めて。」


凜ちゃんまでそんな事言うんだもんなぁ…。


いじけるなぁ。


泣けてくるなぁ。

⏰:08/12/12 11:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#175 [ゆーちん]
「まぁまぁ。香奈も凜ちゃんも、もうちょっと考えてやってよ。」


そんな俺に見兼ねたのか、助け舟を出してくれたのが大輝だ。


「俺も竜も彼女がいるじゃん。で、香奈も彼氏いるっしょ?心と凜ちゃんも付き合ってるって事はだよ?」

⏰:08/12/12 11:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#176 [ゆーちん]
「…何よ。」


大輝の話しに香奈は食いついてくれた。


その調子だ!


頑張って、中橋大輝様!


「フリーの子と組むよりいいんじゃない?香奈の彼氏も心配しないだろうし。同じ班の子はみんな彼女がいるから安心して、みたいな。」

「まぁ…確かにね。」

⏰:08/12/12 11:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#177 [ゆーちん]
「俺と竜の彼女も同じ班の子は彼氏持ちだから心配すんなって言ったら、安心してたし。香奈の彼氏も安心してくれんじゃねぇかなって。」

「…え。大輝、もう彼女に私たちと組む前提で話したの?」

「あ、うん。だって心が大丈夫って言い切るんだもん。」


こらこら、中橋。


そんな余計な事言うんじゃないよ!

⏰:08/12/12 11:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#178 [ゆーちん]
凜は鼻で笑いながら言った。


「全然大丈夫じゃないじゃん。断られてるのに。」


もう、竜に頼るしかないよね。


「竜ぅ〜。」

「お前ら見てると情けないわ。」

「凜ちゃんと香奈、説得してよぉ〜。」

⏰:08/12/12 11:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#179 [ゆーちん]
俺と大輝じゃ、香奈に敵わない。


昔から影の支配者と言われていた向井竜様にお願いするしかないよな。


竜と香奈、凜の3人が話しているのを後ろで待つ。


『口を挟んで墓穴掘るかもしんねぇから、どけ!』と竜様がおっしゃったので。


「心。」


香奈が呼ぶ。

⏰:08/12/12 11:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#180 [ゆーちん]
「はい!」

「凜にべったりしすぎた時点で飛行機から落下さすからな。」


だからさ、香奈が言ったら洒落になんないって。


「わかってる!凜ちゃんと同じ班になれるだけで幸せなんでっ!」

「じゃあ…とりあえずOKって事で。」

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#181 [ゆーちん]
竜ったら何を言ってくれたのかしら。


彼は天才だ。


凜と香奈を丸め込んだ竜は『トメ食堂おごれよ。』と言ってきた。


…もちろん。


喜んでおごらせてもらいますとも!


ありがとう、竜、香奈、そして凜ちゃん!


楽しい修学旅行になりそうだね。

⏰:08/12/12 11:56 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#182 [ゆーちん]
ウキウキ状態の俺に、香奈は言った。


「つーかさぁ旅行の前に文化祭じゃん?その文化祭の班も確か旅行と同じ班でするんじゃなかったっけ?」


あぁ!


そういえば担任がそんな事言ってたっけ。


「いいじゃん!この5人なら完璧だって。」

⏰:08/12/12 11:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#183 [ゆーちん]
「ふっざけんな。竜はどうせ何もしないし、大輝と心は足手まとい。私と凜ばっか働かなきゃなんない気がする!」

「そんな事ない!足手まとわないようにするよ。」

「俺も!心よりは役に立つ自信ある。」

「本当かよ〜、もう。先が思いやれるってこの事だな。」

⏰:08/12/12 11:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#184 [ゆーちん]
そんな風にして決まった俺たちの班。


竜、大輝、香奈、凜、俺。


最強だな。


文化祭も修学旅行も絶対楽しい思い出作れそう!


放課後、俺はいつも通り凜と一緒に下校した。


「心。」

「ん?」

「私、心みたいなタイプ初めてだよ。」

「へ?初めて?何が?」

⏰:08/12/12 11:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#185 [ゆーちん]
俺の隣を歩いてくれる凜は、真っ直ぐ前だけを見ていた。


「みんなのいる前で告白とか、同じ班なろうとか。」

「俺、隠れてこそこそできるタイプじゃないのかも。」

「女の子みたいだよね。男らしい仕草ゼロだもん。」

⏰:08/12/12 12:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#186 [ゆーちん]
「えっ!それはショックだわ。やっぱ凜ちゃんも、彼氏が男らしくないと嫌だよね?」


凜の横顔は、本当に見取れてしまうぐらい綺麗で、思わず触りたくなるようなサラサラとした髪が顔の横でなびいている。


「別に。心みたいな優しい人と付き合うの初めてだからちょっと違和感あるだけ。」

⏰:08/12/12 12:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#187 [ゆーちん]
「違和感?」

「人前で色々と誘われたりする事ってなかったから。ナンパ以外。」

「えっ!凜ちゃんナンパされた事あるの?」

「あるよ。心はないの?逆ナンされたり。」

「ないない。ナンパした事ないし、された事もない。」

「ふーん。やっぱこの島はいいところだよ。」

⏰:08/12/12 12:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#188 [ゆーちん]
つくづく思う。


凜が住んでいたところと、この島は別世界のようだって。


一体、都会にはどんな魔物がいるんだ!とまで思ってしまう。


都会の人は、その魔物に操られ過ぎだよ。


たまにはこういう島にきて、のんびりするのも悪くないよぉ。

⏰:08/12/12 12:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#189 [ゆーちん]
「男らしくならなくてもいいから、ずっと優しいままでいて。変わらないで。ずっと今のままの心でいてくれれば、それでいいよ。」


凜ちゃん。


その言葉、笑顔で言われてたら、俺また泣いてたかもしんない。

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#190 [ゆーちん]
無表情でサラッと言っただけなのに、俺の胸はキュッと締め付けられて、嬉しくて嬉しくてぶっ倒れそうだもん。


「うん!凜ちゃん大好きなんだけど!」

「あぁ、そう。そりゃどうも。」

「キスしてもいいですか?」

「こんな道端でそんな言葉叫ばないでよ。恥ずかしいなぁ。」

⏰:08/12/12 12:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#191 [ゆーちん]
「でも、こんな俺に惚れたんでしょ?」

「…。」


凜の目は、やっと俺に向けられた。


「違うの?」

「自惚れるなよ、童貞。」


そう言って笑った顔は、どこか香奈に似ていた。


あの見下す感じ。


やだよ。


凜ちゃんまで、怖い香奈に似ていかないでね。

⏰:08/12/12 12:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#192 [ゆーちん]
「何それー。」

「キスならこないだした。」

「俺は毎日でもしたいの!」

「あっそ。」


素っ気ない凜。


何だか寂しい気分になった。


「ちょっと来て!」


俺は凜の手を引っ張って、走り出した。

⏰:08/12/12 12:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#193 [ゆーちん]
「えっ、ちょっと!何?」


驚く凜を引っ張って、俺は道具小屋に向かった。


畑の近くに必ずある道具小屋は、名前の通り道具が置いてある。


島に、いくつものある道具小屋の中でもお気に入りの場所があった。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#194 [ゆーちん]
小さい頃、竜たちと秘密基地だと言って、よく集まったっけ。


土クサイ小屋は、俺の懐かしい気持ちを蘇らせてくれた。


「何、ここ。」

「小屋。道端じゃないよ。」

「は?何言って‥」

「キスしたい!」


凜は驚いていた。

⏰:08/12/12 12:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#195 [ゆーちん]
そりゃそうだ。


俺がキスがしたいがために、わざわざ小屋まで引っ張られて来たんだもんな。


俺だってちょっとビックリ。


「ここなら誰にも見られないから。小屋の持ち主も今の時間なら来ないよ。」


ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。

⏰:08/12/12 12:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#196 [ゆーちん]
そこまでしてキスしたいの?って嫌がられてるんじゃないかって、心配にもなった。


だけど凜は笑ってくれた。


「やっぱり、心みたいなタイプは初めてだわ。こんな面白い事してくれるの、後にも先にも心しかいないよ。」

⏰:08/12/12 12:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#197 [ゆーちん]
「…それは褒め言葉?」

「さぁ?どうだろ。自分で考えたら?」


そう言って笑う凜の腕は、俺の首に絡み付いて来た。


「どっちだっていいや。凜ちゃん笑ってくれんなら。」


お互いの目が閉じ、唇が重なった。

⏰:08/12/12 12:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#198 [ゆーちん]
凜の小さな体を抱きしめると、守ってやらないとって思わされる。


凜はいいって言ったけど、男らしくならないといけないのかなぁ…。


なんて考えていると、凜のいきなりの行動に思わず目を開いてしまい、唇を離してしまった。


凜はキョトンとした顔で俺に言った。

⏰:08/12/12 12:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#199 [ゆーちん]
「え…舌入れられるの初めて?」


凜のキスはあまりにも大人っぽくて、思わず腰が引けてしまった。


頭を縦に振ると、凜は『嫌だった?』と聞いてきた。


「嫌とかじゃないけど…びっくりした。」

「元カノとキスとかしなかったんだ。」

⏰:08/12/12 12:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#200 [ゆーちん]
「いや、キスはしたけど…今みたいなのはした事ない。」

「そう。ごめん。」

「え、謝んないでよ。つーかもっかい!」


俺がそうお願いすると、凜は笑った。


「変態度、高まって来たね。」

「え、そう?」

「バカは嫌いじゃないよ。」

⏰:08/12/12 12:15 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#201 [ゆーちん]
再び重なった唇。


しばらくすると、凜はさっきのように俺の口の中に舌を入れて来た。


何じゃこりゃ!ってのが素直な感想だったけど…変な話、凜が舌を動かすたびにドキドキさせられる。


気持ち良いとか、幸せとか、そういうんじゃない。

⏰:08/12/12 12:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#202 [ゆーちん]
凜を体で感じる事ができて嬉しいって思う気持ちのが強い。


「…心も、舌。」

「え?」

「入れていいよ。」


何だか、おかしな話。


女の子にリードされちゃってさ。


土クサイ小屋で心臓ドキドキさせられちゃってさ。


凜の口に、舌入れちゃってさ…。

⏰:08/12/12 12:25 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#203 [ゆーちん]
「ンンッ…」


凜から漏れた甘い言葉は、急に俺の鼓動を早くさせた。


ヤバイ。


緊張のドキドキが、いやらしいドキドキになりそう。


ストップしないと…。


でも、このキスが心地よくて、なかなか唇を離せずにいた。

⏰:08/12/12 12:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#204 [ゆーちん]
凜が俺の首に巻き付けた腕にも力が入っていた。


体もピッタリくっついて、いやらしい気持ちにならない方が変だよね。


好きな子とキスして、好きな子が甘い声出してるのに、何の欲情もしない人がいたら見てみたいもんですよ。

⏰:08/12/12 12:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#205 [ゆーちん]
「…凜、ちゃん。」


離れた凜の唇から、小さな息がハァと零れた。


「…ん?」

「帰ろ。幸せすぎるくらいのお時間を、どうもありがとうございました。」

「…そう。」

「これ以上いると、止まらなくなりそうだしね。」

「別に我慢しなくていいのに。わざわざ小屋まで来たんだし。」

⏰:08/12/12 12:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#206 [ゆーちん]
「うん、でもまぁ…いいや。ごめんね、こんなとこ引っ張って来ちゃって。」

「どうしたの。さっきまでの威勢とは全然違うけど。そんな大人しくなっちゃってさ。」


暴走した自分にちょっと反省と、大人になった優越感でぼーっとしちゃっていた俺。

⏰:08/12/12 12:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#207 [ゆーちん]
手を繋ぎながら小屋から出て、杉浦家まで歩いた。


「じゃあまた明日ね。」


いつものように玄関でバイバイして、自分の家に帰ろうとしていた。


「あっ、ねぇ!」


凜が呼び止める。


「ん?」


凜は辺りをキョロキョロと見てから、俺に小声で問い掛けて来た。

⏰:08/12/12 12:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#208 [ゆーちん]
「何?」

「心さぁ。」

「うん。」

「SEXしたいと思わないの?」


そりゃー…ねぇ。


「えっ…いきなりどうしたの。」

「付き合って3ヵ月でしょ?なんでSEXしないのか不思議でさぁ。」

⏰:08/12/12 12:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#209 [ゆーちん]
じいちゃんばあちゃんに聞かれたら大変だもんな。


凜が確認していたけど、思わず俺も辺りを確認にしてしまった。


うん、誰もいない。


「いや、何つーかさぁ…。」

「童貞だから?」


凜は笑顔1つ見せない。


不思議そうな顔のまま。

⏰:08/12/12 12:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#210 [ゆーちん]
「それもそうだけど…」

「緊張する?」

「うん、まぁ…」

「大丈夫だよ。私、教えてあげるし。我慢しなくていいから。」


それはそれは嬉しいお言葉です。


「凜ちゃんは、今まで付き合ってどれくらいで…その…してたの?」

⏰:08/12/12 12:32 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#211 [ゆーちん]
「付き合ったその日にしたり、付き合う前にもした事もあった。大体1ヵ月もしないうちにヤられちゃってたかな。」


やっぱり都会には魔物がいるんだ。


何でそんなませてんのさ。


聞いてるこっちは恥ずかしいし、理解できないしで、倒れそうだわ。

⏰:08/12/12 12:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#212 [ゆーちん]
「つーか…俺は童貞だから手ぇ出さない訳じゃないよ。そりゃ緊張もしてるけど、凜ちゃんの事、大事だもん。」

「…え?」

「そんなヤるだけの為に、俺は凜ちゃんに彼女になってもらってるんじゃないし。」

「…そう、なの?」

「そうだよ。」

⏰:08/12/12 12:33 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#213 [ゆーちん]
そりゃさ、緊張もするよ?


タイミングもわかんない。


手順もわかんない。


興奮してムラムラしちゃう事もある。


でもさ、SEXって慌ててするもんじゃないじゃん。


お互いの気持ちが一致した時でいいじゃん。


キスと同じ。

⏰:08/12/12 12:34 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#214 [ゆーちん]
いつも俺が誘って、凜は嫌がってるけど、最後は凜ちゃんからもキスを求めて来てくれんじゃん。


それと同じで、お互い求め合えた時でいいんじゃないの?


上手く言えねぇけど、とにかく凜が大事だからさ。


こう考える俺は、やっぱりバカなのかな。

⏰:08/12/12 12:35 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#215 [ゆーちん]
凜は俯いて、少し黙っていた。


機嫌悪くさせちゃったかな。


「凜ちゃん?」

「そんなさ…」

「え?」

「そんな嬉しい事言わないでよ。初めて言われた。大事だなんて。」


嬉しいようで寂しい。


凜は今まで付き合った人に大事にされなかったのかな、って。

⏰:08/12/12 12:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#216 [ゆーちん]
同じ歳なはずなのに、俺の倍、辛い事を経験してるんだろうなって思う。


「ありがと。本当、嬉しい。つーか恥ずかしい。」

「別にお礼言われるような事じゃないけど…。」

「家、入るね。また明日ね。バイバイ。」

「うん、バイバイ。」

⏰:08/12/12 12:36 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#217 [ゆーちん]
凜は俯いたまま、家に入って言った。


そんな嬉しかった?


なんか、わかんないな。


凜ちゃんの恋愛に対しての価値観。


価値観とかえらそうなこと言ってるけど、これが原因で別れるって言うのもよくある事だし…。

⏰:08/12/12 12:37 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#218 [ゆーちん]
俺らは価値観ガタガタにズレてるみたいだけど、何とか大丈夫そう。


俺が凜の、凜が俺の歩幅に合わせようとお互い必死って感じだけどな。

⏰:08/12/12 12:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#219 [ゆーちん]
翌日から文化祭の準備が始まった。


盛大な事はできないけど、こじんまりやるのが、うちの学校の文化祭。


各学年…つっても3クラスしかないけど。


1年は劇、2年も劇、3年の俺らは作品展示。

⏰:08/12/12 12:38 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#220 [ゆーちん]
文化祭って言っても島の人がお客さんな訳で、交流会みたいな感じだけど。


「何で今年は劇じゃねぇの。」


竜が、画用紙をはさみで切りながら呟いた。


「ネタ尽きたらしい。」


ダンボールをカッターで切りながら大輝が答えた。

⏰:08/12/12 12:39 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#221 [ゆーちん]
「桃太郎まだしてねぇじゃん。」

「小1でしたよ。」

「そうだっけ。じゃあシンデレラは?」

「小6でした。」

「かぐやひめ。」

「小3。」

「一寸ぼうし、金太郎、白雪姫。」

「幼稚園から考えると、もう全部したんじゃない?」

⏰:08/12/12 12:40 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#222 [ゆーちん]
竜と大輝の会話を聞きながら過去を辿ると、確かにしたような記憶が。


「もっかいリセットしようぜ。凜ちゃんは初めてなんだし、今までのチャラにすればいいじゃん。」

「つーかもう作品展示に決まったし。今更文句言っても遅いよ、竜。」

「くっそー。ボケ担任め。」

⏰:08/12/12 12:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#223 [ゆーちん]
文化祭イコール劇という法則で育ってきたせいか、作品展示という目標では、どうも竜の気が乗らないらしい。


「私は逆に劇なんかした事ないよ。」


凜が言った言葉に、俺・竜・大輝・香奈は叫びながら驚いた。


「凜、劇した事ないの?」

「あんなじいちゃんばあちゃんが喜んでくれる催し、他にないぞ!」

⏰:08/12/12 12:41 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#224 [ゆーちん]
「文化祭にお年寄りは来ないからさぁ。」


苦笑いする凜。


「凜ちゃんの住んでた場所とこの島って、別世界みたいだよな。」


あ、大輝もそう思う?


俺もそう思ってたよ。


凜のいた場所、知りたいようで知りたくないな。

⏰:08/12/12 12:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#225 [ゆーちん]
文化祭の準備と、修学旅行の準備でとにかく大忙しだった。


授業中にコソコソと隠れながら文化祭の準備をしていると、先生におもいっきり頭殴られるし、みんなに笑われるし。


でも授業中も作業しないと、俺らの班だけ群を抜いて準備が遅かった。

⏰:08/12/12 12:53 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#226 [ゆーちん]
香奈がカンカンに怒って、俺と大輝に怒鳴り散らしていたけど全然はかどらない。


「それ難しいから私やったげるよ。心はこっちの簡単な方やって。」

「…凜、ちゃ…ん。」

「泣かないでね、うっとーしぃから。」

「…はい。」

⏰:08/12/12 12:53 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#227 [ゆーちん]
凜に助けられながら、何とか頑張って文化祭に向けて毎日作業した。


そして10月を迎えた俺達はラストスパートをかける事に。


「決めた、大輝んち集合して夜も作業するよ。」

⏰:08/12/12 12:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#228 [ゆーちん]
この香奈の一言で俺たちは学校が終わっても文化祭の作業をする事になった。


「やーだー!学校で頑張ってんじゃん!俺んち来てまでしなくてもさぁ…。」

「やだ、だぁ?誰のせいでわざわざ学校終わってまで集まらないといけなくなったと思ってんのよ!大輝と心がトロくさいからだよ!」

⏰:08/12/12 12:54 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#229 [ゆーちん]
香奈のお叱りに一同納得。


香奈も凜も頑張っているのに、どうして他の班より作業が遅れてるかって?


竜は文句ばっか言ってやる気なし、大輝はやる事が遅い、俺は細かい作業が苦手。


そう、俺たち3人のせいで凜と香奈に迷惑かけていたのは誰が見てもわかるものだった。

⏰:08/12/12 12:55 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#230 [ゆーちん]
こうして香奈の提案で始まった、放課後の作業。


大輝の家が使えない日は竜の家でした。


でもある日、大輝の家も竜の家も使えない事になってしまった。

「どうするよ。心の部屋じゃ狭いし、今日は辞める?」


と、大輝。

⏰:08/12/12 12:57 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#231 [ゆーちん]
「は?何言ってんの。私らに一日足りとも休む暇がない事ぐらいわかるでしょ?狭いだろうが何だろうが心の家でやるよ。」

「えー、マジかよぉ。」


香奈の言う事は絶対だった。


俺らに拒否権無しかよ、ってな。


まぁ逆らう勇気はないんだけどね。

⏰:08/12/12 12:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#232 [ゆーちん]
こうして今日の放課後は江森家に集合する事になった。


学校が終わり5人で俺の家へと向かう。


「ねぇ、みんな。」

「ん?」

「何?」


みんなに呼び掛けたのに、返事をしてくれたのは竜と大輝だけだった。


香奈と凜はクールに無視。

⏰:08/12/12 12:58 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#233 [ゆーちん]
「作業の前にまずは掃除からしないと、座る場所ないかもぉ…。」


そう言うと竜と大輝にまで無視されてしまった。


冷ややかな空気が5人を包む。


そんな時、香奈はボソッと呟いた。


「どこまで足引っ張ったら気ぃ済むの。」

「…すみません。」


恐縮しながら歩いた帰り道。

⏰:08/12/12 12:59 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#234 [ゆーちん]
江森家につくと、母ちゃんが出迎えてくれた。


「あら!みんなお揃いでどうしたの?」

「文化祭の準備すんだよ。邪魔しに来るなよ!」

「はいはい。…あら?この子、どちらさん?」


母ちゃんは凜に問い掛けた。

⏰:08/12/12 13:00 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#235 [ゆーちん]
「はじめまして。杉浦凜って言います。6月にこの島へ引っ越して来たんです。」

「あぁ、そう!杉浦って事は、あの杉浦のじいちゃんばあちゃん家で住んでるの?」

「はい。」


母ちゃんと話す凜の顔は、俺には見せた事のない澄ました笑顔だった。


「おばちゃん。」

⏰:08/12/12 13:01 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#236 [ゆーちん]
「何よ、大輝。つーか、あんた久しぶりだね。」


大輝がニヤニヤしながら母ちゃんに言った。


「凜ちゃん、心の彼女なんだよぉ。」


…大輝。


お前、嫌い。

⏰:08/12/12 13:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#237 [ゆーちん]
「えぇぇ!心の彼女?えっ、噂の心の彼女?何それ!こんな可愛い子と付き合ってんの?信じらんない。」


信じらんない?


俺だって信じらんないよ!


こんなテンションの高い母ちゃんがいるって凜ちゃんにバレた事が!

⏰:08/12/12 13:02 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#238 [ゆーちん]
「もぉー、母ちゃん、うるさい。凜ちゃんビックリしちゃってるじゃんかぁ。」


大輝はいつのまにか香奈と竜と先に、俺の部屋に逃げていた。


言い逃げ大輝。


覚えとけよ。

⏰:08/12/12 13:03 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#239 [ゆーちん]
「心、あんたなんで内緒にしてたのよ!」


それはね、母ちゃん。


あんたが騒ぐからだよ。


うるさいんだもん。


本当にもう勘弁して。


「凜ちゃん、だっけ。心に変な事されたらすぐに殴るなり蹴るなりするのよ?」

「あぁ、はい。」

⏰:08/12/12 13:04 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#240 [ゆーちん]
凜は笑ってたけど、絶対母ちゃんのテンションに引いてるよ。


もぉー、母ちゃんのバカ!


騒がしい母親がいるせいで嫌われたらどうすんだよ!


「凜ちゃん、俺らも部屋行こ。」

「あ、うん。」

⏰:08/12/12 13:05 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#241 [ゆーちん]
俺は凜を連れて、無理矢理母ちゃんから逃げた。


「ゆっくりしてってね!」

「はい、ありがとうございます。」


いつも素っ気ない凜も、こういう時は幼い少女。


「…緊張した。」

「え?何が。」

「だって、心のお母さんだし。」


緊張だってするんだよ。


あの凜ちゃんが!

⏰:08/12/12 13:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#242 [ゆーちん]
それもうちの母ちゃんで!


何か割に合わない気が…。


部屋に入ると3人は勝手に作業を始めていた。


「凜ちゃんも適当に座って。」

「うん。」

⏰:08/12/12 13:06 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#243 [ゆーちん]
「おいコラ大輝。」

「アハハ!おばちゃんめちゃめちゃテンション上がってたじゃん。」

「ああなるから内緒にしてようと思ったのに。」

「え、何。凜って心の家来るの初めてなの?」


香奈が問い掛けると、凜は首を縦に振った。

⏰:08/12/12 13:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#244 [ゆーちん]
「マジ?いつもどこで遊んでんのさ。」

「海とか本島だよね!」


凜が答える前に俺が答えると、『お前に聞いてねぇよ!』と香奈に叱られた。


「まぁこんな汚い部屋だと彼女呼ぶにも呼べねぇわな。」


竜にいじわる言われながら俺は隣に腰を降ろした。

⏰:08/12/12 13:07 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#245 [ゆーちん]
「つーかさ、おばちゃんが騒ぐから彼女を紹介しないってのも、凜からすれば寂しい話だよね。」


香奈は作業しながら話した。


「理由はどうあれ、親に紹介したくないって事は女からすれば寂しいもん。だよね、凜。」


俺は香奈の言ってる事がよくわからなかった。

⏰:08/12/12 13:08 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#246 [ゆーちん]
今まで親に彼女を紹介しようなんて思った事なかったから。


凜を大事にすると言っておきながら、そういうところはまだまだ子供だ。


全然凜の気持ちを考えてあげられなかったのかも。

⏰:08/12/12 13:09 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#247 [ゆーちん]
「そう…なんだ。凜ちゃんごめんね。別に変な意味はなかったんだよ。ただ母ちゃんが騒ぐとうるさいから内緒にしてただけで。」

「ううん。明るくていいお母さんじゃん。それに私もあんまり親への紹介とかの意味がわかんないんだよね。」


香奈は『そうなの?』と驚いていた。

⏰:08/12/12 13:10 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#248 [ゆーちん]
「ちゃんとした付き合いってした事ないからさ。彼氏の親に会う事もなかったし。だからさっきはめちゃくちゃ緊張しちゃったよ。」


そう言って笑った凜はたまらなく可愛かった。


キスしてぇ。


…って今言ったら殴られそうだね。

⏰:08/12/12 13:11 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#249 [ゆーちん]
文化祭の準備のせいで、あの小屋でキスしたキリ、俺と凜は触れ合っていなかった。


手を繋ぐだけでいいから、凜に触れたかった。


みんながいるから触れられない。


早く文化祭が終わればいいのにと思う一方で、作業が間に合わないかもしれないから文化祭まだ来るなっつ思う気持ちもある。

⏰:08/12/12 13:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#250 [ゆーちん]
わがままな俺。


その日は8時まで作業した。


母ちゃんが作ったチャーハンを5人で食べてから解散。


明日もうちでするんだって。


本当に終わるのかな、この作業。

⏰:08/12/12 13:12 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#251 [ゆーちん]
不安や諦めもあったけど、何とか間に合った。


文化祭当日。


素晴らしい作品が運動場に飾られた。


ダンボールで作った大きな地球儀。


画用紙や折り紙で大陸や海を作ったり、飾り付けをして華やかにする。

⏰:08/12/12 13:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#252 [ゆーちん]
まさに汗と涙の3年生の作品は、堂々と運動場で来客を見下ろしてくれている。


「あ、あそこ俺が貼った大陸だ!」


地球儀に向かって指さすと凜は言った。


「どうりで貼り方が汚いはずだ。」


たまには褒めてくれてもいいんじゃないですか、凜ちゃんよ。

⏰:08/12/12 13:13 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#253 [ゆーちん]
劇をしない文化祭はやっぱりどこか暇だった。


だけど作品を完成できた達成感には満ち溢れていた。


「心。」

「はい?」

「今日文化祭終わったらウチ来る?」

「…え?」


まさかのお誘い!


まさかの杉浦家!


まさかの…凜ちゃんの部屋。

⏰:08/12/12 13:16 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#254 [ゆーちん]
「心の家ばっか言ってて、うちには来た事ないからさ。」

「行った事ないから行く!てゆーか行った事はあるけど。」

「私の部屋は初めてでしょ?」

「うん!行く行く行く!」

「わかったから、その子供みたいな反応辞めて。恥ずかしい。」

⏰:08/12/12 13:17 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#255 [ゆーちん]
1年生の劇、2年生の劇を見て、カラオケ大会的なものもして、文化祭終了。


「凜ちゃん帰ろう!」


俺が凜の席に駆け寄ると、後ろから香奈が言った。


「何言ってんの。後片付けサボる気?」


おっと。


俺とした事が、先走りすぎました。

⏰:08/12/12 13:20 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#256 [ゆーちん]
凜ちゃんに『バカ。』と言われたけど、楽しみな事が待っているとどんなに面倒な後片付けでも楽しかったりする。


「せっかく作ったのに燃やすの勿体ないよなー。」

「記念に写真撮っとくか。」


竜の提案で地球儀の前で5人で写真を撮った。


一生の宝。

⏰:08/12/12 13:21 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#257 [ゆーちん]
運動場にキャンプファイヤーのような火が立ち上る。


地球儀を焼き、作品とおさらば。


みんな炎を見ながら騒いでいた。


「凜ちゃん。」

「ん?」

「今のうちに帰っちゃおうよ。」

「抜け駆けって奴?」

「そう。」

⏰:08/12/12 13:22 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#258 [ゆーちん]
「そんなに私の部屋来たいの?」

「行きたい行きたい!」

「本当、変態バカだね。」


凜が手を差し延べたので、俺はその小さな手を握り締めた。


竜や大輝、香奈には何も言わないで学校から抜け出して、杉浦家に向かった。

⏰:08/12/12 13:23 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#259 [ゆーちん]
近道を使い、杉浦家に到着。


「やべぇー!緊張して来た。」

「別に何もないよ。」


凜が玄関のドアを開けると、家の中は電気が消えていた。


「お邪魔しま〜す。」

「おじいちゃん達、まだ帰って来てないみたい。」

⏰:08/12/12 13:24 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#260 [ゆーちん]
杉浦のじいちゃんばあちゃんも文化祭に来ていたらしい。


キャンプファイヤー見ながらみんなと喋ってんのかな?


何にせよ、杉浦家には俺と凜の二人きり。


階段を上がり、ずっと物置だった部屋が今の凜の部屋になっていて、俺の知ってる杉浦家じゃない気がして妙に緊張した。

⏰:08/12/12 13:26 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#261 [ゆーちん]
凜の部屋は甘い匂いがした。


「何でこんないい匂いすんの?」

「お香焚いてるから。」

「なるほど!俺も今度、本島に行ったらお香買お。」

「んー、じゃあさ。」

「え?」


凜は引き出しの中を漁り、1つの袋を取り出した。

⏰:08/12/12 13:27 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#262 [ゆーちん]
「これあげるよ。前まで使ってたんだけど今はもう使わないし。お香立ても入ってるよ。」

「…凜ちゃん。」

「何でいつもすぐに泣きそうな顔になるのよ!」

「だって〜!凜ちゃんが俺にプレゼントなんて初めてだよ?」

「…そうだっけ。」

⏰:08/12/12 13:28 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#263 [ゆーちん]
凜は袋を持って、ベットにもたれて座る俺の隣に腰を降ろした。


「はい、匂い嗅いで。」


凜が袋を開けると、部屋とはまた違う爽やかな匂いがした。


「超いいじゃん。」

「でしょ?だから、はい。あげる。」


袋を受け取り『ありがとう。』を何度も言った。

⏰:08/12/12 13:29 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#264 [ゆーちん]
何度も何度も言う俺に、凜は『わかったよ。』と笑ってくれた。


それから文化祭の話をしたり、島の話をしたり、修学旅行の話をした。


途中テレビをつけたが、夕方はニュースばかりで面白い番組はやっていなかったので、音楽を流してもらった。

⏰:08/12/12 13:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#265 [ゆーちん]
「洋楽とか聞くんだ。」

「…うん。心は聞かないの?」

「あんまり。」

「貸して欲しかったらいつでも貸したげるよ。」

「凜ちゃん…優しいねぇ。」

「またその顔。泣きそうな顔が武器とでも思ってんの?」


思ってないよ。


本当に、泣きそうなくらい嬉しいんだよ。

⏰:08/12/12 13:30 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#266 [ゆーちん]
「でもいい!聞きたくなったら凜ちゃんの部屋にくれば聞けるでしょ?」


そうだよ。


だって俺ら恋人だし〜!


「そんな迷惑な行動しないでよ。」


…また断られました。


「えぇー!何でさぁ!いいじゃんか!」

⏰:08/12/12 13:31 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#267 [ゆーちん]
「うるさいなぁ、もう。わかったよ。聞きたきゃいつでも来ればいいよ!」


叱られたけど…結果オーライ?


「やった〜。」

「本当、心みたいな人と付き合ってると退屈しないわ。」


凜ちゃん。


そういう嬉しい事は笑顔で言って欲しいんだけど。

⏰:08/12/12 13:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#268 [ゆーちん]
でもまぁいいや。


褒められてるのに変わりはない。


「俺も凜ちゃんみたいな子、初めてだよ。」

「ふーん。私みたいな性格の悪い子とは付き合った事ないんだ。」

「そうじゃないよ。それに凜ちゃん性格悪くないし。」

「お人よしだね。」

⏰:08/12/12 13:42 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#269 [ゆーちん]
「凜ちゃんみたいな素直な子、初めて。」

「…素直?私が?」

「うん。思ってる事ちゃんと言ってくれるもん。」


言い方は冷たいけど、ちゃんと自分の意見を言ってくれる。


元カノとかは遠慮して意見とかぶつけてくんなかったし。


凜ちゃんみたいにちゃんと言ってくれる子の方が、俺には合うみたい。

⏰:08/12/12 13:43 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#270 [ゆーちん]
「そんなの褒められたの初めて。」

「初めて?」

「初めて。」

「俺も初めて。初めてだらけだね、俺ら。」

「そうだね。」


少しだけ凜に近寄ると触れている右半身が熱く思えた。


人肌の温かさと、緊張の熱さ。

⏰:08/12/12 13:44 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#271 [ゆーちん]
「凜ちゃん。」

「ん?」


我慢できず、振り向いた凜の唇を奪っていた。


久しぶりのキスを凜は嫌がる事なく受け入れてくれた。


「…ごめん。」

「何が?」

「いきなりキスして。」

「別に。嫌じゃないよ。」


そう言って凜から俺にキスをくれた。

⏰:08/12/12 13:45 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


#272 [ゆーちん]
洋楽が優しく俺らを包む。


初めて部屋に来て、初めてプレゼントをもらって、おまけに幸せなキスまでさせてもらって。


文化祭の準備を頑張った俺へのご褒美ですか?


だとしたら最高です。


凜にも何かご褒美あげないと…。

⏰:08/12/12 13:46 📱:SH901iC 🆔:ufvbrGno


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