冷たい彼女
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#161 [ゆーちん]
2度目のキスは幸せすぎて涙が止まった。
普通、女の子が泣いて男の子がリードするもんだよな。
見事に逆。
でもいいや。
幸せなんだから。
もうどっちがどっちでもいい。
海だけが俺らの真逆キスシーンを見ている、そんな夜だった。
:08/12/12 11:19 :SH901iC :ufvbrGno
#162 [ゆーちん]
○●○●○●○
部屋
○●○●○●○
:08/12/12 11:28 :SH901iC :ufvbrGno
#163 [ゆーちん]
凜の彼氏になって2ヵ月が経った。
付き合って3週間目の夜にキスをしてから、何も進展なし。
童貞の俺に、凜を誘う度胸なんかない。
キスなら大丈夫。
「凜ちゃん。」
「ん?」
「チューしよ。」
「は?」
「しようよ、ね?」
「変態…」
:08/12/12 11:29 :SH901iC :ufvbrGno
#164 [ゆーちん]
そう言って、柔らかな唇を奪う俺。
凜からキスを誘われた事なんかないけど、俺が誘うと拒否された事は今のところ無し。
そう。
俺らは順調だった。
8月になり夏休み真っ最中の俺は、毎日凜をデートに誘ってた。
:08/12/12 11:30 :SH901iC :ufvbrGno
#165 [ゆーちん]
「明日は?」
「無理。香奈と本島行く。」
「じゃあ明後日。」
「無理。澪んち泊まりに行く。」
「じゃあ来週。」
「千夏と遊ぶ。」
…信じてもらえないかもだけど、俺ら順調なんだよ?
「…ごめんね、心。」
すねる俺の手を握ってくれた凜。
:08/12/12 11:30 :SH901iC :ufvbrGno
#166 [ゆーちん]
そんな可愛い顔で可愛い事されちゃ、許すしかないじゃん。
「凜ちゃんからチューしてくれるなら許してあげる。」
「…じゃあ別に一生許してもらわなくてもいいや。」
「何それ!」
そう言って立ち上がり、俺の手を離した凜。
そんなに自分からキスしたくないの?
:08/12/12 11:32 :SH901iC :ufvbrGno
#167 [ゆーちん]
冷たいんだか照れ屋なんだか…可愛い奴。
俺を見下ろす顔もこれまた絵になる!
…って、マジで凜ちゃんにベタ惚れだな、俺。
「はぁ…しょうがない彼氏だわ。」
凜は呆れていた。
でも笑ってる。
呆れ過ぎて笑ってるんだ。
:08/12/12 11:33 :SH901iC :ufvbrGno
#168 [ゆーちん]
それでもいい。
どんな笑顔でも、俺は凜が笑っているのが嬉しい。
思わず手を伸ばし、凜の頭を自分の方に引っ張り、唇を押し当てた。
夜風のせいで凜の髪が俺の頬に触る。
シャンプーの匂いがした。
長いキスだった。
:08/12/12 11:34 :SH901iC :ufvbrGno
#169 [ゆーちん]
せっかく彼女のいる夏休みなのに、竜や大輝と過ごした時間の方が長かった。
あっという間に過ぎた夏休みだったけど、思い出はたくさんある。
まずはクラスのみんなで海で遊んだ事。
凜は日焼けが嫌だって言うから木陰で見学。
『凜の水着姿が見たい!』ってわがまま言ってたら香奈に尻を蹴られたっけ。
:08/12/12 11:34 :SH901iC :ufvbrGno
#170 [ゆーちん]
他は本島デートかな。
2人で買い物して、ご飯食べて、フェリーの甲板でキスをした。
何度してもキスは飽きない。
毎回ドキドキする。
凜もそうだといいな。
:08/12/12 11:35 :SH901iC :ufvbrGno
#171 [ゆーちん]
2学期が始まった。
2学期は楽しい事だらけ。
でもハード。
体力持つかなって今から心配だ。
「凜ちゃん!同じ班なろうね〜。」
「…は?主語が抜けてるから何の事かわかんないんだけど。」
そうですね。
興奮しすぎて主語が抜けました。
:08/12/12 11:36 :SH901iC :ufvbrGno
#172 [ゆーちん]
「ごめん。あのね、修学旅行の班!」
「修学旅行…。」
「そっ!来月に修学旅行があるでしょ?その自由行動は5〜6人ぐらいで班作るの。」
「あぁ。なるほど。」
「で!男女混合の班OKだから一緒になろうねって言う話。」
:08/12/12 11:37 :SH901iC :ufvbrGno
#173 [ゆーちん]
俺の笑顔のお誘いに、平然と冷たい目で聞いていた凜。
「だってさ。どうする、香奈?」
いつも凜の隣に座ってる香奈。
こいつも冷たい、つーか怖い目で俺を見ていた。
凜に話しを振られた香奈は言った。
「やだ。」
:08/12/12 11:39 :SH901iC :ufvbrGno
#174 [ゆーちん]
「何でさ!香奈に決められる程、俺らの愛は弱くないよ!」
とは言ってみたものの…
「香奈が嫌だってさ。残念。私のことは諦めて。」
凜ちゃんまでそんな事言うんだもんなぁ…。
いじけるなぁ。
泣けてくるなぁ。
:08/12/12 11:40 :SH901iC :ufvbrGno
#175 [ゆーちん]
「まぁまぁ。香奈も凜ちゃんも、もうちょっと考えてやってよ。」
そんな俺に見兼ねたのか、助け舟を出してくれたのが大輝だ。
「俺も竜も彼女がいるじゃん。で、香奈も彼氏いるっしょ?心と凜ちゃんも付き合ってるって事はだよ?」
:08/12/12 11:41 :SH901iC :ufvbrGno
#176 [ゆーちん]
「…何よ。」
大輝の話しに香奈は食いついてくれた。
その調子だ!
頑張って、中橋大輝様!
「フリーの子と組むよりいいんじゃない?香奈の彼氏も心配しないだろうし。同じ班の子はみんな彼女がいるから安心して、みたいな。」
「まぁ…確かにね。」
:08/12/12 11:43 :SH901iC :ufvbrGno
#177 [ゆーちん]
「俺と竜の彼女も同じ班の子は彼氏持ちだから心配すんなって言ったら、安心してたし。香奈の彼氏も安心してくれんじゃねぇかなって。」
「…え。大輝、もう彼女に私たちと組む前提で話したの?」
「あ、うん。だって心が大丈夫って言い切るんだもん。」
こらこら、中橋。
そんな余計な事言うんじゃないよ!
:08/12/12 11:44 :SH901iC :ufvbrGno
#178 [ゆーちん]
凜は鼻で笑いながら言った。
「全然大丈夫じゃないじゃん。断られてるのに。」
もう、竜に頼るしかないよね。
「竜ぅ〜。」
「お前ら見てると情けないわ。」
「凜ちゃんと香奈、説得してよぉ〜。」
:08/12/12 11:45 :SH901iC :ufvbrGno
#179 [ゆーちん]
俺と大輝じゃ、香奈に敵わない。
昔から影の支配者と言われていた向井竜様にお願いするしかないよな。
竜と香奈、凜の3人が話しているのを後ろで待つ。
『口を挟んで墓穴掘るかもしんねぇから、どけ!』と竜様がおっしゃったので。
「心。」
香奈が呼ぶ。
:08/12/12 11:55 :SH901iC :ufvbrGno
#180 [ゆーちん]
「はい!」
「凜にべったりしすぎた時点で飛行機から落下さすからな。」
だからさ、香奈が言ったら洒落になんないって。
「わかってる!凜ちゃんと同じ班になれるだけで幸せなんでっ!」
「じゃあ…とりあえずOKって事で。」
:08/12/12 11:56 :SH901iC :ufvbrGno
#181 [ゆーちん]
竜ったら何を言ってくれたのかしら。
彼は天才だ。
凜と香奈を丸め込んだ竜は『トメ食堂おごれよ。』と言ってきた。
…もちろん。
喜んでおごらせてもらいますとも!
ありがとう、竜、香奈、そして凜ちゃん!
楽しい修学旅行になりそうだね。
:08/12/12 11:56 :SH901iC :ufvbrGno
#182 [ゆーちん]
ウキウキ状態の俺に、香奈は言った。
「つーかさぁ旅行の前に文化祭じゃん?その文化祭の班も確か旅行と同じ班でするんじゃなかったっけ?」
あぁ!
そういえば担任がそんな事言ってたっけ。
「いいじゃん!この5人なら完璧だって。」
:08/12/12 11:57 :SH901iC :ufvbrGno
#183 [ゆーちん]
「ふっざけんな。竜はどうせ何もしないし、大輝と心は足手まとい。私と凜ばっか働かなきゃなんない気がする!」
「そんな事ない!足手まとわないようにするよ。」
「俺も!心よりは役に立つ自信ある。」
「本当かよ〜、もう。先が思いやれるってこの事だな。」
:08/12/12 11:58 :SH901iC :ufvbrGno
#184 [ゆーちん]
そんな風にして決まった俺たちの班。
竜、大輝、香奈、凜、俺。
最強だな。
文化祭も修学旅行も絶対楽しい思い出作れそう!
放課後、俺はいつも通り凜と一緒に下校した。
「心。」
「ん?」
「私、心みたいなタイプ初めてだよ。」
「へ?初めて?何が?」
:08/12/12 11:59 :SH901iC :ufvbrGno
#185 [ゆーちん]
俺の隣を歩いてくれる凜は、真っ直ぐ前だけを見ていた。
「みんなのいる前で告白とか、同じ班なろうとか。」
「俺、隠れてこそこそできるタイプじゃないのかも。」
「女の子みたいだよね。男らしい仕草ゼロだもん。」
:08/12/12 12:00 :SH901iC :ufvbrGno
#186 [ゆーちん]
「えっ!それはショックだわ。やっぱ凜ちゃんも、彼氏が男らしくないと嫌だよね?」
凜の横顔は、本当に見取れてしまうぐらい綺麗で、思わず触りたくなるようなサラサラとした髪が顔の横でなびいている。
「別に。心みたいな優しい人と付き合うの初めてだからちょっと違和感あるだけ。」
:08/12/12 12:01 :SH901iC :ufvbrGno
#187 [ゆーちん]
「違和感?」
「人前で色々と誘われたりする事ってなかったから。ナンパ以外。」
「えっ!凜ちゃんナンパされた事あるの?」
「あるよ。心はないの?逆ナンされたり。」
「ないない。ナンパした事ないし、された事もない。」
「ふーん。やっぱこの島はいいところだよ。」
:08/12/12 12:02 :SH901iC :ufvbrGno
#188 [ゆーちん]
つくづく思う。
凜が住んでいたところと、この島は別世界のようだって。
一体、都会にはどんな魔物がいるんだ!とまで思ってしまう。
都会の人は、その魔物に操られ過ぎだよ。
たまにはこういう島にきて、のんびりするのも悪くないよぉ。
:08/12/12 12:03 :SH901iC :ufvbrGno
#189 [ゆーちん]
「男らしくならなくてもいいから、ずっと優しいままでいて。変わらないで。ずっと今のままの心でいてくれれば、それでいいよ。」
凜ちゃん。
その言葉、笑顔で言われてたら、俺また泣いてたかもしんない。
:08/12/12 12:04 :SH901iC :ufvbrGno
#190 [ゆーちん]
無表情でサラッと言っただけなのに、俺の胸はキュッと締め付けられて、嬉しくて嬉しくてぶっ倒れそうだもん。
「うん!凜ちゃん大好きなんだけど!」
「あぁ、そう。そりゃどうも。」
「キスしてもいいですか?」
「こんな道端でそんな言葉叫ばないでよ。恥ずかしいなぁ。」
:08/12/12 12:04 :SH901iC :ufvbrGno
#191 [ゆーちん]
「でも、こんな俺に惚れたんでしょ?」
「…。」
凜の目は、やっと俺に向けられた。
「違うの?」
「自惚れるなよ、童貞。」
そう言って笑った顔は、どこか香奈に似ていた。
あの見下す感じ。
やだよ。
凜ちゃんまで、怖い香奈に似ていかないでね。
:08/12/12 12:06 :SH901iC :ufvbrGno
#192 [ゆーちん]
「何それー。」
「キスならこないだした。」
「俺は毎日でもしたいの!」
「あっそ。」
素っ気ない凜。
何だか寂しい気分になった。
「ちょっと来て!」
俺は凜の手を引っ張って、走り出した。
:08/12/12 12:07 :SH901iC :ufvbrGno
#193 [ゆーちん]
「えっ、ちょっと!何?」
驚く凜を引っ張って、俺は道具小屋に向かった。
畑の近くに必ずある道具小屋は、名前の通り道具が置いてある。
島に、いくつものある道具小屋の中でもお気に入りの場所があった。
:08/12/12 12:08 :SH901iC :ufvbrGno
#194 [ゆーちん]
小さい頃、竜たちと秘密基地だと言って、よく集まったっけ。
土クサイ小屋は、俺の懐かしい気持ちを蘇らせてくれた。
「何、ここ。」
「小屋。道端じゃないよ。」
「は?何言って‥」
「キスしたい!」
凜は驚いていた。
:08/12/12 12:08 :SH901iC :ufvbrGno
#195 [ゆーちん]
そりゃそうだ。
俺がキスがしたいがために、わざわざ小屋まで引っ張られて来たんだもんな。
俺だってちょっとビックリ。
「ここなら誰にも見られないから。小屋の持ち主も今の時間なら来ないよ。」
ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。
:08/12/12 12:09 :SH901iC :ufvbrGno
#196 [ゆーちん]
そこまでしてキスしたいの?って嫌がられてるんじゃないかって、心配にもなった。
だけど凜は笑ってくれた。
「やっぱり、心みたいなタイプは初めてだわ。こんな面白い事してくれるの、後にも先にも心しかいないよ。」
:08/12/12 12:10 :SH901iC :ufvbrGno
#197 [ゆーちん]
「…それは褒め言葉?」
「さぁ?どうだろ。自分で考えたら?」
そう言って笑う凜の腕は、俺の首に絡み付いて来た。
「どっちだっていいや。凜ちゃん笑ってくれんなら。」
お互いの目が閉じ、唇が重なった。
:08/12/12 12:11 :SH901iC :ufvbrGno
#198 [ゆーちん]
凜の小さな体を抱きしめると、守ってやらないとって思わされる。
凜はいいって言ったけど、男らしくならないといけないのかなぁ…。
なんて考えていると、凜のいきなりの行動に思わず目を開いてしまい、唇を離してしまった。
凜はキョトンとした顔で俺に言った。
:08/12/12 12:12 :SH901iC :ufvbrGno
#199 [ゆーちん]
「え…舌入れられるの初めて?」
凜のキスはあまりにも大人っぽくて、思わず腰が引けてしまった。
頭を縦に振ると、凜は『嫌だった?』と聞いてきた。
「嫌とかじゃないけど…びっくりした。」
「元カノとキスとかしなかったんだ。」
:08/12/12 12:13 :SH901iC :ufvbrGno
#200 [ゆーちん]
「いや、キスはしたけど…今みたいなのはした事ない。」
「そう。ごめん。」
「え、謝んないでよ。つーかもっかい!」
俺がそうお願いすると、凜は笑った。
「変態度、高まって来たね。」
「え、そう?」
「バカは嫌いじゃないよ。」
:08/12/12 12:15 :SH901iC :ufvbrGno
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