冷たい彼女
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#382 [ゆーちん]
開いたままのドアから、家の中に向かって俺は叫んだ。


「母ちゃーん!ちょっと来て!」

「えー、何?」


卒業式後の母ちゃんは、まだ着替えもせずに、ちょっと着飾ったままの格好だった。


「写真撮って。」

「写真?」

⏰:08/12/13 16:49 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#383 [ゆーちん]
外に出てくると、母ちゃんに気付いた凜は笑顔で頭を下げた。


「あぁ、凜ちゃん!」

「こんにちは。」

「写真って凜ちゃんと?」


母ちゃんの質問に俺は低い声で答えた。


「こういう写真は普通、校門前で撮るんだけどなぁ。」

⏰:08/12/13 16:50 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#384 [ゆーちん]
母ちゃんは場所に文句があるらしく、なかなかシャッターを押してくれなかった。


「海をバックにしようよ。」


凜の提案に母ちゃんは食いつき、ほんの数歩だけ歩いて、俺らの背景を海と決めた。


「うん。今日は天気いいから海も良い感じだわ。」

「んじゃ撮って。」

「…はい、ポーズ。」

⏰:08/12/13 16:51 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#385 [ゆーちん]
カメラが光る。


ボタン一つで何十年も先まで思い出が作られるのは、本当すげぇ話だよな。


「もう一枚ね。」


ポーズを変えて、もう一枚。


「はい、OK!」

「ありがとうございます。」


2枚を撮り終えた母ちゃんは言った。

⏰:08/12/13 16:52 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#386 [ゆーちん]
「心、撮って。」

「は?」

「私だって凜ちゃんと撮りたいもん!」

「何でさ?」

「記念よ!」


隣に彼氏の母親を迎えた凜は戸惑っていたが、すぐにいつもの笑顔を咲かせた。


「はい、ポーズ。」


撮り終えると、今度は凜。

⏰:08/12/13 16:53 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#387 [ゆーちん]
「親子で撮ったげるね。」


俺は反対した。


だけど女2人に無理矢理立たされて、強引ながらも笑顔を咲かせて、母息子という珍しいショットもおさめた。


「んじゃ凜ちゃん送ってくるわ。」

「いいよ。私が勝手に来たんだし一人で帰る。」

⏰:08/12/13 16:53 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#388 [ゆーちん]
凜は珍しく遠慮した。


それを見ていた母ちゃんは俺の頭を叩いてきた。


「バカ!」

「痛っ!」

「彼女を送っていかない男なんか、男じゃないね。」

「送っていかないなんて言ってないじゃん!」

「凜ちゃんも!遠慮なんかしないでいいのよ。こんなバカ息子でいいなら、いつでもコキ使ってちょうだい。」

⏰:08/12/13 16:54 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#389 [ゆーちん]
「あっ…はい。」


さすがの凜もうちの母ちゃんのパワフルさには慣れていなくて、圧倒されていたみたいだった。


「じゃあ凜ちゃん行こう。」

「あ、うん。ありがと。」

⏰:08/12/13 16:55 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#390 [ゆーちん]
母ちゃんにわざわざお礼を言ってから、凜は俺の隣まで追い付いて来た。


「ごめんね。うっさい母ちゃんで。」

「ううん。私、おばさん好きだよ。」

「そういえば凜ちゃんの両親、式に来なかったね。」

「うん。忙しいんだって。」

⏰:08/12/13 16:55 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


#391 [ゆーちん]
「寂しいでしょ?」

「別に。おじいちゃん達が来てくれたもん。」


本当は寂しいに決まってる。


これは俺みたいにカッコつけてるんじゃない。


納得した上での寂しさだったんだろう。


凜は俺より、うんと大人だ。

⏰:08/12/13 16:56 📱:SH901iC 🆔:1vm0Oe8g


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