冷たい彼女
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#430 [ゆーちん]
ひたすら海で騒いだ後、辺りが真っ暗になって来たので解散。
またな、って言ってバイバイした。
俺は凜を送って行く。
手を繋ぎながら。
「寒い〜。凜ちゃんの手、暖かい。」
「水なんか触ってるからだよ。」
俺の冷たい手を、凜の小さな暖かい手が包んでくれていた。
:08/12/13 23:20 :SH901iC :1vm0Oe8g
#431 [ゆーちん]
「あ、心?」
「はぁい?」
「卒業祝いあげる。」
「ん?卒業祝い?」
「…はい。」
目の前に差し出されたのは、鍵。
「鍵?」
「春から私が住む部屋の鍵。あげる。」
:08/12/13 23:21 :SH901iC :1vm0Oe8g
#432 [ゆーちん]
冷たい金属が、せっかく凜のおかげで温もりかけていた俺の手に触れた。
「えっ、つーか、これっていわゆる…」
「合い鍵だよー。無くすなよー。」
「ちょっと待って。マジだめだって。」
立ち止まってしまった俺。
凜は笑っていた。
「何がダメ?そんな泣いてちゃ、私が泣かせたみたいに思われるじゃん。」
:08/12/13 23:22 :SH901iC :1vm0Oe8g
#433 [ゆーちん]
「凜ちゃんが泣かせたんだよ…。」
「覚えがないなぁ?」
「…ありがと。本当、嬉しい。」
凜が俺の顔を覗き込みながら言った。
「私も嬉しい。鍵一つで泣いてくれるなんてさ。」
:08/12/13 23:22 :SH901iC :1vm0Oe8g
#434 [ゆーちん]
凜の笑顔。
凜の手の温もり。
凜の言葉。
そして、鍵の冷たさ。
距離が何だよ。
そんなの、同じ海の上じゃん。
寂しいなんて言ってらんない。
こうやって、いつでも会える機会を与えてくれたんだから、悲しんでちゃバチが当たる。
:08/12/13 23:23 :SH901iC :1vm0Oe8g
#435 [ゆーちん]
「引っ越しの日、笑顔で見送ってあげられる気がする。」
「それはよかった。みんなの前で泣かれちゃたまんないもん。」
「寂しくなったら、これでいつでも会いに行っていい?」
「その為の合い鍵なんだけど。」
:08/12/13 23:24 :SH901iC :1vm0Oe8g
#436 [ゆーちん]
「凜ちゃんも寂しくなったら、すぐに俺んち来るんだよ?うち、鍵はいつでも開いてるから。」
「アハハッ。知ってる。」
暗くなった道で、軽くキスをした。
軽くだったのに、どんどん止まらなくなった。
「私も卒業祝いちょうだいよ。」
「何も持ってないんだけど。」
:08/12/13 23:24 :SH901iC :1vm0Oe8g
#437 [ゆーちん]
「…心が欲しい、っていうリクエストは却下される?」
こうやって、大人っぽい色気を出す凜は本当に同じ歳なのか不思議に思う。
あんな言葉、反則でしょ。
「凜ちゃんち行っていい?」
「…いいよ。」
:08/12/13 23:25 :SH901iC :1vm0Oe8g
#438 [ゆーちん]
杉浦家まで凜の手を引っ張って走った。
凜は『走らなくても私、逃げないよ。』って笑ってた。
何だかおかしくて、二人で大笑いしながら走った。
「ただいま〜。」
居間にいるじいちゃんばあちゃんに顔を見せてから、凜の部屋に直行した。
:08/12/13 23:26 :SH901iC :1vm0Oe8g
#439 [ゆーちん]
「心ってポーカーフェ‥」
最後まで言い終わる前に俺は凜の言葉を邪魔した。
怖いくらい凜が好き。
怖いくらい凜の匂いが好き。
そんな事思ってると、止まったはずのものが滲んで来た。
唇を離した凜が笑った。
:08/12/13 23:26 :SH901iC :1vm0Oe8g
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