冷たい彼女
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#336 [ゆーちん]
「嘘でもいいから、引き止めるような言葉、聞きたかったんだけどな。」
凜はそう言って、俺の前を横切って行った。
嘘なんかつけるわけないじゃん。
一人きりになった海は、泣けてくるほど寒かった。
:08/12/12 23:07 :SH901iC :ufvbrGno
#337 [ゆーちん]
凜に置き去られて正解だ。
でも何かショックでさ。
可愛らしいピンクの紙袋に入れてラッピングされていたチョコレートを持ちながら、島中を歩いていた。
あてもない。
自分の家に帰る気になれず、竜か大輝の家に行こうと思ったけど…辞めた。
:08/12/12 23:08 :SH901iC :ufvbrGno
#338 [ゆーちん]
だからブラブラしてた。
「心?」
呼び止められて振り向くと、美帆がいた。
「おぉ、美帆。」
「何してんの、こんなとこで。家と真逆の方向じゃん。」
「放浪中。」
「そんな可愛い袋持って?」
「あぁ…うん。」
:08/12/12 23:08 :SH901iC :ufvbrGno
#339 [ゆーちん]
美帆は何か感づいたらしく、ニヤッと笑った。
「凜と何かあったんだ。」
「…。」
「バレンタインの夜にこんな場所で、そんな暗い顔してるなんて千夏が知ったら怒るよ?」
「…千夏?」
:08/12/12 23:09 :SH901iC :ufvbrGno
#340 [ゆーちん]
「うん。今日はチョコ渡す相手がいないってピリピリしてた。恋人がいる奴は誰ふり構わず殴り倒してやるーって叫んでたもん。」
「ハハッ。何だそりゃ。」
千夏が暴れるところを想像すると、俺にも笑みが零れた。
「で?恋人のいる幸せな心さんは、なんで泣きそうな顔してんのさ。」
「んー…。」
:08/12/12 23:10 :SH901iC :ufvbrGno
#341 [ゆーちん]
俺の濁る笑顔を見て、美帆は言った。
「うちおいで。」
俺を抜かして美帆は前をスタスタと歩き始めた。
俺は何も言わずに美帆の後ろをついてった。
「やべー、菊地家とか久しぶりだわ。」
「小学生のころは毎日来てたのにね。中学上がって、心に彼女ができて、それから全然来なくなった。」
:08/12/12 23:10 :SH901iC :ufvbrGno
#342 [ゆーちん]
「そうだっけ。でもその彼女とは、すーぐ別れちゃったよ。」
「初めての彼女できたってあんな喜んでたのにね。」
「そうだねー。」
懐かしい過去は溜め息が出るくらい背伸びするのに必死だった。
:08/12/12 23:11 :SH901iC :ufvbrGno
#343 [ゆーちん]
カッコつけてた中1の俺。
カッコつけるのに疲れてきた中2の俺。
カッコつけるのを辞めた中3の今の俺。
子供のままなら、素直に寂しいって言えてたんだ。
もっと大人だったら、凜の未来に入り込む勇気を持てたんだ。
:08/12/12 23:12 :SH901iC :ufvbrGno
#344 [ゆーちん]
どっちにしろ成長したのかしてないのかわからない自分に嫌気がさす。
「お邪魔します。」
菊地家は何も変わっていなかった。
小学生の頃、よく来た菊地家のままだった。
「心ちゃん!久しぶり〜。」
美帆の母ちゃんは笑って出迎えてくれた。
:08/12/12 23:12 :SH901iC :ufvbrGno
#345 [ゆーちん]
「こりゃまた色気のない部屋だな〜。」
「は?黙れって。」
ジャマイカちっくな美帆の部屋。
この部屋だけは、いつの間にかガラリと変わってしまっていた。
「あぁ〜。」
溜め息が混ざった声でベットにダイブすると『遠慮ってものを知らないんですか?』と美帆に文句を言われた。
:08/12/12 23:13 :SH901iC :ufvbrGno
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