冷たい彼女
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#56 [ゆーちん]
初めて見た私服の凜は、口が開く程のものだった。
フワフワしたワンピースが見事に似合っている。
少し歩くと、凜は言った。
「童貞は時間も守れないわけ?」
「…ごめんなさい。ゲームしてたら時間忘れてました。」
「ゲームに負けたんだ、私。」
:08/12/11 21:31 :SH901iC :uyR.lwfs
#57 [ゆーちん]
「いや、決してそういう訳じゃないんだけど…」
「貸し1ね。」
そう言って凜は歩き出した。
「はい。」
俺もいつもと同じで、凜の後ろを着いて歩く。
6月末、とても暑い日だった。
:08/12/11 21:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#58 [ゆーちん]
「この島の案内して。」
凜は振り返りもせずに言う。
「案内?」
「そ。早くこの島に慣れたいの。」
「OK!じゃあ俺んち戻ろ。自転車取ってくるわ。」
「自転車?」
凜は振り返った。
…笑ってないけど、うん。
可愛い。
:08/12/11 21:32 :SH901iC :uyR.lwfs
#59 [ゆーちん]
「後ろ乗せたげる。俺んちこっちだから!」
来た道を戻る。
今は俺が前で、凜が後ろ。
いつもと逆。
違和感たっぷり。
「ねぇ。」
「はい。」
「隣歩けば?」
「…いいの?」
「いいよ。デートなんでしょ?」
:08/12/11 21:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#60 [ゆーちん]
素晴らしい進歩。
初デート。
初横並び歩き。
テンション上げずにいられないでしょ!
「手ぇ繋いでいい?」
そう、勢いでお願いしてみた。
「やだ。」
…無理でした。
うん、最初から欲張っちゃダメだよねー。
:08/12/11 21:33 :SH901iC :uyR.lwfs
#61 [ゆーちん]
「ごめんなさい。」
とりあえず隣で歩ける事に感謝。
小さな凜と並んで歩ける事が幸せだった。
俺の家につき、自転車を出して、凜を後ろに座らせた。
「2ケツとか久しぶりだ。」
「どうせ男しか乗せた事ないんでしょ。」
:08/12/11 21:34 :SH901iC :uyR.lwfs
#62 [ゆーちん]
凜の言葉のナイフにグサグサと刺されながら自転車をこいだ。
「そんな事ないもーん。」
「あっそ。」
「でも、9割が男だね。」
「やっぱり。」
「残りの1割は女からのパシリですよ。」
「ダッセェ。」
風を切って走る自転車。
:08/12/11 21:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#63 [ゆーちん]
凜ちゃんの髪やワンピースは、さぞなびいているでしょう。
…全く見えないけど。
1軒1軒、島の案内をしていく。
抜け道や近道も教えてあげる。
あの家のじいちゃんはどうだとか、この家のばあちゃんはこうだとか。
凜は一生懸命、俺の話に耳を傾けてくれていた。
:08/12/11 21:35 :SH901iC :uyR.lwfs
#64 [ゆーちん]
お昼は、島で唯一の食堂である【トメ食堂】食べた。
なぜ【トメ食堂】かと言うと、トメと言う名前のばあちゃんが営業しているから。
トメばあちゃんは島で1番の料理人だと俺は思う。
食べ終えると、また自転車の旅が始まる。
なるべく日影を走れという凜の指示に、俺は素直に従った。
:08/12/11 21:36 :SH901iC :uyR.lwfs
#65 [ゆーちん]
汗が流れる額。
凜のために流す汗は苦痛ではなかった。
日が暮れると、凜は言った。
「あんたがこの島で1番気に入ってる場所教えて。」
「1番?」
「そう。」
「ガッテン承知!」
:08/12/11 21:36 :SH901iC :uyR.lwfs
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