闇の中の光
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#103 [ゆーちん]
「私はシホ。哲夫に飼われてんの。ただのペットだよ。」


もう、死のうだなんて考えは1ミリもなかった。


今はただ、哲夫のペットなんだって自分で自分に言い聞かせている。


私はシホなんだ、って。

⏰:08/12/30 17:55 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#104 [ゆーちん]
全然理解のできていない康孝を見て、哲夫は笑った。


「どうよヤッちゃん。面白いペットだろ?」

「いや…つーかさ…」

「詳しい事はまた集会の時にでも教えてやるよ。とりあえず車出してよ。早くしないと日が暮れる。」


哲夫の頼みに、康孝は納得のいかないまま、頷いていた。

⏰:08/12/30 17:56 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#105 [ゆーちん]
「シホ、おいで。」


哲夫に呼ばれ、床から立ち上がった私。


いきなり目の前が暗くなった。


「はい、サングラス。すっぴんは嫌だろ?化粧品買ってやるから、それまでこれで我慢な。」

⏰:08/12/30 17:57 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#106 [ゆーちん]
「別にいらない。」


化粧品なんかいらない。


化粧なんか、みんながしていたからしていただけ。


萌子が死んだ今、もうみんなの真似っこは必要ない。


私はシホなんだ。


「遠慮すんなって。女の子なんだからおめかしは必要でしょ。あとこれ、被ってろ。」

⏰:08/12/30 17:58 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#107 [ゆーちん]
目深くキャップ帽を被せられた私。


どこからどう見ても…怪しいでしょ。


つなぎ服に、サングラス、キャップ帽。


「靴は?」

「あぁ…これ履いて。」

「裸足で?」

「嫌かよ。」

「うん。」

「もぉー!本当わがままな奴だな。」

⏰:08/12/30 17:58 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#108 [ゆーちん]
さすがにこの格好にローファーは合わないでしょ。


ていうか、半殺しされてフラフラだったのに、ちゃっかりローファー履いて出て来た自分が偉いと思った。


…あっ、違う。


自分じゃない。


萌子が、だ。


「ほれ。おっきいかもしんないけど我慢しろ。」

⏰:08/12/30 17:59 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#109 [ゆーちん]
哲夫が靴下を貸してくれたので、私は座って履いた。


予想通り、めちゃめちゃ大きい。


「行くぞ。」


靴も大きい。


歩きにくい。


「何ちんたら歩いてんだよ、もう。」


そう言って哲夫に手を引かれた。


おっきな手だった。

⏰:08/12/30 17:59 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#110 [ゆーちん]
康孝の車に乗り込むと、勢いよく発車した。


…やけに、うるさい、この車。


流れている音楽も、デカい音だし英語だしで何言ってるかわかんないし、何より車自体の音がうるさかった。


「ごめんね、うっさいだろ。」

「うん。」

⏰:08/12/30 18:00 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#111 [ゆーちん]
「いじりすぎなんだよ、康の車は。」

「いじり?」

「改造っつーの?マフラーとかってわかる?」

「首に巻く?」

「あぁ、わかんないか。じゃあいいや。」


首に巻くマフラーじゃないの?


意味不明。


午後3時、そんな意味不明な車は街を駆け抜けて行く。

⏰:08/12/30 18:01 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#112 [ゆーちん]
窓から見る景色は見た事のない景色だった。


「ここ、どこ?」

「あ?」

「見た事ない街。」


窓の外を眺める私に、哲夫は言った。

⏰:08/12/30 18:01 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


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