闇の中の光
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#130 [ゆーちん]
哲夫が起き上がると、温もりが薄れた。
それもそのはず。
下着だけしか身につけていないんだ、私。
「パジャマ買っただろ?何で下着姿なわけ。もう初冬だぞ?」
煙草に火をつけた哲夫。
「シホは煙草吸わないの?」
「吸わない。」
「そ。」
:09/01/01 10:33 :SH901iC :XAv2cR7M
#131 [ゆーちん]
「哲夫。」
「はいよ。」
「いつ帰って来たの?」
「2時ぐらい。」
「今日も集会あるの?」
「あるよ。行きたい?」
「ううん。」
「そ。なら留守番ね。」
「うん。」
:09/01/01 10:35 :SH901iC :XAv2cR7M
#132 [ゆーちん]
時計を見ると12時を迎えようとしていた。
どうりでお腹が空くわけだ。
「シホ。お腹空かない?」
「空いた。」
「昨日の昼から何も食べてないんだわ、俺。」
私は、いつから食べてないんだろう。
一昨日の昼からだから…丸2日かな。
:09/01/01 10:35 :SH901iC :XAv2cR7M
#133 [ゆーちん]
最後の食事はサンドイッチだった。
萌子として、友達と昼ご飯を食べた。
そして、昨日、萌子は死んだ。
私はシホになった。
シホになってから、まだ水一滴たりとも口にしていない。
今、やっと空腹感に襲われた。
あぁ、生きてるんだって思えた。
:09/01/01 10:36 :SH901iC :XAv2cR7M
#134 [ゆーちん]
「飯食い行くか。シホ昨日風呂入った?」
「入ってない。」
「俺も入ってないし、一緒に入るか。」
「…やだ。」
「お前に拒否権はない。」
ニッと笑い、私の頭を優しく叩いた哲夫は立ち上がり、浴室に向かった。
:09/01/01 10:37 :SH901iC :XAv2cR7M
#135 [ゆーちん]
私も立ち上がり、哲夫のあとを追った。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でお湯、溜まってんの?」
「え?」
「いつ入れたの、お湯。」
「あぁ、機械が入れてくれんだよ。タイマーにして。俺毎日風呂入るの昼間だからさ、このくらいの時間になったら自動で溜まるように設定してあんの。」
:09/01/01 10:40 :SH901iC :XAv2cR7M
#136 [ゆーちん]
驚いた。
世の中そんな素敵な機能のついたお風呂があるんだ。
信じらんない。
「楽チンだね。」
「便利な世の中だよな。」
哲夫はポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。
:09/01/01 10:41 :SH901iC :XAv2cR7M
#137 [ゆーちん]
「はい、脱いで。入るよ。」
下着だけの私は簡単に裸になった。
哲夫もすぐに服を脱ぎ捨て、私と一緒に湯舟につかる。
「うーっ、気持ちいい。俺風呂好きなんだわ。」
「どうして夜入んないの?」
「疲れてそのまま寝ちゃうんだよ。だからいっつも起きたら入る。」
:09/01/01 10:58 :SH901iC :XAv2cR7M
#138 [ゆーちん]
「一日の始まりはお風呂からなんだね。」
「そゆ事〜。」
今日も、哲夫に後ろから抱きしめられながら体を温める。
背中やお腹をずっと撫でてくれるんだ。
理由はわからないけど、なぜか哲夫が触れた場所は、痛みが和らいだ。
:09/01/01 10:59 :SH901iC :XAv2cR7M
#139 [ゆーちん]
お風呂から出て、買って来た服を身にまとった。
「おぉー、似合う似合う。化粧もしろよ。化粧は女の身嗜みって言うからな。」
「…面倒だよ。」
「じゃあスッピンで行くのか?もしくはピザでも頼む?」
「…私が、作る。」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
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