闇の中の光
最新 最初 全
#133 [ゆーちん]
最後の食事はサンドイッチだった。
萌子として、友達と昼ご飯を食べた。
そして、昨日、萌子は死んだ。
私はシホになった。
シホになってから、まだ水一滴たりとも口にしていない。
今、やっと空腹感に襲われた。
あぁ、生きてるんだって思えた。
:09/01/01 10:36 :SH901iC :XAv2cR7M
#134 [ゆーちん]
「飯食い行くか。シホ昨日風呂入った?」
「入ってない。」
「俺も入ってないし、一緒に入るか。」
「…やだ。」
「お前に拒否権はない。」
ニッと笑い、私の頭を優しく叩いた哲夫は立ち上がり、浴室に向かった。
:09/01/01 10:37 :SH901iC :XAv2cR7M
#135 [ゆーちん]
私も立ち上がり、哲夫のあとを追った。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でお湯、溜まってんの?」
「え?」
「いつ入れたの、お湯。」
「あぁ、機械が入れてくれんだよ。タイマーにして。俺毎日風呂入るの昼間だからさ、このくらいの時間になったら自動で溜まるように設定してあんの。」
:09/01/01 10:40 :SH901iC :XAv2cR7M
#136 [ゆーちん]
驚いた。
世の中そんな素敵な機能のついたお風呂があるんだ。
信じらんない。
「楽チンだね。」
「便利な世の中だよな。」
哲夫はポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。
:09/01/01 10:41 :SH901iC :XAv2cR7M
#137 [ゆーちん]
「はい、脱いで。入るよ。」
下着だけの私は簡単に裸になった。
哲夫もすぐに服を脱ぎ捨て、私と一緒に湯舟につかる。
「うーっ、気持ちいい。俺風呂好きなんだわ。」
「どうして夜入んないの?」
「疲れてそのまま寝ちゃうんだよ。だからいっつも起きたら入る。」
:09/01/01 10:58 :SH901iC :XAv2cR7M
#138 [ゆーちん]
「一日の始まりはお風呂からなんだね。」
「そゆ事〜。」
今日も、哲夫に後ろから抱きしめられながら体を温める。
背中やお腹をずっと撫でてくれるんだ。
理由はわからないけど、なぜか哲夫が触れた場所は、痛みが和らいだ。
:09/01/01 10:59 :SH901iC :XAv2cR7M
#139 [ゆーちん]
お風呂から出て、買って来た服を身にまとった。
「おぉー、似合う似合う。化粧もしろよ。化粧は女の身嗜みって言うからな。」
「…面倒だよ。」
「じゃあスッピンで行くのか?もしくはピザでも頼む?」
「…私が、作る。」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#140 [ゆーちん]
キッチンに行き、冷蔵庫の中を見ると、何とかなりそうだと思った。
「えっ、お前料理できんの?」
「…うん。」
萌子の時は、毎日料理していたから。
作りたくもない料理を、毎日毎日我慢して作ってたから。
「お好み焼きでいい?」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#141 [ゆーちん]
「お好み焼き作れんの?お前なかなかやるな!」
哲夫が笑った。
「作れるよ。」
「じゃあお好み焼き作って〜。俺、シホの荷物の片付け始めててやるわ。」
萌子が嫌々作ってた料理。
だけど私、シホが今から作る料理は嫌じゃない。
初めてワクワクする。
:09/01/01 11:01 :SH901iC :XAv2cR7M
#142 [ゆーちん]
だってさ、笑ってくれたから。
父は私が料理を作っても、1ミリ足りとも笑わなかった。
苦痛だった。
もう…忘れたい。
忘れよう。
だって萌子は死んだんだから。
友達や彼氏、家族はきっと萌子が死んだって悲しまない。
:09/01/01 11:02 :SH901iC :XAv2cR7M
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194