闇の中の光
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#173 [ゆーちん]
「シホ。」

「んー?」

「派手なメイクだな。もっとナチュラルビューティーを目指そうと思わないのかい?」

「はい?」

「だから、もっとこう…何つうの?上品な化粧しろって意味。」

「わかんない。」

「例えばだなぁ…」

⏰:09/01/01 18:04 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#174 [ゆーちん]
そう言って、なぜか哲夫は私に化粧をし始めた。


「化粧できるの?」

「ううん。見よう見真似。」

「誰の?」

「チームの女の子たち。集会の時、いっつも化粧直ししてんだわ。」

「ふーん。」


見よう見真似と言った哲夫の手つきは、見事なものだった。

⏰:09/01/01 18:05 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#175 [ゆーちん]
完成した私の顔は、初めての顔だった。


スッピンと、萌子での化粧の間って感じ。


ケバすぎたんだ、萌子が。


「ほら、やっぱこんくらいナチュラルのが可愛いよ。」


鏡を見て、自分でも今のメイクの方が可愛いって思う。

⏰:09/01/01 18:06 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#176 [ゆーちん]
萌子のメイクは、ただデカ目になればいいって感じのものだったから。


「ギャルはギャルでも、上品なギャルでないとね。」


そう言って、哲夫は笑いながら私の前に座った。


手にはハサミ。


「何。」

「前髪切ろっか。」

「え?」

「後ろも少し短くするぞ。」

⏰:09/01/01 18:06 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#177 [ゆーちん]
私に拒否権はない。


目の下まで伸びていた前髪を、目の上までパツンと切り落とした哲夫。


「おぉ!パッツンのが可愛いじゃん。人形みたいだそ、シホ。」


長くて傷んだ後ろの髪も、毛先が肩にかかるくらいの長さに切られた。

⏰:09/01/01 18:08 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#178 [ゆーちん]
「うん、完璧。俺って天才?」

「…。」

「よかったなシホ。お前は顔ちいせぇからこの髪形のが似合うぞ。」

「…。」

「何だよ。文句あるか?」

「ない。」

「よし。明日美容院行ってその明るい金髪をもう少し上品にしてもらおうな。」


脱色しすぎた私の髪を見て言った哲夫。


「テツだって、金髪。」

⏰:09/01/01 18:09 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#179 [ゆーちん]
「俺は目立たないと。でもシホは目立っちゃダメ。また野良犬と喧嘩でもされちゃ困るから。」

「美容院に行くなら、何でテツが髪切ったの?」

「シホの初披露なんだぞ?あんなボサボサ頭じゃ飼い主の俺のプライドが許さない。」


哲夫はそう言って笑った。

⏰:09/01/01 18:10 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#180 [ゆーちん]
「プライド…」


私にはそんなもの、ない。


「毛先傷みすぎでしょ。」


切り落とした私の髪を見て、哲夫が呟いた。


「バッサリ切ったから、綺麗な髪になったぞ。」


哲夫に褒められると、なぜか心が痛かった。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#181 [ゆーちん]
名前も見た目も生まれ変わった私。


このメイクが、この髪がシホなんだ。


なんだか少し、自分が好きになった。


「歩いて行くか、バイクで行くか、車で行くか、お迎えに来てもらうか。さぁ、どれにする?」


哲夫に質問に『歩く。』と答えた。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#182 [ゆーちん]
「元気だな。」

「体なまるの嫌だもん。」

「そここだわるんだね。」


笑って頭を撫でた哲夫。


今日は私も一緒に家を出るんだ。


哲夫の背中を見送らずに済む。


肩を抱かれて、暗くなった道を歩く。


どこに向かってるのかは、わからない。

⏰:09/01/01 18:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


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