闇の中の光
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#182 [ゆーちん]
「元気だな。」
「体なまるの嫌だもん。」
「そここだわるんだね。」
笑って頭を撫でた哲夫。
今日は私も一緒に家を出るんだ。
哲夫の背中を見送らずに済む。
肩を抱かれて、暗くなった道を歩く。
どこに向かってるのかは、わからない。
:09/01/01 18:12 :SH901iC :XAv2cR7M
#183 [ゆーちん]
しばらく歩くと雑音が耳に入った。
昨日乗った康孝の車のように騒々しい音。
「…うるさいのが聞こえてきた。」
「アハハ。そのうるさい集まりのボスは俺だからね。」
大きい音が苦手。
怒鳴り声も怖い。
心臓が痛くなる。
:09/01/01 18:24 :SH901iC :XAv2cR7M
#184 [ゆーちん]
萌子の時に受けた傷のトラウマなんだ。
早くこの心の傷も癒し切って、シホに生まれ変わりたいよ…。
角を曲がると、そこには今までの街とは別の世界が広がっていた。
明るい。
賑やか。
うるさい。
ついつい目を背けたくなるような世界だった。
:09/01/01 18:25 :SH901iC :XAv2cR7M
#185 [ゆーちん]
「哲夫さん、お疲れ様です!」
「テツさん、お疲れ様でーす!」
「テッちゃん、お疲れ。」
たくさんの声が哲夫にかかる。
たくさんの呼び名を持つ千早哲夫は、『お疲れ。』と返事した。
「シホちゃん?」
見覚えのある顔が近付いて来た。
康孝だ。
:09/01/01 20:29 :SH901iC :XAv2cR7M
#186 [ゆーちん]
「康、みんなにシホ紹介してやって。」
「おぉ、わかった。」
そう言って康孝は、哲夫の隣に立ち、みんなの方を向いた。
「はぁーい、ちゅうもぉーくっ!」
:09/01/01 20:30 :SH901iC :XAv2cR7M
#187 [ゆーちん]
大きな声。
静かになった集団。
小刻みに震える車やバイクのエンジン音だけが、響いていた。
たった一言で全員を黙らせる康孝。
さすが管理職。
「こちら、シホちゃん。テッちゃんの女だ。」
:09/01/01 20:30 :SH901iC :XAv2cR7M
#188 [ゆーちん]
女?
彼女って意味?
だったら間違ってる。
昨日、私をペットだって哲夫が言ってたでしょ?
何にも覚えてないのかな、康孝は。
「テッちゃん何か一言。」
:09/01/01 20:31 :SH901iC :XAv2cR7M
#189 [ゆーちん]
康孝に話を振られた哲夫は言った。
「たまに集会に来るだろうから仲良くしてやって。過去の事を聞き出すのは禁止。あと新人、シホは俺んちで住んでっから、これからは掃除ルール廃止。もう俺んち勝手に来るなよ。以上。」
:09/01/01 20:33 :SH901iC :XAv2cR7M
#190 [ゆーちん]
哲夫が話し終えると、全員の低い声が唸った。
『はい。』と。
「掃除ルールやめちゃうの?」
小声で哲夫に聞くと、小声で答えをくれた。
「これからはシホの仕事。料理だけじゃつまんないんだろ?だったら家事全般、シホの仕事な。掃除して、体のなまり防止。頼んだぞぉ。」
:09/01/01 20:34 :SH901iC :XAv2cR7M
#191 [ゆーちん]
大きく頷いた。
与えられた私の仕事。
家事なら得意だ。
でも好きじゃない。
萌子の時、嫌ってほど家事ばかりしていたから。
だけど私はシホ。
家事は嫌いじゃない。
家事は楽しい事なんだ。
:09/01/01 20:35 :SH901iC :XAv2cR7M
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