闇の中の光

「あ、起きた。わかるか、シホ？」

ほらね。

「哲夫…」

ベットから体を起こすと、見慣れた景色が広がる。

「家だから安心しろよ。」

哲夫は吸っていた煙草を消すと、私の隣に潜り込んで来た。

「今日は疲れたな。」

時計を見ると、本来ならいつも私達が眠りにつく時間。

「ねぇ哲夫。のんちゃんは？」

「望実なら無事だ。康孝が助けた。」

「本当？」

「意識も戻ったし、普通に元気だったから康孝が家まで送ってった。」

「よかった…」

心から安心した。

のんちゃんが助かって、本当に本当によかったよ。

「おいで。」

座っていた私を寝かし、哲夫の抱き枕変わりになった。

「哲夫、怪我してる。」

「これのどこが怪我？俺、無敵だもん。怪我なんかしねぇよ。」

頬に傷を負っていた場所に絆創膏が貼ってあった。

「嘘つき。だって絆創膏貼ってあるじゃ‥」

「あぁ、これ？これはアレだよ。流行の最先端シール。」

笑ってしまった。

「何それ。」

哲夫も笑っていた。

「心配すんな。余裕だから。」

私を抱きしめる力が強くなった。

哲夫の匂いや温かさが私を包む。

「ねぇ。」

「ん？」

「何だったの？一体…」

「その話はまた明日。俺眠いわ。」

さっきまでの騒ぎが嘘のようにこの部屋は静かだ。

「やだ！気になって眠れないもん。」

「もぉ～、めんどくせっ。」

「何だったの？」

「ただの殴り込みだよ。どこの奴らかは忘れたけど、前にあそこのチームと揉めてさ。向こうの頭と俺で話し合って和解したんだけど、どうやら頭が変わったらしいんだわ。」

「向こうのリーダーが変わったから、哲夫と前のリーダーの和解なんて関係ない…みたいな？」

「まさに、それ。不意打ちすぎだから、女や新人はとりあえず逃がしたんだけど…何でお前ら逃げてなかったんだよ。」

状況把握が遅くて逃げ遅れちゃったんだ、私とのんちゃん。

私のせいで、のんちゃんまで痛い思いさせちゃって…。

「…ごめんなさい。」

「どこ叩かれた？」

「腕とか…お腹蹴られたり。」

すると哲夫は急に体を起こし、私の服を脱がせた。

「哲夫？」

「…うわ。本当だ。痛かっただろ？」

腫れたり青くなったりしている。

久しぶりにこんな汚い自分の肌を見て、また苦しくなった。

「ごめんな。助けてやれなくて。」

もう一度服を着せ、腫れている部分を撫でてくれた。

再び寝転がった哲夫。

「哲夫のせいじゃない。」

「俺らのバカ騒ぎに、シホまで巻き込んでさ。本当、悪い。」

抱きしめられると殴られた腕が痛かった。

だけど痛いなんて言わない。