闇の中の光
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#491 [ゆーちん]
哲夫は、ずっと黙ったまま聞いてくれていた。


そのほうが話しやすい。


「そんな時、ふと目についたのがナイフで、神様が与えてくれたんだって思った。そのナイフで死になさいって言われた気がして、心臓を刺して死んでやろうって決めたの。で、ナイフを振りかざして…次の瞬間には知らない部屋にいた。死ねなかったんだってわかった時、自分が情けなかった。」

⏰:09/01/15 18:33 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#492 [ゆーちん]
どうして生きているんだろうと、自分を恥じたっけ。


「でさ、またまた目の前にいた、いかつい顔の金髪男がいたから、調度いい、殺してもらおうと思った。そしたら…萌子はあっという間に殺されて、シホっていうペットになってた。」

⏰:09/01/15 18:35 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#493 [ゆーちん]
「不思議な話だな。」


哲夫が笑った。


「不思議だよ。あんなに死にたいって思ってた萌子が、シホに生まれ変わった途端…死にたいなんて全く思わなくなった。むしろ生きたいとか、人間って楽しいって思うようになっちゃったの。本当…不思議だよ。」

⏰:09/01/15 18:36 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#494 [ゆーちん]
哲夫が私を抱きしめる力が強くなったのがわかった。


「私はシホなのに、死んだはずの萌子がまだどっか心の奥に潜んでるみたい。だから…喧嘩の声が、父の暴力する声と重なって、苦しくなっちゃった。」

⏰:09/01/15 18:37 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#495 [ゆーちん]
「なぁ、萌子。」


久しぶりに哲夫がその名前を呼んだ。


「萌子は死んだよ?」

「死んだ萌子に話し掛けてんの。」

「…ふーん。」

⏰:09/01/15 18:39 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#496 [ゆーちん]
「萌子さ、辛かったな。頑張ったよ。お前の辛さなんか、俺全然わかんないけど…殴られたりするのって痛いよな。俺も喧嘩して殴られた経験あるから痛いのわかる。でもな、殴る方も痛いんだよ。手と心が痛いんだ。」


今度は私が哲夫を抱きしめる力が強くなった。


「暴力はもちろん、いけねぇ事。萌子を苦しめたんだから。親が憎いよな。わかるよ、俺もそうだったから。」

⏰:09/01/15 18:40 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#497 [ゆーちん]
哲夫の小さな声が、耳元で響く。


「手は上げられてなくても、俺は言葉の暴力っつうの?それ体験してるんだ。でもさ、萌子の辛さに比べりゃ俺なんて屁だよ。萌子は女の子なのに…痛かったな。」


本当に、優しい声だった。

⏰:09/01/15 18:41 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#498 [ゆーちん]
我慢してたのに…。


あまりにも優しい声だから、涙が溢れた。


だけど泣いてるなんてバレたくないから、ただただ哲夫の腕の中に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。


「憎くて憎くて、殺してやりたいって思ったかもしんねぇ。でも…いくらムカつく奴でも、親には勝てないんだよ。」

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#499 [ゆーちん]
…勝てない?


「萌子の親は、四六時中お前に暴力振るったか?一時でも優しくしてくれた事はねぇの?」


…あるよ。


激しい暴力を振るわれたあと、なんだか優しかった。


父も母も、謝りはしなかったけど…萌子に対して一瞬だけど優しくしてくれた気がする。

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#500 [ゆーちん]
哲夫は、萌子の答えを聞いたかのように話を続けた。


「あるだろ?だったら、その親にまだ望みはある。諦めないで戦え。死んだら負けだ。親を殺せば、もっと負け。もし勝てなくても、引き分けならいい。」

⏰:09/01/15 18:44 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


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