闇の中の光
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#495 [ゆーちん]
「なぁ、萌子。」


久しぶりに哲夫がその名前を呼んだ。


「萌子は死んだよ?」

「死んだ萌子に話し掛けてんの。」

「…ふーん。」

⏰:09/01/15 18:39 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#496 [ゆーちん]
「萌子さ、辛かったな。頑張ったよ。お前の辛さなんか、俺全然わかんないけど…殴られたりするのって痛いよな。俺も喧嘩して殴られた経験あるから痛いのわかる。でもな、殴る方も痛いんだよ。手と心が痛いんだ。」


今度は私が哲夫を抱きしめる力が強くなった。


「暴力はもちろん、いけねぇ事。萌子を苦しめたんだから。親が憎いよな。わかるよ、俺もそうだったから。」

⏰:09/01/15 18:40 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#497 [ゆーちん]
哲夫の小さな声が、耳元で響く。


「手は上げられてなくても、俺は言葉の暴力っつうの?それ体験してるんだ。でもさ、萌子の辛さに比べりゃ俺なんて屁だよ。萌子は女の子なのに…痛かったな。」


本当に、優しい声だった。

⏰:09/01/15 18:41 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#498 [ゆーちん]
我慢してたのに…。


あまりにも優しい声だから、涙が溢れた。


だけど泣いてるなんてバレたくないから、ただただ哲夫の腕の中に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。


「憎くて憎くて、殺してやりたいって思ったかもしんねぇ。でも…いくらムカつく奴でも、親には勝てないんだよ。」

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#499 [ゆーちん]
…勝てない?


「萌子の親は、四六時中お前に暴力振るったか?一時でも優しくしてくれた事はねぇの?」


…あるよ。


激しい暴力を振るわれたあと、なんだか優しかった。


父も母も、謝りはしなかったけど…萌子に対して一瞬だけど優しくしてくれた気がする。

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#500 [ゆーちん]
哲夫は、萌子の答えを聞いたかのように話を続けた。


「あるだろ?だったら、その親にまだ望みはある。諦めないで戦え。死んだら負けだ。親を殺せば、もっと負け。もし勝てなくても、引き分けならいい。」

⏰:09/01/15 18:44 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#501 [ゆーちん]
哲夫の声が、弱くなった気がした。


「俺はもう戦う相手がいないんだ。相手にしてくんねぇから、戦いたくても戦えねぇ。だから余計、萌子には戦って欲しい。俺の独りよがりだけど、わかってくれたら嬉しい。」

⏰:09/01/15 18:48 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#502 [ゆーちん]
何度も何度も哲夫が『戦え。』って言うから、頭の中で萌子が父親を殴るシチュエーションを想像してしまった。


だけど哲夫が言う『戦え。』は、その意味じゃない。


体で戦うんじゃない。


心で戦わなきゃいけないんだ。

⏰:09/01/15 18:48 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#503 [ゆーちん]
「萌子にしてきた事を許してやれって言ってんじゃねぇぞ?そりゃ許してあげるんなら許してやったらいいけど…無理だろ?だから、許さなくていい。まずは許せるかもしれないキッカケを作るんだ。」


哲夫の言葉は、スッと私の中に入り込む。


『なるほど。』ってなる。

⏰:09/01/15 18:49 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#504 [ゆーちん]
だけど、今はまだ『そうだね。許してあげられるようなキッカケを作ってあげよう。』だなんて、1ミリ足りとも思わなかった。


そこまで大人じゃない。


「今はまだそんな事、考えれねぇか。」


哲夫の腕の中で、小さく頷いた。

⏰:09/01/16 15:10 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


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