闇の中の光
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#559 [ゆーちん]
シホ。


シホ。


シホ。


唇が少し離れるたびに名前を呼ばれる。


何だか名前を呼ばれる事が、急に切なく感じた。


私はシホなの?


シホでいいの?


そんな感じ。


勝手に涙が流れていた。

⏰:09/01/19 11:05 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#560 [ゆーちん]
数分後。


お風呂に入り、消えかけている青アザや古傷を撫でてもらった。


萌子の傷は、シホの傷じゃない。


「消えて来たな。腹のアザ。」

「…うん。」

「俺のマジックハンドのおかげ?」


そうだよ。


哲夫の手のおかげだよ。


優しく撫でてくれる哲夫がいたから、傷は和らいだんだ。

⏰:09/01/19 11:06 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#561 [ゆーちん]
お風呂から上がり、哲夫がテレビをつけた時、私たちは気付いた。


「今日、大晦日じゃん。」


12月31日。


ついこの間、クリスマスだって騒いでいたかと思えば、もう大晦日だ。


今年も終わり。


今年は私にとって劇的な年。

⏰:09/01/19 11:07 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#562 [ゆーちん]
チームが襲撃にあってから、ドタバタしすぎて、日にち感覚がなかったかも。


って言ってもほんの2、3日前だけどね。


「年越し蕎麦食ってねぇしー。」


年越し蕎麦か。


もう何年食べてないんだろう。


家族がバラバラになってからの年末年始なんて、ただの苦痛の日々でしかなかった。

⏰:09/01/19 11:08 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#563 [ゆーちん]
年越し蕎麦もなし。


お雑煮やお節料理だってなし。


もちろん、お年玉も。


年末年始は普段よりも仕事に精を出していた。


父親にも『年末年始は稼げるから、たくさん働け。』と言われる程だもの。


寒い中、懐の緩んだ親父との援助交際に励んでいたんだ。

⏰:09/01/19 11:09 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#564 [ゆーちん]
いい思い出なんかない大晦日。


もちろん、お正月だって同じ。


いい思い出なんか、全然…。


「蕎麦食わなきゃ年越せねぇっつうの。康呼ぶぞ。」


そう言って哲夫は康孝に電話をかけた。

⏰:09/01/19 11:10 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#565 [ゆーちん]
「蕎麦3人前買って来て。」


哲夫のその命令に、たった20分で対応した康孝は、なぜか上機嫌で蕎麦を持ってやって来た。


「いぇーい、あけおめイヴ〜。」

「意味わかんねぇし。」

「ヤッちゃん、寒いのにわざわざありがと。こっち座って。」

「おっ、サンキュね。シホちゃん。」

⏰:09/01/19 11:11 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#566 [ゆーちん]
私が座っていた場所を康孝に譲り、年越し蕎麦を作りにキッチンへ向かった。


ダシを作って、温めた蕎麦にかけるだけ。


こんな簡単な料理なのに、どうして金河家は年越し蕎麦を作ってくれなくなったんだろう。


そんな疑問、考えたって答えは出るはずもないか。

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#567 [ゆーちん]
「出来たよ。」


哲夫、康孝、そして私。


3人で年越し蕎麦を食べた。


「美味い!」

「三玉百円の蕎麦なのに、案外美味いね〜。」

「はぁ?康、お前そんな安物買って来たのかよ。」

「こういうのしかスーパーに置いてねぇんだもん。」

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#568 [ゆーちん]
久しぶりの年越し蕎麦は、本当に美味しくて…安物の蕎麦だろうが何だろうが、私にとってはご馳走だった。


体が温まり、後片付けが済んだ頃、康孝は帰ると言い出した。

⏰:09/01/19 11:13 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


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