闇の中の光
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#654 [ゆーちん]
上下関係を知らなかった私に、そっと教えてくれたのは、哲夫のチームのおかげ。
あんまり上下関係を気にしないで、ってチームだったから私自体、緊張したり尊敬したりって事はなかったけど、その事実を目の当たりにして、ちょっと感動とかしちゃったし。
:09/01/24 18:30 :SH901iC :JFMqBZYE
#655 [ゆーちん]
「お待たせ。」
「あっ、ありがとう。」
「砂糖とミルクは?」
「どっちも入れてくれる?」
「OK。」
紅茶を入れ終え、私も哲夫ものんちゃんのいる場所に移動した。
のんちゃんの表情は、玄関にいた時よりほんの少し、緩んだかな。
さて、何から話そうか。
:09/01/24 18:30 :SH901iC :JFMqBZYE
#656 [ゆーちん]
紅茶を飲む音。
ビールを飲む音。
シンとした部屋。
最初に口を開いたのは、のんちゃんだった。
「美味しい。」
哲夫以外の人に美味しいと言われた。
それがたまらなく嬉しく感じてしまう。
「ありがとう。」
:09/01/24 18:31 :SH901iC :JFMqBZYE
#657 [ゆーちん]
他愛もない事だけど、私には心が奮い立つぐらい幸せな言葉なんだ。
インスタントの紅茶にお湯を入れただけなのに、美味しいって。
社交辞令かもしれないけど、嬉しい。
:09/01/24 18:31 :SH901iC :JFMqBZYE
#658 [ゆーちん]
こんな気持ちをどうやって伝えればいいのかわかんないけど、私なりの言葉で説明しよう。
大丈夫。
シホとしてのタイムリミットは、まだある。
萌子に戻る前に、シホとして、萌子の話をしておきたい。
:09/01/24 18:32 :SH901iC :JFMqBZYE
#659 [ゆーちん]
「今から話す事、上手く伝わらないかもしんない。けど私なりに頑張って伝えるから聞いてね。」
するとのんちゃんは、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
そのエクボに、何度と心を落ちつかしてもらっただろう。
:09/01/24 18:32 :SH901iC :JFMqBZYE
#660 [ゆーちん]
「私、シホなんかじゃないの。」
「…。」
のんちゃんは、何も言わなかったし、何の反応も見せなかった。
「本当の名前は、金河萌子って言うんだ。」
「…そっか。」
「ごめんなさい。ずっと黙ってて。」
:09/01/24 18:33 :SH901iC :JFMqBZYE
#661 [ゆーちん]
「謝んないで。ていうか名前なんて何だっていいじゃん。あだ名みたいなもんだよ。」
「…うん。」
薄々気付いてたのかもしんない。
驚いているというより、確信を持った表情だったから。
:09/01/24 18:33 :SH901iC :JFMqBZYE
#662 [ゆーちん]
ゆっくりと萌子の話をした。
哲夫にお伽話をした時に、過去を思い出す痛みへの免疫はついたつもりだった。
だけどまだ弱かった。
途中、何度も泣きそうになった。
けど…泣かなかったよ。
泣いてちゃ、のんちゃんに伝えらんないもん。
:09/01/24 18:34 :SH901iC :JFMqBZYE
#663 [ゆーちん]
冷めきった紅茶で何度も喉を潤わせながら、話した。
途中、哲夫にも助けてもらいながら。
「それで私決めたの。明日…っていうか日付的には今日だね。」
「もしかして…」
「うん。萌子に戻るよ。それで、親と話し合ってみる。」
:09/01/24 18:35 :SH901iC :JFMqBZYE
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