闇の中の光
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#105 [ゆーちん]
「シホ、おいで。」
哲夫に呼ばれ、床から立ち上がった私。
いきなり目の前が暗くなった。
「はい、サングラス。すっぴんは嫌だろ?化粧品買ってやるから、それまでこれで我慢な。」
:08/12/30 17:57 :SH901iC :Z9srDs2E
#106 [ゆーちん]
「別にいらない。」
化粧品なんかいらない。
化粧なんか、みんながしていたからしていただけ。
萌子が死んだ今、もうみんなの真似っこは必要ない。
私はシホなんだ。
「遠慮すんなって。女の子なんだからおめかしは必要でしょ。あとこれ、被ってろ。」
:08/12/30 17:58 :SH901iC :Z9srDs2E
#107 [ゆーちん]
目深くキャップ帽を被せられた私。
どこからどう見ても…怪しいでしょ。
つなぎ服に、サングラス、キャップ帽。
「靴は?」
「あぁ…これ履いて。」
「裸足で?」
「嫌かよ。」
「うん。」
「もぉー!本当わがままな奴だな。」
:08/12/30 17:58 :SH901iC :Z9srDs2E
#108 [ゆーちん]
さすがにこの格好にローファーは合わないでしょ。
ていうか、半殺しされてフラフラだったのに、ちゃっかりローファー履いて出て来た自分が偉いと思った。
…あっ、違う。
自分じゃない。
萌子が、だ。
「ほれ。おっきいかもしんないけど我慢しろ。」
:08/12/30 17:59 :SH901iC :Z9srDs2E
#109 [ゆーちん]
哲夫が靴下を貸してくれたので、私は座って履いた。
予想通り、めちゃめちゃ大きい。
「行くぞ。」
靴も大きい。
歩きにくい。
「何ちんたら歩いてんだよ、もう。」
そう言って哲夫に手を引かれた。
おっきな手だった。
:08/12/30 17:59 :SH901iC :Z9srDs2E
#110 [ゆーちん]
康孝の車に乗り込むと、勢いよく発車した。
…やけに、うるさい、この車。
流れている音楽も、デカい音だし英語だしで何言ってるかわかんないし、何より車自体の音がうるさかった。
「ごめんね、うっさいだろ。」
「うん。」
:08/12/30 18:00 :SH901iC :Z9srDs2E
#111 [ゆーちん]
「いじりすぎなんだよ、康の車は。」
「いじり?」
「改造っつーの?マフラーとかってわかる?」
「首に巻く?」
「あぁ、わかんないか。じゃあいいや。」
首に巻くマフラーじゃないの?
意味不明。
午後3時、そんな意味不明な車は街を駆け抜けて行く。
:08/12/30 18:01 :SH901iC :Z9srDs2E
#112 [ゆーちん]
窓から見る景色は見た事のない景色だった。
「ここ、どこ?」
「あ?」
「見た事ない街。」
窓の外を眺める私に、哲夫は言った。
:08/12/30 18:01 :SH901iC :Z9srDs2E
#113 [ゆーちん]
「シホはこの街で生まれたんだから、この街からずっと出るなよ。」
「…うん。」
私の知らない街。
いや、これが私の街。
萌子がいた街と、私のこの街はあまりにも違っていて…何だか頭が痛くなった。
:08/12/30 18:02 :SH901iC :Z9srDs2E
#114 [ゆーちん]
何軒もの店を回って、大量の下着や洋服、化粧品などを買ってもらった。
帽子、アクセサリー、靴、歯ブラシ、シャンプーにリンス。
最後は携帯電話まで買ってもらった。
信じられない。
この人の金の使い方、ちょっと引く。
:08/12/30 18:03 :SH901iC :Z9srDs2E
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