闇の中の光
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#135 [ゆーちん]
私も立ち上がり、哲夫のあとを追った。
「ねぇ。」
「ん?」
「何でお湯、溜まってんの?」
「え?」
「いつ入れたの、お湯。」
「あぁ、機械が入れてくれんだよ。タイマーにして。俺毎日風呂入るの昼間だからさ、このくらいの時間になったら自動で溜まるように設定してあんの。」
:09/01/01 10:40 :SH901iC :XAv2cR7M
#136 [ゆーちん]
驚いた。
世の中そんな素敵な機能のついたお風呂があるんだ。
信じらんない。
「楽チンだね。」
「便利な世の中だよな。」
哲夫はポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。
:09/01/01 10:41 :SH901iC :XAv2cR7M
#137 [ゆーちん]
「はい、脱いで。入るよ。」
下着だけの私は簡単に裸になった。
哲夫もすぐに服を脱ぎ捨て、私と一緒に湯舟につかる。
「うーっ、気持ちいい。俺風呂好きなんだわ。」
「どうして夜入んないの?」
「疲れてそのまま寝ちゃうんだよ。だからいっつも起きたら入る。」
:09/01/01 10:58 :SH901iC :XAv2cR7M
#138 [ゆーちん]
「一日の始まりはお風呂からなんだね。」
「そゆ事〜。」
今日も、哲夫に後ろから抱きしめられながら体を温める。
背中やお腹をずっと撫でてくれるんだ。
理由はわからないけど、なぜか哲夫が触れた場所は、痛みが和らいだ。
:09/01/01 10:59 :SH901iC :XAv2cR7M
#139 [ゆーちん]
お風呂から出て、買って来た服を身にまとった。
「おぉー、似合う似合う。化粧もしろよ。化粧は女の身嗜みって言うからな。」
「…面倒だよ。」
「じゃあスッピンで行くのか?もしくはピザでも頼む?」
「…私が、作る。」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#140 [ゆーちん]
キッチンに行き、冷蔵庫の中を見ると、何とかなりそうだと思った。
「えっ、お前料理できんの?」
「…うん。」
萌子の時は、毎日料理していたから。
作りたくもない料理を、毎日毎日我慢して作ってたから。
「お好み焼きでいい?」
:09/01/01 11:00 :SH901iC :XAv2cR7M
#141 [ゆーちん]
「お好み焼き作れんの?お前なかなかやるな!」
哲夫が笑った。
「作れるよ。」
「じゃあお好み焼き作って〜。俺、シホの荷物の片付け始めててやるわ。」
萌子が嫌々作ってた料理。
だけど私、シホが今から作る料理は嫌じゃない。
初めてワクワクする。
:09/01/01 11:01 :SH901iC :XAv2cR7M
#142 [ゆーちん]
だってさ、笑ってくれたから。
父は私が料理を作っても、1ミリ足りとも笑わなかった。
苦痛だった。
もう…忘れたい。
忘れよう。
だって萌子は死んだんだから。
友達や彼氏、家族はきっと萌子が死んだって悲しまない。
:09/01/01 11:02 :SH901iC :XAv2cR7M
#143 [ゆーちん]
「出来た。」
大きなお好み焼きをお皿に盛って、テーブルに置いた。
湯気が立ち上る。
いい匂い。
「美味そっ!まさかの才能だな。」
「哲夫のお箸ってどこにあるの?」
「そんなもんないよ。いつも割り箸。」
「そうなんだ。」
:09/01/01 15:26 :SH901iC :XAv2cR7M
#144 [ゆーちん]
哲夫がキッチンの棚から割り箸を2つ取り出した。
あそこが割り箸入れか。
覚えておかないと。
「はい、いただきます!」
「…いただきます。」
哲夫は大きく切り取ったお好み焼きを頬張った。
:09/01/01 15:27 :SH901iC :XAv2cR7M
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