闇の中の光
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#180 [ゆーちん]
「プライド…」


私にはそんなもの、ない。


「毛先傷みすぎでしょ。」


切り落とした私の髪を見て、哲夫が呟いた。


「バッサリ切ったから、綺麗な髪になったぞ。」


哲夫に褒められると、なぜか心が痛かった。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#181 [ゆーちん]
名前も見た目も生まれ変わった私。


このメイクが、この髪がシホなんだ。


なんだか少し、自分が好きになった。


「歩いて行くか、バイクで行くか、車で行くか、お迎えに来てもらうか。さぁ、どれにする?」


哲夫に質問に『歩く。』と答えた。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#182 [ゆーちん]
「元気だな。」

「体なまるの嫌だもん。」

「そここだわるんだね。」


笑って頭を撫でた哲夫。


今日は私も一緒に家を出るんだ。


哲夫の背中を見送らずに済む。


肩を抱かれて、暗くなった道を歩く。


どこに向かってるのかは、わからない。

⏰:09/01/01 18:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#183 [ゆーちん]
しばらく歩くと雑音が耳に入った。


昨日乗った康孝の車のように騒々しい音。


「…うるさいのが聞こえてきた。」

「アハハ。そのうるさい集まりのボスは俺だからね。」


大きい音が苦手。


怒鳴り声も怖い。


心臓が痛くなる。

⏰:09/01/01 18:24 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#184 [ゆーちん]
萌子の時に受けた傷のトラウマなんだ。


早くこの心の傷も癒し切って、シホに生まれ変わりたいよ…。


角を曲がると、そこには今までの街とは別の世界が広がっていた。


明るい。


賑やか。


うるさい。


ついつい目を背けたくなるような世界だった。

⏰:09/01/01 18:25 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#185 [ゆーちん]
「哲夫さん、お疲れ様です!」

「テツさん、お疲れ様でーす!」

「テッちゃん、お疲れ。」


たくさんの声が哲夫にかかる。


たくさんの呼び名を持つ千早哲夫は、『お疲れ。』と返事した。


「シホちゃん?」


見覚えのある顔が近付いて来た。


康孝だ。

⏰:09/01/01 20:29 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#186 [ゆーちん]
「康、みんなにシホ紹介してやって。」

「おぉ、わかった。」


そう言って康孝は、哲夫の隣に立ち、みんなの方を向いた。


「はぁーい、ちゅうもぉーくっ!」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#187 [ゆーちん]
大きな声。


静かになった集団。


小刻みに震える車やバイクのエンジン音だけが、響いていた。


たった一言で全員を黙らせる康孝。


さすが管理職。


「こちら、シホちゃん。テッちゃんの女だ。」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#188 [ゆーちん]
女?


彼女って意味?


だったら間違ってる。


昨日、私をペットだって哲夫が言ってたでしょ?


何にも覚えてないのかな、康孝は。


「テッちゃん何か一言。」

⏰:09/01/01 20:31 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#189 [ゆーちん]
康孝に話を振られた哲夫は言った。


「たまに集会に来るだろうから仲良くしてやって。過去の事を聞き出すのは禁止。あと新人、シホは俺んちで住んでっから、これからは掃除ルール廃止。もう俺んち勝手に来るなよ。以上。」

⏰:09/01/01 20:33 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


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