闇の中の光
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#210 [ゆーちん]
必要な存在って何だろう。
私にはまだわからない。
萌子の場合、必要な存在はいなかった。
両親、友達、彼氏…どれも必要ではなかった。
むしろ不必要。
無くなればいいと何度も思った。
:09/01/01 21:02 :SH901iC :XAv2cR7M
#211 [ゆーちん]
だからまだ、その必要な存在って意味がわからない。
「そうなんだ。」
「シホもいつかわかるから。慌てなくてもいいぞ。」
何かを悟ってくれたのだろうか。
深入りしてくれないところが有り難いんだ。
さすがリーダーしてるだけある。
人の心を読むのが上手いのだろう。
:09/01/01 21:02 :SH901iC :XAv2cR7M
#212 [ゆーちん]
「帰るか。」
「え、もう?」
「まだいたいのか?」
「別にそんなんじゃないけど。」
「今日は何もトラブルとかなかったから俺がいてもいなくても、どっちでもいいし。帰りたい奴は帰るんだよ。」
「ふーん。じゃあ帰る。寒い。」
:09/01/01 21:03 :SH901iC :XAv2cR7M
#213 [ゆーちん]
哲夫は立ち上がり、『だったらもっと着込んで来いよ。』と笑った。
哲夫が歩き始めたので私も立ち上がり、彼の後を追った。
「康、俺ら帰るわ。」
哲夫が康孝にそう告げると、康孝が頷き、またみんなの方を向いて声を張り上げた。
「テッちゃん帰るって!」
:09/01/01 21:03 :SH901iC :XAv2cR7M
#214 [ゆーちん]
すると、その康孝の一言に、あれだけ騒がしかった場内は一気に同じ事を言い出した。
「お疲れ様でした!」
哲夫は『はーい、じゃあお先に。』とだけ答えた。
「シホ、おいで。」
呆気に取られていた私は、みんなを見ていた。
置いて行かれちゃたまらない。
:09/01/01 21:04 :SH901iC :XAv2cR7M
#215 [ゆーちん]
哲夫の声に素早く反応した私は、慌てて哲夫の元に駆け寄った。
「ほい。」
哲夫が着ていた上着が私の体を包む。
「テツ寒くないの?」
「男の子だもん。」
「ふーん。」
「ありがとうぐらい言え。」
「頼んでないよ。」
「生意気小娘。」
:09/01/01 21:05 :SH901iC :XAv2cR7M
#216 [ゆーちん]
哲夫の上着が温かい。
そのうえ肩を抱かれたので、もっと温かかった。
帰り道、私はたくさん笑った気がする。
家に戻ると哲夫は冷蔵庫からビールを取り出した。
「飲むか?」
「…飲んだ事ない。」
:09/01/01 21:06 :SH901iC :XAv2cR7M
#217 [ゆーちん]
「お子ちゃまだなぁ。俺のビールデビューなんて12才だぞ?」
「12才?」
「おうよ。中1の時、先輩に無理矢理飲まされて吐いたのが、俺の華々しいビールデビュー秘話だ。」
「フフッ…バカだ。」
コップに注いだビールを一気に飲み干した哲夫を見て、自然に口が動いていた。
:09/01/01 21:07 :SH901iC :XAv2cR7M
#218 [ゆーちん]
「美味しい?」
「おう!」
「美味しそうに飲むね。」
「だって本当に美味いし。飲んでみっか?」
「いい、いらない。」
「そ。」
哲夫がビールを飲む。
それは構わない。
だけど自分は飲みたくない。
まだ、恐いんだ。
:09/01/01 21:08 :SH901iC :XAv2cR7M
#219 [ゆーちん]
私はシホだけど、元は萌子だから。
萌子の時に恐かったものはシホになっても恐かった。
恐怖心が取れない。
ビールを飲むと機嫌が悪くなる、父と母の恐さが、未だに私を苦しめた。
:09/01/01 21:08 :SH901iC :XAv2cR7M
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