闇の中の光
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#289 [ゆーちん]
「何か体ダルいなーと思っててさ。で、昨日の集会の途中で急に限界迎えて、こりゃダメだって訳でシホ呼びに行って…実はそこから記憶ない。」
「えぇ?重症だよ、それ。」
「所々に記憶はあんだ。俺の財布持って家飛び出したと思ったら、薬持って帰って来たとか。後はタオル変えたり、体温計を脇に突っ込んで来たり。」
:09/01/04 23:43 :SH901iC :bKxDy5AQ
#290 [ゆーちん]
哲夫は煙草を消し、コップの水を飲み干した。
「一晩中寝ずに起きててくれたんだろ?」
…知ってたんだ。
「ありがとな。」
お礼を言われると、嬉しい気持ちになる。
そんな、子供みたいな事をゆっくりと学び始めたんだ。
萌子じゃ学べなかった、人間くさい気持ち。
:09/01/04 23:43 :SH901iC :bKxDy5AQ
#291 [ゆーちん]
「気付いてあげられなくてごめん。」
「何が?」
「3日も前から体調悪かったなんて…」
「気にすんな。最近一気に寒くなったから体調崩しただけだし。迷惑かけてごめんな。」
迷惑なんて思わない。
私は首を振った。
:09/01/04 23:44 :SH901iC :bKxDy5AQ
#292 [ゆーちん]
だけど、体調の変化に気付けなかった事は気にするよ。
私の事はなんでも気付いているのに、私は哲夫の事、何にも感じ取ってあげらんない。
あぁ…何となく人間らしくなって来たのかな、ってこの時思った。
悔しさとか嬉しさとか…そういう感情があるのは人間くさいでしょ。
:09/01/04 23:45 :SH901iC :bKxDy5AQ
#293 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽
ではまた
>>2▽▲▽▲▽▲▽
:09/01/04 23:45 :SH901iC :bKxDy5AQ
#294 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲
色違い
▲▽▲▽▲▽▲
:09/01/05 18:13 :SH901iC :R4f3CKXI
#295 [ゆーちん]
すっかり回復した哲夫と、買い物に行った時の事。
「シホ、これ試着してこい。」
「シホ、これ履いてみ。」
「シホ、欲しい物あるか?」
哲夫との買い物はいつもこんな感じ。
洋服や靴をテキパキと選んでくれる。
:09/01/05 18:13 :SH901iC :R4f3CKXI
#296 [ゆーちん]
一通り買い物が終わると、私の欲しい物がないかを聞いてくる。
いつもは『ない。』と答えるけど、今日は『ある。』と答えた。
「何?」
「…お箸。」
「箸?箸ならまだあっただろ?」
うん、ある。
たくさん。
でもそれは割り箸じゃん。
:09/01/05 18:14 :SH901iC :R4f3CKXI
#297 [ゆーちん]
「お箸を洗いたいんだ。」
哲夫は私の言葉に笑い出した。
笑われて、少し腹が立った。
何で笑うの、って。
腹が立ったけど、嬉しかった。
あぁ、私、人間やってるんだって思えたから。
:09/01/05 18:16 :SH901iC :R4f3CKXI
#298 [ゆーちん]
「何で割り箸じゃだめなわけ?」
「だって…寂しいじゃん。」
「寂しい?」
「自分専用のお箸ってさ、何かこう…家族の特権物って言うか。」
ふと思った。
私は哲夫に取って、一体なんなんだろう。
:09/01/05 18:17 :SH901iC :R4f3CKXI
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