闇の中の光
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#323 [ゆーちん]
車に乗り込み、哲夫は家まで走らるよう康孝に言った。
うるさい車が走り出す。
「テツ…」
息が、できないんだ。
それすら伝えられない。
名前を呼ぶのに必死。
「シホ…死ぬなよ。」
:09/01/07 15:17 :SH901iC :K673H/..
#324 [ゆーちん]
さっきまで堂々としていた哲夫の表情が一気に弱くなった。
涙でぼやけてよく見えないけど、でも絶対…哲夫は焦っている。
哲夫に迷惑かけている。
「ごめ…ね…」
「いいから。無理に喋んなよ。」
:09/01/07 15:18 :SH901iC :K673H/..
#325 [ゆーちん]
涙が止まらない。
苦しい。
「おい、康。家へ連れて帰るより病院のがいいのか?」
「わかんねぇよ。すげぇ苦しそうだし…もしかして過呼吸じゃね?」
…過呼吸?
あぁ、そうだ。
過呼吸だよ。
萌子の時、よくなったじゃん。
過呼吸なら、対処法はわかる。
:09/01/07 15:19 :SH901iC :K673H/..
#326 [ゆーちん]
「袋…」
「え?」
哲夫に聞き返され、もう一度『袋。』と答えるだけでも苦しい。
「袋なんかねぇよ。康、お前持ってる?」
「ない。」
私は両手を口元にあて、わずかながらも二酸化炭素を吸う努力をした。
:09/01/07 15:20 :SH901iC :K673H/..
#327 [ゆーちん]
「え、何してんだよ。吐きてぇの?」
「哲夫、それたぶん二酸化炭素吸ってんだわ。過呼吸って、体中の二酸化炭素が足りなくて苦しくなる症状だから。」
康孝の説明に、うんうんと頷くと哲夫は不安な顔のまま私を見ていた。
:09/01/07 15:21 :SH901iC :K673H/..
#328 [ゆーちん]
所詮は自分の小さな手の平。
すき間だらけで、二酸化炭素なんて気休め程度。
苦しくて、死にそうだ。
死にたくないなんて思ってしまった私は、愚か者だろうか?
:09/01/07 15:21 :SH901iC :K673H/..
#329 [ゆーちん]
家に到着し、哲夫に抱き抱えられながら車から降りた。
ベットに寝かされ、哲夫は康孝に聞いた。
「袋どこ?」
「はぁ?知らねぇよ!」
「俺、自分んちのこと把握してねぇんだよ。」
「袋ぐらいどこかにあるだろ!」
:09/01/07 15:22 :SH901iC :K673H/..
#330 [ゆーちん]
いざと言う時の男は情けない。
あたふたして…苦しさに襲われている私は、なぜか嬉しくなった。
「哲夫…」
「ほら、呼んでんぞ!」
哲夫と康孝が駆け寄ってくれた。
「シホ、袋どこにあんの?」
:09/01/07 15:23 :SH901iC :K673H/..
#331 [ゆーちん]
哲夫の質問は無視した。
私を覗き込む彼の顔を、必死に手を伸ばし、自分の顔に押し付けた。
「はぁ?」
康孝から見ればいきなりのキス。
私は康孝の目も気にせず、哲夫の口を広げた。
:09/01/07 15:24 :SH901iC :K673H/..
#332 [ゆーちん]
息を送り、また哲夫の口の中の空気を吸う。
哲夫は驚き、唇を離してしまった。
「シホ?いきなりキスとか意味わかんねぇんだけど。しかも舌じゃなくて息入れてくるって、どういう事だよ!」
:09/01/07 15:24 :SH901iC :K673H/..
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