闇の中の光
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#326 [ゆーちん]
「袋…」
「え?」
哲夫に聞き返され、もう一度『袋。』と答えるだけでも苦しい。
「袋なんかねぇよ。康、お前持ってる?」
「ない。」
私は両手を口元にあて、わずかながらも二酸化炭素を吸う努力をした。
:09/01/07 15:20 :SH901iC :K673H/..
#327 [ゆーちん]
「え、何してんだよ。吐きてぇの?」
「哲夫、それたぶん二酸化炭素吸ってんだわ。過呼吸って、体中の二酸化炭素が足りなくて苦しくなる症状だから。」
康孝の説明に、うんうんと頷くと哲夫は不安な顔のまま私を見ていた。
:09/01/07 15:21 :SH901iC :K673H/..
#328 [ゆーちん]
所詮は自分の小さな手の平。
すき間だらけで、二酸化炭素なんて気休め程度。
苦しくて、死にそうだ。
死にたくないなんて思ってしまった私は、愚か者だろうか?
:09/01/07 15:21 :SH901iC :K673H/..
#329 [ゆーちん]
家に到着し、哲夫に抱き抱えられながら車から降りた。
ベットに寝かされ、哲夫は康孝に聞いた。
「袋どこ?」
「はぁ?知らねぇよ!」
「俺、自分んちのこと把握してねぇんだよ。」
「袋ぐらいどこかにあるだろ!」
:09/01/07 15:22 :SH901iC :K673H/..
#330 [ゆーちん]
いざと言う時の男は情けない。
あたふたして…苦しさに襲われている私は、なぜか嬉しくなった。
「哲夫…」
「ほら、呼んでんぞ!」
哲夫と康孝が駆け寄ってくれた。
「シホ、袋どこにあんの?」
:09/01/07 15:23 :SH901iC :K673H/..
#331 [ゆーちん]
哲夫の質問は無視した。
私を覗き込む彼の顔を、必死に手を伸ばし、自分の顔に押し付けた。
「はぁ?」
康孝から見ればいきなりのキス。
私は康孝の目も気にせず、哲夫の口を広げた。
:09/01/07 15:24 :SH901iC :K673H/..
#332 [ゆーちん]
息を送り、また哲夫の口の中の空気を吸う。
哲夫は驚き、唇を離してしまった。
「シホ?いきなりキスとか意味わかんねぇんだけど。しかも舌じゃなくて息入れてくるって、どういう事だよ!」
:09/01/07 15:24 :SH901iC :K673H/..
#333 [ゆーちん]
照れてんのか怒ってんのかわかんないけど、哲夫は笑ってた。
すると康孝はいきなり哲夫の頭を掴み、私に押し当てた。
「わかった!テツ、お前の口が袋変わりだ。キスじゃねぇ。お前が二酸化炭素送り込んでやればいいんだ。」
:09/01/07 15:25 :SH901iC :K673H/..
#334 [ゆーちん]
康孝、バカに見えて頭いいんだ…。
助かった。
哲夫は康孝に言われた通り、息を吐いてくれた。
それは私に二酸化炭素を与えてくれているのと同じで、私を救ってくれる。
しばらくすると涙が止まり、息も落ち着いて来た。
:09/01/07 15:26 :SH901iC :K673H/..
#335 [ゆーちん]
哲夫の口を離し、酸素を吸った。
うん、もう大丈夫かな。
「シホ、もういいのか?」
「うん、ありがと。」
胸を撫で下ろす2人。
「ヤッちゃんも、ありがとうね。」
「どいたま。」
康孝に頭を撫でられ、生きた心地を感じた。
:09/01/07 15:27 :SH901iC :K673H/..
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