闇の中の光
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#351 [ゆーちん]
私の茶色い髪も、哲夫の金色の髪も、根本が黒くなって来た頃。
美容院で2人して髪色を変えた。
私は少し暗くしてもらったのに、哲夫はますます明るくなった。
金って言うか…銀?
銀色ヘアーがなんだかやけに馬鹿っぽく見えて、お腹を抱えて笑った。
:09/01/10 22:28 :SH901iC :mw88GgZk
#352 [ゆーちん]
家に帰って来てから私は哲夫に髪を切ってもらった。
長くなっていた前髪がまた短くなる。
「うん、やっぱシホはパッツンのが似合うな。」
褒められると、嬉しい。
そんな12月の末。
もうすぐ今年が終わるよ。
:09/01/10 22:29 :SH901iC :mw88GgZk
#353 [ゆーちん]
このまま大晦日を迎えて、新年も哲夫と一緒に迎えたい。
そんな事を願いながら、髪をイメチェンした2人は今日も集会に向かう。
寒くて寒くて、哲夫の腕から離れたくなかった。
だけどのんちゃん達とも話したい。
人間って…私って、わがままなんだ。
:09/01/10 22:31 :SH901iC :mw88GgZk
#354 [ゆーちん]
「寒いねぇ。」
私がみんなの輪の中にいつものように混ざると、いつものように出迎えてくれる。
「シホちゃん、お疲れ〜。」
「てゆーか髪切ったべ?」
「色も変わった?暗くしたの?」
「前髪パッツン復活じゃーん!」
「超可愛い!」
:09/01/10 22:33 :SH901iC :mw88GgZk
#355 [ゆーちん]
仲間に褒められるのも、嬉しい。
「ありがと。」
ありがとうって言葉を言える環境の中にいれるってのも嬉しい。
嬉しい事だらけの12月。
だけど、ちょっと厄介な事もあった。
それは…
「いやーっ!」
私が夜中に、叫び出す事。
:09/01/10 22:35 :SH901iC :mw88GgZk
#356 [ゆーちん]
「シホ、大丈夫。俺ここにいるから。」
「やだ…怖い…テツ…怖いよ…」
あの喧嘩を見てから、なぜだか夜中に叫びながら起きてしまうって事がある。
暴力振るわれる夢を見ていたのか、ただ無意識に恐怖を感じていたのか、自分でもわからないけど夜中に叫び出す。
:09/01/10 22:35 :SH901iC :mw88GgZk
#357 [ゆーちん]
「怖くない、怖くない。ゆっくり息吸ってみ?」
眠りについたすぐなのに、哲夫を起こしてしまい、こうやって介抱してくれる。
ギュッと抱きしめて、優しくなだめてくれる。
この前みたく焦ったりしないで、冷静に介抱してくれる哲夫の声に安心感を覚える。
ゆっくりと息を吸い、ゆっくり吐いた。
:09/01/10 22:38 :SH901iC :mw88GgZk
#358 [ゆーちん]
「そう。よくできました。はい、目ぇ閉じて。」
催眠術のような哲夫の言葉で、私は再び眠りにつく。
こんな事が何日か続いた。
哲夫は気にするなって言ってくれるけど、そういう訳にもいかない。
別々に寝ようと試したけど、余計に叫んじゃうし、全然眠れない。
:09/01/10 22:38 :SH901iC :mw88GgZk
#359 [ゆーちん]
つまり、私は哲夫の隣じゃないと眠れないの。
結局、哲夫に迷惑かけながら眠る日が続いた。
「ごめんね。」
「悪いと思うなら今日の昼飯はハンバーグにして。」
「…子供みたい。」
「うるせ!」
笑って許してくれる哲夫に、本当感謝だよ。
:09/01/10 22:41 :SH901iC :mw88GgZk
#360 [ゆーちん]
ある日の会話。
康孝に乗せられて、買い物に出掛けていた。
「テッちゃーん。今年のクリスマスどうすんの?」
康孝が聞いた。
「いつも通りだけど。」
「シホちゃんも参加?」
「参加するだろ?」
康孝と哲夫に聞かれたのはいいけど、何の事だかさっぱり。
:09/01/10 22:56 :SH901iC :mw88GgZk
#361 [ゆーちん]
聞くと、毎年12月25日はチームのみんなでクリスマスパーティーをしているらしい。
場所は、いつもの集会場所じゃ寒いから、近くの居酒屋でやるんだって。
「シホも行く?」
「行く。」
生まれて初めて、クリスマスに楽しみができた。
:09/01/10 22:57 :SH901iC :mw88GgZk
#362 [ゆーちん]
買い物中も、クリスマスパーティーの事が楽しみで、胸が騒いだ。
「ヤッちゃん。」
「ん?」
「クリスマスパーティーって、どんな事すんの?」
哲夫が自分の服を選んでいる間、私と康孝は後ろで雑談。
:09/01/10 22:58 :SH901iC :mw88GgZk
#363 [ゆーちん]
「別に普通だよ。飯食って、酒飲んで、カラオケして、ビンゴして。」
「ビンゴ?ビンゴするの?」
「いかつい集団のくせに、可愛いゲームだなって思った?」
康孝が笑った。
違う、そうじゃない。
私が驚いたのは、それが理由じゃない。
:09/01/10 22:58 :SH901iC :mw88GgZk
#364 [ゆーちん]
「私ビンゴした事ない。」
「えっ、マジ?」
「うん。でもやり方はわかるよ!経験ないだけ。」
「そっか。じゃあ楽しみだな。」
「うん、楽しみ!ねぇ、景品って何があるの?」
「当日までのお楽しみ。」
「気になる〜!」
:09/01/10 22:59 :SH901iC :mw88GgZk
#365 [ゆーちん]
なんて話をしていたら、哲夫は買う物が決まったらしくレジに向かう。
この日の哲夫は、カード支払いせずに現金払いが目立った。
万札だけで支払いを済ませ、康孝がお釣りを受け取り、いつもの袋に入れる。
「次行くぞ。」
哲夫の後ろを私と康孝でついて行く。
:09/01/10 23:00 :SH901iC :mw88GgZk
#366 [ゆーちん]
「ねぇ哲夫、ヤッちゃんが持ってるこの袋、お釣り入れ?」
「ん?まぁ、そんなもんだな。」
哲夫に聞いた後、また違う店で服を漁り出したので私は康孝と後ろで待つ。
:09/01/10 23:02 :SH901iC :mw88GgZk
#367 [ゆーちん]
「この袋は哲夫の優しさなんだよ。」
康孝が、さっきの質問の答えを詳しく教えてくれた。
「優しさ?」
「この袋に入れてる金は、チームの経費みたいなもん。集会場所、野外なのにいつも電気点いてんだろ?あの電気代は、この袋の中の金で払ってんの。」
「…そうだったんだ。」
:09/01/10 23:02 :SH901iC :mw88GgZk
#368 [ゆーちん]
確かに、よく考えれば電気はいつも点いていた。
電気代とか、そんな事考えた事もなかったな。
「チームのみんなには内緒なんだ。哲夫が電気代払ってるって事。みんなには電気は勝手に点けてる、みたいに振る舞ってんだけど…でもたぶんみんな知ってる。哲夫が電気代払ってる事。」
「何か…カッコイイ。」
:09/01/10 23:03 :SH901iC :mw88GgZk
#369 [ゆーちん]
「おう。あいつはカッコイイ男だよ。俺が払ってんだぜーとか言わないで、さりげなくチームの環境整えてんのがカッコイイ。だからみんな哲夫に付いて来るんだな。」
そっか。
そうなんだ。
納得かも。
哲夫はリーダー性のある男なんだね。
:09/01/10 23:04 :SH901iC :mw88GgZk
#370 [ゆーちん]
買い物も済み、そのまま康孝の車で集会に直行。
のんちゃん達と話した事はもちろんクリスマスパーティーの事だ。
「もちろん。みんな参加だよー。シホちゃんもでしょ?」
「うん。参加する。」
「やったね。超楽しみだ。」
:09/01/10 23:05 :SH901iC :mw88GgZk
#371 [ゆーちん]
「何か緊張する…」
「アハハハ!緊張とか、可愛いね〜。さすが17才。シホちゃん見てるとウチらまで初々しい気持ちになるよ。」
笑顔が絶えないの、この人達といると。
12月の夜空の下、体寄せ合って寒さを笑い飛ばすんだ。
その空間が心地いい。
:09/01/10 23:05 :SH901iC :mw88GgZk
#372 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽
すみません
今日はここまで
>>2▽▲▽▲▽▲▽
:09/01/10 23:06 :SH901iC :mw88GgZk
#373 [ゆーちん]
そして待ちに待ったクリスマスパーティー前日。
そう、今日はイヴ。
彼女でもない私と、この日を一緒に過ごしてくれるなんて…。
「哲夫、彼女いないの?」
「はぁ?今更な質問だな。」
「聞くタイミングがなくて。」
「そ。」
:09/01/11 11:24 :SH901iC :/n8N/9j.
#374 [ゆーちん]
「いないの?」
「いない。いたらこんな日にこんな事してない。」
こんな事とは…クローゼット掃除。
また新しい服が増えたので、いらなくなった服を引きずり出しているらしい。
「いないんだ。ふーん。」
:09/01/11 11:25 :SH901iC :/n8N/9j.
#375 [ゆーちん]
「リアルな話。もしいたらシホをこの家に住ませないだろ?」
「…それも、そうだね。」
「わかったなら、そんな悲しい質問はもうすんなよ。」
「フッ。悲しいの?」
「悲しいよぉ。俺クリスマスとかに、ちゃんとした彼女いた事ないもん。」
「…ふーん。」
:09/01/11 11:27 :SH901iC :/n8N/9j.
#376 [ゆーちん]
哲夫の過去、聞きたいようで聞きたくないな。
私だけ哲夫の過去を聞いて、私は自分の過去を話さない。
そんなフェアじゃないのは、あんまり好きじゃないし…。
って、何きれいごと言ってんだろう私。
:09/01/11 11:31 :SH901iC :/n8N/9j.
#377 [ゆーちん]
哲夫に迷惑かけて、生かせてもらっているのに…何がフェアじゃない、だよ。
私は、自分の過去を思い出すのが怖いだけの、ただの弱虫じゃないの。
「今日はチキンでも焼く?」
「…イヴだから?」
「うん。嫌?」
「嫌じゃねぇけど…俺はシホの作る煮魚が食べたい。」
:09/01/11 11:34 :SH901iC :/n8N/9j.
#378 [ゆーちん]
「煮魚ぁ?」
思わず笑ってしまった。
「うん。」
哲夫は黙々とクローゼットの整理に励む。
「別にいいけど…クリスマスっぽくないよ、煮魚は。」
「俺日本人だし。別にキリストさんとか興味ないし。だからあえて日本食がいい。」
:09/01/11 11:35 :SH901iC :/n8N/9j.
#379 [ゆーちん]
「興味ないとか言っちゃってぇ…明日クリスマスパーティーなのに。」
「それはー…まぁあいつらがパーティーしたいっつうから仕方なく?」
「クリスマスに恋人がいない人の負け惜しみに聞こえるよ、テッちゃん。」
:09/01/11 11:41 :SH901iC :/n8N/9j.
#380 [ゆーちん]
からかうように私が肩を叩くと、哲夫は『うるせぇ。』とひるんでいた。
そんな哲夫を見て、自然と笑顔が零れてしまった。
「煮魚とご飯とみそ汁!頼んだよシホちゃん。」
「はいはい。」
:09/01/11 11:41 :SH901iC :/n8N/9j.
#381 [ゆーちん]
この前買い物に行った時、魚を買っておいてよかった。
こんな寒い日に買い物に行きたいとは思わないから。
いつの間にか、この家で料理をするのも手慣れたものになっていた。
調理具や調味料や食器。
どこに何があるのか今では全部把握できているはず。
:09/01/11 21:34 :SH901iC :/n8N/9j.
#382 [ゆーちん]
哲夫に言われた3品と、ちょっとしたおかずを作り終わると、お風呂の時間を迎えていた。
衣装部屋から戻ってきた哲夫が『風呂だぞ。』と呼びに来るまで、料理に夢中だった私。
「もうこんな時間?」
「いい匂い。早く風呂入って、飯食おうぜ〜。腹へった。」
:09/01/11 21:35 :SH901iC :/n8N/9j.
#383 [ゆーちん]
いつものように哲夫とお風呂に入り、のんびりと湯舟に浸かる。
体の芯から温まった。
:09/01/11 21:36 :SH901iC :/n8N/9j.
#384 [ゆーちん]
「片付け終わった?」
「あと少し。風呂出て飯食ってから続きする。たぶん集会行く前には終わると思うし。」
「…手伝おうか?」
「んあ?手伝う、イコール、クリスマスプレゼントのつもりか?」
:09/01/11 21:37 :SH901iC :/n8N/9j.
#385 [ゆーちん]
哲夫がニヤッとした。
「あぁ!うん、そう!」
「ナイスアイディアだ哲夫、とか思っただろ〜。」
脇腹をくすぐってくる哲夫。
笑いながら暴れたせいで、お湯も暴れる。
:09/01/11 21:37 :SH901iC :/n8N/9j.
#386 [ゆーちん]
お風呂から出て、和食尽くしの夜ご飯を食べた。
もちろん、色違いのお箸で。
「全然クリスマスっぽくなーい。」
「美味いな〜、煮魚。日本食最高だ。」
まぁ、いっか。
美味いって言ってくれたし。
:09/01/11 21:38 :SH901iC :/n8N/9j.
#387 [ゆーちん]
食べ終えた哲夫は、すぐにまたクローゼットに引き寄せられて行った。
私は後片付け。
お箸を洗うと、無意識に笑みが零れる。
こんな姿、哲夫に見られたら『何ニヤけてんだ?』って気味悪いって思われるかもしれないね。
最近さ、色んな感情が経験できて楽しいんだ私。
:09/01/11 21:39 :SH901iC :/n8N/9j.
#388 [ゆーちん]
「終わった?」
私が衣装部屋に顔を出すと、ちょうど哲夫がクローゼットの扉を閉めた所だった。
「残念でした。クリスマスプレゼントはまた別のものちょうだいね。」
銀色頭の哲夫が笑った。
:09/01/11 21:39 :SH901iC :/n8N/9j.
#389 [ゆーちん]
片付けが終わったという事で、私たちはいつものように集会へ向かった。
いつもと変わらない夜道はクリスマスイヴって感じはしない。
「この辺りってイルミネーションしてる家とか無いんだね。」
「そういえばそうだな。みんなシケシケ〜って感じ?」
:09/01/11 21:40 :SH901iC :/n8N/9j.
#390 [ゆーちん]
哲夫の家にイルミネーションを付けようと提案すると、笑われた。
明日飾って、すぐ片付けるのか?って。
「そっか。」
「おバカちゃんだな。」
「んー。」
「じゃあさ、また来年な。」
:09/01/11 21:41 :SH901iC :/n8N/9j.
#391 [ゆーちん]
「…来年?」
「おう。来年は12月に入ったらすぐにイルミネーション飾ろう。だから来年まで我慢しろよ。」
当たり前のように口走った【来年】と言う言葉。
:09/01/11 21:41 :SH901iC :/n8N/9j.
#392 [ゆーちん]
私、来年のクリスマスも哲夫と一緒にいるのかな?
もし、哲夫に彼女ができたら…私どうなっちゃうんだろ。
:09/01/11 21:42 :SH901iC :/n8N/9j.
#393 [ゆーちん]
来年のクリスマスの楽しみができて、ちょっと嬉しくなった。
けど、哲夫に彼女ができたらどうしようと、すごく不安になった。
そんなイヴの夜道。
賑やかな声が聞こえ始めた。
:09/01/11 21:42 :SH901iC :/n8N/9j.
#394 [ゆーちん]
その日の集会は、いつもと少し違った。
挨拶の後にある【報告】と呼ばれる作業は、いつもより手短だった。
そしてなぜかツリーがあった。
CDデッキもあり、クリスマスソングが大音量で流されていた。
自然と、笑顔が零れた。
:09/01/11 21:43 :SH901iC :/n8N/9j.
#395 [ゆーちん]
「のんちゃん。」
「んー?」
「明日クリスマスパーティーなんでしょ?なのに今日も騒ぐの?」
「前夜祭みたいなもんだよ。毎年イヴの集会はこんな感じ。」
「そうなんだ。」
:09/01/11 21:43 :SH901iC :/n8N/9j.
#396 [ゆーちん]
寒さなんか忘れちゃうくらい、たくさん笑った。
笑うって、楽しいね。
仲間って、楽しいね。
涙が出そうなくらい、幸せなイヴだった。
:09/01/11 21:44 :SH901iC :/n8N/9j.
#397 [ゆーちん]
あのツリーの輝きも、あのクリスマスソングを響かせるのも、全部哲夫がいるから存在するもの。
お金や人を管理するっていう康孝もすごいけど、哲夫もやっぱすごいと思う。
私は、とんでもない人に拾われたんだ。
:09/01/11 21:45 :SH901iC :/n8N/9j.
#398 [ゆーちん]
「はーい、注目〜!」
康孝の声が響いた。
クリスマスソングがピタリと止まると、哲夫の声が響く。
「みんなお疲れ。明日のパーティーに備えて、今日はここで全員解散な。」
:09/01/11 21:45 :SH901iC :/n8N/9j.
#399 [ゆーちん]
のんちゃんが携帯電話の時計を見ているのを私も覗かせてもらうと、いつもの解散より2時間程早い。
「去年もこのくらいに強制解散だったよ。」
と、のんちゃんが教えてくれた。
:09/01/11 21:46 :SH901iC :/n8N/9j.
#400 [ゆーちん]
「つーわけで、みんなまた明日な〜。」
「はいっ!お疲れっした!」
哲夫が話し終えると、みんなが声を揃えて挨拶する。
クリスマスツリーの明かりが消え、みんなそれぞれ帰って行く。
:09/01/11 21:46 :SH901iC :/n8N/9j.
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