闇の中の光
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#400 [ゆーちん]
「つーわけで、みんなまた明日な〜。」

「はいっ!お疲れっした!」


哲夫が話し終えると、みんなが声を揃えて挨拶する。


クリスマスツリーの明かりが消え、みんなそれぞれ帰って行く。

⏰:09/01/11 21:46 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#401 [ゆーちん]
「シホちゃん。また明日ね。」

「うん。また明日。」


のんちゃん達も帰って行くので、私は哲夫のところに向かった。

⏰:09/01/11 21:47 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#402 [ゆーちん]
「哲夫。」


康孝達と話をしていた哲夫は、私に気付くと、小さく笑った。


「おっ、帰るか?」


コクリと頷く私を手招きする哲夫。

⏰:09/01/11 21:47 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#403 [ゆーちん]
近寄ると、肩を抱かれた。


「んじゃ、また明日。」


哲夫が立ち去ると、後ろから声がした。


「お疲れっす!」

「お疲れ様です!」


本当、疲れたよ。


笑い疲れた。

⏰:09/01/11 21:48 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#404 [ゆーちん]
「テッちゃん。」

「ん?」

「ツリー綺麗だったね。」

「毎年グレードアップしてんだぜ、あれ。」

「そうなの?」

「来年はあのツリーに負けないくらいのをウチにも飾ろっか。」

「…うんっ!」

⏰:09/01/11 21:49 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#405 [ゆーちん]
知らない人が私たちを見て、私と哲夫をどんな関係だと思うだろう。


そりゃやっぱ恋人同士って思うだろうね。


クリスマスイヴの夜に、肩を抱かれて歩いてるんだから、私。


でも違うんだ。

⏰:09/01/11 21:49 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#406 [ゆーちん]
私と哲夫は、ペットと飼い主って関係なの。


恋人同士なんて、夢のまた夢の関係。


そんな夢を夢みちゃいけない。


わかってるんだけど、哲夫があまりに近くにいすぎて…勘違いしそうになる。


哲夫の甘ったるい香水は、私の脳を痺れさすのかな。

⏰:09/01/11 21:50 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#407 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

ではまた

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:09/01/11 21:50 📱:SH901iC 🆔:/n8N/9j.


#408 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

襲撃

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/12 20:58 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#409 [ゆーちん]
翌25日。


クリスマスパーティーは【楽しい】以外の言葉があったら教えてもらいたい程のものだった。


ずっと笑ってた。


昨日より笑ってた。


本当、楽しい。


パーティーから帰ってくると、ほろ酔いだった哲夫はビンゴゲームで当たったおもちゃで大笑いしながら遊んでいた。

⏰:09/01/12 20:59 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#410 [ゆーちん]
遊ぶのに飽きると私をベットに誘い、強く抱きしめて眠りについた。


こんな心トキめくクリスマスは初めてで、何か罰が当たりそうな気さえする。


このままでいたいな。


でも、人生そう上手くいかないんだよ。


わかってる。


楽あれば苦あり。

⏰:09/01/12 21:01 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#411 [ゆーちん]
人生ってうまい具合にプラスマイナスゼロになってるんだ。


過去がマイナスすぎて、現在がプラスなら、未来はゼロでいいじゃない。


なのに、どうしてだろう。


私の未来はプラスでもゼロでも無い気がする。

⏰:09/01/12 21:04 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#412 [ゆーちん]
そう思わずにいられないぐらいな現在だった。


…なんでだろう。


良い予感は当たらないのに、悪い予感だけが的中する。


その悪い予感が当たったのは4日後だった。

⏰:09/01/12 21:05 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#413 [ゆーちん]
それは、本当に突然だった。


12月29日の夜、いつものように集会に来ていて、私はのんちゃん達と話をしていた。


のんちゃんがお笑い芸人の話をして、みんなが大笑いしていた。


「おいっ!」

「抑えろ!」


哲夫達がいる所が急に騒がしくなった。

⏰:09/01/12 21:06 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#414 [ゆーちん]
何事だと、みんなの視線が動く。


人が多くてよく見えない。


「ふざけんなっ!」

「やめろ!」


…喧嘩?


心臓が痛くなる。


喧嘩なんか、もう見たくないし聞きたくない。


私の体が強張った。

⏰:09/01/12 21:06 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#415 [ゆーちん]
「ウチら、様子見て来るよ。」

「あ、じゃあ私シホちゃんとここで待ってる。」

「うん。」


強張る私の手を、そっと握ってくれたのはのんちゃんだった。


のんちゃんと私を残し、みんなが様子を見に向かった。

⏰:09/01/12 21:08 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#416 [ゆーちん]
「のんちゃん…ありがと。ごめんね。」

「気にするなぁ〜!」


のんちゃんのえくぼが、少しだけ私の心を落ち着かせてくれた。


あの喧嘩事件以来、大声が苦手なんだと知ってもらえたらしく、少しでも怒鳴り声が聞こえるとみんな心配してくれる。


本当、ありがたい仲間達。

⏰:09/01/12 21:09 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#417 [ゆーちん]
「てゆーか聞いてくれる?私この前、服買ったのね。で、いつものサイズ買ってぇ、いざ着てみたら…入らないの!太っちゃったよ〜マジでショックでかい。」


少しでも気を紛らわそうとしてくれるのんちゃん。


感謝しても感謝しきれないね。

⏰:09/01/12 22:14 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#418 [ゆーちん]
「…太ったようには見えないけど。」

「嬉しい事言ってくれんねー。でも太っちゃったんだよぉ。シホちゃん何かいいダイエット方法知らない?」

「んー…」

「あぁ、シホちゃんみたいな華奢っ子はダイエット経験ないか!私のこの肉、シホちゃんにあげたいよ〜。」

⏰:09/01/12 22:14 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#419 [ゆーちん]
「…いらないよぉ。」

「何で?クリスマスプレゼントって事で。」

「やだー。」

「アハハ。」


えくぼが可愛いのんちゃん。


手を握ってくれたのんちゃん。


おかげで、ちょっと落ち着いた。

⏰:09/01/12 22:15 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#420 [ゆーちん]
…と、思ったのはつかの間だった。


「キャーッ!」


その悲鳴と共に、急に騒がしくなり、みんなが慌ただしく動き出した。


「えっ、何?」


のんちゃんの手に力が入る。


私も思わず強く握り返してしまった。

⏰:09/01/12 22:16 📱:SH901iC 🆔:4O9J1hkU


#421 [さき]
超気になります(>_<)
がんばってくださいイ

⏰:09/01/13 00:48 📱:W61SH 🆔:W9CWv442


#422 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

コメントありがとうございますm(__)m

更新します

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/13 15:13 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#423 [ゆーちん]
状況が読めない。


今、何が起こってる?


たくさんの怒鳴り声、たくさんの悲鳴、たくさんの笑い声、たくさんの…哲夫の声。


「お前ら逃げろ!」


顔は見えなくても、今の声は哲夫だ。

⏰:09/01/13 15:14 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#424 [ゆーちん]
逃げろって?


何から逃げなくちゃいけないの?


「ねぇシホちゃん。何か様子おかしくない?」

「…。」


怖い。


苦しい。


どうしよう。

⏰:09/01/13 15:14 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#425 [ゆーちん]
「あいつら…誰?」


のんちゃんが言う【あいつら】が目の前に現れた時、何となくわかってきた。


バットや鉄パイプ持ってる人って今時いるんだ…。


恐かったくせに頭の中は妙に冷静だった。

⏰:09/01/13 15:15 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#426 [ゆーちん]
知らない男たちが私たちの方に近付いてくる。


「おい!女は逃げろ!」


そんな声が聞こえた。


康孝の声だったような気がしたけど…もう、無理だった。


私とのんちゃんは、知らない男たちに囲まれていた。

⏰:09/01/13 15:16 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#427 [ゆーちん]
「てめぇら誰?」


のんちゃんが聞いた。


「あぁ?」

「何の用?」


きっと、大声あげて、威嚇したいに決まってる。


だけどのんちゃんは冷静を保ちながら、男たちを睨んでいた。


「喧嘩、売りにきた。」


すると男がいきなり殴り掛かって来た。

⏰:09/01/13 15:16 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#428 [ゆーちん]
何とかかわしたが、男達が本気だって事が伝わったせいで急に恐さが増した。


「辞めて!」

「やだね。女だろうが俺たちは手加減しねぇぞ?」


そう言った瞬間、バットを持った男がのんちゃんのお腹を殴った。


「うっ…」

⏰:09/01/13 15:17 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#429 [ゆーちん]
倒れ込んだのんちゃんを見て、男たちは笑ってる。


「のんちゃん!」

「はい、雑魚一匹片付いた。弱いな〜、女は。次はお前だよ?おちびちゃん。」


鉄パイプが私の右腕に飛んで来た。


少ししか当たらなかったけど、たまらなく痛かった。

⏰:09/01/13 15:18 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#430 [ゆーちん]
痛い。


痛い。


痛い。


「ギャハハハ!さすが雑魚だな。弱すぎだろ。」

「こいつら拉致ろうぜ。」

「あ、そうだな。」


気を失っているのんちゃんを、男が連れて行こうとした。

⏰:09/01/13 15:18 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#431 [ゆーちん]
「やだ!ダメ、やめて!」


痛い腕を押さえ、必死に抵抗したら太ももを蹴られて、うずくまってしまった私。


その間にも、のんちゃんが連れて行かれそうになる。


「やだー!助けてー!」


大声を出したが、辺りがうるさすぎて響かない。


「ガキは黙ってろ!」

⏰:09/01/13 15:19 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#432 [ゆーちん]
お腹を蹴られた。


久しぶりだった。


びっくりした。


自分を守る方法を、まだ体が覚えていたなんて。


体を丸めて、身を守る私。


「ギャハハハハ。ますます小さくなりやがった!」


楽しそうに私を蹴る男。

⏰:09/01/13 15:20 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#433 [ゆーちん]
痛い。


体中痛いのなんて、久しぶりだ。


「おい、ガキはいらねぇ。この女一人でいい。行くぞ。」


その声で、私に蹴る足が止まった。


苦しい。


力を振り絞り起き上がると、本当にのんちゃんが連れて行かれていた。


ヤバイ。


助けなきゃ。

⏰:09/01/13 15:20 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#434 [ゆーちん]
起き上がり、私は辺りを見渡した。


すると…


「シホちゃん!」


そう呼びながら康孝が私の方に走ってきてくれた。


「康!助けて!」

「やられたの?お前、何で逃げなかったんだよ!」

⏰:09/01/13 15:21 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#435 [ゆーちん]
「そんなことより、のんちゃんが連れてかれた!」

「のんちゃん…望実?」

「あっち!」


遠くの方で、かすかに見えるのんちゃんをさらった男達。


「お願い!のんちゃん助けて!私なら大丈夫だから。」

「本当か?安全なとこに逃げろよ?」

「わかった。康、早く行って!」

⏰:09/01/13 15:22 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#436 [ゆーちん]
康孝はのんちゃんをさらった奴らの方に向かって、走って行った。


お願い。


のんちゃんを助けて。


そう願いながら、私自身も逃げようと思い、立ち上がった。

⏰:09/01/13 15:23 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#437 [ゆーちん]
やばい、足が痛くて上手く歩けない。


でも早く逃げないと、またやられる。


足を引きずりながら必死に歩いた。


すると、後ろから哲夫の声がした。


「シホ!」

「哲夫!」


哲夫の顔中、傷だらけだった。

⏰:09/01/13 15:23 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#438 [ゆーちん]
「シホ、殴られたの?」

「私は大丈夫。それより哲夫は…」

「俺は無傷。お前、誰にやられたか覚えてるか?」

⏰:09/01/13 15:24 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#439 [ゆーちん]
それのどこが無傷なのよ。


「覚えてない。」

「くっそ。マジごめんな。てこずってなかなかシホのとこ行けなくて。」

「それより、のんちゃんがさらわれちゃったの…今、康孝が助けに行ってくれた。哲夫ものんちゃん助けに行って来て。」

⏰:09/01/13 15:24 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#440 [ゆーちん]
「望実が?」

「うん。お腹をバットで殴られて気絶しちゃったの、のんちゃん。」

「バット?あいつら人間腐ってんな!」


哲夫が怒っていた。


「私なら大丈夫だから、のんちゃん助けに‥」

「大丈夫じゃねぇだろ?つか、康孝が助けに行ったんなら絶対大丈夫だ。」

⏰:09/01/13 15:25 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#441 [ゆーちん]
「でも…」

「ったくよぉ、どうなってんだよコレ。いきなりで俺も訳わかんねぇ。」


哲夫に抱っこされ、私たちは少し離れたところに移動し始めた。


と、その時だった。

⏰:09/01/13 15:26 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#442 [ゆーちん]
「萌子?」


久しぶりに聞く名前。


私と哲夫は、思わず声の主の方に振り返った。


そこにいたのは、


「…宗太郎。」


萌子の元カレだった。

⏰:09/01/13 15:26 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#443 [ゆーちん]
やめて。


来ないで。


話し掛けないで。



「萌子、何してんの?」


宗太郎が近付いて来ると、哲夫が言った。

⏰:09/01/13 15:27 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#444 [ゆーちん]
「萌子って誰?つか、お前が誰?近寄んじゃねぇぞガキが。」


哲夫の威嚇に、宗太郎が怒鳴った。


「うるせぇ!お前には関係ねぇんだよ。俺は萌子に用があるんだ。」


いつの間にか、私の目から涙が溢れていた。

⏰:09/01/13 15:27 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#445 [ゆーちん]
「だから萌子って誰?こいつは萌子じゃねぇよ。失せろ。」


哲夫がそう言ったはずなのに、宗太郎は構わず私に話し掛けて来た。

⏰:09/01/13 15:28 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#446 [ゆーちん]
「なぁ、萌子!お前こんなとこで何してんの?地元じゃお前がいなくなったって、みんな騒いでるぞ!」


…みんなって、誰。


…騒ぐって、何。


どうせ…上辺だけなくせに。

⏰:09/01/13 15:28 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#447 [ゆーちん]
「俺だって心配したんだ。連絡つかないし…でも良かった。ちゃんと生きてて!」


…生きてて?


「死んだよ!」

「え?」

「萌子は死んだよ。私、萌子じゃない。」

「何言ってんの?」

「どっか行って!私は萌子じゃないんだから!」


泣き叫ぶ私に、哲夫が『シホ。』と優しく名前を呼んでくれた。

⏰:09/01/13 15:29 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#448 [ゆーちん]
どうしよう。


また苦しい。


「行くぞ?」


小さな声で私に問う哲夫。


「うん。」


哲夫が歩き出す。


すると宗太郎が走ってくる足音が聞こえた。


「おいっ!」

⏰:09/01/13 15:29 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#449 [ゆーちん]
宗太郎が哲夫の肩に手をかけて、私は振り落とされた。


次の瞬間、違う温もりが私を包んでいた。


「会いたかった、萌子。」


離して。


宗太郎になんか抱きしめられたくない。


私は萌子じゃない。


宗太郎じゃなくて、哲夫に抱きしめられたいの。


「やだ…」

⏰:09/01/13 15:30 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#450 [ゆーちん]
「おいっ!」


今度は哲夫が宗太郎の肩に手をかけた。


私は宗太郎の腕から開放され、すぐにま哲夫に抱っこされた。


「ふざけんな!失せろ。」


哲夫が走りだす。


もう宗太郎は追い掛けてこなかった。

⏰:09/01/13 15:30 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#451 [ゆーちん]
どこに逃げたのかわかんない。


ずっと哲夫の腕の中で泣いていたから。


「シホ、おい。大丈夫か?」

「て…おっ…苦し…」

「過呼吸?」


たぶん。


私は頷いた。

⏰:09/01/13 15:31 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#452 [ゆーちん]
すぐに口を塞がれ、哲夫の二酸化炭素を吸った。


この前よりも治るのに時間がかかった。


頭が余計な事を考えているからかな。


さっきの宗太郎の顔と声が忘れらんない。


何で今更現れんのよ。


萌子の事、思い出したくないのに。


苦しいよ…体も心も。

⏰:09/01/13 15:31 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#453 [ゆーちん]
「シホ?」

「もう…大丈夫。」

「本当か?」

「うん。」


やっと落ち着いた。


だけど涙が止まらない。


「もう泣くな。お前、ちょっとここで待ってろ。」

「うん。」

「すぐに戻るから。」


頷く私を抱きしめてから、哲夫は走り去った。

⏰:09/01/13 15:32 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#454 [ゆーちん]
ここ、どこだろう。


寒い。


痛い。


眠い。


少し、横になろう。


冷たい地面に寝転がり、空を見上げた。


汚い空。


今日は星が1つも出ていない。


真っ暗な空だ。


暗闇が広がっている空。


気味悪い。

⏰:09/01/13 15:32 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#455 [ゆーちん]
次の瞬間にはシーンが変わっている。


前にもこんな事あったよね。


空を見ていたはずなのに、次の瞬間には家の天上が映る。


あぁ、そっか。


あれは自殺失敗した時だ。


て、ことはそろそろ哲夫が覗き込んで来るよ。

⏰:09/01/13 15:34 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#456 [ゆーちん]
「あ、起きた。わかるか、シホ?」


ほらね。


「哲夫…」


ベットから体を起こすと、見慣れた景色が広がる。


「家だから安心しろよ。」


哲夫は吸っていた煙草を消すと、私の隣に潜り込んで来た。


「今日は疲れたな。」

⏰:09/01/13 15:35 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#457 [ゆーちん]
時計を見ると、本来ならいつも私達が眠りにつく時間。


「ねぇ哲夫。のんちゃんは?」

「望実なら無事だ。康孝が助けた。」

「本当?」

「意識も戻ったし、普通に元気だったから康孝が家まで送ってった。」

「よかった…」

⏰:09/01/13 15:35 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#458 [ゆーちん]
心から安心した。


のんちゃんが助かって、本当に本当によかったよ。


「おいで。」


座っていた私を寝かし、哲夫の抱き枕変わりになった。


「哲夫、怪我してる。」

「これのどこが怪我?俺、無敵だもん。怪我なんかしねぇよ。」

⏰:09/01/13 15:36 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#459 [ゆーちん]
頬に傷を負っていた場所に絆創膏が貼ってあった。


「嘘つき。だって絆創膏貼ってあるじゃ‥」

「あぁ、これ?これはアレだよ。流行の最先端シール。」


笑ってしまった。


「何それ。」


哲夫も笑っていた。

⏰:09/01/13 15:37 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#460 [ゆーちん]
「心配すんな。余裕だから。」


私を抱きしめる力が強くなった。


哲夫の匂いや温かさが私を包む。


「ねぇ。」

「ん?」

「何だったの?一体…」

「その話はまた明日。俺眠いわ。」


さっきまでの騒ぎが嘘のようにこの部屋は静かだ。

⏰:09/01/13 15:37 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#461 [ゆーちん]
「やだ!気になって眠れないもん。」

「もぉ〜、めんどくせっ。」

「何だったの?」

「ただの殴り込みだよ。どこの奴らかは忘れたけど、前にあそこのチームと揉めてさ。向こうの頭と俺で話し合って和解したんだけど、どうやら頭が変わったらしいんだわ。」

⏰:09/01/13 15:38 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#462 [ゆーちん]
「向こうのリーダーが変わったから、哲夫と前のリーダーの和解なんて関係ない…みたいな?」

「まさに、それ。不意打ちすぎだから、女や新人はとりあえず逃がしたんだけど…何でお前ら逃げてなかったんだよ。」

⏰:09/01/13 15:38 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#463 [ゆーちん]
状況把握が遅くて逃げ遅れちゃったんだ、私とのんちゃん。


私のせいで、のんちゃんまで痛い思いさせちゃって…。


「…ごめんなさい。」

「どこ叩かれた?」

「腕とか…お腹蹴られたり。」


すると哲夫は急に体を起こし、私の服を脱がせた。

⏰:09/01/13 15:39 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#464 [ゆーちん]
「哲夫?」

「…うわ。本当だ。痛かっただろ?」


腫れたり青くなったりしている。


久しぶりにこんな汚い自分の肌を見て、また苦しくなった。


「ごめんな。助けてやれなくて。」


もう一度服を着せ、腫れている部分を撫でてくれた。

⏰:09/01/13 15:39 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#465 [ゆーちん]
再び寝転がった哲夫。


「哲夫のせいじゃない。」

「俺らのバカ騒ぎに、シホまで巻き込んでさ。本当、悪い。」


抱きしめられると殴られた腕が痛かった。


だけど痛いなんて言わない。

⏰:09/01/13 15:40 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#466 [ゆーちん]
このままこうしていたいから。


そう願ってしまうのは、ダメなことなのかな?


シホのままでいるのは、いけない事なのかな?


「なぁシホ。あの男…向こうのチームの奴だった。」

「…宗太郎?」

「シホの事泣かしたから殴ろうかと思ったのに、誰かが呼んだ警察が来ちゃって…みんな散らばって逃げたんだ。」

⏰:09/01/13 15:40 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#467 [ゆーちん]
哲夫は続けた。


「今回は警察のせいで解散したけど、白黒ハッキリさすために、あいつらはまた殴り込みに来ると思う。俺らもこのままやられっぱなしは嫌だし。だから近々また騒ぐと思う。その時は女無しで行くからさ…だからシホは留守番な。」

⏰:09/01/13 15:41 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#468 [ゆーちん]
何も言えない。


哲夫が誰かに殴られたり、誰かを殴ったりするのは嫌だ。


だけどそんなのを嫌がる権利なんて私にはない。


「うん…」

「なぁシホ?」

「何?」

「お前はシホだからな?変な事考えんなよ?」

⏰:09/01/13 15:42 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#469 [ゆーちん]
そう言ってもらえて嬉しかった。


宗太郎の事、考えたくない。


あいつを思い出すと、私はシホじゃなくなるから。


金河萌子の私になっちゃうから。


「おやすみ。」

「…うん、おやすみ。」

⏰:09/01/13 15:43 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#470 [ゆーちん]
哲夫はすぐに眠りについた。


私は寝息を立てる哲夫に抱かれ、しばらく考えていた。


宗太郎の事は考えちゃだめ。


わかってる。


だけど頭から離れらんないんだよね。

⏰:09/01/13 15:43 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#471 [ゆーちん]
私、このまま哲夫と一緒にいていいのかな?


哲夫に、昔の事、話した方がいいかな?


っていうか…聞いてもらいたいのかも。

⏰:09/01/13 15:43 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#472 [ゆーちん]
哲夫さ、いつかは聞いてくれるって言ったよね?


それが、今なんだ。


いつか、が、今なんだよ。


明日、目が覚めたら必ず話そう。


ゆっくりと思い出して、哲夫に聞いてもらおう。


哲夫に聞いてもらいたい。

⏰:09/01/13 15:44 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#473 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

いったんSTOP

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:09/01/13 15:45 📱:SH901iC 🆔:4gcR8RAo


#474 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

お伽話

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/15 18:17 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#475 [ゆーちん]
過呼吸は、疲れる。


いつの間にか眠ってしまい、夢も見ずに朝を迎えた。


いつもより少し早くに目が覚めて、哲夫の腕の中から抜け出し、トイレに行った。


寒い。


もう一度ベットに潜ろう。

⏰:09/01/15 18:17 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#476 [ゆーちん]
再び、哲夫の眠る布団の中に戻ると自分がいた場所の温もりと、哲夫からの温もりが混ざって、心地いい空間ができていた。


ずっと、この空間にいれたらいいな。


シホのままでいたい。

⏰:09/01/15 18:18 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#477 [ゆーちん]
萌子になんか、戻りたくない。


完璧なシホになりたいよ。


萌子の時のトラウマなんかに、もう苦しめられたくない。


だから…話さないと。

⏰:09/01/15 18:19 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#478 [ゆーちん]
「…シホ。」

「ごめん、起こした?」

「ううん、俺が勝手に起きた。」


布団が動く音と共に、私は哲夫にきつく抱きしめられた。


「抱き枕。」

「辞めてよ。」

「なぁシホ。」

「何?」

⏰:09/01/15 18:19 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#479 [ゆーちん]
「人間の温もりって安心すんのな。シホのおかげで俺、初めて知った。」


何を、言ってるんだろう、この人は。


人間の温もりなんて、哲夫なら有り余る程、もらってきたんじゃないの?


「俺さぁ、こうやって誰かを抱きしめた事もなけりゃ、抱きしめてもらった事もねぇの。」

⏰:09/01/15 18:20 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#480 [ゆーちん]
哲夫の過去は、何だか少し同情と…仲間意識のようなものが沸いた。


「俺、長男でさ、親からの期待とかすげぇデカくて。親父の会社を俺に継がすのに必死なんだよ。」


哲夫の低い声が続く。


「そんな親に反抗して、迷惑かけて、親に見放されるっつう…よくあるパターンだ。」

⏰:09/01/15 18:21 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#481 [ゆーちん]
「見放されるって…」

「金はいくらでもやるから千早家には帰って来るな、って。昔から冷たい親だったから甘えさせてもらった事もないし、物心ついた時から俺は家族に対してドライだったんだ。」


私が話をしようと思ってたこと、哲夫にバレちゃったのかな?


哲夫は自分の過去を淡々と話し続けた。

⏰:09/01/15 18:23 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#482 [ゆーちん]
「会社は弟が継ぐらしくて、必死に勉強してる。俺が継ぐもんだと思ってて会社経営の勉強なんかしてなかったから慌てて将来の夢、変更ってわけだよ。弟には悪い事したなって思う。」


弟、いるんだ。


萌子には血の繋がったキョウダイ、いたのかな?

⏰:09/01/15 18:24 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#483 [ゆーちん]
「実家飛び出して女のとこ転々として。でも自分の居場所が欲しくて…いつの間にかチームとか作ってた。親は、どっから俺の情報拾ったのか知んねぇけど、毎月お金を振り込む通帳みたいなの俺に送ってきやがった。」

⏰:09/01/15 18:25 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#484 [ゆーちん]
そっか。


だから哲夫はお金には困らない生活をしていたんだ。


「通帳と一緒に手紙入ってて、たまには帰って来いとか書いてあるのかと思ったら…金はいくらでもやるから、うちの会社とは無関係だと誓え、みたいな事書いてあんの。」

⏰:09/01/15 18:26 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#485 [ゆーちん]
それって…


「勘当ってやつ。ムカついたり悲しんだり悔しかったりしなかった。むしろ安心した。何でかわかんねぇけど、生きる勇気とか沸いたし。」


ねぇ、哲夫。


私も、話したい事があるよ。

⏰:09/01/15 18:26 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#486 [ゆーちん]
いや、私じゃない。


萌子として、聞いて欲しい事があるよ。

⏰:09/01/15 18:27 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#487 [ゆーちん]
「テツ…」

「ん?」


哲夫の腕の中で、萌子の話を始めよう。


「萌子はね、生まれてすぐ親に捨てられたんだ。施設で育って、7才の時に今の親の子供になった。最初は楽しかったの。でも、いつのまにか家族はバラバラになってた。父も母も、萌子に暴力を振るうの。痛くて恐くて苦しくて…生きる事に諦めてたんだぁ。」

⏰:09/01/15 18:29 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#488 [ゆーちん]
まるで他人の話をしてるみたい。


お伽話でもするかのように私の口は語る。

⏰:09/01/15 18:29 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#489 [ゆーちん]
「親も友達も彼氏も、みんな嫌い。ウザいだけ。必要のない存在。」

「…ん。」

「そんな人生に耐え兼ねた萌子は死ぬつもりだった。どの自殺方法が1番いいかなって考えてたんだけど、ある日の夜、父に本気で殺されかけた。自殺したかったのに他殺かって思ったけど、結局は父に半殺しのまま家からほうり出されたの。」

⏰:09/01/15 18:32 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#490 [ゆーちん]
ほんの一ヶ月前のことなのに、なんだか10年以上前の話をしているみたいだった。


「首吊りとか飛び降りとか色々考えてたんだけど、もういいやって思った。半殺しのまま生きるのも苦しいだけだから、どんな方法でもいいから死にたいって思った。そんな気持ちのまま萌子はあてもなく夜道を歩いてたの。」

⏰:09/01/15 18:32 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#491 [ゆーちん]
哲夫は、ずっと黙ったまま聞いてくれていた。


そのほうが話しやすい。


「そんな時、ふと目についたのがナイフで、神様が与えてくれたんだって思った。そのナイフで死になさいって言われた気がして、心臓を刺して死んでやろうって決めたの。で、ナイフを振りかざして…次の瞬間には知らない部屋にいた。死ねなかったんだってわかった時、自分が情けなかった。」

⏰:09/01/15 18:33 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#492 [ゆーちん]
どうして生きているんだろうと、自分を恥じたっけ。


「でさ、またまた目の前にいた、いかつい顔の金髪男がいたから、調度いい、殺してもらおうと思った。そしたら…萌子はあっという間に殺されて、シホっていうペットになってた。」

⏰:09/01/15 18:35 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#493 [ゆーちん]
「不思議な話だな。」


哲夫が笑った。


「不思議だよ。あんなに死にたいって思ってた萌子が、シホに生まれ変わった途端…死にたいなんて全く思わなくなった。むしろ生きたいとか、人間って楽しいって思うようになっちゃったの。本当…不思議だよ。」

⏰:09/01/15 18:36 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#494 [ゆーちん]
哲夫が私を抱きしめる力が強くなったのがわかった。


「私はシホなのに、死んだはずの萌子がまだどっか心の奥に潜んでるみたい。だから…喧嘩の声が、父の暴力する声と重なって、苦しくなっちゃった。」

⏰:09/01/15 18:37 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#495 [ゆーちん]
「なぁ、萌子。」


久しぶりに哲夫がその名前を呼んだ。


「萌子は死んだよ?」

「死んだ萌子に話し掛けてんの。」

「…ふーん。」

⏰:09/01/15 18:39 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#496 [ゆーちん]
「萌子さ、辛かったな。頑張ったよ。お前の辛さなんか、俺全然わかんないけど…殴られたりするのって痛いよな。俺も喧嘩して殴られた経験あるから痛いのわかる。でもな、殴る方も痛いんだよ。手と心が痛いんだ。」


今度は私が哲夫を抱きしめる力が強くなった。


「暴力はもちろん、いけねぇ事。萌子を苦しめたんだから。親が憎いよな。わかるよ、俺もそうだったから。」

⏰:09/01/15 18:40 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#497 [ゆーちん]
哲夫の小さな声が、耳元で響く。


「手は上げられてなくても、俺は言葉の暴力っつうの?それ体験してるんだ。でもさ、萌子の辛さに比べりゃ俺なんて屁だよ。萌子は女の子なのに…痛かったな。」


本当に、優しい声だった。

⏰:09/01/15 18:41 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#498 [ゆーちん]
我慢してたのに…。


あまりにも優しい声だから、涙が溢れた。


だけど泣いてるなんてバレたくないから、ただただ哲夫の腕の中に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。


「憎くて憎くて、殺してやりたいって思ったかもしんねぇ。でも…いくらムカつく奴でも、親には勝てないんだよ。」

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#499 [ゆーちん]
…勝てない?


「萌子の親は、四六時中お前に暴力振るったか?一時でも優しくしてくれた事はねぇの?」


…あるよ。


激しい暴力を振るわれたあと、なんだか優しかった。


父も母も、謝りはしなかったけど…萌子に対して一瞬だけど優しくしてくれた気がする。

⏰:09/01/15 18:42 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#500 [ゆーちん]
哲夫は、萌子の答えを聞いたかのように話を続けた。


「あるだろ?だったら、その親にまだ望みはある。諦めないで戦え。死んだら負けだ。親を殺せば、もっと負け。もし勝てなくても、引き分けならいい。」

⏰:09/01/15 18:44 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#501 [ゆーちん]
哲夫の声が、弱くなった気がした。


「俺はもう戦う相手がいないんだ。相手にしてくんねぇから、戦いたくても戦えねぇ。だから余計、萌子には戦って欲しい。俺の独りよがりだけど、わかってくれたら嬉しい。」

⏰:09/01/15 18:48 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#502 [ゆーちん]
何度も何度も哲夫が『戦え。』って言うから、頭の中で萌子が父親を殴るシチュエーションを想像してしまった。


だけど哲夫が言う『戦え。』は、その意味じゃない。


体で戦うんじゃない。


心で戦わなきゃいけないんだ。

⏰:09/01/15 18:48 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#503 [ゆーちん]
「萌子にしてきた事を許してやれって言ってんじゃねぇぞ?そりゃ許してあげるんなら許してやったらいいけど…無理だろ?だから、許さなくていい。まずは許せるかもしれないキッカケを作るんだ。」


哲夫の言葉は、スッと私の中に入り込む。


『なるほど。』ってなる。

⏰:09/01/15 18:49 📱:SH901iC 🆔:Jfqqe8Pw


#504 [ゆーちん]
だけど、今はまだ『そうだね。許してあげられるようなキッカケを作ってあげよう。』だなんて、1ミリ足りとも思わなかった。


そこまで大人じゃない。


「今はまだそんな事、考えれねぇか。」


哲夫の腕の中で、小さく頷いた。

⏰:09/01/16 15:10 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#505 [ゆーちん]
萌子への質問なのに、シホが答える。


死んだ萌子の変わりに、私が返事してあげたの。


…なんちゃって。


わかってるよ。


現実的な話をすれば、金河萌子は生きてんの。


そう、私。

⏰:09/01/16 15:10 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#506 [ゆーちん]
だけど千早哲夫の近くにいる時だけは、萌子っていう生き方を忘れて、シホになるの。


っていうか…そうでいたい。


シホのままでいたい。

⏰:09/01/16 15:11 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#507 [ゆーちん]
ただの【逃げ】と【甘え】なの。


わかってる。


わかってるよ。


萌子の時にできなかった人間くさい事をシホで叶える。


それが楽しくて心地よくて、ついついシホに、哲夫にも頼り過ぎてたんだ。

⏰:09/01/16 15:12 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#508 [ゆーちん]
いつかはシホを辞めて、萌子に戻り、親と戦わなきゃいけないんだ。


「いつかは…戦うよ。その時は、背中押してくれる?って…萌子が言ってる。」


泣いてたのがバレバレな私の声。


優しい哲夫の声は笑いを含んでいた。

⏰:09/01/16 15:13 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#509 [ゆーちん]
「何?シホは死んだ萌子と通信できんの?」

「…超能力。すごいでしょ?」

「フッ。そりゃすごい。羨ましいわ。」

「…うん。萌子に、返事ある?」


哲夫は言った。


「俺が守ってやるから、心配すんなって萌子に伝えてやって?」


バレバレだ。


声を出して泣いた。


どうしてかな。

⏰:09/01/16 15:14 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#510 [ゆーちん]
見ず知らずの私を拾って、生かしてくれて、仲間とか家族とか…そういうのも教えてくれた。


優しすぎるよ。


お人よしってレベルじゃないよね。


哲夫、いい人過ぎる。


巨大なチームを率いる頭なだけあるよ。


人の気持ちがわかる人なんだ。

⏰:09/01/16 15:14 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#511 [ゆーちん]
「はいはい、わかったから。もう泣くなー。」

「子供扱いするなっ。」

「だって子供じゃん。まだ17なのにさ、こんなちっこい体で…でっかい荷物抱えちゃって。可哀相だよ、本当。」

「同情なんか、いらないよ。」

「お?同情するなら金をくれってやつ?金ならいくらでも‥」

⏰:09/01/16 15:17 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#512 [ゆーちん]
「金なんかいらないよ。」


泣き顔のまま、哲夫の笑顔を見上げた。


答えのわからなかった感情が、爆発した。


「哲夫が欲しいよ。」

「…俺?」

「好きなんだよ、哲夫が。」


泣きすぎて、上手く言えたかわかんない。

⏰:09/01/16 15:18 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#513 [ゆーちん]
だけどちゃんと聞こえたらしく、哲夫は笑いながら答えてくれた。


「俺も好きだよ、シホの事。」

「違う!」

「何が違うの?」

「私の好きと、哲夫の好きは違うよ…全然。」

「はぁ?一緒だっつーの。」

「哲夫が言った好きは…私を…ただの…ペットとして…」

⏰:09/01/16 15:19 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#514 [ゆーちん]
私、何が言いたいんだろう。


言葉が上手く出てこない。


「シホ、もうやめろ。喋るな。また苦しくなるぞ。」

「私は…テツは…」

「黙れ。」


笑っていたはずの哲夫は、やけに物静かな声で私に命令した。


その後、私が黙ってるよう唇を塞いでくれた。

⏰:09/01/16 15:21 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#515 [ゆーちん]
過呼吸なんかになってない。


だから今日は、息じゃなくって…。


哲夫の舌が、私の口の中を支配してくれた。


「…シホ、もう泣くな。」


初めてこの家に来た時の事を思い出した。

⏰:09/01/16 15:22 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#516 [ゆーちん]
このベットの上で、私は哲夫に萌子を殺せと頼んだ。


ナイフで喉をひとつき。


そうしてくれればよかったのに、哲夫はナイフではなく、自分の舌を喉にやった。

⏰:09/01/16 15:23 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#517 [ゆーちん]
あんな最悪なキス、初めてだったよ。


殺されたかったのに、殺してくんないんだもん。


でもね、人間の気持ちって簡単に変わっちゃうらしくて…今、このキスは最高だって思う。

⏰:09/01/16 15:23 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#518 [ゆーちん]
喉に舌が這っていく。


気持ち良いとか、恐いとか、悲しいとか…そんなんじゃない。


嬉しくて、私はただただ涙を流していたの。


「テツ…」

「ん?」

「好きです。」

「俺も好きですよ。」

「うん、ありがとね。」

⏰:09/01/16 15:24 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#519 [ゆーちん]
ペットとしての【好き】なのか、それとも人として【好き】と言ってくれてるのかはわかんない。


もう、どっちでもいい。


哲夫がいてくれるだけでいいよ。

⏰:09/01/16 15:25 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#520 [ゆーちん]
いつの間にか、初恋をしていた自分が嬉しくてたまらない。


あの日、神様がナイフを置いてくれたなら感謝する。


死ぬ為の道具じゃなくて、私を人間らしくしてくれた道具。


あのナイフのおかげで、私は恋ができた。

⏰:09/01/16 15:25 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#521 [ゆーちん]
哲夫のSEXはさ、荒っぽかったよ。


でもね、幸せだった。


好きな人に『好き。』って言ってもらえて、キスしてもらえて、抱きしめてもらえて、体を重ねられて。


シホの人生、文句なんかないよ。

⏰:09/01/16 15:27 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#522 [ゆーちん]
SEXが終わった後、哲夫にゆっくりキスされた時、『あぁ、これが幸せってやつなんだ。』って気付いた。


結局、私はペットなのか彼女なのか…そんなのはっきりさせなくてもいい。


この幸せを感じてられるなら、何だっていい。


だけど哲夫から離れるような事だけは嫌。


ずっと、ここにいたい。

⏰:09/01/16 15:28 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#523 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:09/01/16 15:28 📱:SH901iC 🆔:GhjenJ72


#524 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

蕎麦

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/18 17:09 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#525 [ゆーちん]
12月30日。


哲夫だけ集会に顔を出し、1時間ほどで帰ってきた。


「今年最後の集会だったんだよね。お疲れ。」

「んー、集まり悪かったけどな。」

「…そっか。」

「今日はもう寝よ。眠いわ俺。」


集会で何を話して来たのかは知らないけど、哲夫は少し元気がなかった。

⏰:09/01/18 17:10 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#526 [ゆーちん]
そりゃそうだよね。


いきなり自分のチームが襲撃に遭って、怪我人もたくさん出て、やり返しに行くって憤っている中、テンション高い方が変だもんね。


哲夫も哲夫なりに大変なんだよ。


仕方ない。

⏰:09/01/18 17:11 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#527 [ゆーちん]
翌日、体の芯から冷える寒さのせいで普段より少し早い時間に目が覚めた。


昨日、眠る時間が早かったから起きた時間も早いんだ。


哲夫の機嫌は、いいみたい。


「今日は集会ないんだよね?」

「うん。年末年始とクリスマスと盆は休み。あとゴールデンウイークも。」

⏰:09/01/18 17:12 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#528 [ゆーちん]
「ふーん。なんか…学校みたい。」


ベットに座りながら笑う私の隣に、チョンと腰を降ろした哲夫。


「ありゃ学校より低レベル。幼稚園みたいなもんだな。」

「康とか幼稚園児っぽいもんね。」

「顔だけ大人で、中身は幼稚園児より幼い奴だ。」

⏰:09/01/18 17:16 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#529 [ゆーちん]
煙草に火をつけるのかと思ったら、哲夫は私の手を取り自分の頬にあてた。


「何してんの?」

「ん?お前の手ぇ暖かいから。俺の顔寒い。」

「顔が寒いって表現おかしくない?」



あぁ、この気持ちを【愛おしい】とかって言うんだ。

哲夫が可愛くて、優しくしたくなる。



心臓をキュッと摘まれてるみたい。

⏰:09/01/18 17:17 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#530 [ゆーちん]
その痛みが、気持ち良いの。


「そう?」

「うん。康孝がバカだって言ったよね?でもよく考えたら実は康孝より哲夫のがバカだったりして?」


私はもう片方の手も哲夫の頬に添えた。


「千早様をナメんな?」

「アハハ!」


人の笑顔って、安心する。


自分も他人も、笑顔は幸せになれるものなんだ。

⏰:09/01/18 17:19 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#531 [ゆーちん]
両手で掴んだ哲夫の顔。


自分の方に引き寄せると、哲夫は『そんなバカな千早様を好きなシホが、1番バカだな。』と言ってから私にキスをくれた。


うん、そうだね。


私が1番バカだよ。


バカだけど、バカでよかったって思うんだ。


こんなに愛おしい気持ちを知らなかった自分をバカだと思うけど、その気持ちを教えてくれたのが哲夫でよかった。


ずっとこのままでいたい。

⏰:09/01/18 17:20 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#532 [ゆーちん]
いつものようにお風呂に入りご飯も食べ終えた頃、哲夫が言った。


「シホちゃん。」

「何、テッちゃん。」

「デートしない?」

「…する。」


慌てて服を着て、化粧や髪を整えた。

⏰:09/01/18 17:21 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#533 [ゆーちん]
「どこ行くの?」

「ん?内緒。」


哲夫に肩を抱かれ、暗くなった外をゆっくり歩く。


風が冷たい。


だけど哲夫が傍にいるから、平気。

⏰:09/01/18 17:21 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#534 [ゆーちん]
歩いて向かった先は、近くの公園だった。


「ブランコ乗る?」

「乗らない。」

「そ。俺は乗っちゃうよ〜。」


哲夫はブランコに腰をかけ、小さく揺らした。

⏰:09/01/18 17:22 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#535 [ゆーちん]
キーコーキーコー…


懐かしい音。


萌子が施設でいた時、園内にブランコがあった。


よく聞いた音。


ブランコはいつも人気で、取り合いしてたっけ。

⏰:09/01/18 17:22 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#536 [ゆーちん]
「なぁシホ。」

「ん?」


私はブランコの向かいにある小さな鉄棒にもたれ掛かった。


「お前の名前、なんでシホにしたか覚えてる?」

「…星が好きだからでしょ?」

⏰:09/01/18 17:23 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#537 [ゆーちん]
「うん、そう。」


私は空を見上げた。


「私も星、好きだよ。綺麗だよね。」


冬の星は、よく輝く。


真っ黒な空に、小さく光る星。


ベストマッチだよ。

⏰:09/01/18 17:26 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#538 [ゆーちん]
「綺麗だな。」


哲夫は煙草をくわえながら空を見上げた。


白い煙が空を舞う。


「お前に言っておきてぇんだけどさ。」

「うん?」

「俺、マジでシホの事好きだからな。」


慌てて視線を哲夫に向けた。


だけど哲夫は空を向いたままで…信じられない事を言われた私は、目を丸くする事しかできない。

⏰:09/01/18 17:26 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#539 [ゆーちん]
「お前この前、私をペットとかどうとか…私の好きと俺の好きは違うとか…」


ねぇ、心臓が痛いよ。


でもこの痛みは、心地いい方の痛み。

⏰:09/01/18 17:29 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#540 [ゆーちん]
「一緒だっつうの。ペットとかさぁ…口実。お前を俺の傍に置いとくための。」

「哲夫、何言って‥」

「一目惚れって、生まれて初めてなんだよ俺。」


ずっと空を見ていた哲夫の目が、やっと私に降って来た。


「汚い格好でボロボロの女が倒れてて…俺なぜかそいつ見て惹かれちゃったんだよね〜。まさか、あんな汚い女に一目惚れするなんて…自分でもビックリ。」

⏰:09/01/18 17:30 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#541 [ゆーちん]
真面目な顔して、そんな事言わないでよ。


涙が出そうじゃない。


「殺せ殺せって喚くし、生意気だし、汚いし?」


白い煙と一緒に笑いも吐き出した哲夫。


「お前にとっちゃ同情なんていらねぇんだろうけど…俺はお前の事、可哀相な奴だなって思ったよ。だから余計に惹かれた。こいつ、俺より辛い思いしてんだろうなって思った。」

⏰:09/01/18 17:30 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#542 [ゆーちん]
「…。」


何も言えない。


何も言っちゃいけない。


哲夫の話をゆっくり聞きたいから。

⏰:09/01/18 17:31 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#543 [ゆーちん]
「お前と俺の好きは一緒だ。あ、やっぱ違うか。俺の好きのがお前よりでけぇわ。」


そんな嬉しい言葉、笑って言わないで。


涙が、出て来たよ。


「嘘…」


小さく呟いた独り言も哲夫は聞き逃さなかった。

⏰:09/01/18 17:32 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#544 [ゆーちん]
「嘘じゃねぇよ。俺は好きな奴にしかキスしないし、髪切ってやったり、服とか携帯買ったりもしないぞ?それに…星の反対の名前だなんて付けないし。」


俯きながら涙を地面にポトポト落とした。

⏰:09/01/18 17:33 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#545 [ゆーちん]
「俺のSEXに、お前は愛を感じねぇのか?」


哲夫が笑った。


愛って、何だろう。


哲夫とSEXした時に感じたもの?


快楽以外の…あの感情の事?


胸がキュッて締め付けられて、体中電気が走って、たまらなく抱きしめたいって思わされる…あれ?

⏰:09/01/18 17:33 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#546 [ゆーちん]
だったら、私はSEXしている以外の時も哲夫の愛を感じてるよ。


一緒にいるだけで感じさせてもらってる。


そっか…。


あれが、愛なんだ。


「…感じる。」

「だったら余計な事とか考えんな。夜中に騒ぐのも迷惑とか思ってないし。俺はお前の味方だから。」

⏰:09/01/18 17:34 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#547 [ゆーちん]
【味方】って言葉が、心底嬉しかった。


甘えてもいい?


頼ってもいい?


「本当に?」

「うん、本当。」

「それはシホに?それとも萌子に?」

「…どっちも。」

「二股はダメだよ。」

「えぇーっ。んじゃ…萌子に。」


哲夫が煙草を消した。


またブランコを少し揺らす。

⏰:09/01/18 17:35 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#548 [ゆーちん]
「何で萌子なの?」

「シホは仲間がいるから。」

「…そっか。ねぇ!」

「ん?」

「萌子から伝言。親と…戦う。だから味方してくれる?」


哲夫の返事は聞かなくてもわかっていた。


彼は断るはずないもん。


「当たり前。一生味方だって伝えといて。」


優しい人だから。

⏰:09/01/18 17:36 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#549 [ゆーちん]
笑顔の哲夫の胸の中に飛び込んだ。


「哲夫…」

「はいはい、泣かないの。」

「ありがと…」

「戦って戦って、どうしてもダメな時はいつでも戻ってきていいから。俺の家はお前の家だ。」

「うん。」

⏰:09/01/18 17:42 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#550 [ゆーちん]
「戦いに負けても死のうなんて考えんなよ?」

「うん。」

「でもまぁ俺が味方だし?死にたいなんて思わせねぇから。」

「うん。」

「守ってやるから、お前の事。ずっと。」


哲夫の服が私の涙で濡れた。


「ずっと?」

「ずっと。ゼット・ユー・ティー・ティー・オー!」

⏰:09/01/18 17:42 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#551 [ゆーちん]
笑いながらキスをしたら、涙の味がした。


泣きすぎだ、私。


しょっぱいキスなんて、いやだよね。


ごめん、哲夫。


ありがとう、哲夫。


「年が明けたら帰る。それまでシホでいてもいい?」

「おう。」

⏰:09/01/18 18:15 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#552 [ゆーちん]
せめて、残り少ない今年だけはシホでいさせて。


幸せな年越しをして、笑いながら年明けをしたい。


そんなわがままを快くOKしてくれた哲夫。


本当、最高だよ、この男。


愛、イコール、哲夫。


こんな感情、教えてくれて、ありがとう。

⏰:09/01/18 18:15 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#553 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

>>2

▲▽▲▽▲▽▲ 

⏰:09/01/18 18:16 📱:SH901iC 🆔:.ySjYrww


#554 [ゆーちん]
家に戻り、自分でお風呂を入れ直した。


ずっとタイマー予約に頼り切っていたから、自分たちでお湯を溜めるのはなんだか違和感があった。


お湯が溜まる間、哲夫は教えてくれた。

⏰:09/01/19 10:56 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#555 [ゆーちん]
「俺、人をちゃんと好きになった事ないから萌子を拾った時どうすりゃいいか、わかんなかったんだ。殺せって頼む女を好きなのに、どうすれば正解なんだ?って。」

「…うん。」

「キスしたのだって、萌子を殺したくないって願望より、俺がお前とキスしたかったっていう欲望が強かっただけだし。」

⏰:09/01/19 10:58 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#556 [ゆーちん]
あの日、ナイフの変わりに、舌が這った私の喉をそっと触った哲夫。


「ペットとか言われて嫌だったよな。ごめん。あんな風に言わないと、お前を傍に置いとけないと思って。」


照れて笑った哲夫が愛くるしい。

⏰:09/01/19 10:59 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#557 [ゆーちん]
何で謝られてるのか意味わかんないよ。


ペットだろうが奴隷だろうが、哲夫の傍にいられるなら何だっていい。


一緒にいれるなら、どんな口実だっていい。


心からそう思う。

⏰:09/01/19 11:00 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#558 [ゆーちん]
なのに哲夫は、苦笑いしたままで…申し訳なさそうな顔をする。


そんな彼の唇を、私から奪いに向かった。


気にしてないよ。


哲夫の傍にいられるなら何でもいいよ。


大好きだよ。


そんな事を頭に浮かべながら、甘いキスを繰り返した。

⏰:09/01/19 11:00 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#559 [ゆーちん]
シホ。


シホ。


シホ。


唇が少し離れるたびに名前を呼ばれる。


何だか名前を呼ばれる事が、急に切なく感じた。


私はシホなの?


シホでいいの?


そんな感じ。


勝手に涙が流れていた。

⏰:09/01/19 11:05 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#560 [ゆーちん]
数分後。


お風呂に入り、消えかけている青アザや古傷を撫でてもらった。


萌子の傷は、シホの傷じゃない。


「消えて来たな。腹のアザ。」

「…うん。」

「俺のマジックハンドのおかげ?」


そうだよ。


哲夫の手のおかげだよ。


優しく撫でてくれる哲夫がいたから、傷は和らいだんだ。

⏰:09/01/19 11:06 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#561 [ゆーちん]
お風呂から上がり、哲夫がテレビをつけた時、私たちは気付いた。


「今日、大晦日じゃん。」


12月31日。


ついこの間、クリスマスだって騒いでいたかと思えば、もう大晦日だ。


今年も終わり。


今年は私にとって劇的な年。

⏰:09/01/19 11:07 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#562 [ゆーちん]
チームが襲撃にあってから、ドタバタしすぎて、日にち感覚がなかったかも。


って言ってもほんの2、3日前だけどね。


「年越し蕎麦食ってねぇしー。」


年越し蕎麦か。


もう何年食べてないんだろう。


家族がバラバラになってからの年末年始なんて、ただの苦痛の日々でしかなかった。

⏰:09/01/19 11:08 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#563 [ゆーちん]
年越し蕎麦もなし。


お雑煮やお節料理だってなし。


もちろん、お年玉も。


年末年始は普段よりも仕事に精を出していた。


父親にも『年末年始は稼げるから、たくさん働け。』と言われる程だもの。


寒い中、懐の緩んだ親父との援助交際に励んでいたんだ。

⏰:09/01/19 11:09 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#564 [ゆーちん]
いい思い出なんかない大晦日。


もちろん、お正月だって同じ。


いい思い出なんか、全然…。


「蕎麦食わなきゃ年越せねぇっつうの。康呼ぶぞ。」


そう言って哲夫は康孝に電話をかけた。

⏰:09/01/19 11:10 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#565 [ゆーちん]
「蕎麦3人前買って来て。」


哲夫のその命令に、たった20分で対応した康孝は、なぜか上機嫌で蕎麦を持ってやって来た。


「いぇーい、あけおめイヴ〜。」

「意味わかんねぇし。」

「ヤッちゃん、寒いのにわざわざありがと。こっち座って。」

「おっ、サンキュね。シホちゃん。」

⏰:09/01/19 11:11 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#566 [ゆーちん]
私が座っていた場所を康孝に譲り、年越し蕎麦を作りにキッチンへ向かった。


ダシを作って、温めた蕎麦にかけるだけ。


こんな簡単な料理なのに、どうして金河家は年越し蕎麦を作ってくれなくなったんだろう。


そんな疑問、考えたって答えは出るはずもないか。

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#567 [ゆーちん]
「出来たよ。」


哲夫、康孝、そして私。


3人で年越し蕎麦を食べた。


「美味い!」

「三玉百円の蕎麦なのに、案外美味いね〜。」

「はぁ?康、お前そんな安物買って来たのかよ。」

「こういうのしかスーパーに置いてねぇんだもん。」

⏰:09/01/19 11:12 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#568 [ゆーちん]
久しぶりの年越し蕎麦は、本当に美味しくて…安物の蕎麦だろうが何だろうが、私にとってはご馳走だった。


体が温まり、後片付けが済んだ頃、康孝は帰ると言い出した。

⏰:09/01/19 11:13 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#569 [ゆーちん]
「いればいいじゃん。」

「そうだよ。一緒にカウントダウンしようよ、ヤッちゃん。」

「いやっ、二人の邪魔する気はねぇし。」


邪魔だなんて思わない。


康孝は私のお兄ちゃんみたいな存在なんだもん。


「ねぇヤッちゃん。私、まだお礼言ってなかったよね。」

「お礼?」

⏰:09/01/19 11:13 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#570 [ゆーちん]
「この前…のんちゃん助けてくれてありがとう。」

「あぁ、その事か。」

「ヤッちゃんが助けに来てくれてなかったら…のんちゃん…」

「お礼なんかいらねぇぞ。仲間を助けるのは当然の事だからさ。」


康孝はニッと笑い、私の頭を撫でた。

⏰:09/01/19 11:14 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#571 [ゆーちん]
哲夫に撫でられる時より、少し違う感情が私の心臓を跳ね上げさせた。


「テッちゃんから聞いたと思うけど、年明け早々ぶっかまして来るから応援頼むよシホちゃん。」

「あ、うん…気をつけてね。」

「あいよ!んじゃバイバイ。よいお年をー。」

⏰:09/01/19 11:15 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#572 [ゆーちん]
最後まで上機嫌だった康孝。


彼が帰った部屋は、何だか急に静けさが増した気がする。


「つーわけだ。仲間なんだから助けるっつう行為は当然の物なの。」


私と康孝の会話を聞いていた哲夫は優しく笑いながら教えてくれた。

⏰:09/01/19 11:16 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#573 [ゆーちん]
「哲夫。」

「ん?」

「仲間って…いいね。」

「だろ?」


ほら、やっぱり、違う。


哲夫に頭を撫でてもらった時に、胸いっばい広がるこの感情は、康孝に撫でてもらった時のモノとはまた違う。


人間って変なの。

⏰:09/01/19 11:17 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#574 [ゆーちん]
頭を撫でてもらった私は、そのまま引き寄せられて、哲夫と唇を重ねた。


康孝がいなくなり、静かになった部屋は、テレビの音と私の口から零れる声だけが響いていた。

⏰:09/01/19 11:17 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#575 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

ではまた

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:09/01/19 11:18 📱:SH901iC 🆔:ZU.S4G5o


#576 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

戦い

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/20 21:27 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#577 [ゆーちん]
誰かと新年をカウントダウンするなんて、生まれて初めてだった。


だけど年明け早々のSEXは、別に珍しい事じゃない。


萌子だって、1月1日の午前中から援交してた事もあるから。


でも…援交のSEXとは比べ物になんないよ。


てゆーか、比べちゃいけない。


あんな素敵な愛ある行為を。

⏰:09/01/20 21:27 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#578 [ゆーちん]
年が明けるとお互い目を見合わせ、笑いあった。


しばらくすると哲夫からのキスが降って来たので、そのままベットで1つになった。


服を着なくても平気なくらい温かい部屋のおかげで、下着のままベットの中で眠った。


目が覚めたのは昼過ぎで、とてものんびりとした元旦だった。

⏰:09/01/20 21:29 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#579 [ゆーちん]
今日、明日、明後日と集会は休み。


明々後日の集会で、哲夫は『明日、この間の仕返しに行く。』と発表するらしい。


つまり1月5日、この前の惨劇のお返しをしに行くってわけだ。


女子は留守番。


私は、家で哲夫の無事を祈るしかないって訳だ。

⏰:09/01/20 21:30 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#580 [ゆーちん]
「餅が食いてぇ。」


哲夫が誰かに電話をしていたと思えば、数分後にはインターホンが鳴る。


「お待たせしました!」


お餅が届く。


チームの新人は新年早々、哲夫に動かされてちょっぴり可哀相だと思ったけど、一緒になってお餅を食べる私も同罪だ。

⏰:09/01/20 21:31 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#581 [ゆーちん]
何をする訳もなく、部屋でゴロゴロとテレビを見たりゲームをしたり、お腹が空けば二人で買い物に行く。


相手を可愛いと思えばキスをするし、愛おしいと思えばSEXをする。


そんなお正月も矢のように過ぎて、今年初めての集会の時間を迎えた。

⏰:09/01/20 21:32 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#582 [ゆーちん]
襲撃されてから初めて顔を出す集会。


そこは、いつもと変わらない賑やかさと明るさが溢れていた。


「シホちゃーん!」


誰かが私を呼びながら近付いて来る。


顔を見なくても、もう声だけでわかるんだ。


私の、仲間だから。

⏰:09/01/20 21:33 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#583 [ゆーちん]
「のんちゃん。」

「あけおめ!今年も仲良くしようね〜。」


いつもと変わらない笑顔がそこにはあった。


まるで、あの日の惨劇なんて最初っから無かったかのような笑顔。


「のんちゃん…体、だいじょ‥」

「気にしないで!ただの打撲だし。心配かけてごめんね。」

⏰:09/01/20 21:34 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#584 [ゆーちん]
心配する私をよそに、明るい表情のままののんちゃん。


「私の方こそ本当ごめんなさい。私のせいで、のんちゃん…」

「あぁー、シホちゃん、そういうの無し無し。誰のせいでもないよ。現に私は超元気なわけだし、結果オーライじゃん?」

⏰:09/01/20 21:35 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#585 [ゆーちん]
「でも…」

「本当に大丈夫だから。あんなの一々気にしてたら、これからやってけないよ?だからほら、笑って!」


終始笑顔ののんちゃんにつられ、少しだけの笑顔が浮かんだ私。


本当に許してもらっていいのだろうか。

⏰:09/01/20 21:36 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#586 [ゆーちん]
なんだか納得いかない気もするけど、話はそのまま流れてしまい、場内に康孝の声が広がった。


「はーい、注目!みんな、あけおめ。まずはテッちゃんから挨拶と報告がありまーす。」


続いて哲夫の声が響く。

⏰:09/01/20 21:36 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#587 [ゆーちん]
「あけましておめでとうございまーす。今年もよろしくっつう事で、さっそくみんなに報告。この前の仕返し、明日行くつもりだから、いつもの時間にここ集合。女子と新人はついて来んじゃねぇぞ?はい、以上。」

「つーわけだ!わかったか?」

⏰:09/01/20 21:37 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#588 [ゆーちん]
康孝の付け足した問いに、みんなが返事を返した。


いつもより、気合い入ってる返事。


隣にいたのんちゃんや、他の女の子も、返事に力が入ってた。

⏰:09/01/20 21:39 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#589 [ゆーちん]
「うちらのかたき、哲夫さんに取って来てもらわなきゃね!」


のんちゃんが笑って言った。


「…うん。」


複雑なの、心の中が。


仲間が私の過ちを許してくれたり、好きな人が誰かを殴りに行ったり、元カレが敵だったり、もうすぐ萌子に戻らなきゃいけなくなったり。


色んな感情が混ざりあった私の頬を、冷たい風が撫でてった。

⏰:09/01/20 21:40 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#590 [ゆーちん]
早めの解散で、のんちゃん達とは明後日会おうねと笑顔で別れた。


哲夫の肩に抱かれながら、夜道を歩く。


「綺麗だね、星。」

「冬の夜空が1番だな。」


歩きながら二人で見上げた綺麗な夜空。

⏰:09/01/20 21:41 📱:SH901iC 🆔:F4H0SjdY


#591 [ゆーちん]
何が引き金だったと言う訳ではなく、突然、私の目から涙が零れた。


「…ねぇ。」

「んー?…っつか何泣いてんだよ!」


慌てて立ち止まった哲夫。


涙でぼやけて、その驚いた哲夫の顔が上手く見えないよ。

⏰:09/01/21 10:39 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#592 [ゆーちん]
「哲夫に…伝えたい事…まだまだ、いっぱい…ある。」

「あぁ?何言ってんだよ。つーか泣くな。」

「でも…何から話せばいいのか…わかんないし…上手く話せない…かもしんないし…」

「今でも全然上手く話せてないぞ。ほら、もう泣くな。」

⏰:09/01/21 10:43 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#593 [ゆーちん]
泣きじゃくる私の涙を、笑いながら拭き取る哲夫。


思わず抱き着いてしまった。


「おいおい。そういう可愛い事は家に帰ってからしろよな。」

「…ごめ…なさい。」

「帰ろ。話ならゆっくり聞いてやるから。まだまだ夜は長いぞぉー。」

⏰:09/01/21 10:45 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#594 [ゆーちん]
結局、家に帰ってから、何も伝えらんなかった。


翌日、哲夫が出掛けるまでたくさん時間はあったのに何も言えずに、見送った。


「いってらっしゃい。」

「いってきます。」


笑顔の哲夫。


キスをもらってから送り出した。

⏰:09/01/21 10:47 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#595 [ゆーちん]
家で一人ぼっち。


私はベットに潜り、哲夫の匂いを抱きしめた。


好きで、好きで、こんなに人を好きになれるなんてまだ信じらんない。


今頃、哲夫は怒ってるのかな。


誰かを殴ってるのかな。


願わくば、哲夫の笑った顔だけを見ていきたい。


これから先、ずっとずっと。

⏰:09/01/21 14:22 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#596 [ゆーちん]
気が付くと哲夫が隣で眠っていた。


私、いつのまに寝ちゃったんだろう。


隣に哲夫がいる事実に、思わず涙が浮かんだ。


無事でよかった。


だけど顔には数ヵ所に傷。


見てて痛々しかった。

⏰:09/01/21 14:23 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#597 [ゆーちん]
「…シホ。」


小さく囁いた哲夫。


「ごめん、起こした?」

「ううん。おはよう。」

「おはよう。ていうか…おかえり。」

「ただいま。」


笑ってる哲夫を見て、浮かんでいた涙は零れてしまった。

⏰:09/01/21 14:24 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#598 [ゆーちん]
「情緒不安定だな、お前。」

「ごめ…なさ…」

「謝んなくていいっつうの。それより消毒して。ズキズキして熟睡できねぇ。」

「あ、うん。」


涙を拭いて、薬箱を取りに向かった。

⏰:09/01/21 14:25 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#599 [ゆーちん]
薬箱の中には、私が以前買って来た薬が入っていた。


シホになって初めて1人で外に出た時、コンビニで買ったんだっけ。


哲夫が熱出して、助けたくて、じっとしてらんなくて…今思えば、きっとあの時から、私は哲夫を好きだったんだ。

⏰:09/01/21 16:15 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


#600 [ゆーちん]
「いってぇ!」

「…我慢して。」

「もうちょっと優しくしてよ。」

「優しくしてるよ?」

「殴られるより消毒のが痛いし。」


哲夫は誰かを殴った?


…って、そんな事聞くのはタブーだよね。

⏰:09/01/21 16:16 📱:SH901iC 🆔:FXDa00ZA


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