闇の中の光
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#498 [ゆーちん]
我慢してたのに…。
あまりにも優しい声だから、涙が溢れた。
だけど泣いてるなんてバレたくないから、ただただ哲夫の腕の中に顔を埋めて、声を押し殺して泣いた。
「憎くて憎くて、殺してやりたいって思ったかもしんねぇ。でも…いくらムカつく奴でも、親には勝てないんだよ。」
:09/01/15 18:42 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#499 [ゆーちん]
…勝てない?
「萌子の親は、四六時中お前に暴力振るったか?一時でも優しくしてくれた事はねぇの?」
…あるよ。
激しい暴力を振るわれたあと、なんだか優しかった。
父も母も、謝りはしなかったけど…萌子に対して一瞬だけど優しくしてくれた気がする。
:09/01/15 18:42 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#500 [ゆーちん]
哲夫は、萌子の答えを聞いたかのように話を続けた。
「あるだろ?だったら、その親にまだ望みはある。諦めないで戦え。死んだら負けだ。親を殺せば、もっと負け。もし勝てなくても、引き分けならいい。」
:09/01/15 18:44 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#501 [ゆーちん]
哲夫の声が、弱くなった気がした。
「俺はもう戦う相手がいないんだ。相手にしてくんねぇから、戦いたくても戦えねぇ。だから余計、萌子には戦って欲しい。俺の独りよがりだけど、わかってくれたら嬉しい。」
:09/01/15 18:48 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#502 [ゆーちん]
何度も何度も哲夫が『戦え。』って言うから、頭の中で萌子が父親を殴るシチュエーションを想像してしまった。
だけど哲夫が言う『戦え。』は、その意味じゃない。
体で戦うんじゃない。
心で戦わなきゃいけないんだ。
:09/01/15 18:48 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#503 [ゆーちん]
「萌子にしてきた事を許してやれって言ってんじゃねぇぞ?そりゃ許してあげるんなら許してやったらいいけど…無理だろ?だから、許さなくていい。まずは許せるかもしれないキッカケを作るんだ。」
哲夫の言葉は、スッと私の中に入り込む。
『なるほど。』ってなる。
:09/01/15 18:49 :SH901iC :Jfqqe8Pw
#504 [ゆーちん]
だけど、今はまだ『そうだね。許してあげられるようなキッカケを作ってあげよう。』だなんて、1ミリ足りとも思わなかった。
そこまで大人じゃない。
「今はまだそんな事、考えれねぇか。」
哲夫の腕の中で、小さく頷いた。
:09/01/16 15:10 :SH901iC :GhjenJ72
#505 [ゆーちん]
萌子への質問なのに、シホが答える。
死んだ萌子の変わりに、私が返事してあげたの。
…なんちゃって。
わかってるよ。
現実的な話をすれば、金河萌子は生きてんの。
そう、私。
:09/01/16 15:10 :SH901iC :GhjenJ72
#506 [ゆーちん]
だけど千早哲夫の近くにいる時だけは、萌子っていう生き方を忘れて、シホになるの。
っていうか…そうでいたい。
シホのままでいたい。
:09/01/16 15:11 :SH901iC :GhjenJ72
#507 [ゆーちん]
ただの【逃げ】と【甘え】なの。
わかってる。
わかってるよ。
萌子の時にできなかった人間くさい事をシホで叶える。
それが楽しくて心地よくて、ついついシホに、哲夫にも頼り過ぎてたんだ。
:09/01/16 15:12 :SH901iC :GhjenJ72
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