闇の中の光
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#51 [ゆーちん]
と、次の瞬間には場面が変わっていた。


あれ、私死んだ?


死んだら、こんな場所に来るんだ。


今から天国行きか地獄行きか決まるんのかな。


天国でも地獄でもどっちでもいいから、早く私を楽にさせて。

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#52 [ゆーちん]
死んだはずなのに、なぜか体が痛いよ。


「あ、起きた?」


えっ。


…誰。


…何。


…起きた?

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#53 [ゆーちん]
子鬼の声だろうか、天使の声だろうか。


だけど、どっちでもなかった。


なぜか私の目の前に映り込んだのは、金髪頭の人間だった。


「おい。大丈夫か?」


…は?


大丈夫じゃ困るんだけど。


私、死んだんだし。

⏰:08/12/29 15:59 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#54 [ゆーちん]
「医者に診てもらう?」


…医者?


死んだのに、まだ医者が必要なの?


「お前、名前は?」


ねぇ…。


もしかして私、死んでないの?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#55 [ゆーちん]
思わず体が起き上がる。


ゴツンッ…


「いってぇー!」


うん、痛い。


頭と頭がごっつんこ。


何で私、生きてんの。


てか、ここどこ?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#56 [ゆーちん]
「地獄?」

「は?」

「生きてんの?」

「何言って‥」

「私、生きてんの?」


金髪頭の男は私の質問に答えた。


「生きてるよ。」


その5文字を聞いた途端、泣きそうになった。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#57 [ゆーちん]
死ねなかったんだ。


最悪。


心臓を狙ったはずなのに、まさか急所外れ…って、あれ?


どこにも傷がない。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#58 [ゆーちん]
何がどうなっているのか、全く理解できない。


「名前は?」

「え?」

「名前。」

「てゆーか、あんた誰よ。」

「俺?俺は天下無敵の哲夫様。」


…哲夫?


聞いた事のない名前。

⏰:08/12/29 16:02 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#59 [ゆーちん]
「誰?」

「だから哲夫だってば!千早哲夫。」


そう言って哲夫は笑った。


「で、あんたは?」

「私、死んだはずなんだけど!何で生きてんの?」

「はぁ?」

「ナイフで心臓ひとつきにして、私は死んだの!」

「頭でも打った?」

「てゆーか、ここはどこ?」

⏰:08/12/29 16:03 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#60 [ゆーちん]
完全にパニック状態だった。


そんな私に、哲夫は教えてくれた。


「俺がお前を見付けた時、右手にナイフ握ってたけど普通に息してたぞ。」

「嘘だ…。」

「お前が握ってたナイフ、これだろ?」


そう言って哲夫が取り出したナイフ。

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#61 [ゆーちん]
あぁ、そうだ。


その綺麗なナイフで、綺麗な星空の元、綺麗に死ぬつもりだったんだ。


「このナイフ、俺の。」

「え?」

「護身用に持ってんの。それがどうした事か、なぜか倉庫前に落として来ちゃったみたいで。探しに行ったらナイフ握ったあんたが倒れてたってわけ。」

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#62 [ゆーちん]
えっ、それじゃ私…自殺する前にマジで力尽きて気を失ってた訳?


何それ信じられない。


最悪。


「呼び掛けても起きないから、とりあえず俺んち連れて来た。」

「ここ、あんたんちなの?」

「救急車呼ぶにも、携帯は家に忘れてたし。お前運んでここ到着したのはいいけど、かなり疲れてたから、そのまま俺も寝ちゃったんだわ。」

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#63 [ゆーちん]
哲夫は煙草に火をつけた。


「助けてくれたの?」

「まぁ、そんなとこかな。」


何それ。


益々信じらんない。


「余計な‥」


ガチャッ…

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#64 [ゆーちん]
いきなりドアが開き、私の声を遮った。


「テッちゃん腹減っ…たっ…て…誰?」


いきなり入って来た男が私を見て驚く。


「ノックしてよ、ヤッちゃん。」

「この女子高生、誰!何でこんなに汚いの?」


なんで私が女子高生ってわかんだろ、と思ったら…ばっちり制服姿だった私。

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#65 [ゆーちん]
着替える前に父親に殴られたんだっけ。


「千早哲夫。」

「んあ?」

「私、助けてくれなんて言ってない。わざわざここまで運んで、ベットに寝かせてくれたなんて余計なお世話だよ。」

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#66 [ゆーちん]
私がそう言うと、哲夫とヤッちゃんと呼ばれた男は固まった。


「人助けしたかと思ったかもしんないけど、こっちにしたら、ただの迷惑。」


するとヤッちゃんと呼ばれた男が言った。


「おい、やめとけ。哲夫に助けてもらってそんな言い方するな。」

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#67 [ゆーちん]
「だから助けてなんて頼んでない。」

「お前、生意気してると哲夫に殺されるぞ。こいつこう見えてでっけぇ集団仕切ってる人間だから。」


殺される?


集団?


あぁ、乱暴な不良グループの頭みたいな事?


だったら調度いいや。

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#68 [ゆーちん]
「だから何。有難迷惑なんだよ、こんな事されちゃ。」

「お前いい加減にしとけよ。哲夫怒らすとマジで殺され‥」

「殺してよ。」


ヤッちゃんという男の言葉を遮ってやった。


哲夫と男の顔が、また変わる。

⏰:08/12/29 16:33 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#69 [ゆーちん]
「哲夫を怒らせれば殺してくれんの?だったら早く怒ってよ。そんで私を殺して。」


哲夫にそう言うと、なぜか視線を反らされた。


「ねぇ、殺して。」

「…。」

「聞こえない?殺してって言ってんの。」

「…。」

「ねぇってば。殺してよ。」

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#70 [ゆーちん]
何度も言い寄る私を、いきなりベットに押し倒した哲夫。


…痛い。


ベットが弾んだだけなのに背中の傷に響いた。


「殺して殺して、うるさい。」

「怒った?だったら早く殺して。」

「康。お前ちょっと出てって。」


ヤッちゃん並びに康と呼ばれた男は何も言わずに部屋から出て行った。

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#71 [ゆーちん]
二人きりになった部屋。


哲夫はさっきのナイフを取り出して、私の喉に近づけた。


「いいの?殺すよ?」

「うん、殺して。」

「お前、怖くないの?」

「何で?」

⏰:08/12/29 16:35 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#72 [ゆーちん]
私を見下ろす哲夫の目は力強かった。


「康孝に聞いただろ?俺怒らせたら、あんた殺されんだよ?」

「だから何。怒らせた方が私にとっては好都合。」

「何で、死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:36 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#73 [ゆーちん]
「あんたに関係ないじゃん。さっさと殺して。あ、殺してもらったのにあんたが捕まるのは可哀相だから自殺したように勝手に工作していいよ。自殺扱いになれば、あんたは捕まんないでしょ?」

「本当に殺すよ?」

「うん。」


ナイフを持つ手に力が入ったのがわかった。


やっと…死ねる。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#74 [ゆーちん]
「フッ…」


私が目を閉じた途端、哲夫が笑った。


何、笑ってんの。


早く刺せよ、と思い目を開くとナイフを床に落とした音がした。


次の瞬間には、哲夫の唇が私の喉に触れていた。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#75 [ゆーちん]
「あんたじゃなくてナイフを刺して。」

「…お前、何あったか知らないけど死ぬなんて考えんな。」


哲夫の舌が喉やうなじをなめ回す。


気持ち悪い。


「やめて。」

「何で死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#76 [ゆーちん]
「関係ない。」

「まぁいいや。いつか教えてね。」


いつか?


いつかなんてないよ。


私は死ぬんだから。

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#77 [ゆーちん]
「殺してくんないの?」

「お前は死んだ。」

「は?」

「今さっき死んだ。」

「意味わかんない…」

「今から俺のペットとして、お前飼うから。死のうとしてたんだから、別にどうなってもいいんだろ?」

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#78 [ゆーちん]
「何言ってんの。私は死にたいの。」

「お前に飽きたその時は、ちゃんと殺してやるから。それまで俺のペットになれ。」


私の首筋から上がって来た顔は、また下りて来て、私の唇を塞いだ。


まだ体中痛い。


頭も痛い。

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#79 [ゆーちん]
何で生きてんのか、何で殺されなかったのか、何でキスされてるのか。


頭が痛くて考えられない。


唇が離れると、哲夫は言った。


「名前は?」

「…萌子。」

「萌子、お前は今日からシホだ。」

「シホ?」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#80 [ゆーちん]
「萌子は死んだ。だからお前はシホだ。」

「シホ…」

「理由知りたい?」


私は頷いた。


「俺、星好きなんだ。星の反対はシホだろ?だからシホ。」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#81 [ゆーちん]
そう言って笑った哲夫。


バカらしい。


こんなバカがでっかい集団をまとめている頭なら、その集団も長くないね。

⏰:08/12/29 16:41 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#82 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

ではまた

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:08/12/29 16:42 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#83 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

ペット

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#84 [ゆーちん]
携帯も財布も着替えもない。


「欲しいものある?シホ。」


シホと呼ばれてもしっくりこない。


私は17年間、萌子だったわけで、今もまだ萌子。


だからいきなりシホだって言われても、頭がついて行かなかった。

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#85 [ゆーちん]
「…特に何も。」

「とりあえず…風呂だな。汚すぎる。」


哲夫の手を借りて、浴室に向かった。


立っているのも辛い。


制服を脱がせてもらい、下着も取ってもらった。


微動だにしない哲夫。


「哲夫。」

「おっ、やっと名前呼んだね。何?」

⏰:08/12/30 16:16 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#86 [ゆーちん]
「何歳?」

「俺?22歳。シホは?」

「…。」

「おい。」


…あぁ、シホは私か。


「17。」

「ふーん、若いね。」

「17の裸見て、動揺とかしないの?」

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#87 [ゆーちん]
「して欲しいの?」

「別に。援交の客だった親父は、みんな嬉しそうに私の裸見てたから。」

「…。」


また力強い目で私を見た哲夫。


どう、引いた?


汚いと思った?


捨てるなら捨ててもいいよ。


突き放される事なら慣れてるから。

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#88 [ゆーちん]
「シホは援交なんかしてないよ。」


哲夫はそう言って自分の服を脱ぎ出した。


何、言ってんの、こいつ。


意味わかんない…。

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#89 [ゆーちん]
お互い、素っ裸になって、温かいお風呂に入った。


湯舟につかりながら、哲夫は言った。


「おいで。」


何で行かなきゃなんないの。


無視していると、哲夫自ら私の方に寄って来た。


「しつけが必要だな。」

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#90 [ゆーちん]
私の後ろに周り、私を抱え込む。


何してんだ。


そんなうっとーしい事しないで欲しい。

⏰:08/12/30 16:19 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#91 [ゆーちん]
「どっかの野良犬と喧嘩でもした?痛かっただろ。」


そう言うと哲夫は私の背中を撫で始めた。


「は?」

「お腹も青アザあったし。大丈夫?」


さっき、私を殺そうとしていたのは、この哲夫だよね?

⏰:08/12/30 17:46 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#92 [ゆーちん]
声や態度が優し過ぎて、別人のような気がする。


「野良のくせに跳び蹴りのできる犬だったの。」

「そりゃおっかないね。」


哲夫が後ろで笑った。


私も、なぜか笑ってしまった。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#93 [ゆーちん]
作り笑顔以外でちゃんと笑ったのはいつぶりだろう。


そんな私の背中やお腹を、何度も何度も哲夫は撫でてくれた。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#94 [ゆーちん]
死にたかった理由とか、傷の理由を深く聞いて来ないので助かる。


「風呂から出たら、まずは買い物だな。色々必要なんだな、ペット飼うって。」


髪や体を綺麗に洗い終わり、お風呂から出ると、裸のまま部屋中をうろついてやった。

⏰:08/12/30 17:48 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#95 [ゆーちん]
「服着ろよ。」

「汚いもん。」


脱衣所にある脱ぎ捨てた制服しかない私。


「あ、そっか。着替えないんだっけ。」


そう言った哲夫は、クローゼットから上下繋がった服を取り出した。

⏰:08/12/30 17:49 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#96 [ゆーちん]
「何これ。」

「つなぎ服っつーの?見た事ない?」

「工事現場の人みたい。」

「いや?」

「いや。」

「もぉー、ペットのくせに文句言うなよ。」


そう言って哲夫は携帯電話で誰かに電話をかけた。


「お前、戻って来れる?…うん…うん…そう、じゃあ。」


簡単な電話を済ませた哲夫は、服を探すのをやめて、再びつなぎ服を私に手渡した。

⏰:08/12/30 17:50 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#97 [ゆーちん]
「康が来るから車出して貰おう。いるものとか欲しいものとか何でも買ってやるよ。」

「康って…」

「さっきのバカヅラ男。康孝って言って、みんなから康とかヤッちゃんて呼ばれてる。」

「そうなんだ。」

⏰:08/12/30 17:51 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#98 [ゆーちん]
パンツ一枚のまま、哲夫は煙草を吸い始めた。


「康が来るまでに服着ろよ。」

「…何で?」

「何でって…主人の命令だからだよ。」

「ふーん、主人ねぇ。」


下着もつけずに、言われた通りつなぎ服を着た。


「おっきい。」

「仕方ねぇだろ。男物なんだから。」

⏰:08/12/30 17:52 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#99 [ゆーちん]
「普通のTシャツとかないの?」

「あるけど…Tシャツのがいいのか?」

「うん。」

「…わがままな奴だな。買い物行ったら、しつけ本も買わないとなー。」


そう言って笑うだけで、結局哲夫はTシャツも出してくれなかった。

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#100 [ゆーちん]
しばらくすると、さっきの男が来た。


康孝だ。


「お待たせ〜。」

「悪いな。ちょっと車出してくれる?」

「えぇ!来ていきなり?」

「シホを飼うのに色々必要でさ。」

「…シホ?犬でも飼うの?」


キョトンとする康孝に、哲夫は言った。


「犬じゃない。人間だ。」

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


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